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裳裾
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もすそ
ふりがな文庫
“
裳裾
(
もすそ
)” の例文
中央には富嶽の
麗
(
うる
)
わしい姿を中心に山脈が
相
(
あい
)
連り、幾多の河川や湖沼がその間を縫い、下には模様のように平野の
裳裾
(
もすそ
)
が広がります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
すると、突然、
緋
(
ひ
)
の緞帳の裾から、桃色のルイザが、吹きつけた花のように転がり出した。
裳裾
(
もすそ
)
が宙空で花開いた。緞帳は鎮まった。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ペツポは我
裳裾
(
もすそ
)
を握りて離たずしていふやう。血を分けたるアントニオよ。そちがをぢなるペツポを知らぬ人のやうになあしらひそ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
憂鬱
(
メランコリック
)
な、利口そうな顔だちで、左手を長椅子の肘に掛け、右手は、
泡
(
あわ
)
のように盛りあがった広い
裳裾
(
もすそ
)
のほうへすんなりと垂らしている。
キャラコさん:09 雁来紅の家
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
これは旅の神をもてなすに適し、そこで女神が
裳裾
(
もすそ
)
を引きずることもありうる、風通しのよい、壁塗りされていない小舎であった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
▼ もっと見る
この美女たちがいずれも長い
裳裾
(
もすそ
)
を曳き、薄い
練絹
(
ねりぎぬ
)
の
被衣
(
かつぎ
)
を微風に
嬲
(
なぶ
)
らせながら、
擦
(
す
)
れ違うとお互いに
淑
(
しと
)
やかな会釈を交わしつつ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
しかるに
近代
(
ちかきよ
)
の牧者等は、己を左右より支ふる者と導く者と(身いと重ければなり)
裳裾
(
もすそ
)
をかゝぐる者とを求む 一三〇—一三二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
その風は
裳裾
(
もすそ
)
や
袂
(
たもと
)
を
翻
(
ひるがえ
)
し、甲板の
日蔽
(
ひおい
)
をあおち、人語を吹き飛ばして少しも
暑熱
(
しょねつ
)
を感じささないのであるが、それでも
膚
(
はだえ
)
に何となく暖かい。
別府温泉
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
灯影
(
ほかげ
)
に女たちのなまめかしい
裳裾
(
もすそ
)
がもつれ合って、手から手へ、一つは二つと杯が飛びかい、座もまたようやく陽気の花をひらきはじめました。
右門捕物帖:34 首つり五人男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そして物にさわらないように片手で
裳裾
(
もすそ
)
を引上げていた。それでもやはり
竈
(
かまど
)
のそばにやって来て、
皿
(
さら
)
の中を
覗
(
のぞ
)
き込んだり、また味をみまでした。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
賑
(
にぎ
)
やかに入って来た客は
印度
(
インド
)
婦人服独特の優雅で
繚乱
(
りょうらん
)
な衣裳を頭から
被
(
かぶ
)
り、
裳裾
(
もすそ
)
を長く
揺曳
(
ようえい
)
した一団の印度婦人だった。
ガルスワーシーの家
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
瑠璃珊瑚
(
るりさんご
)
を
鏤
(
ちりば
)
めた金冠の重さに得堪えぬなよやかな体を、ぐったり勾欄に
靠
(
もた
)
れて、
羅綾
(
らりょう
)
の
裳裾
(
もすそ
)
を
階
(
きざはし
)
の中段にひるがえし、右手に大杯を傾けながら
刺青
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その女の人は長い
裲襠
(
うちかけ
)
の
裳裾
(
もすそ
)
を引いて、さながら
長局
(
ながつぼね
)
の廊下を歩むような足どりで、
悠々寛々
(
ゆうゆうかんかん
)
と足を運んでいることは、尋常の沙汰とは思われません。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
芝居にて
贔屓
(
ひいき
)
の
俳優
(
わざおぎ
)
みるここちしてうち
護
(
まも
)
りたるに、胸にそうびの自然花を
梢
(
こずえ
)
のままに着けたるほかに、飾りというべきもの一つもあらぬ水色ぎぬの
裳裾
(
もすそ
)
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
暁の風に姥の
裳裾
(
もすそ
)
も、袖も
白髪
(
しらが
)
も
靡
(
なび
)
き
翻
(
ひるがえ
)
り、波が
砕
(
くだ
)
けて作られた
水泡
(
みなわ
)
が、涌き立ち踊り騒ぎ立つように見えた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ヴォルデマール君は、お小姓の資格で、女王様が庭へ
駆
(
か
)
け出す時、その
裳裾
(
もすそ
)
を
捧持
(
ほうじ
)
するでしょうな」と、毒々しい口調でマレーフスキイが
一矢
(
いっし
