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わずら
ふりがな文庫
“
煩
(
わずら
)” の例文
何人
(
なんぴと
)
が進んでその
嘱
(
しょく
)
に応ずるかは
余
(
よ
)
の知る限りでない。余はただ文壇のために一言して諸君子の
一考
(
いっこう
)
を
煩
(
わずら
)
わしたいと思うだけである。
文芸委員は何をするか
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
母のおくまは正月からの
煩
(
わずら
)
いで、どっと床に就いているので、きょうの大浚いを見物することの出来ないのをひどく残念がっていた。
半七捕物帳:39 少年少女の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
卑近
(
ひきん
)
な実例を上げるならば、彼は幼少の頃、女中の手を
煩
(
わずら
)
わさないで、自分で
床
(
とこ
)
を上げたりすると、その時分まだ生きていた祖母が
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
若
(
も
)
し、源吉が無事に逃げ延びたら、鬼子母神の茶店で待つと言う、若い浪人者とかの話は、そんなにお鳥を
煩
(
わずら
)
わさなかったでしょう。
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「やっぱり林は普通の子ではないねえ。己たちの子としては出来過ぎている。どうか気を附けて
煩
(
わずら
)
わぬようにしなければならないよ」
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
▼ もっと見る
「あのな、甚だ御苦労だが、貴所と、それからモ一人、高江氏を
煩
(
わずら
)
わしたらばと思うが、ちょと近い所まで行ってもらいたいのじゃ」
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
『
少
(
すこ
)
しも
乗客
(
じょうきゃく
)
を
煩
(
わずら
)
わさんように
務
(
つと
)
めている
俺
(
おれ
)
か、それともこんなに
一人
(
ひとり
)
で
大騒
(
おおさわぎ
)
をしていた、
誰
(
たれ
)
にも
休息
(
きゅうそく
)
もさせぬこの
利己主義男
(
りこしゅぎおとこ
)
か?』
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「お待ちしていました。利家の力が足りず、四国方面の御多忙もあるところへ、かくもお
煩
(
わずら
)
いをかけて、何とも、
汗顔
(
かんがん
)
のいたりです」
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
体はいくらか楽ですけれども種々な東京に残した仕事についての
煩
(
わずら
)
はしい心配や気苦労で少しも休むひまがなく心が
忙
(
せわ
)
しいのです。
九州より:――生田花世氏に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
その文面はすこぶる
鄭重
(
ていちょう
)
を極めたもので、「
遠路
(
えんろ
)
乍
(
なが
)
ら御足労を願い、赤耀館事件の真相につき御聴取を
煩
(
わずら
)
わしたく云々」とあった。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
死んだものには、もうなんの
煩
(
わずら
)
いもないのだろうが、生き残ったものの上に残された悲しみや愁いは、そう簡単に消えるものではない。
春雪
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
頼朝が
未
(
ま
)
だ病気にならない時、
御所
(
ごしょ
)
の女房頭周防の
女
(
むすめ
)
の十五になる女の子が、どこが悪いと云うことなしに
煩
(
わずら
)
っていて
亡
(
な
)
くなった。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
煩
(
わずら
)
へる鶴の鳥屋」とあるは「煩へる鳥屋の鶴」とせざるべからず。原作のままにては鶴を見ずして鳥屋ばかり見るかの嫌ひあり。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
独身そのものを異性に対する一種の
復讎
(
ふくしゅう
)
とまで考えていた彼は、日頃
煩
(
わずら
)
わしく思う女のために——しかも一人の小さな姪のために
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私が仏教では僧侶の本分として衆生の一番重い病気、最も深い苦しみ、長くやまないところの
煩
(
わずら
)
いを救うにあるのである。即ちこの
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
永久に一事を思い
煩
(
わずら
)
うこと——結局色も香もなく空虚になってしまうまで——と、まるで、別物でもあるかのように考えているようだね。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
カフェエという所は、季節の移り変りに
煩
(
わずら
)
わされない中立地帯だからね。まあ言ってみれば、カフェエは文学者の超越的な崇高な領域だ。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
