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ゆさん
ふりがな文庫
“
遊山
(
ゆさん
)” の例文
それは春のことで。夏になると
納涼
(
すずみ
)
だといって人が出る。秋は
蕈狩
(
たけがり
)
に出懸けて来る、
遊山
(
ゆさん
)
をするのが、
皆
(
みんな
)
内の橋を通らねばならない。
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
料理が運ばれた頃には、一座はなんとなく一家のものが
遊山
(
ゆさん
)
にでも出て、料理屋に立ち寄ったかと思われるような様子になっていた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
のうのうと
遊山
(
ゆさん
)
はねえでがしょう! 治にいて乱を忘れず、乱にいて治を忘れずと、ご番所のお心得書きにもちゃんと書いてあるんだッ。
右門捕物帖:19 袈裟切り太夫
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
幸い
翌日
(
あくるひ
)
はめずらしい朗らかな晩秋の好晴であったので、宿にそれといいおいて、午少し前からそっちへ
遊山
(
ゆさん
)
に出かけていった。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
欧州で有名な温泉地での
遊山
(
ゆさん
)
も、工業博覧会へ諸国からの客を招きよせる条件の一つとして、博覧会はカルルスバードで開催されるのだ。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
しているようだ、おれは今日、組合の方の寄合で千住まで出かけなくちゃならねえのだ、それで
遊山
(
ゆさん
)
かたがた、久しぶりで
草鞋
(
わらじ
)
を
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
健康の人間も
遊山
(
ゆさん
)
がてらに来浴するのではあるが、原則としては温泉場は病を養うところと認められ、大体において病人の浴客が多かった。
温泉雑記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
内の者の
遊山
(
ゆさん
)
も二年越しに出来たので、予に取っても病苦の中のせめてもの慰みであった。彼らの楽みは即ち予の楽みである。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「
遊山
(
ゆさん
)
や酒のむためのこの旅かよ。権叔父も、ほどにしたがよい。
幾歳
(
いくつ
)
になっても、又八と同じように、年がいもない人じゃ」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
菖蒲園
(
しょうぶえん
)
なども開いていて、
遊山
(
ゆさん
)
の人の姿も見られました。
小菅
(
こすげ
)
の刑務所の見える堤に、遊山の人からは少し離れて、仰向けに寝て休みました。
わが師への書
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
どんな智慧者の玄沢坊も、これを表向きにして、追手をかけるわけには行くめえ。江戸の町さえ離れれば、あとは
遊山
(
ゆさん
)
旅だ
奇談クラブ〔戦後版〕:15 お竹大日如来
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
肌寒い秋の
大川
(
おおかわ
)
は、夏期の
遊山
(
ゆさん
)
ボートは影を消して、真に必要な荷船ばかりが、橋から橋の間に一二
艘
(
そう
)
程の割合で、
淋
(
さび
)
しく行来している
外
(
ほか
)
には
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
丘の頂には
旗亭
(
きてい
)
がある。その前の平地に沢山のテエブルと椅子が並べてあって、それがほとんど空席のないほど
遊山
(
ゆさん
)
の客でいっぱいになっている。
異郷
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
日曜日に物見
遊山
(
ゆさん
)
に出掛け汽車の中の空席を
奪取
(
うばいと
)
ろうがためには、プラットフㇹームから女子供を突落す事を辞さないのも、こういう人達である。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「してみるてえと、魚のエサじゃアなくて、泥棒のエサだな。これを食いながらノンビリ鯉をつるつもりだったんだなア。泥棒を
遊山
(
ゆさん
)
と心得てやがる」
餅のタタリ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
辻車の腰掛、茶店の床几、芝居の桟敷、そのほかお花見や
遊山
(
ゆさん
)
の席など明治初年の
赤毛布
(
あかげっと
)
の流行は大したもの、毛布といえば赤いものと心得るぐらい。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
他家
(
よそ
)
の子には
唯事
(
たゞごと
)
のやうなそんなことも、
遊山
(
ゆさん
)
などの経験の乏しい私には、珍しくて嬉しくてならなかつたのです。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
何
(
ど
)
うも御前、世の中には
種々
(
いろ/\
)
の気性の方もあったもので、瀧村殿には
僅
(
わずか
)
に三日や四日のお
宿下
(
やどさが
)
りに芝居はお嫌い、花見
遊山
(
ゆさん
)
などと騒々しいことは大嫌いで
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
