みつぎ)” の例文
「ちくしょうめ。やけにまた降りやがるな。雪は豊年のみつぎがきいてあきれらあ。おいらにゃ不作の貢じゃねえか。ね! だんな!」
「外国渡来の悪宗教といえば、過ぐる年わしは吉利支丹信者の、みつぎという巫女を京都きょうとで捕らえ、一味の者共々刑に処したが……」
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
むかしは知らず、今は南海の純友が、東国の平将門へみつぎするのに、(何だ……)と思われては、おれの面目にもかかわる、となったのだ。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国々の部落は彼のもとへ、続々とみつぎを奉りに来た。それらの貢を運ぶ舟は、絹や毛革や玉と共に、須賀の宮を仰ぎに来る国々の民をも乗せてゐた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
イエスが国民を煽動せんどうして、ローマ皇帝にみつぎを納むることを禁じたなどということは、全く事実に反した誣言ふげんであった。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
つぎに彼は遠い北国に行った、北のゲエルどももブリトンの矢鳴りの音をおそるるようになり、山国のピクト族はみつぎを納めた。そこから、彼はようやく帰って来た。
神代紀に雀を碓女うすめとし、崇神朝に定めしみつぎに『男の弓端ゆはずの調、女の手末たなすえの調』とあり、万葉集に『稲つけばかゝる吾が手を今宵もか、殿のく子がとりてなげかむ』
○此地近年公税こうぜいきくにいたれども、米麦を生ぜざるゆゑわづかみつぎをなす(鐁役かんなやくといふ)にいたりて、信濃と越後とのの村名主の支配をうけ、旦那寺をも定めたれど
ところが聖天子は、それを御感心あって、それより以来、矮奴をみつぎとすることをことごとくおやめになってしまいました。賢臣と明主との間はこうなければならない事です。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
佐竹家はもと常陸ひたちの地で四十万石余を領していたが、秋田へ転封されるに当って半地の二十万五千石に減ぜられた……その時、水戸時代に佐竹へみつぎしていた近国の大名十九人が
三十二刻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「今は宿屋でございますが、あれがその『伊勢音頭』の油屋で、お紺の使った品物やみつぎの刀痕のついた襖や衝立が現に残っております。折角お寄りになって惜しいことを致しましたな」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「居ますとも、なぜ今朝ッからいらっしゃらないッて、待ってるわ、みつぎさん。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつ賃仕事ちんしごとしてもおそばくらしたはうつぽどこゝろよう御座ございますとすに、馬鹿ばか馬鹿ばか其樣そのやうことかりにもふてはならぬ、よめつた實家さとおやみつぎをするなどゝおもひもらぬこと
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
文「だがのう、雪は豊年のみつぎと云って、雪の沢山降る年は必ず豊年だそうだ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
もどれ、おろかななみだめ、もといづみもどりをれ。悲歎かなしみさゝぐるみつぎ間違まちがへて喜悦よろこび献上まゐらせをる。チッバルトがころしたでもあらうわがつま生存いきながらへて、わがつまころしたでもあらうチッバルトがんだのぢゃ。
帖木児チモルサマルカンドにり、四方を攻略して威をふるう甚だだいに、みんに対してはみつぎると雖も、太祖の末年に使つかいしたる傅安ふあんとどめて帰らしめず、これを要して領内諸国を歴遊すること数万里ならしめ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
続紀しょくきには、天平二十一年二月、陸奥みちのく始めて黄金をみついだことがあり、これは東大寺大仏造営のために役立ち、詔にも、開闢かいびゃく以来我国には黄金は無く、皆外国からのみつぎとして得たもののみであったのに
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
威力あるもとめのみつぎ、あるはまたあてたへなる
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
雪は豊年のみつぎ
雪の話 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「あいつのお蔭だ! ……大塩中斎おおしおちゅうさい! ……お気の毒なみつぎ様! ……妾までこんな目に逢っている。……」
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
延喜式えんぎしきにのせたる内子鮏は今いふ子籠ここもり鮏の事なるべし。又同書どうしよ脊腸せのはらわたをみなわたとよめり。丹後信濃越中越後よりみつぎとする㕝も見えたれば、古代ふるきよさけ供御くごにも奉りたるなるべし。
「そうであろう。じつは……さもこそ、淋しくおさめと、純友殿から、その草笛と、ほか三人の遊君たちも、其許への、みつぎとしてお贈りになったものだ。どうか受けとっていただきたい」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつそ賃仕事してもお傍で暮した方がつぽど快よう御座いますと言ひ出すに、馬鹿、馬鹿、その様な事を仮にも言ふてはならぬ、嫁に行つた身が実家さとの親のみつぎをするなどと思ひも寄らぬこと
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
娘の髪にも旅客の肩にも、石の上なるみつぎにも、ひらりとしたは鳥の影。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
威力あるもとめのみつぎ、あるはまたあてたへなる
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
賭物貢かけものみつぎノ式」というのが、春と秋に、宮中で行われる。天皇の前で、負け組から勝組へ、罰として“みつぎ”を贈る儀式である。あとは無礼講となり、敵味方、勝敗を忘れて、大らかに飲み遊ぶ。
天皇と競馬 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中斎先生に退治られた、京都の妖巫みつぎうば、その高足のお久美という女、網の目を逃がれて行方が不明しれない。その後も中斎先生には、心にかけられ居られたが、江戸にいようとは思わなかったぞ。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この分は、天なる(仰いで礼拝す)月宮殿にみつぎのものにござりました。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五穀豊熟ごこくほうじゆくしてとしみつぎ心易こゝろやすさゝげ、諸民しよみん鼓腹はらつゞみの春にあひし時、氏神のまつりなどにあひしを幸に地芝居を興行こうぎやうする㕝あり。役者は皆其処の素人しろうとあるひは近村きんそんえきよりも来るなり。師匠ししやうは田舎芝居の役者やくしややとふ。
あはれみてやめぐむともなきめぐみによくして鹽噌えんそ苦勞くらうらずといふなるそはまた何處いづこれなるにやさてあやしむべくたつとむべき此慈善家このじぜんか姓氏せいしといはず心情しんじやうといはず義理ぎりしがらみさこそとるはひとりおたか乳母うばあるのみしのび/\のみつぎのものそれからそれと人手ひとで
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みつぎのあまり捧げてむ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
賭物かけものみつぎノ式」といふのが、春と秋に、宮中で行はれる。天皇の前で、負け組から勝組へ、罰として“みつぎ”を贈る儀式である。あとは無禮講となり、敵味方、勝敗を忘れて、大らかに飮み遊ぶ。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
黒壁に賁臨ふんりんせる蝦蟇法師へのみつぎとして、この美人を捧げざれば、到底き事はあらざるべしと、恫愒的どうかつてきに乞食僧より、最もかれを信仰してその魔法使たるを疑わざるくだんの老媼に媒妁なかだちすべく言込みしを
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五穀豊熟ごこくほうじゆくしてとしみつぎ心易こゝろやすさゝげ、諸民しよみん鼓腹はらつゞみの春にあひし時、氏神のまつりなどにあひしを幸に地芝居を興行こうぎやうする㕝あり。役者は皆其処の素人しろうとあるひは近村きんそんえきよりも来るなり。師匠ししやうは田舎芝居の役者やくしややとふ。
みつぎのあまり捧げてむ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
年々、みつぎはさしあげても、絶えて、恩爵の命などうけたこともない
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)