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生憎
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あいにく
ふりがな文庫
“
生憎
(
あいにく
)” の例文
かう云ふ問題が出たのですが、実を云ふと、
私
(
わたし
)
は
生憎
(
あいにく
)
この問題に
大分
(
だいぶ
)
関係のありさうな
岩野泡鳴
(
いはのはうめい
)
氏の論文なるものを読んでゐません。
イズムと云ふ語の意味次第
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
河原沢から望見した所では、其鞍部の西に在る尖峰が竜頭山に当るらしいが、其時
生憎
(
あいにく
)
密雲に閉ざされて確かむることを得なかった。
二、三の山名について
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それが今日は
生憎
(
あいにく
)
早暁
(
そうぎょう
)
からの曇りとなった。
四方
(
よも
)
の雨と霧と微々たる
雫
(
しずく
)
とはしきりに私の旅情をそそった。
宿酔
(
しゅくすい
)
の疲れも湿って来た。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「アイヨ……知っているよ。それ位の事は……ホホホホホ。けれどそれはホントにお
生憎
(
あいにく
)
だったネエ。そんな用なら黙ってお帰り!」
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
幸「もう治りました、早く帰って休んだ方が宜しい……これは親方
生憎
(
あいにく
)
な事で、とんだ御厄介になりました、又其の内に出ましょう」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
私は
生憎
(
あいにく
)
その日は学校の図書館から借出した重い書物の包を抱えていた上に、片手には例の
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
を持っていた。そればかりでない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
生憎
(
あいにく
)
鼻子夫人の鼻がこっちを向いて池越しに吾輩の額の上を正面から
睨
(
にら
)
め付けている。鼻に睨まれたのは生れて今日が始めてである。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
不都合なことにも
花魁太夫
(
おいらんだゆう
)
達に、ひとりもお茶を引いているのがいないと見えて、そのお定まりの留め女すらも現れない
生憎
(
あいにく
)
さでした。
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
生憎
(
あいにく
)
かかあがいねえので、碌なお肴もありませんが、まあ一杯飲んでから出かけることに致しましょう。(台所に向いて。)おい、亀。
勘平の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
生憎
(
あいにく
)
そんなものは持合せていないので、まあ我慢することにして——
足袋
(
たび
)
を
穿
(
は
)
き、手袋をはめ——天井裏は、皆
荒削
(
あらけず
)
りの木材ばかりで
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
『
生憎
(
あいにく
)
、うちの
良人
(
ひと
)
も、小荷駄衆のお侍から出頭しろといわれて、夕方、酒匂のお役所まで行きましたが、もう間もなく戻りましょう』
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、
生憎
(
あいにく
)
とそれは、機関の響きで妨げられたけれど、絶えずその物音は狂喚と入れ交じって、隣室からひっきりなしに響いてくるのだ。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「これは昨日大阪の方からまゐりました奈良漬でございますけど、いかゞでございますか。
生憎
(
あいにく
)
何にもお茶受けがございません。」
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
今や
竜虎
(
りゅうこ
)
の闘いである。
悪竜
(
あくりゅう
)
が勝つか、それとも
侠虎
(
きょうこ
)
が勝つか。
生憎
(
あいにく
)
と場所は敵の密室中である。部屋の入口には鍵が懸っていた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ひさしぶりで懇意にしてゐる家へ訪ねていつたのに、
生憎
(
あいにく
)
留守だつたので、もういく先のあてもなく、ぶらりぶらりと歩いてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
彼は其足で更にお馨さんの父母を訪うことにした。銀座で
手土産
(
てみやげ
)
の浅草海苔を買ったら、
生憎
(
あいにく
)
「
御結納
(
おんゆいのう
)
一式調進仕候」の札が眼につく。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それから
早速
(
さっそく
)
人
(
ひと
)
を
依
(
たの
)
んで、だんだん
先方
(
せんぽう
)
の
身元
(
みもと
)
を
査
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ると、
