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肌理
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きめ
ふりがな文庫
“
肌理
(
きめ
)” の例文
そこでなければ味われない
肌理
(
きめ
)
の細かい風の音と、健康を喚び覚させるような辛辣な空気の匂とは、私の好きなものの一つであった。
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
胸の厚い、たくましい筋骨の、
肌理
(
きめ
)
のこまかい、まっ白な身体が、秋の陽に、まぶしく、光っているようである。胸毛が、濃い。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そこに
恭
(
うや/\
)
しく
臥
(
ね
)
かしてある死体の、品のよい、
肌理
(
きめ
)
の細かい、のっぺりした顔を想像し、さてその顔の
空洞
(
うつろ
)
になった中央部を想像すると
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「蒼味の
注
(
さ
)
した常の頬に、心持の好い程薄赤い血を引き寄せて、
肌理
(
きめ
)
の細かい皮膚に手觸を挑むやうな柔らかさを見せてゐた」
知られざる漱石
(旧字旧仮名)
/
小宮豊隆
(著)
肌理
(
きめ
)
の細かい、それでいて
血気
(
ちのけ
)
のある女で、——これは段々
後
(
あと
)
になって分ったことだが、——気分もよく変ったが、顔が
始終
(
しょっちゅう
)
変る女だった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
田舎
(
いなか
)
で生まれた長女は
肌理
(
きめ
)
の
濃
(
こま
)
やかな美くしい子であった。健三はよくその子を
乳母車
(
うばぐるま
)
に乗せて町の中を
後
(
うしろ
)
から押して歩いた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黄蜀葵
(
とろろあふひ
)
、
土耳古皇帝
(
とるこくわうてい
)
鍾愛
(
しようあい
)
の花、
麻色
(
あさいろ
)
に曇つた眼、
肌理
(
きめ
)
こまかな
婀娜
(
あだ
)
もの——おまへの胸から好い
香
(
にほひ
)
がする、潔白の氣は露ほどもない
香
(
にほひ
)
がする。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
あなたもそういう気持の
肌理
(
きめ
)
でいらっしゃるのね、何とそれはこまやかでしょう。今にはじまったことではないけれども。それ自身として、よ。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それに税関役人が親切に残しておいてくれた、頬の
肌理
(
きめ
)
をよくするための石鹸が五つ六つ——それだけで一切合切だった。
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
円味の勝った
頤
(
おとがい
)
につづいて、
剥
(
む
)
き
胡桃
(
くるみ
)
のような、
肌理
(
きめ
)
の細かな咽喉が、
鹿
(
か
)
の
子
(
こ
)
の半襟から抜け出している様子は、
艶
(
なまめ
)
かしくもあれば清らかでもあった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
なんとなく大衆的になり過ぎて、派手で
肌理
(
きめ
)
が荒くて、芸術的な魂の裏づけを忘れている。好きな人は映画の主題歌のうち、なんでも採るがよかろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
背はやや低く小造りな身体だが、引き緊った円やかな肉付と、白く透きとおった
肌理
(
きめ
)
の精密な皮膚とをお幸はもっていた。お幸は東京の生まれであった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
全巻を通じて流れている美しい時間的律動とその調節の上に現われたこの監督の鋭敏な
肌理
(
きめ
)
の細かい感覚である。
映画雑感(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
其処
(
そこ
)
には山を出て未だ士気の失せない矹々した岩が、押し重って危く谷を覗いている、水に洗われ磨かれて
肌理
(
きめ
)
がこまかくなった旧い仲間を羨むように。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それほど今度の思い立ちは情緒の
肌理
(
きめ
)
のこまかいものだ。いまはむしろ小説なら表題を告げて置くだけの方がこの女の親しみに酬いる最も好意ある方法だ。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
肌理
(
きめ
)
の密かな、手触りにしっとり厚味のあるところも、やはり饒州のほうがすぐれているように存じます」
明暗嫁問答
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこへお今も、はればれした笑顔で出て来て、「おめでとう。」とはずかしそうにお辞儀をした。健かな血が、化粧した
肌理
(
きめ
)
のいい頬に、美しく上っていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
肌理
(
きめ
)
の細かい女のような皮膚の下から
綺麗
(
きれい
)
な血の色が、
薔薇色
(
ばらいろ
)
に透いて見える。黒褐色の服に雪白の
襟
(
えり
)
と
袖口
(
そでぐち
)
。濃い
藍
(
あい
)
