達者たっしゃ)” の例文
おたがいに達者たっしゃで、はたらくことはできるし、それに毎年まいねん気候きこうのぐあいもよくて、はたけのものもたくさんれて、こんな幸福こうふくなことはない。
自分で困った百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
天野刑部あまのぎょうぶ月山流げつざんりゅう達者たっしゃとて、刃渡はわたり一しゃくすん鉈薙刀なたなぎなたをふるってりゅうりゅうとせまり、佐分利五郎次さぶりごろうじは陣刀せんせんとりつけてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
儀十郎はまだ達者たっしゃでいるし、あの昔気質むかしかたぎな年寄役らしい人は地方の事情にも明るいので、先月二十九日の出来事を確かめたいと思う半蔵には
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、としわかいし、げい達者たっしゃであるところから、作者さくしゃ中村重助なかむらじゅうすけしきりにかたれて、なに目先めさきかわった狂言きょうげんを、させてやりたいとのこころであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
健康なる人は笑へ。病気を知らぬ人は笑へ。幸福なる人は笑へ。達者たっしゃな両脚を持ちながら車に乗るやうな人は笑へ。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
達者たっしゃでいるらしい、』かれは思った、『たぶん子供もできていることだろう。』
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
達者たっしゃに書いた。長編小説でもなんでも書いた。選挙運動には銀座の街頭にたって、短冊たんざくを書いて売った。家庭には荒くれた男の人たちも多くいるし、廃娼はいしょうしたいひとたちも飛込んできた。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「先生がまたみさきへおいでるというのを聞いて、わたし、うれしくてなみだが出ましたの。母子おやこ二代ですもの。こんなこと、めずらしいですわ、ほんとに。でも先生、お達者たっしゃで、よろしかったこと」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「おや、おまえ、おかあさんはこのとおり達者たっしゃですよ。」
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「それじゃこれで別れるから、達者たっしゃに暮らせよ」
正覚坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「お前の親は達者たっしゃでいるか?」
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
此の時媼、呵々からから達者たっしゃに笑ひ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
達者たっしゃに——」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかし、忍耐にんたいをしなければなりません。わたしは、また、きっと、もう一ここへやってきますよ。それまでは、達者たっしゃでいてください。
山の上の木と雲の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もし自分が駅長なり里長なりとして在職していて先代伊之助もまだ達者たっしゃでいてくれたら、共に手を携えて率先奔走するであろうにと残念がった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「む、ずっと京都にいたが、今度、佐久間先生のお供を兼て、松代藩へ用事があって帰郷したよ。達者たっしゃかい、彦太」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
その上にその成績はどうかといふと一芸専門の者が皆達者たっしゃで二芸以上兼修の者は腕がにぶいといふでもない。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
えくぼせないのはまだしも、まるで別人べつじんのようにせかせかと、さきいそいでの素気すげない素振そぶりに、一どう流石さすがにおせんのまえへ、大手おおでをひろげる勇気ゆうきもないらしく、ただくちだけを達者たっしゃうごかして
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「どうか達者たっしゃで、出世しゅっせをしておくれ。」
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
達者たっしゃだ。』
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「おかあさんは達者たっしゃでいますから、心配しんぱいしなくていい。おまえはからだをだいじに、よくおつとめなさい。」と、いてありました。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いくら不景気の世の中でも、二円の香奠こうでんは包めなくなった。お前たちのかあさんが達者たっしゃでいた時分には、二円も包めばそれでよかったものだよ。」
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「だまれ、へらず口の達者たっしゃなやつだ。いつまでお玄関げんかんに立ちはだかっていると、つまみだすからそのつもりでおれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼっちゃん、達者たっしゃでしたら、また、まいりますよ。」と、おじいさんは、こたえました。けれどかならずくるとはいいませんでした。
金魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
無器用に生まれついて来たのは性分しょうぶんでしかたがないとしても、もうすこし半蔵には経済の才をくれたいッて、旦那が達者たっしゃでいる時分にはよくそのお話さ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「あるとも、水馬すいばさえ達者たっしゃなら、らくらくとこせるとろがある。ここだよ、おさむらいさん——」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、人間にんげんはすべて、いつでも達者たっしゃでいるものではありません。ふと、あに病気びょうきにかかりました。おとうとは、どんなに心配しんぱいしたかしれない。
