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淡泊
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たんぱく
ふりがな文庫
“
淡泊
(
たんぱく
)” の例文
「いったいどうすればお前の気に入るんだか、僕には解らないがね、だからその条件をもっと
淡泊
(
たんぱく
)
に云っちまったらいいじゃないか」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれども、竜之助の大和の国へ逆戻りをして来た縁故がただこれだけであると思うのもあまりに
淡泊
(
たんぱく
)
であります。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
母は、若い者の無心な
淡泊
(
たんぱく
)
さに、そっとお礼を言いたいような気がしていた。自分の濁った狼狽振りを恥ずかしく思った。信頼していていいのだと思った。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
卑猥
(
ひわい
)
と道徳とを和解させんとする「男らしい
淡泊
(
たんぱく
)
さ」——結婚に
淫蕩
(
いんとう
)
の様子を与えながら結婚を保護する放逸な貞節さ——いわゆるゴール風なのであった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
分
(
わか
)
ちもせず
面白
(
おもしろ
)
きこと
面白
(
おもしろ
)
げなる
男心
(
をとこごゝろ
)
の
淡泊
(
たんぱく
)
なるにさしむかひては
何事
(
なにごと
)
のいはるべき
後世
(
のちのよ
)
つれなく
我身
(
わがみ
)
うらめしく
春
(
はる
)
はいづこぞ
花
(
はな
)
とも
云
(
い
)
はで
垣根
(
かきね
)
の
若草
(
わかくさ
)
おもひにもえぬ
闇桜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
夫
(
そ
)
れから長崎に行き大阪に出て修業して居るその中に、藩の御用で江戸に呼ばれて藩中の子弟を教うると
云
(
い
)
うことをして居ながらも、藩の政庁に対しては誠に
淡泊
(
たんぱく
)
で
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
船中
(
せんちゆう
)
朝
(
あさ
)
の
食事
(
しよくじ
)
は「スープ」の
他
(
ほか
)
冷肉
(
れいにく
)
、「ライスカレー」、「カフヒー」それに
香料
(
にほひ
)
の
入
(
い
)
つた
美麗
(
うるは
)
しき
菓子
(
くわし
)
、
其他
(
そのほか
)
「パインアツプル」
等
(
とう
)
極
(
きは
)
めて
淡泊
(
たんぱく
)
な
食事
(
しよくじ
)
で、それが
濟
(
す
)
むと
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
時々
(
とき/″\
)
使童
(
ボーイ
)
が
出入
(
しゆつにふ
)
して
淡泊
(
たんぱく
)
の
食品
(
くひもの
)
、
勁烈
(
けいれつ
)
の
飮料
(
いんれう
)
を
持運
(
もちはこ
)
んで
居
(
ゐ
)
た。ストーブは
熾
(
さかん
)
に
燃
(
も
)
えて
居
(
ゐ
)
る——
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
仏国公使の答は徳川政府に対しては陸軍の
編制
(
へんせい
)
その他の事に関し少なからざる
債権
(
さいけん
)
あり、新政府にてこれを引受けらるることなれば、
毛頭
(
もうとう
)
差支
(
さしつかえ
)
なしとてその
挨拶
(
あいさつ
)
甚
(
はなは
)
だ
淡泊
(
たんぱく
)
なりしという。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
けれども、
淡泊
(
たんぱく
)
で、
無難
(
ぶなん
)
で、
第一
(
だいいち
)
儉約
(
けんやく
)
で、
君子
(
くんし
)
の
食
(
く
)
ふものだ、
私
(
わたし
)
は
好
(
すき
)
だ。が
言
(
い
)
ふまでもなく、それどころか、
椎茸
(
しひたけ
)
も
湯皮
(
ゆば
)
もない。
金魚麩
(
きんぎよぶ
)
さへないものを、
些
(
ちつ
)
とは
増
(
まし
)
な、
車麩
(
くるまぶ
)
は
猶更
(
なほさら
)
であつた。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
意匠に
勁健
(
けいけん
)
なるあり、優柔なるあり、壮大なるあり、
細繊
(
さいせん
)
なるあり、
雅樸
(
がぼく
)
なるあり、
婉麗
(
えんれい
)
なるあり、
幽遠
(
ゆうえん
)
なるあり、平易なるあり、
荘重
(
そうちょう
)
なるあり、軽快なるあり、
奇警
(
きけい
)
なるあり、
淡泊
(
たんぱく
)
なるあり
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
何等の目的も無く生むで置きながら、
伜
(
せがれ
)
がやくざだと
大概
(
たいがい
)
仲違
(
なかたがひ
)
だ!其處が人間のえらい點かも知れんが、俺は寧ろ犬ツころの
淡泊
(
たんぱく
)
な方を取るな。
彼奴
(
きやつ