色の絹のマントをシックに羽織っている。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
肌理
(
きめ
)
が荒く、
緑靛
(
りょくてん
)
にくすんだところへ、日が映って、七宝色に輝き出すと、うす暗い岩屏風から、高い調子の緑が浮ぶように出る、弱い調子の青が裏切って流れる
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
お雪伯母は人一倍
肌理
(
きめ
)
がこまかく、彼女はそれを誇として、いつも大切に磨きたてて居たので、指頭など白魚の様に細く綺麗で
天鵞絨
(
びろうど
)
の様に柔かかつたが、私の手は
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
髪は
丸髷
(
まるまげ
)
に結ひ、てがらは
深紅
(
しんく
)
を懸け、桜色の
肌理
(
きめ
)
細やかに肥えあぶらづいて、
愛嬌
(
あいけう
)
のある口元を笑ふ度に掩ひかくす様は、まだ世帯の苦労なぞを知らない人である。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
また亡妻のように欠落状態などを呈していないから、皮膚も白く、
肌理
(
きめ
)
も細かい。貞子は今まで独身を通して来たように、性格もどちらかと言えば勝気で、教育もある。
澪標
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
銚子を取り上げて、私に
注
(
さ
)
してくれた。白い、
肌理
(
きめ
)
のこまかい手で、指のつけ根にえくぼが浮ぶ。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
梨の花の甘い
香
(
にお
)
いにも似ている、木蓮の
肌理
(
きめ
)
の細かな感触にも似ている、どうしても、この
蒲団
(
ふとん
)
の綿は、女手でつつまれたものである——女の真ごころのように綿が温かい。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
咄嗟
(
とっさ
)
に思って、手首に重く、脈にこたえて、筆で染めると、解けた胡粉は、ほんのりと、笠よりも
掌
(
て
)
に響き、雪を円く、暖かく、
肌理
(
きめ
)
滑らかに
装上
(
もりあが
)
る。色の白さが
夜
(
よ
)
の
陽炎
(
かげろう
)
。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのまつたくの
卵形
(
たまごがた
)
をした
肌理
(
きめ
)
の細かな顏には何一つ力といふものがなく、その
鷲鼻
(
わしばな
)
にも小さな
櫻桃
(
さくらんぼ
)
のやうな口にも
斷乎
(
だんこ
)
たるものはなく、その狹い
平坦
(
へいたん
)
な
額
(
ひたひ
)
には思慮などなく
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
肌理
(
きめ
)
の細かい、ふっくらとした
絖
(
ぬめ
)
のような白い肩が……。あわれ、もう胸元まで透けて。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その少し硬いが
肌理
(
きめ
)
のこまかい空気は僕の顔の上に滑り込んでくる。僕の鼻腔から僕の肺臓に吸はれてゆく。発作の終つた僕は、何ものかに甘えながら、もう一度睡つてゆかうとする。
魔のひととき
(新字旧仮名)
/
原民喜
(著)
何處か厭味のある、ニヤケた顏ではあるが、母が妹の靜子が聞いてさへ可笑い位自慢してるだけあつて、男には惜しい程
肌理
(
きめ
)
が
濃
(
こまか
)
く、色が白い。秀でた鼻の下には、短い髭を立ててゐた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
肌理
(
きめ
)
細かく
膚
(
はだえ
)
柔かく、性穏和である。三椏なくば紙は風情を減ずるであらう。
和紙の美
(新字旧仮名)
/
柳宗悦
(著)
味
(
あじ
)
がよくってでがあって、おまけに
肌理
(
きめ
)
が
細
(
こま
)
こうて、
笠森
(
かさもり
)
おせんの
羽
(
は
)
二
重肌
(
えはだ
)
を、
紅
(
べに
)
で
染
(
そ
)
めたような
綺麗
(
きれい
)
な
飴
(
あめ
)
じゃ。
買
(
か
)
って
往
(
ゆ
)
かんせ、
食
(
た
)
べなんせ。
天竺渡来
(
てんじくとらい
)
の
人参飴
(
にんじんあめ
)
じゃ。
何
(
な
)
んと
皆
(
みな
)
の
衆
(
しゅう
)
合点
(
がってん
)
か
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
剃刀などの刄を合せる
肌理
(
きめ
)
の細かい黄色い砥石の、まだ水の乾かない滑らかなその表面を見るやうな、そんな色合ひの背ろから、既に水平線の下に沈んだ太陽の餘光をうけて、明るく華やかに
一点鐘
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
おきよはますます硬い表情でとり残されると云った工合であつた、不健康な生活のために二十五だと云ふのに、
肌理
(
きめ
)
が
荒
(
すさ
)
んで、どことなく
頽
(
くづ
)
れて来た容貌がすでに男を
惹
(
ひ
)
かなくなつただけではなく
一の酉
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
口唇へ付けるうし
紅
(
べに
)
は、
寒
(
かん
)
の
丑
(
うし
)
の日に
搾
(
しぼ
)
った牛の血から作った物が載りも
光沢
(
つや
)
も一番好いとなっているが、これから由来して、寒中の丑の日に水揚げした珊瑚は、地色が深くて
肌理
(
きめ
)
が細かく、その上