)
をむくいた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
と、最初は
裳裾
(
もすそ
)
が、あたかも真水であるかの如く、水面に拡がるのであるが続いてそれは、傘のように
凋
(
すぼ
)
まって、オフェリヤは水底深くに沈んで行くのだった。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
木の蔭に乗物を立てかけておいて、お島は疲れた体を、草のうえに休めるために
跪坐
(
しゃが
)
んだ。
裳裾
(
もすそ
)
や
靴足袋
(
くつたび
)
にはしとしと水分が
湿
(
しと
)
って、
草間
(
くさあい
)
から虫が
啼
(
な
)
いていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
朝戸出
(
あさとで
)
の
君
(
きみ
)
が
足結
(
あゆひ
)
を
潤
(
ぬ
)
らす
露原
(
つゆはら
)
早
(
はや
)
く
起
(
お
)
き
出
(
い
)
でつつ
吾
(
われ
)
も
裳裾
(
もすそ
)
潤
(
ぬ
)
らさな 〔巻十一・二三五七〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
少なくとも、声がよく似ている。女のほうはきっとこの家の娘に相違ない。モスクワから帰って来て、長い
裳裾
(
もすそ
)
のついた着物を着て、マルファのところへスープを
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
雪の
粉
(
こ
)
を吹いて、遠くはこんもりと黒く茂った森、柔かい緑の
絨氈
(
じゅうたん
)
を
畝
(
う
)
ねらせる水成岩の丘陵、幾筋かの
厚襟
(
あつえり
)
をかき合せたカスケード高原の上に、
裳裾
(
もすそ
)
を引くこと長く
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
婦人の素足の窺える事は、これを見る人々の感じで悪くも見えましょうが、私といたしましては日本のきもののもつ
裳裾
(
もすそ
)
の感じが真に自由で美しいものと考えております。
帯の巾が広すぎる
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
すなわち一生を
御社
(
おやしろ
)
に捧げて、歌いつ舞いつする者となったり、もしくは水の精を
聟
(
むこ
)
に
儲
(
もう
)
けたと
謂
(
い
)
って、末にはするすると長い
裳裾
(
もすそ
)
を
曳
(
ひ
)
いて、
池沼
(
ちしょう
)
の底に入ってしまったり
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
刺繍
(
ぬい
)
の枕も寝台の下に転がし、真白な深股もあらわに、もつるる
裳裾
(
もすそ
)
を掻き合せている。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天女の
裳裾
(
もすそ
)
をとりあげて、泥を払ってやるふりをして、不思議な香気をたのしんだ。
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
美しい女優たちは、自分たちの前にたって
荊棘
(
いばら
)
の道を死ぬまで切りひらいた
女
(
ひと
)
の足
許
(
もと
)
に
平伏
(
ひれふ
)
して、感謝の涙に死体の
裳裾
(
もすそ
)
をぬらし、額に接吻し、
捧
(
ささ
)
ぐる花に彼女を
埋
(
うず
)
めつくすであろう。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そうして
裳裾
(
もすそ
)
はともかくとして、裳裾の吹きおこす、ちょっと形容しがたい風、これはたしかに私の頬を
容赦
(
ようしゃ
)
なく撫でて行ったのだが、私はふと、——酒のことを気ちがい水というけど
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
色天鵝絨
(
いろびろうど
)
を
擦
(
す
)
るごとき
裳裾
(
もすそ
)
のほかは
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
絹紅
(
もみ
)
の
裳裾
(
もすそ
)
の身ぞつらき
枯草
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
羅綾
(
られう
)
の
裳裾
(
もすそ
)
かへしては
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
式
(
しき
)
の
袍
(
うはぎ
)
の
裳裾
(
もすそ
)
には
カンタタ
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
山の
裳裾
(
もすそ
)
の広い原に
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
なアがい
裳裾
(
もすそ
)
赤い旗
(旧字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
王女さまはまだわかいので、
裳裾
(
もすそ
)
もひかず、金の
冠
(
かんむり
)
もかぶっていませんでしたが、目のさめるような赤いモロッコ革のくつをはいていました。
赤いくつ
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
大兄は
遣戸
(
やりど
)
の外へ出て行った。卑弥呼は残った管玉を引きたれた
裳裾
(
もすそ
)
の端で
掃
(
は
)
き
散
(
ち
)
