トップ
>
粗忽
>
そこつ
ふりがな文庫
“
粗忽
(
そこつ
)” の例文
そのせっかくの白い衣裳を、一つ流行文様に染めましょうと思って、梟
紺屋
(
こうや
)
に
誂
(
あつら
)
えたところが、梟は
粗忽
(
そこつ
)
で真黒々に染めてしまった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
手渡さるべき品でない! これをもって彦四郎取り返し、宮家にお返し奉る! ……
粗忽
(
そこつ
)
に汝らかかってみよ、二つ無き命失うぞよ!
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「久馬」と甲斐が静かに云った、「いつも
粗忽
(
そこつ
)
なくやって来たのに、今日はどうした、そんなことでは大事な勤めがはたせまいぞ」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
時としては叱り罵ることさえあり、時としては自分たちのした
粗忽
(
そこつ
)
を、犬にかずけて責めをのがれようとすることさえあるのであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「貴公、そっちを持て。からだから軽いだろうが、大切な品だから、
粗忽
(
そこつ
)
のないように、皆で気をつけて持ってゆかねばならぬ」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
私は、私の
粗忽
(
そこつ
)
を悔いた。ああ止んぬるかなと思った。それから一週間ばかり過ぎると、森山さんから手紙がきた。それには
縁談
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
……もっともお手前の今度の
過失
(
あやまち
)
は、ほんの
仮初
(
かりそめ
)
の
粗忽
(
そこつ
)
ぐらいのものじゃが、それでもお手前のためには何よりの薬じゃったぞ
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
錢屋方へつかはさる兩人の與力は旅館に到り見るに
嚴重
(
げんぢう
)
なる有樣なれば
粗忽
(
そこつ
)
の事もならずと
先
(
まづ
)
玄關
(
げんくわん
)
に案内を
乞
(
こひ
)
重役
(
ぢうやく
)
に對面の儀を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「いかさま、そうもござりましょう。実はせんだって
通掛
(
とおりかか
)
りに見ました。聖、何とやらある故に、聖人と覚えました。いや、老人
粗忽
(
そこつ
)
千万。」
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よって柏木氏はその
粗忽
(
そこつ
)
を謝せしに、青年らその柏木氏なるを知らざりしにや、大いに怒りていかほど謝するも聞き入れず。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
田舎侍がかくかくの
粗忽
(
そこつ
)
を仕りましたる儀何とも恐入る次第で御座りまする、どうか御許し下さるようと、ひたすら詫びをして、金子を出した。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
文「手前は業平村に居ります浪島文治郎と申しますえー
粗忽
(
そこつ
)
の浪士でござるが、先生にお目通りを願いたく
態々
(
わざ/\
)
出ました」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
苗字
(
みょうじ
)
をまちがえたり、用向きをまちがえて取り次いだりしたために、約束してこられたお客様を断わったりするような
粗忽
(
そこつ
)
のおこることもあります。
女中訓
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
塩瀬はちょっと驚ろいて振り向いたまでは、
粗忽
(
そこつ
)
をして恐れ入ったと云う
面相
(
めんそう
)
をしていたが、高柳君の顔から服装を見るや否や、急に表情を変えた。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そそっかしい一面の自分のほうは、「堀の内」「
粗忽
(
そこつ
)
長屋」「粗忽の釘」のなかでみんなそっくり地でいきました。
初看板
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
先にやって、野路の茶店で
憩
(
いこ
)
うておるうち、ふと、当の殿を見失うたので、慌てて後より追っかけたための
粗忽
(
そこつ
)
でおざった。くれぐれ、無礼はおゆるしを
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その糸をつたって先端あたりにうごめく生きもの、——そこにあるにぶい、あやふやで
粗忽
(
そこつ
)
な決心がつきかねたような欲望を示すわずかな震えを感じる。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
「いや、飛んだ
粗忽
(
そこつ
)
を申しました。実は
先刻
(
さつき
)
