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蔓
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はびこ
ふりがな文庫
“
蔓
(
はびこ
)” の例文
しかし、その後、きょうまでの五日間にこのエスプリのたちまちわたくしの胎内に
蔓
(
はびこ
)
り育ったことはわれながら
愕
(
おどろ
)
くべきほどだった。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私たちは松の老木が枝を
蔓
(
はびこ
)
らせている遊園地を、そこここ捜してあるいた。そしてついに大きな家の一つの門をくぐって入っていった。
蒼白い月
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
雑草の
蔓
(
はびこ
)
るに任せた庭のように、あまりに
関
(
かま
)
わずにあるところから来ていると考えたからで——
止
(
や
)
むを得ない家庭の事情から言っても
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
憎まれ児世に
蔓
(
はびこ
)
ると云う
諺
(
ことわざ
)
の裏を云えば、身体が丈夫で、智恵があって、金があって、世間を闊歩するために生れたような人は
枯菊の影
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
燃えんとして火気の
蔓
(
はびこ
)
り伝わる心地がして、あわれ人形町は柳屋の店を中心として
真黒
(
まっくろ
)
な地図に変ずるのであろうと
戦慄
(
せんりつ
)
した。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
烏啼天駆の如き
傍若無人
(
ぼうじゃくぶじん
)
の兇賊を現代に
蔓
(
はびこ
)
らせておくことは、わが国百万の胎児を神経質にし、将来恐怖政治時代を発生せしめる
虞
(
おそ
)
れがある。
奇賊は支払う:烏啼天駆シリーズ・1
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は久し振りに学校へ出掛けて行く中学生のようであったが、その昔の中学生がまだ根強く心の
隅
(
すみ
)
に
蔓
(
はびこ
)
っているのであった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
水際には名も知れぬ雑草が
蔓
(
はびこ
)
っていました。私達の靴音に驚いて、五六寸位の小蛇が
草叢
(
くさむら
)
から逃げ出して、スルスルと堀割の中に飛び込みます。
消えた霊媒女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
大多分はまだ
叢林
(
そうりん
)
の
蔓
(
はびこ
)
るにまかせた荒地で、ことに平地の中央を流れる目黒川は年々ひどく
氾濫
(
はんらん
)
するため、両岸には
赭
(
あか
)
い
砂礫
(
されき
)
の層が広く露出していた。
内蔵允留守
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
日の光と温かさとは、すべての外のものに全く
掠
(
かす
)
められて、土のなかに蓄へられた彼等の滋養分も彼等の根もとに
蔓
(
はびこ
)
つた名もない雑草に
悉
(
ことごと
)
く奪はれた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
それが次から次へと
蔓
(
はびこ
)
つて、今では御苑の植込は言ふに及ばず、京都一体にどこの
空地
(
あきち
)
にも苜蓿の生へてない
土地
(
ところ
)
は見られないやうになつてしまつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今年なんぞは月見ぐさが庭一面に
蔓
(
はびこ
)
りさうになつたので、隅の方に二三本残して置いて、跡は皆
平
(
たいら
)
げてしまつた。
田楽豆腐
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
村からの登路は楽であるが、千九百三十九米の前飛竜の辺からは、石楠などが
蔓
(
はびこ
)
るので(途中に石楠横手の字がある)、多少の困難を感ずるそうである。
秩父の奥山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「有難いツ、錢形の親分が來る迄は、誰にも
觸
(
さは
)
らしちやならねエ——と、隱居は路地一パイに
蔓
(
はびこ
)
つて居ますよ」
銭形平次捕物控:316 正月の香り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
材木と材木とが重なり合い、自然と出来た無数の空間、一間に五人ぐらいは住むことが出来よう。この辺一体に
蔓
(
はびこ
)
っている私娼、今も名付けてモカという。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
小径は右に沿ふてはかなりの別荘の垣根つづきであるけれど、左手には薄が一めんに
蔓
(
はびこ
)
つて、それでなくても狭い此道を更に三分の一ほども蔽ひかくしてゐる。
水と砂
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
または柔かい人情が、平和の固い守護者である事をも信じている。よし様々な
汚濁
(
おじょく
)
の勢いが
蔓
(
はびこ
)
ろうとも、私は宗教が真にこの宇宙を支配する力だと信じている。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
見付けられたらまゝよ、和尚さんの鶴のやうな首へ食ひ付いてやれといふ大膽さが、腹いツぱいに
