無限むげん)” の例文
だが、そのつかの歓喜から、彼は更に、絶望などという言葉では云い尽せぬ程の、無限むげん地獄へつきおとされて了ったのである。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ちかやうでも海上かいじやうの三容易ようゐでない、無限むげん大海原おほうなばらたゞよつてつたあひだこそ、しまさへ見出みいだせば、たゞちにたすかるやうかんがへてつたが、仲々なか/\左樣さうかぬ。
すきとおるようなそらいろは、ちょうどつめたいガラスのように、無限むげんにひろがっています。そして、刻々こくこく紫色むらさきいろやま姿すがたわっていくのでありました。
はととりんご (新字新仮名) / 小川未明(著)
あたま徃來わうらいとほるものは、無限むげん無數むすう無盡藏むじんざうで、けつして宗助そうすけ命令めいれいによつて、まることやすこともなかつた。らうとおもへばおもほど滾々こん/\としていてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私達わたしたち知識ちしきひろ學問がくもんためになる品物しなもの千差萬別せんさばんべつで、その種類しゆるいじつ無限むげんおほいのでありますから、これをみんなひとつの場所ばしよあつめて陳列ちんれつすることは容易よういでありませんし
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
無限むげんける光芒くわうばうのゆくてにおもひするなく
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
わが眼には星辰せいしん雲集し又無限むげん夜天やてん生動せいどうす。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
無限むげんつるに触れて鳴り
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おれは、しゃくにさわったから、熱湯ねっとうをわかして、かけてやったが、支那兵しなへいおなじくそのかず無限むげんなのだ。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かんがへると、無限むげん悲哀かなしくなつて、たゞ茫然ぼうぜん故國こゝくそらのぞんで、そゞろに暗涙あんるいうかべてとき今迄いまゝで默然もくねんふか考慮かんがへしづんでつた櫻木大佐さくらぎたいさは、突然とつぜんかほげた。
同化してその物になるのである。その物になり済ました時に、我を樹立すべき余地は茫々ぼうぼうたる大地をきわめても見出みいだし得ぬ。自在じざい泥団でいだん放下ほうげして、破笠裏はりつり無限むげん青嵐せいらんる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこには恐しい疑惑と嫉妬しっとの、無限むげん地獄が口を開いて待っていたのでございます。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大空おおぞらは、まんまんとして、はらうえあお天蓋てんがいのように、無限むげんにひろがっているし、やわらかなくさは、うつくしい敷物しきもののごとく、地上ちじょうのとどくかぎりしげっていました。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
までく、弦月丸げんげつまる其時そのとき無限むげんうらみんで、印度洋インドやう海底かいてい沈沒ちんぼつせしめられたのである。
そこも、無限むげんの空にまで、つづいて、やはり何千人という一つ目小僧が、顔を下に向けて、さかだちしたり、まっすぐに立ったりして、見通しのきかぬ上の方まで、むらがっているではありませんか。
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
にん無限むげん感慨かんがいで、えなくなるまで、いっしょに、そのとりかげ見送おくっていたのであります。
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
汽車きしゃとおってしまったあと、かぼちゃのはなはたけち、無限むげんにつづく電線でんせん行方ゆくえやりながら、自由じゆう大空おおぞらんでいるつばめのを、うらやんだことがありました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうした奇怪きかいはなしは、これまでに、二めであります。この鉄道線路てつどうせんろは、西南せいなんからはしって、この野原のはらなかでひとうねりして、それからまっすぐに北方ほっぽうへと無限むげんつらなっているのでした。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
広々ひろびろとしたはたけが、みずしずくなか宿やどっていました。しかも、無限むげんに、ふかく、ふかく、とおく、とおく、そのしずくなかひらけていたのです。そのはたけには、黄色きいろな、かぼちゃのはながいくつもいていた。