御婦人の病気を診て、ついそれが頭に残つてゐたものですから。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ああ、この
剽軽
(
ひょうきん
)
な
粗忽
(
そこつ
)
者をそんなにも貴方は憎いと云うのですか……私は井戸端に立って
蒼
(
あお
)
い雲を見ていた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その中で道節が短気で
粗忽
(
そこつ
)
で一番人間味がある。一生定正を君父の仇と
覘
(
ねら
)
って二度も
失敗
(
やりそこ
)
なっている。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
西洋人の衣食住を模し、西洋人の思想を継承しただけで、日本人の解剖学的特異性が一変し、日本の気候風土までも入れ代わりでもするように思うのは
粗忽
(
そこつ
)
である。
日本人の自然観
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
粗忽
(
そこつ
)
に知己をつくらぬしっかりしたところがあり、理解力と感受性が豊かで、どんな物事に対しても妥当な判断を誤まらず、何に対しても極めて穏健な意見をはいた。
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
どんな
粗忽
(
そこつ
)
な挙動を繰り返さないものでもあるまいと、ただただわけもなしに気づかうものばかり。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「失礼いたしました。お疑いをかけましたのはてまえの
粗忽
(
そこつ
)
でござります。どうぞ、あしからず」
右門捕物帖:18 明月一夜騒動
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
ところが師匠は、「お前の
粗忽
(
そこつ
)
ではない。
俺
(
おれ
)
が好いと思うからこれで結構といったのだ。俺の責任だ。お前が心配をすることは一つもない。向うの人間が分らず屋なんだ」
幕末維新懐古談:26 店初まっての大作をしたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
此
(
この
)
果断と云ひ抗抵と云ひ、
総
(
すべ
)
て前提の「物ふるれば縮みて避けんとす我心は臆病なり云々」の文字と
相
(
あひ
)
撞着
(
どうちやく
)
して
并行
(
へいかう
)
する
能
(
あた
)
はざる者なり。是れ著者の
粗忽
(
そこつ
)
に
非
(
あら
)
ずして何ぞや。
舞姫
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
自分の
粗忽
(
そこつ
)
からこの騒動を
惹起
(
ひきおこ
)
したと思込んでいる半之丞は、心の底からそう言うのでした。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そ、そうか、とそそかしく
呟
(
つぶや
)
きながら眼をしょぼしょぼさせているうち、許生員は
粗忽
(
そこつ
)
にも足を滑らしてしまった。前につんのめったと思う間に、体ごとさらわれてしまった。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
兵衛はまず供の
仲間
(
ちゅうげん
)
が、雨の夜路を照らしている
提灯
(
ちょうちん
)
の紋に
欺
(
あざむ
)
かれ、それから
合羽
(
かっぱ
)
に
傘
(
かさ
)
をかざした平太郎の姿に欺かれて、
粗忽
(
そこつ
)
にもこの老人を甚太夫と誤って殺したのであった。
或敵打の話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私は、こんなに自分で申しながら、そして、われと我が
粗忽
(
そこつ
)
さに、思わず、顔を赤らめながら、宿のお女中には、表で待っていただき、お部屋にとってかえしたのでございます。
両面競牡丹
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
私は心で今朝までいた宿屋の二階の一室を思い浮べて、自分の
粗忽
(
そこつ
)
を怒った。覚えず
帰途
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
ヂュリ あゝ、もし、
誓言
(
せいごん
)
は、およしなされ。
嬉
(
うれ
)
しいとは
思
(
おも
)
へども、
今宵
(
こよひ
)
すぐに
約束
(
やくそく
)
するのは、
粗忽
(
そこつ
)
らしうて、
無分別
(
むぶんべつ
)
で、
早急
(
さっきふ
)
で、あッといふ
間
(
ま
)
に
消
(
き
)
える
稻妻
(
いなづま
)
のやうで、
嬉
(
うれ
)
しうない。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
人間
一人
(
ひとり
)
の生命にかかることですから
粗忽
(
そこつ
)
にはできません。かような実験は
小児
(
しょうに
)
でなくてはできませんが、さて自分には子供がなし、むやみに他人の子をかりてくることもできません。
ジェンナー伝