世間が広くなるに
随
(
したが
)
い、知人の家を訪ねたり、花見
遊山
(
ゆさん
)
に出かけたり、東京市中は
隈
(
くま
)
なく歩いたようであるが、いまだに子供の時分経験したような不思議な別世界へ
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
珍らしく
家内
(
うち
)
中との触れに成けり、このお供を
嬉
(
うれ
)
しがるは
平常
(
つね
)
のこと、
父母
(
ちちはは
)
なき
後
(
のち
)
は唯一人の大切な人が、病ひの床に見舞ふ事もせで、物見
遊山
(
ゆさん
)
に歩くべき身ならず
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
上下とも
遊山
(
ゆさん
)
の喜びに浸っている時に、宮だけは悲しみに胸を満たせて空のほうばかりを見ておいでになった。そうするとお目につくのは女王の山荘の木立ちであった。
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
船が平気だと、
支那
(
しな
)
から
亜米利加
(
アメリカ
)
の方を見物がてら今度旅行を為て来るのも面白いけれど。日本の内ぢや
遊山
(
ゆさん
)
に
行
(
ある
)
いたところで知れたもの。どんなに
贅沢
(
ぜいたく
)
を為たからと云つて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
皆
遊山
(
ゆさん
)
の客らしく、中には僕達の汽車を目がけて喝采を揚げるくらい酔っているのもあった。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
刀
脇差
(
わきざし
)
も有用の物ともおもわずや、かざりの美、異風の
拵
(
こしらえ
)
のみを
物数寄
(
ものずき
)
無益の費に金銀を捨て、衣服も
今様
(
いまよう
)
を好み妻子にも華美風流を飾らせ、
遊山
(
ゆさん
)
、
翫水
(
がんすい
)
、芝居見に公禄を費し
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
彼らはこの事件を、費用のかからない
遊山
(
ゆさん
)
だと見なしていた。だれも決闘に重きをおいてはしなかった。それにまた皆落ち着き払って、あらゆる不慮の出来事をも覚悟していた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
鶉や/\、お前は、なぜ鳴かないのだ。
私
(
わたし
)
が
遊山
(
ゆさん
)
に行つたをり聞かしたあの美しい声を
孝行鶉の話
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
なんだか面白い
遊山
(
ゆさん
)
の旅に立って行く、若い男女を見ているように思われるのである。きょうはこの部屋中に、
如何
(
いか
)
にも希望に富んでいる、濁りのない情調が
漲
(
みなぎ
)
っているのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
遠く行くほどのものは、
河止
(
かわど
)
めなぞの故障の起こらないかぎり、たとい強い風雨を冒しても必ず予定の
宿
(
しゅく
)
まではたどり着けと言われているころだ。
遊山
(
ゆさん
)
半分にできる旅ではなかった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その頃は神仏
参詣
(
さんけい
)
が唯一の
遊山
(
ゆさん
)
であって、流行の神仏は参詣人が群集したもんだ。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それで妻の
屈託
(
くったく
)
を慰めようとし、夫人に向って度々外出や
遊山
(
ゆさん
)
をすすめた。『外に参りよき物見る。と聞く。と帰るの時、少し私に話し下され。ただ家に本を読むばかり、いけません』
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
欺
(
あざむ
)
くと藤重は吾助に思はれ物をも多く
貰
(
もら
)
ひ花見
遊山
(
ゆさん
)
などに
連
(
つれ
)
らるゝを甚だ心
能
(
よく
)
は思はねども
商賣柄
(
しやうばいがら
)
なれば
愛敬
(
あいきやう
)
を失ひては成ずと
表面
(
うはべ
)
には
嬉
(
うれ
)
しき
體
(
てい
)
をなして同道せしが其折々
無理
(
むり
)
なる
戀
(
こひ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
わたしはどうしてもこんな平凡極まる
境界
(
きやうがい
)
を脱して、新しい境界に蹈み込んで見ずにはゐられない。たしかサラトフでの出来事であつたかと思ふ。
遊山
(
ゆさん
)
に出た一組が凍え死んだ事がある。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
ある侍今日は殊に
日和
(
ひより
)
よしとて田舎へ
遊山
(
ゆさん
)
に行き、先にて
自然薯
(
じねんじょ
)
を
貰
(
もら
)
い、
僕
(
しもべ
)
に持せて還る中途
鳶
(
とび
)
に
攫
(
つか
)
み去らる、僕主に告ぐ、
油揚
(
あぶらあげ
)
ならば鳶も取るべきに、
薯
(
いも
)
は何にもなるまじと言えば、鳶
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
断って置くが俺は何も船橋くんだりまで物見
遊山
(
ゆさん
)
に行ったんじゃない。船橋にいる友達の所に就職の相談に行ったのだ。職に就かなきゃ女房子供が飢えるからな。それが剣もほろろの挨拶なんだ。
蜆
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
