等閑なほざり)” の例文
しかしてかくいたくおとりて見ゆる分のわれらに與へられたるは、われら誓ひを等閑なほざりにし、かつ缺く處ありしによるなり。 五五—五七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
同時に又創作の上から云へば、菊池の小説は菊池の気質と切り離し難い物である あの粗は決して等閑なほざりに書き流した結果然るのではない。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ロレ はれ、それは物怪もっけ不運ふうんの! 眞實しんじつ重大ぢゅうだい容易ようゐならぬ用向ようむきその書面しょめん、それが等閑なほざりになったうへは、どのやうな一大事だいじ出來でけうもれぬ。
出して富右衞門に見せければ元來篤實とくじつの富右衞門なれば以ての外に驚き是は等閑なほざりに致し難しと言つゝ此事を主人平兵衞にはなしけるに平兵衞は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
定めて若氣わかげの短慮とも、當座の上氣じやうきとも聞かれつらんこそ口惜しけれ、言はば一生の浮沈にかゝはる大事、時頼不肖ながらいかでか等閑なほざりに思ひ候べき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
勿體なくも征夷大將軍、源氏の棟梁のお姿を刻めとあるは、職のほまれ、身の面目、いかでか等閑なほざりに存じませうや。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
さりながら人気じんき奴隷どれいとなるも畢竟ひつきやう俗物ぞくぶつ済度さいどといふ殊勝しゆしようらしきおくがあればあなが無用むようばゝるにあらず、かへつ中々なか/\大事だいじけつして等閑なほざりにしがたし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
容態が思はしくない間は、誰れしも警戒しますが、少しくなるとついお調子に乗つて瑣細なことを等閑なほざりにして、そのために飛んだ失敗しくじりを引きおこし易いものです。
〔婦人手紙範例文〕 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
ゆあみすれば、下立おりたちてあかを流し、出づるを待ちて浴衣ゆかたを着せ、鏡をすうるまで、お静は等閑なほざりならず手一つに扱ひて、数ならぬ女業をんなわざ効無かひなくも、身にかなはん程は貫一が為にと
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
夫婦の色はとみに解けて、二言といはぬに何事も、呑込顔の追従笑ひ。槌で庭掃くまでこそなけれ、夫婦が手と手を箒代はり、奥の一間を片付けて、等閑なほざりならずもてなすにぞ。
葛のうら葉 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
一旦等閑なほざりにされた私は豐田さんの方へ引移つて、思はぬ深切と温い心とを見つけたのです。
この客がとまつてゐる間は、毎晩あなたも客間に來るのですよ。これは私の希望です。等閑なほざりにしてはいけませんよ。さあ、もういらつしやい。アデェルの方はソフィイを寄越よこして下さい。
上草履うはざうり爪前つまさきほそ嬝娜たをやかこしけた、年若としわか夫人ふじんが、博多はかた伊達卷だてまきした平常着ふだんぎに、おめしこん雨絣あまがすり羽織はおりばかり、つくろはず、等閑なほざり引被ひつかけた、姿すがたは、敷詰しきつめた絨氈じうたん浮出うきいでたあやもなく
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おそおほしと慇懃いんぎんなり、このほどはお不快ふくわいうけたまはりしが、最早もはや平日へいじつかへらせたまひしか、お年輩としごろには氣欝きうつやまひのるものとく、れい讀書どくしよはなはだわろし、大事だいじ御身おんみ等閑なほざりにおぼしめすなと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さきの細君のマドレエヌが自分の部屋から出て来て「モリエエルよ、貴方あなたの天才を等閑なほざりにして下さるな。貴方あなたの詩才はわらひの神だ。世界は其れにたのしまされる。貴方あなたの天職を沮喪させては成らない」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
世の聵々くわい/\しやりうは、之を偶然に歸するが、實は精の功これをして然るを得せしめたので、學に精に、思に精に、何事にもゾンザイならず、等閑なほざりならざる習慣の、其の人の身に存し居りたればこそ
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「日本橋」の發送も勿論惡氣は無いが等閑なほざりにされてゐたのに違ひ無い。
貝殻追放:011 購書美談 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
ことににくきは日光が等閑なほざりになすりつけたる
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
等閑なほざりなる事も、無きにあらず。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
等閑なほざりの箱
希臘十字 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
されど第一月が、世にかの百一の等閑なほざりにせらるゝため、全く冬を離るゝにいたらざるまに、諸〻の天は鳴轟き 一四二—一四四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
日向守へ申きければ等閑なほざりならぬ事なりとて又も御城代ごじやうだい堀田相摸守殿さがみのかみどのへ申上らるれば左樣さやうの儀ならば是非ぜひなし御城代屋敷やしき呼寄よびよせ對面たいめんせんと再び堀片岡の兩人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
われ汝等おぬしら確執なかたがひ等閑なほざり視過みすごしたるつみによって、近親うから二人ふたりまでもうしなうた。御罰ごばつれたるものはない。
夫れ台所だいどころに於けるねづみ勢力せいりよく法外はふぐわいなる飯焚男めしたきをとこ升落ますおとしの計略けいりやくも更に討滅たうめつしがたきを思へば、社会問題しやくわいもんだいみゝかたむくる人いかで此一町内いつちやうない百「ダース」の文学者ぶんがくしや等閑なほざりにするをべき。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
お峯は又一つ取りてき始めけるが、心進まざらんやうにナイフのはこびいよい等閑なほざりなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あゝ善を行ふにあたりて微温ぬるみのためにあらはせし怠惰おこたり等閑なほざりを恐らくは今強き熱にて償ふ民よ 一〇六—一〇八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
否々少しにても疵は大切たいせつなり自然しぜん等閑なほざり波傷風はしやうふうにもならば容易ならず先兎も角も先刻の茶屋迄御同道ごどうだう申ての事なりサア遠慮ゑんりよに及ばず此駕籠このかごのられよと今惡漢どもの置去おきざりにせし駕籠を引寄ひきよせ浪人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いと堅き家の守とかつは等閑なほざりならずおもひにけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
またこの目には左右に等閑なほざりの壁ありき、聖なる微笑ほゝゑみ昔の網をもてかくこれを己の許に引きたればなり 四—六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)