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
一番
轢殺
(
れきさつ
)
事故をよく起す
粗忽
(
そこつ
)
屋でして、大正十二年に川崎で製作され、
直
(
ただち
)
に東海道線の貨物列車用として運転に就いて以来、当時までに、どうです実に二十数件と言う轢殺事故を
惹
(
ひき
)
起して
とむらい機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
「は、てまえは萩原新三郎と申す
粗忽
(
そこつ
)
ものでございます、まことにどうも」
円朝の牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
粗忽
(
そこつ
)
にも農ヶ池を玉池と早合点したものであることが判明して、重ね重ね恐縮に堪えない次第ですが、夫にしてもノワカ池のワの字はウの字の点がかすれたものとは如何しても見えないから
登山談義
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
粗忽
(
そこつ
)
にも鏡の見当を間違えて、自分の頭や顔を鏡の中へ映し入れなかった。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
紳士の床の間は尽くこれ偽物の展覧会さ。心ある者に見せたらばかえってその主人の
粗忽
(
そこつ
)
にして不風流なるを笑われる位だ。西洋の油画にはマサカこんな事はない。その代り名画は
至
(
いたっ
)
て少い。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
おぬしもその手下ででもあろう、同じくぬけぬけしい
粗忽
(
そこつ
)
ものじゃわ、開拓使の本拠へ、白昼、事もあろうに、その開拓使をかたって迷いこみなさった、芝の山内に
棲
(
す
)
んどるちゅう狸にしては
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
あれから今日までに十何年の
星霜
(
せいそう
)
を経ていると云うことが信じられないで、不思議な気がする、さっき私が妙子さんを悦子さんと間違えたのは
粗忽
(
そこつ
)
だけれども、今つくづくとお目に懸って見ても
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あるいはいまだ西洋の事情につきその一斑をも知らざる者にても、ひたすら旧物を廃棄してただ新をこれ求むるもののごとし。なんぞそれ事物を信ずるの軽々にして、またこれを疑うの
粗忽
(
そこつ
)
なるや。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
取
(
と
)
らすべしとの
給
(
たま
)
ひしかど
元來
(
もとより
)
落
(
おと
)
せしは
我
(
わ
)
が
粗忽
(
そこつ
)
なり
曵
(
ひ
)
かれしも
道理
(
どうり
)
破損
(
そこね
)
しとて
恨
(
うら
)
みもあらず
况
(
まし
)
てや
代
(
かは
)
りをとの
望
(
のぞ
)
みもなし
是
(
こ
)
れは
亡母
(
なきはゝ
)
が
紀念
(
かたみ
)
のなれば
他人
(
ひと
)
に
奉
(
たてまつ
)
るべき
物
(
もの
)
ならずとて
拾
(
ひろ
)
ひ
納
(
あつ
)
めて
懷
(
ふところ
)
にせしを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
粗忽
(
そこつ
)
にも沖縄を台湾の
蕃地
(
ばんち
)
の続きの如く思ってはなりません。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
いくつもの
粗忽
(
そこつ
)
をし、手ちがいをし、重吉に不便をかけた。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
子供等は、母の唇へ
粗忽
(
そこつ
)
なキスをして、町の方へ走った。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
どうも、
粗忽
(
そこつ
)
にも
程
(
ほど
)
があるというものだ。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
松村君が仕方がないから
粗忽
(
そこつ
)
をわびて
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
恐るるは
粗忽
(
そこつ
)
なる男の手に砕けんこと
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
全くわたくしの
粗忽
(
そこつ
)
で
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「で、
其奴
(
そやつ
)
を追っかけて、ここまで走って参りましたところ、貴殿に突然逢いましたので……それで
粗忽
(
そこつ
)
にも人違いいたし……」
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
粗
常用漢字
中学
部首:⽶
11画
忽
漢検準1級
部首:⼼
8画
“粗忽”で始まる語句
粗忽者
粗忽千万
粗忽家
粗忽屋