らしながら、彼の方へ走り寄った。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
姫も乳人も眼がさめてみると、一生懸命に夫婦の
裳裾
(
もすそ
)
にしがみ着いているつもりのが、実は佛前にかゝっている
幡
(
はた
)
の脚に取り
縋
(
すが
)
っていたのであった。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二人の子供は
疳
(
かん
)
高い泣声をたてて家の中に逃げ込んだ。扉のがたつく音がし、怒った叫び声が聞えた。夫人は長衣の
裳裾
(
もすそ
)
の許すかぎり早く駆けつけて来た。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
女たちはまた淡紅やピンク、薄紫、純白、色とりどりの柔らかな、肌も露な、
羅衣
(
うすもの
)
を
纏
(
まと
)
うて、やはり素足にサンダルを穿いて、
裳裾
(
もすそ
)
は長く地に
曳
(
ひ
)
いていた。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
夜は MAJESTIC-PALACE の広間に翻る
孔雀服
(
パウアンヌ
)
の
裳裾
(
もすそ
)
、賭博館の窓からは、(
賭けたり、賭けたり
(
フェト・ヴォ・ジュウ・メッシュー
)
)という
玉廻し役
(
クルウピエ
)
の懸け声もきかれようという。
ノンシャラン道中記:07 アルプスの潜水夫 ――モンブラン登山の巻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
火柱の主——
仮面
(
めん
)
の城主! 城主の着ている纐纈の
袍
(
ほう
)
の袖や
裳裾
(
もすそ
)
が風に煽られ、グルグルグルグル渦巻く様は、火柱が四方八方へ、あたかも焔を
翻
(
ひるが
)
えすようであった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
富士のさばいた
裳裾
(
もすそ
)
が、
斜
(
ななめ
)
がちな大原に引く境い目に、光といわんには弱いほどの、一線の薄明りが横ざまにさす。正面を向いた富士は、平べッたくなって、塔形にすわりがいい。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
時を移さず姿をやつして、鳥追い
笠
(
がさ
)
に、あだめかしい
緋色
(
ひいろ
)
の
裳裾
(
もすそ
)
をちらちらさせつつ、
三味線
(
しゃみせん
)
片手にお由がやって参りましたので、名人は待ちうけながら、ただちに
忍
(
しのぶ
)
ガ
岡
(
おか
)
目ざしました。
右門捕物帖:18 明月一夜騒動
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そればかりか、その中の一枚などは、やたらに長い
裳裾
(
もすそ
)
のついたものであった。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
犬に追はれた家室さんは忽ち
野干
(
やかん
)
となつて
籬
(
まがき
)
の上に乘つてゐる。
紅染
(
くれなゐぞ
)
めの
裳
(
も
)
を着て、
裳裾
(
もすそ
)
をひいて遊んでゐる妻の
容姿
(
すがた
)
は、狐といへど
窈窕
(
ようちよう
)
としてゐたので、夫は去りゆく妻を戀ひしたつて
春宵戯語
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ひばりが空高く啼きお陽さまの
裳裾
(
もすそ
)
がゆらゆらとゆれかがやいて居ます。そして咲き乱れた花が一ぱい! 人は花子のほか誰れも居ません。おかしいとおもいました。少し淋しくありました。
花子
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
芝居にて
贔屓
(
ひいき
)
の
俳優
(
わざおぎ
)
みるここちしてうち
護
(
まも
)
りたるに、胸にさうびの自然花を
梢
(
こずえ
)
のままに着けたるほかに、飾といふべきもの一つもあらぬ水色ぎぬの
裳裾
(
もすそ
)
、狭き間をくぐりながち
撓
(
たわ
)
まぬ輪を
画
(
えが
)
きて
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そして一名の獰猛そうな男が、彼女の両足を
裳裾
(
もすそ
)
ぐるみ持っていた。二人がかりで、ひきあげて行くのだ。ほかの仲間も、離れ離れに、浅瀬をえらんで、ザブザブと、もとの対岸へ、渡って行く——。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
黒髪は
裳裾
(
もすそ
)
にかかれ
枯草
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
そして二人とも房々とした亜麻色の髪には、紫水晶と緑玉とを
鏤
(
ちりば
)
めて
桃金花
(
てんにんか
)
の
花綵
(
はなづな
)
を
象
(
かたど
)
った黄金の冠を戴き、
裳裾
(
もすそ
)
長くすんなりと
伸
(
の
)
した素足には、革のサンダルを
穿
(
は
)
いていた。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
大抵男子二人、若くは女子二人なるが、
跳
(
は
)
ねる如き早足にて半圈に動き、その間手をも休むることなく、羅馬人に産れ付きたる、しなやかなる振をなせり。女子は
裳裾
(
もすそ
)
を
蹇
(
かゝ
)
ぐ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
裳
漢検準1級
部首:⾐
14画
裾
常用漢字
中学
部首:⾐
13画
“裳”で始まる語句
裳
裳着
裳衣
裳層
裳帯
裳伏
裳著
裳脱
裳引
裳抜