生憎
(
あいにく
)
男
(
おとこ
)
の
方
(
ほう
)
も
一人
(
ひとり
)
息子
(
むすこ
)
で、とても
養子
(
ようし
)
には
行
(
ゆ
)
かれない
身分
(
みぶん
)
なのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
生憎
(
あいにく
)
其方
(
そなた
)
に
踽
(
よろめ
)
ける
酔客
(
すいかく
)
の
膁
(
よわごし
)
の
辺
(
あたり
)
を
一衝撞
(
ひとあてあ
)
てたりければ、彼は
郤含
(
はずみ
)
を打つて二間も
彼方
(
そなた
)
へ
撥飛
(
はねとば
)
さるると
斉
(
ひとし
)
く、大地に
横面擦
(
よこづらす
)
つて
僵
(
たふ
)
れたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
生憎
(
あいにく
)
だな! と思つた。あたりの田舎の景色はあるが、沼や林や大河の眺めもあるが、それ以上にかれは自分の恋人をSに見せたかつた。
ひとつのパラソル
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「バンガローの鍵を持っている管理人は、今日は吉田へ行っているはずだ。売店なんかもやっていないだろうし、
生憎
(
あいにく
)
だったね」
肌色の月
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
大庭
家内
(
かない
)
が
生憎
(
あいにく
)
留守でどうも……さあ、まあお上り下さい。おい、かな、かなはゐないのか。(女中現はれる)座布団を……。
五月晴れ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「僕のところに何かあれば、喜んで交換してやるのだが、
生憎
(
あいにく
)
で気の毒だな。ところで、君はちょいちょい買いだしに歩くかね」
食べもの
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
便所は女中達の寝る二階からは、
生憎
(
あいにく
)
遠い処にある。梯子を降りてから、長い、狭い廊下を通って行く。その行き留まりにあるのである。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
信孝の方でも、
逸早
(
いちはや
)
く救援を勝家に乞うたけれども、
生憎
(
あいにく
)
の雪である。勝家、猿面冠者に出し抜かれたと地駄太踏むが及ばない。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「飛んだことになりました、
生憎
(
あいにく
)
相談相手もなく、肝腎の岡さんは三日前から、
足柄
(
あしがら
)
へ用事があって出かけ、明日でなければ戻りません」
銭形平次捕物控:277 和蘭の銀貨
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は
生憎
(
あいにく
)
ある友達が精神異状で
行方
(
ゆくえ
)
不明になり
探
(
さが
)
し
廻
(
まわ
)
らねばならなかったりして松の内も終る頃ようやく地平さんの所へ行った。
篠笹の陰の顔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
『何あに、もう一時間も早けや彼の子供はようく眠つてたんでさあ。時間が後れたばかりで
生憎
(
あいにく
)
とこんな事になつたんですよ。』
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
平中は、餘り醜態にならないように冷静を装ったつもりであったが、
生憎
(
あいにく
)
自分でも可笑しいくらい声がふるえているのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一体あの白熊のうちのどれかが怒り出すと好いのだが、
生憎
(
あいにく
)
怒らない。山の坑の中では、いつ爆発があるやら分からないのだ。
防火栓
(新字旧仮名)
/
ゲオルヒ・ヒルシュフェルド
(著)
お名札をと申しますと、
生憎
(
あいにく
)
所持せぬ、とかようにおっしゃいまする、もっともな、あなた様お
着
(
つき
)
が
晩
(
おそ
)
うござりましたで、かれこれ十二時。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
生憎
(
あいにく
)
日が未だ暮れ切らないで、通行人も相当あったし、疑われないようにするには余程骨が折れた。と云って
四辺
(
あたり
)
に身を隠す蔭もなかった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
、叩き倒したのはえらいもんだ。よう花村やあ——と、讃め言葉がほしいねえ——
生憎
(
あいにく
)
と、
田圃
(
たんぼ
)
外じゃあ、おいら一人の見物で、物足りねえ
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
『丑松の奴がいろ/\御世話様に成りますさうで——
昨日
(
さくじつ
)
はまた御出下すつたさうでしたが、
生憎
(
あいにく
)
と留守にいたしやして。』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
ただ連中
饅頭
(
まんじゅう
)
が食いたくなって、しきりに饅頭屋を探したのだが、
生憎
(
あいにく
)
一軒も無くって大
悄気
(
しょげ
)
。渋川からは
吾妻川
(
あがつまがわ
)