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「かあさんさえ達者たっしゃでいたら、こんな思いを子供にさせなくとも済んだのだ。もっと子供も自然に育つのだ。」
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
自分じぶん子供こどものとき、父親ちちおやあとからついてまちへゆき、またやまかえったときは、父親ちちおやは、まだわかく、ちからつよく、達者たっしゃであったのです。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとい先師篤胤あつたねがその日まで達者たっしゃに在世せられたとしても、これには苦しまれたろうと思われる問題である。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ああわかった。わたしとしったから、せめて達者たっしゃのうちに、一、みんなとこうしてあそんでみよと、かみさまがおっしゃるにちがいない。」
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かつみさんといって、あの甥の達者たっしゃな時分には親しくした人だ。あの甥は土屋つちやという家にとついだ私の実の姉の一人息子ひとりむすこにあたっていて、年も私とは三つしか違わなかった。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ご心配しんぱいなさいますな、ざるさんは、お達者たっしゃで、かわいがられていますよ。」と、自分じぶんてきたことをはなしてくれました。
「あれ、お民、もうお帰りかい。それでも、あっけない。和助もまたおいでや。この次ぎに来る時は大きくなっておいでや。まだまだおばあさんも達者たっしゃで待っていますよ。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
二人ふたりが、達者たっしゃのうちは、まだどうにかして、そのおくることもできたが、母親ははおや病気びょうきになると、もうどうすることもできなかったのでした。
一粒の真珠 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これまで半蔵の教えを受けて来た三郎やお末のような師匠思いの兄妹きょうだいがあり、今となって見れば先代伊之助を先立ててよかったと言って、もしあの先代がいまだに達者たっしゃでいたら
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「また、来年らいねん若葉わかばのころには、きっときますから、どうぞ、みなさんお達者たっしゃでいてください。」といったのでありました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
この達者たっしゃな隠居に言わせると、新茶屋の林の方で調べて来た倒れ木は、落合堺おちあいざかいの峰から風道通かざみちどおりへかけて、松だけでも五百七十本の余に上る。杉、三十五、六本。大小のもみ、四十五本。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かあさんの達者たっしゃのことがわかったうえは、いまからすぐに夜行やこうって、東京とうきょうへゆくことにしようと、真吉しんきちは、おもいました。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
それも子供らの母親がまだ達者たっしゃな時代からの形見かたみとして残ったものばかりだった。私が自分の部屋にもどって障子の切り張りを済ますころには、茶の間のほうで子供らのさかんな笑い声が起こった。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やあ、お達者たっしゃでけっこうなことです。どうして、こんなところへきましたか。でもりっぱなうちにはいって、きれいなすな
つばめと魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの時は助かるまいと言われたくらいよなし。大旦那おおだんな(吉左衛門)の御苦労も一通りじゃあらすか。あのおっかさまが今まで達者たっしゃでいて、今度のお嫁取りの話なぞを聞かっせいたら、どんなだずら——
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それで安心あんしんをした。どうか達者たっしゃで、幸福こうふくおくってくれい。きっと、わたしは、っているから。」と、おっとはいいました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おれは足は達者たっしゃだが、お前さまは。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平常ふだんから、達者たっしゃだったおじいさんは、まだ、そんなに年寄としよりでもなかったのに、とつぜん、中風ちゅうふうにかかってにました。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これは達者たっしゃに書いてある。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とうさん、おかあさん、先生せんせい、おともだちも、さくらもどうかみんな元気げんきで、お達者たっしゃでいてください。わたしは、いってまいります。
汽車は走る (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おゝ、その方も達者たっしゃか。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ご苦労くろうだった。無事ぶじにいってこられて、なにより、けっこうのことだ。みなみ国王こくおうは、達者たっしゃでいらせられたか……。」
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
みなさん、いつもお達者たっしゃでけっこうですね。わたしも、もうとしをとって、こうしてあるくのが、おっくうになりました。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)