あまり熱心でございますから、私も
不便
(
ふびん
)
になりまして、御病気のあなたを
煩
(
わずら
)
わすのは恐れ入りますが、一応お尋ね申す事にいたしました。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
本能という言葉が誤解をまねき
易
(
やす
)
い属性によって
煩
(
わずら
)
わされているように、愛という言葉にも多くの
歪
(
ゆが
)
んだ意味が与えられている。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この書の発刊に至るまでには野田さんをはじめ、編輯員の川上洋典、緒方秀雄両君のたびたびの往来を
煩
(
わずら
)
わした。ここに厚く謝意を表す。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
雪之丞、
淫
(
みだ
)
らな
雌狼
(
めすおおかみ
)
にでもつけまわされているような怖れと、
煩
(
わずら
)
わしさとに、一生懸命おさえていた、殺気が、ジーンと
衝
(
つ
)
き上って来た。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
これまでも
妖気
(
もののけ
)
がもとでおりおりお
煩
(
わずら
)
いになることはあっても、こんなに続いて
永
(
なが
)
く御容態のすぐれぬようなことはなかったのであるから
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
果物はお見舞いにもらうから人を
煩
(
わずら
)
わして買わずとも大抵家で間に合う。だからこそ気楽に註文が出せる。病床日誌によればきょうの食事は
胆石
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
きよ子の性質として妙に大人じみた考えをよく話し出すことをお俊は気に
煩
(
わずら
)
っていたから、——お俊は
最
(
も
)
う一度たずねて見た。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
秋雨
(
あきさめ
)
のしょぼしょぼと降るさみしい日、無事なようにと願い申して、
岩殿寺
(
いわとのでら
)
の
観音
(
かんおん
)
の山へ放した時は、
煩
(
わずら
)
っていた家内と二人、
悄然
(
しょうぜん
)
として
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
翌日から一男は、誰の手も
煩
(
わずら
)
わさずに母親の看護を一人で引受けた。病人のある家とも見えず、明るい笑声が絶えなかった。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
何事に
煩
(
わずら
)
わされるという事もないだろう。むろんこの瞬間に何を憤り誰を
怨
(
うら
)
み、また誰から怨まれるという事があり得よう。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
この大きな魚漁家の娘の秀江は、
疳高
(
かんだか
)
でトリックの
煩
(
わずら
)
わしい一面と、関西式の
真綿
(
まわた
)
のようにねばる女性の強みを持っていた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「この四月には『城』も特別号を出しますから、その前後には
近藤
(
こんどう
)
さんを一つ
煩
(
わずら
)
わせて、展覧会を開こうと思っています。」
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
追いかけて見たりしがふと死したる者なりしと心づき、夜明けまで
道中
(
みちなか
)
に立ちて考え、朝になりて帰りたり。その後久しく
煩
(
わずら
)
いたりといえり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
誠にお気の毒ですが、私は隣家の犬のことについて貴下を
煩
(
わずら
)
わしたいのです。私はあの犬が夜じゅう吠えるために毎夜眠ることが出来ません。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ゆえにこの間に結ばるる夢は
徒
(
いたず
)
らに
疲労
(
ひろう
)
せる身体の
幻
(
まぼろし
)
すなわち
諺
(
ことわざ
)
にいう五
臓
(
ぞう
)
の
煩
(
わずら
)
いでなく、精神的営養物となるものと思う。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
その頃母は血の道で久しく
煩
(
わずら
)
って居られ、黒塗的な奥の一間がいつも母の
病褥
(
びょうじょく
)
となって居た。その次の十畳の間の
南隅
(
みなみすみ
)
に、二畳の小座敷がある。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
日本のスタヴロギン君には、縊死という手段を選出するのに、永いこと部屋をぐるぐる歩きまわってあれこれと思い
煩
(
わずら
)
う必要がなかったのである。
狂言の神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
余は一週日の猶予を請いて、とやこうと思い
煩
(
わずら
)