の流れに沿うて行くのである。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
アノ人が自分の世界から
態々
(
わざわざ
)
出掛けて来て、私達の世界へ一寸入れて貰はうとするのだが、
生憎
(
あいにく
)
唯人の目を向けさせるだけで、一向
効力
(
ききめ
)
が無い。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ラネーフスカヤ 楽隊の来たのも折が悪かったし、舞踏会も
生憎
(
あいにく
)
の時に開いたものだわ。……まあ、いいさ。……(腰かけて、そっと口ずさむ)
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
何しろ
新材料
(
はやみみ
)
と云う
所
(
とこ
)
で、近所の年寄や仲間に話して聞かせると辰公は
物識
(
ものし
)
りだと
尊
(
た
)
てられる。迚も
重宝
(
ちょうほう
)
な物だが、
生憎
(
あいにく
)
、今夜は余り
材料
(
たね
)
が無い。
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
生憎
(
あいにく
)
夜
(
よる
)
から
冴
(
さ
)
え
切
(
き
)
つて
居
(
ゐ
)
た
空
(
そら
)
には
烈
(
はげ
)
しい
西風
(
にしかぜ
)
が
立
(
た
)
つて、それに
逆
(
さから
)
つて
行
(
ゆ
)
くお
品
(
しな
)
は
自分
(
じぶん
)
で
酷
(
ひど
)
く
足下
(
あしもと
)
のふらつくのを
感
(
かん
)
じた。ぞく/\と
身體
(
からだ
)
が
冷
(
ひ
)
えた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
生憎
(
あいにく
)
人もごたごたしていたので、息もろくにつけずに、胸に手を置いたような、重くろしい気もちでその夜は明かした。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
生憎
(
あいにく
)
のことか、幸いか、七兵衛の眼は、暗中で物を見得るように慣らされていますから、今しも塀を乗越えて来る
曲者
(
くせもの
)
。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
此話が発展したら、
如何
(
どん
)
な面白い話になるのだか分らんのだけれど、
其様
(
そん
)
な時に限って
生憎
(
あいにく
)
と、茶の間
辺
(
あたり
)
で伯母さんの奥さんの意地悪が私を呼ぶ
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
怪談の目星を打たれる我々も我々であるが、部署を定めて東奔西走も得難いね。
生憎
(
あいにく
)
持合
(
もちあわ
)
せが無いとだけでは美術村の体面に
関
(
かか
)
わる。一つ始めよう。
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
村人らは自分の
放
(
つ
)
けた火を消し出したが、
生憎
(
あいにく
)
の追風にはもう手の尽しようもなく拡がった火の手は、四方から暗い煙と、粉を吹く火の手にかわり
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
用人の
白木重兵衛
(
しらきじゅうべえ
)
が参るべきところであるが、
生憎
(
あいにく
)
いろいろと用事が多いので、きょうは拙者が用人代りに来たのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私は
生憎
(
あいにく
)
加減が悪くて寝ていたのですが、ちょっとで済む御話でしたら、と断って床から抜け出し、どてらの上に羽織を羽織って、面会いたしました。
心の王者
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「
生憎
(
あいにく
)
ただ今爺が
御邸
(
おやしき
)
へまいっていてはっきり分りませんが——賄は一々指図していただくことにしませんと……」
明るい海浜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「済まないが、けふはこらへてくれ。女房のリイケが産をし掛けてゐる。
生憎
(
あいにく
)
己の命が己の物でなくなつてゐる。」
聖ニコラウスの夜
(新字旧仮名)
/
カミーユ・ルモンニエー
(著)
引き寄せて見ると
生憎
(
あいにく
)
、煙草盆の
埋火
(
うずみび
)
が消えてゐたので、
行燈
(
あんどん
)
の方へ
膝
(
ひざ
)
を向けた——自然、まつすぐに離れ家の方を彼は向いてしまつたのである。——
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
一里近く歩んで池田村に入りましたが、
生憎
(
あいにく
)
小宮山氏は不在でした。止むなく近き湯村に一夜を送り、九日の朝早く私たちは再び同氏を訪れたのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
……それはそうとようおいで、せめてお茶でも、オヤいけない、
生憎
(
あいにく
)
切れておりましてね、あのそれでは
白湯
(
さゆ
)
なりと。と云って珍らしいものではなし。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“生憎”の意味
《名詞》
(古)ひとえに恨むこと
(出典:Wiktionary)
生
常用漢字
小1
部首:⽣
5画
憎
常用漢字
中学
部首:⼼
14画
“生憎”で始まる語句
生憎様