蔓
(
はびこ
)
つた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
さうなると、今迄は気が
付
(
つ
)
かなかつたが、
実
(
じつ
)
に見るに堪えない程醜くいものである。毛が
不揃
(
むら
)
に
延
(
の
)
びて、
青
(
あを
)
い
筋
(
すぢ
)
が
所々
(
ところ/″\
)
に
蔓
(
はびこ
)
つて、如何にも不思議な動物である。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
だが、小作料のことから、田畑は昨秋、収穫をしたきりで耕されず、雑草が
蔓
(
はびこ
)
るまゝに放任されていた。谷間には、稲の切株が黒くなって、そのまゝ残っていた。
豚群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
闇の中でほう
茫
(
ぼう
)
と押し拡がっていて、やがては灰色をした砂丘となり、またその砂丘が、岩草の
蔓
(
はびこ
)
っているあたりから険しく海に切り折れていて、その岩の壁は
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
第一どんな町で、どんな湯があつたか、それさへもう忘れてしまつた。
唯
(
ただ
)
、
朧
(
おぼろ
)
げに覚えてゐるのは、山に
蔓
(
はびこ
)
る若葉の中を電車でむやみに
上
(
のぼ
)
つて行つた事だけである。
忘れられぬ印象
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
土堤
(
どて
)
の草むらが窓さきにふれかゝるほど
蔓
(
はびこ
)
つてゐる奥の北向きの部屋に籠つたり、丘の下に借りてある舟大工の離れへ行つたりして何かこつこつと飽かずに営んでゐた。
鶴がゐた家
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
漠然としているが変に
蔓
(
はびこ
)
っている。そして破っても破っても少したつと又おっかぶさって来る。
小さき良心:断片
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
張作霖
(
ちょうさくりん
)
が威を張ると同時に、一方、日支二十一カ条問題をめぐって、排日は到る処に行われ、全満に
蔓
(
はびこ
)
っている。日本人の居住、商租権などの既得権すら有名無実に等しい。
私が張作霖を殺した
(新字新仮名)
/
河本大作
(著)
お定は、露を帶びた裏畑を頭に描き出した。ああ、あの紫色の茄子の
畝
(
うね
)
! 這ひ
蔓
(
はびこ
)
つた葉に地面を隱した瓜畑! 水の樣な曉の光に風も立たず、一夜さを鳴き細つた蟲の聲!
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
紳士は
年歯
(
としのころ
)
二十六七なるべく、
長高
(
たけたか
)
く、好き程に肥えて、色は玉のやうなるに
頬
(
ほほ
)
の
辺
(
あたり
)
には
薄紅
(
うすくれなゐ
)
を帯びて、額厚く、口大きく、
腮
(
あぎと
)
は左右に
蔓
(
はびこ
)
りて、面積の広き顔は
稍
(
やや
)
正方形を
成
(
な
)
せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
俊男
(
としを
)
は見るともなく
自
(
おのづ
)
と
庭
(
には
)
に
蔓
(
はびこ
)
ツた
叢
(
くさむら
)
に眼を移して力なささうに
頽然
(
ぐつたり
)
と
倚子
(
いす
)
に
凭
(
もた
)
れた。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
実際貞之進の
肚裡
(
はらのうち
)
にまだ十分の疑いが
蔓
(
はびこ
)
って居たのではなく、五分の疑いに五分の打消しが添って居て、疑いが一分伸れば打消しも一分伸び、打消しが一分伸れば疑いも一分伸び
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
山蔭の土牢の口には、雑草が
蔓
(
はびこ
)
っていた。じめじめとした清水が辺りを濡らしていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
昨夜の睡眠不足、精神過労に加えて、二三日前からの風邪で、体中に熱っぽいけだるさが、
蔓
(
はびこ
)
っていた。電車に乗っている間中彼は鈍痛を感じる頭のしんで、考えに沈みつづけていた。
日は輝けり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
二度会ったことのある男とも知っていたのであったのであったかということのみが、胸の中一杯に
蔓
(
はびこ
)
って、これほど愚かしいことはない、何の因果で、あの女が思いきれぬのであろうと
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
羊の料理を
拵
(
こしら
)
えたりポンチ酒を作ったりする時にその葉を使うのだからと云って、
蔓
(
はびこ
)
るままにしてあるのだが、白いジョウゼットのハンケチを顔にあてながら黙って地べたを
視
(
み
)
つめている彼女は
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「お金というやつは、悪いやつが出て来ると、いいのが追ッ払われてしまうんですから、無理が通らば道理引っ込むといったようなわけです、時代が悪くなると、いい人間と、いい金銀が隠れて、
碌
(
ろく
)
でもなしが
蔓
(
はびこ
)
ります」
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
奥様は暖い国に植えられて、
軟
(
やわらか
)