ううち、わが生涯にてもっとも悲痛を覚えさせたる二通の書状に接しぬ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そして、わたくしは毎年同じように、とても出来ぬとは知りながら、何とかうまく翻訳して見たいと思い
煩
(
わずら
)
うのである。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
如何
(
どう
)
しても自分には偶然の出来事として
看過
(
かんか
)
することは出来ない、これは一つ哲学者の一考を
煩
(
わずら
)
わしたいものである。
頭上の響
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
藪を突ついて蛇! 美和子の
煩
(
わずら
)
わしさを突き去ろうとして、思いがけなく、美沢との
煩悩
(
トラブル
)
をつつき出した形である。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
去年の夏
信州
(
しんしゅう
)
沓掛
(
くつかけ
)
駅に近い
湯川
(
ゆかわ
)
の上流に沿うた谷あいの
星野温泉
(
ほしのおんせん
)
に前後二回合わせて二週間ばかりを全く日常生活の
煩
(
わずら
)
いから免れて閑静に暮らしたのが
あひると猿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
煩
(
わずら
)
わさなくても済みますが、葬式の方は会社に勤めている限り結局団さんのお世話になります。不幸があると葬儀委員長として会社から派遣されるんです
冠婚葬祭博士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
... 喉へかけて医者へ連れて行って漸く抜いてもらいましたが
跡
(
あと
)
で喉の病気を長く
煩
(
わずら
)
って困りました。あんな時には何とか急場の手当がありましょうか」中川
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
妊娠の
煩
(
わずら
)
い、産の
苦痛
(
くるしみ
)
、こういう事は
到底
(
とうてい
)
男の方に解る物ではなかろうかと存じます。女は恋をするにも
命掛
(
いのちがけ
)
です。しかし男は必ずしもそうと限りません。
産屋物語
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そうして上の句をつけよと挑むのである。斉信は降服して、どうしても絶交はできぬと嗟嘆しつつ、一座のものとともに夜ふくるまで上の句をつけ
煩
(
わずら
)
った。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
と同様に、かつて北方で己を責めさいなんだ数々の
煩
(
わずら
)
いも、単なる事柄の記憶にとどまってしまい、快い忘却の膜の彼方に
朧
(
おぼ
)
ろな影を残しているに過ぎない。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
下戸でも茶碗でぐうと我慢して飲みまして
煩
(
わずら
)
うようなことが有りますが、
惚抜
(
ほれぬ
)
いている者には振られ、
殊
(
こと
)
に面部を打破られ、其の頃武家が
頭
(
かしら
)
に疵が出来ると
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
私がその手続にだんだん慣れてきた時は、同時に私がそんな手続を
煩
(
わずら
)
わしく思うようになった時であった。
弓町より
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
準備された沢山の
小間絵
(
こまえ
)
は不幸にして戦災を受け
悉
(
ことごと
)
く
烏有
(
うゆう
)
に帰しました。そのため再び
芹沢銈介
(
せりざわけいすけ
)
君の手を
煩
(
わずら
)
わして、
凡
(
すべ
)
てを描き改めて
貰
(
もら
)
わねばなりませんでした。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そなたを案じ
煩
(
わずら
)
いたもう、そなたを最も愛される父上陛下の
御魂
(
みたま
)
は、天に歓喜してお喜びになるであろう。それがそなたの御父上に捧げ得る、最大の孝養である。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
『たゞ
無用
(
むよう
)
なる
吾等
(
われら
)
が、
徒
(
いたづ
)
らに
貴下等
(
きから
)
を
煩
(
わずら
)
はすのを
憂
(
うれ
)
ふるのみです。』と
語
(
かた
)
ると、
大佐
(
たいさ
)
は
急
(
いそ
)
ぎ
其
(
その
)
言
(
げん
)
を
遮
(
さへぎ
)
り
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
それから引続いて母が永い間の
煩
(
わずら
)
いに、蓄えとてもござりませねば、親子
揃
(
そろ
)
って一時は路頭に迷おうとしましたが、長屋の衆が親切におっしゃってくださいまして
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
“煩”の意味
《名詞》
(ハン)わずらわしさ。
(出典:Wiktionary)
煩
常用漢字
中学
部首:⽕
13画
“煩”を含む語句
煩悶
煩悩
可煩
煩累
煩瑣
長煩
御煩
子煩悩
煩悩即菩提
恋煩
大煩
煩聒
心煩
思煩
気煩
煩悩熾盛
煩雑
煩惱
煩労
煩悩児
...