うつして
遊山
(
ゆさん
)
から帰って来た昔の姿がいまでも荘子の眼に残って居る。
荘子
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
役人たちが村へきたり、城へもどったりするのは、
遊山
(
ゆさん
)
なんかじゃありません。村でも城でも仕事があの人たちを待っています。そのため、あの人たちはきわめて早い速度で車を走らせるのですわ。
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
忽ち舊誼の絲に
手繰
(
たぐ
)
り寄せられて、
一餐
(
さん
)
の惠に頭を垂れ、再び
素
(
もと
)
のカムパニアの孤となるも我なり。恩人夫婦はわが昔の罪を
宥
(
ゆる
)
して我を食卓に
列
(
つらな
)
らしめ、我を
遊山
(
ゆさん
)
に伴はんとす。
豈
(
あに
)
慈愛に非ざらんや。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「
遊山
(
ゆさん
)
の旅だ。かまわぬ。のう、蛸め。」
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
……
遊山
(
ゆさん
)
旅籠
(
はたご
)
、温泉宿などで
寝衣
(
ねまき
)
、浴衣に、
扱帯
(
しごき
)
、
伊達巻
(
だてまき
)
一つの時の様子は、ほぼ……お互に、しなくっても
可
(
よ
)
いが想像が出来る。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
健康な人間も
遊山
(
ゆさん
)
がてらに来浴するのではあるが、原則としては温泉は病いを養うところと認められ、大体において病人の浴客が多かった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
のろい人間もたまに得をすることがあるのである。小涌谷辺は桜が満開で
遊山
(
ゆさん
)
の自動車が
輻湊
(
ふくそう
)
して交通困難であった。
箱根熱海バス紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
キキキ、キッ、と
軌
(
わだち
)
の音がどこからかしてくる。見ると、
日永
(
ひなが
)
の
遊山
(
ゆさん
)
に飽いたような牛が、一台の
輦
(
くるま
)
を曳いてのろのろと日野の里を横に過ぎて行く。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
将軍家
秀忠
(
ひでただ
)
が砂村先にお
遊山
(
ゆさん
)
へおもむいたみぎり、つらあてにそのお
駕籠
(
かご
)
先で割腹自刃を遂げたのでありました。
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
あいにく
遊山
(
ゆさん
)
の帰りで、商売用のカバンを持ってきていません。私の家へ電話をかけて、看護婦に、カバンを
復員殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
考えて見れば雨や風のさわりなく主客共に
能
(
よ
)
く一日半夜の
歓会
(
かんかい
)
に
逢
(
あ
)
い得たる事いくばくぞと、さまざまなる物見
遊山
(
ゆさん
)
の懐旧談に時の移るのをも忘れていたが
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「おや、お品さんぢやないか、こんなに早くどこへ行くんだ、お詣りや物見
遊山
(
ゆさん
)
でも無ささうだが——」
銭形平次捕物控:247 女御用聞き
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
こんな時分に
遊山
(
ゆさん
)
に出かける
閑人
(
ひまじん
)
はあまりいないと見えて、遊覧船風にゆっくりと仕立ててある特等の客室は、二階の西洋間の方も階下の日本室の方もガランとしている。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
すはと
言
(
い
)
はゞ
命
(
いのち
)
がけの
勤
(
つと
)
めに
遊山
(
ゆさん
)
らしく
見
(
み
)
ゆるもをかし、
娘
(
むすめ
)
は
大籬
(
おほまがき
)
の
下新造
(
したしんぞ
)
とやら、七
軒
(
けん
)
の
何屋
(
なにや
)
が
客廻
(
きやくまわ
)
しとやら、
提燈
(
かんばん
)
さげてちよこちよこ
走
(
ばし
)
りの
修業
(
しゆげう
)
、
卒業
(
そつげう
)
して
何
(
なに
)
にかなる
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼は、いくらか
態
(
わざ
)
とではあったけれど、若い者が
遊山
(
ゆさん
)
にでも行く時の様にはしゃいでいた。
幽霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
煙草
(
タバコ
)
は終生
喫
(
の
)
まなかった。
遊山
(
ゆさん
)
などもしない。時々採薬に小旅行をする位に過ぎない。ただ好劇家で劇場にはしばしば
出入
(
でいり
)
したが、それも同好の人々と一しょに
平土間
(
ひらどま
)
を買って行くことに
極
(
き
)
めていた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
“遊山”の意味
《名詞》
遊山(ゆさん)
山野へ遊びにで出掛けること。
遊び(行楽)に出掛けること。
(出典:Wiktionary)
遊
常用漢字
小3
部首:⾡
12画
山
常用漢字
小1
部首:⼭
3画
“遊山”で始まる語句
遊山船
遊山場
遊山宿
遊山旅
遊山姿
遊山客
遊山舟