な風に吹かれて咲くという花なので。この荒い土地に移されても根深く
蔓
(
はびこ
)
る
雑草
(
くさ
)
では有ません。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
たちまち天に
蔓
(
はびこ
)
って、あの湖の薬研の銀も真黒になったかと思うと、村人も、
往来
(
ゆきき
)
も、いつまたたく間か、どッと
溜
(
たま
)
った。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの
憂鬱
(
ゆううつ
)
な日常から解放された
気易
(
きやす
)
さで、庭へ出て花畑の手入れをしたり、
蔓
(
はびこ
)
る雑草を刈り取ったり、読みさしの本を読んだりするのだったが
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
人間性が
蔓
(
はびこ
)
るのを邪魔な雑草と思って、わきへ抜き捨ててはいけない。雑草が使いようで田畑の肥料になるではないか。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
粗末な
生垣
(
いけがき
)
で囲まれた二坪ほどの小庭には、彼が子供の頃
見憶
(
みおぼ
)
えて久しく眼にしなかった草花が一めんに
蔓
(
はびこ
)
っていた。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
または柔かい人情が、平和の固い守護者である事をも信じている。よし様々な
汚濁
(
おじょく
)
の勢いが
蔓
(
はびこ
)
ろうとも、私は宗教が真にこの宇宙を支配する力だと信じている。
朝鮮の友に贈る書
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そうなると、今までは気が付かなかったが、実に見るに堪えない程醜くいものである。毛が
不揃
(
むら
)
に延びて、青い筋が所々に
蔓
(
はびこ
)
って、
如何
(
いか
)
にも不思議な動物である。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
舟はその間も
帆
(
ほ
)
に微風を
孕
(
はら
)
んで、
小暗
(
おぐら
)
く空に
蔓
(
はびこ
)
った松の下を、刻々一枚岩の方へ近づきつつあった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
池には水葵と睡蓮が一面に生ひ
蔓
(
はびこ
)
つて草畑と見られた。橋こそ懸つてゐるが、云はゞそれは造園上の風流気か何かで、下はたゞの草畑なのかと私は思ひもしたのである。
天狗洞食客記
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
谷はいつか山ひらと変って、丈の高い偃松が
蔓
(
はびこ
)
っている。其間を押分けて、
横搦
(
よこがら
)
みに左へ左へと困難な登りを続け、午後十二時十五分に漸く尾根上の草地に辿り着いた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
お定は、露を帯びた裏畑を頭に描き出した。ああ、あの紫色な茄子の畝! 這ひ
蔓
(
はびこ
)
つた葉に
地面
(
つち
)
を隠した瓜畑! 水の様な暁の光に風も立たず、一夜さを鳴き細つた虫の声!
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
亡くなつた上田敏氏は子供の時静岡へ
往
(
ゆ
)
く道中、てくてく歩きで箱根を越えた。丁度
梅雨晴
(
つゆば
)
れの頃で、ある百姓家の軒続きに、心臓形の青い葉が一面に
蔓
(
はびこ
)
つてゐる畑を見て
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
また子供たちが「こんぺたう」と呼んで居るその菓子の形をした
仄赤
(
ほのあか
)
く白い小さな花や、又「赤まんま」と子供たちに呼ばれて居る野花なども、その月草に
雑
(
まじ
)
つて一帯に
蔓
(
はびこ
)
つて居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
藪や灌木が
蔓
(
はびこ
)
っている。谷川が一筋流れていて、パッパッと飛沫をあげている。秩父名物の猿の群が、枝から枝へと飛び移り、二人を見ながら奇声を上げる。と、闇のような所へ出た。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
やや有りて彼は
徐
(
しづか
)
に立ち上りけるが、こ
回
(
たび
)
は更に
邇
(
ちか
)
きを眺めんとて双眼鏡を取り直してけり。
彼方此方
(
あなたこなた
)
に差向くる筒の
当所
(
あてど
)
も無かりければ、
偶
(
たまた
)
ま
唐楪葉
(
からゆづりは
)
のいと近きが
鏡面
(
レンズ
)
に
入
(
い
)
り
来
(
き
)
て一面に
蔓
(
はびこ
)
りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
青みどろの
蔓
(
はびこ
)
った一つの沼。
翔び去る印象
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
“蔓(つる植物)”の解説
つる植物・蔓植物(つるしょくぶつ、en: climbing plant)は、自らの剛性で体を支えるのではなく、他の樹木や物体を支えにすること(つる性)で高いところへ茎を伸ばす植物のことである。蔓草(つるくさ、まんそう)、葛・蔓(かずら・かつら)などともいう。
(出典:Wikipedia)
蔓
漢検準1級
部首:⾋
14画
“蔓”を含む語句
藤蔓
蔓延
蔦蔓
葡萄蔓
葛蔓
手蔓
蔓葛
蔓草
通草蔓
蔓菁
金蔓
蔓薔薇
芋蔓
蔓茘枝
通蔓草
蔓衍
滋蔓
豆蔓
蔓苔桃
日影蔓
...