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と
薄痘痕
(
うすいも
)
のある
蒼
(
あお
)
い顔を
蹙
(
しか
)
めながら即効紙の
貼
(
は
)
ってある左右の
顳顬
(
こめかみ
)
を、縫い物捨てて両手で
圧
(
おさ
)
える女の、齢は二十五六、眼鼻立ちも醜からねど
美味
(
うま
)
きもの食わぬに
膩気
(
あぶらけ
)
少く
肌理
(
きめ
)
荒れたる
態
(
さま
)
あわれにて
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あかぐろい石の
肌理
(
きめ
)
にしみついた
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
こう云って私の傍に彳んだ岡村君の、
肌理
(
きめ
)
の細かい白い
両脛
(
りょうはぎ
)
には、無数の銀砂がうすい靴下を穿いたように附着して居ました。
金色の死
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
濃茶色の布張りのソファにかけて、瑛子はその時も上気して、
肌理
(
きめ
)
の濃やかさの一層匂うように美しい風で喋っていた。
海流
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ただ土だけは平らで、
肌理
(
きめ
)
が細かではなはだ美しい。三四郎は土を見ていた。じっさい土を見るようにできた庭である。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
春が豊熟した頃に咲きほこるものでそんな花の
肌理
(
きめ
)
の細かい滑らかな花弁に、むつちりと
膩
(
あぶら
)
が乗つた妖艶さは、観る人の心を捕へずにはおかないが
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それは、金五郎の
肌理
(
きめ
)
のこまかい、光るばかりの白い皮膚のうえに、青々と、美しく、浮きあがっていた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
二十五にはなっているだろう、お滝のゆったりと角の取れた
躯
(
からだ
)
つき、面ながの
肌理
(
きめ
)
のこまかな顔、眉や眼は少し尻下りで、唇は薄手にのびやかな波をうっている。
金五十両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
下座敷の明るい電気の下などで、お今はふっくらした
肌理
(
きめ
)
のいい体に、ぼとぼとするような
友禅縮緬
(
ゆうぜんちりめん
)
の
長襦袢
(
ながじゅばん
)
などを着て、うれしそうに顔を
熱
(
ほて
)
らせて立っていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
佐竹の顔は
肌理
(
きめ
)
も毛穴も全然ないてかてかに磨きあげられた乳白色の能面の感じであった。
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
また、いつのまにか、父のそばに、
侍
(
はべ
)
っていた。美人とはいえないが、一人前ではある。
下
(
しも
)
ぶくれで、
肌理
(
きめ
)
白く、有難いことには、おやじほどには、鼻もとがり過ぎていない。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その声の
艶
(
えん
)
に
媚
(
なまめ
)
かしいのを、神官は
怪
(
あやし
)
んだが、やがて三人とも仮装を脱いで、裸にして
縷無
(
るな
)
き雪の
膚
(
はだ
)
を
顕
(
あらわ
)
すのを見ると、いずれも、……血色うつくしき、
肌理
(
きめ
)
細かなる
婦人
(
おんな
)
である。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手も顔も小さくて、
茸
(
きのこ
)
のように
肌理
(
きめ
)
がこまかく
脆
(
もろ
)
そうな老人であります。僅かばかりの正直とか好意以外には人間の精力を盛り切れない姿形であります。わたくしはやゝ安心して
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
肌理
(
きめ
)
の細かい真白い顔に薄く化粧をして、
頸窪
(
うなくぼ
)
のところのまるで見えるように
頭髪
(
かみ
)
を掻きあげて
廂
(
ひさし
)
を大きく取った
未通女
(
おぼっこ
)
い束髪に結ったのがあどけなさそうなお宮の顔によく映っている。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
何処か厭味のある、ニヤケた顔ではあるが、母が妹の静子が聞いてさへ
可笑
(
をかし
)
い位自慢にしてるだけあつて、男には惜しい程
肌理
(
きめ
)
が
濃
(
こまか
)
く、色が白い。秀でた鼻の下には、短い髯を立てゝゐた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
柘榴
(
ざくろ
)
の
蕾
(
つぼみ
)
のように、謹ましく紅い唇には、思慕の艶が光り、
肌理
(
きめ
)
細かに、蒼いまでに白い皮膚には、
憧憬
(
あこがれ
)
の
光沢
(
つや
)
さえ付き、恋を知った
処女
(
おとめ
)
栞の、おお何んとこの三日の間に、美しさを増し
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“肌理”の意味
《名詞》
肌 理 (きり)
皮膚や物の表面の模様の細やかさや感触。
(出典:Wiktionary)
肌
常用漢字
中学
部首:⾁
6画
理
常用漢字
小2
部首:⽟
11画
“肌理”で始まる語句
肌理濃