)
子供を育てたからつて決して
恩
(
おん
)
を賣りはしない。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
こんな質問に逢うと、小六は下宿から遊びに来た時分のように、
淡泊
(
たんぱく
)
な遠慮のない答をする訳に行かなくなった。やむを得ず
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いいえ、日本人の悪口は、威勢がいいだけで、むしろ
淡泊
(
たんぱく
)
です。辛辣というのは当りません。支那には
他媽的
(
タマテイ
)
という
罵言
(
ばげん
)
がありますが、これなどが本当の辛辣といっていいでしょう。
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は女がなぜ
淡泊
(
たんぱく
)
に自分の欲しいというものの名を
判切
(
はっきり
)
云ってくれないかを
恨
(
うら
)
んだ。彼は何とはなしにそれが知りたかったのである。すると
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
過去
(
くわこ
)
を
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
いて、
事
(
こと
)
の
成行
(
なりゆき
)
を
逆
(
ぎやく
)
に
眺
(
なが
)
め
返
(
かへ
)
しては、
此
(
この
)
淡泊
(
たんぱく
)
な
挨拶
(
あいさつ
)
が、
如何
(
いか
)
に
自分等
(
じぶんら
)
の
歴史
(
れきし
)
を
濃
(
こ
)
く
彩
(
いろど
)
つたかを、
胸
(
むね
)
の
中
(
なか
)
で
飽迄
(
あくまで
)
味
(
あぢ
)
はひつゝ
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
こんな
質問
(
しつもん
)
に
逢
(
あ
)
ふと、
小六
(
ころく
)
は
下宿
(
げしゆく
)
から
遊
(
あそ
)
びに
來
(
き
)
た
時分
(
じぶん
)
の
樣
(
やう
)
に、
淡泊
(
たんぱく
)
な
遠慮
(
ゑんりよ
)
のない
答
(
こたへ
)
をする
譯
(
わけ
)
に
行
(
ゆ
)
かなくなつた。
已
(
やむ
)
を
得
(
え
)
ず
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
何
(
なん
)
にも執着しない事であった。
呑気
(
のんき
)
に、ずぼらに、
淡泊
(
たんぱく
)
に、
鷹揚
(
おうよう
)
に、善良に、世の中を歩いて行く事であった。それが彼のいわゆる
通
(
つう
)
であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これも
嘘
(
うそ
)
ではなかった。記憶の好いHさんは、その時の話題を
明瞭
(
めいりょう
)
に覚えていて、それを最も
淡泊
(
たんぱく
)
な態度で話してくれた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうして自分の骨折から出る結果は、
世故
(
せこ
)
に通じた田口によって、必ず善意に利用されるものとただ
淡泊
(
たんぱく
)
に信じていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
妹に逢った時顔でも赤らめるかと思ったら存外
淡泊
(
たんぱく
)
で
毫
(
ごう
)
も平生と
異
(
こと
)
なる様子のなかったのはいささか妙な感じがした。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其
(
その
)
日曜
(
にちえう
)
に
彼
(
かれ
)
は
又
(
また
)
安井
(
やすゐ
)
を
訪
(
と
)
ふた。それは
二人
(
ふたり
)
の
關係
(
くわんけい
)
してゐる
或
(
ある
)
會
(
くわい
)
に
就
(
つい
)
て
用事
(
ようじ
)
が
起
(
おこ
)
つたためで、
女
(
をんな
)
とは
全
(
まつた
)
く
縁故
(
えんこ
)
のない
動機
(
どうき
)
から
出
(
で
)
た
淡泊
(
たんぱく
)
な
訪問
(
はうもん
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
その日曜に彼はまた安井を
訪
(
と
)
うた。それは二人の関係している或会について用事が起ったためで、女とは全く縁故のない動機から出た
淡泊
(
たんぱく
)
な訪問であった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
少なくとももっと
淡泊
(
たんぱく
)
でした。私は証拠のない事を云うと思われるのが厭だから、
有体
(
ありてい
)
に事実を申します。だから兄さんも淡泊に私の質問に答えて下さい。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
淡泊
(
たんぱく
)
だと思った山嵐は生徒を
煽動
(
せんどう
)
したと云うし。生徒を煽動したのかと思うと、生徒の処分を校長に
逼
(
せま
)
るし。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ところが今の若い人は存外
淡泊
(
たんぱく
)
で、昔のような感激性の詩趣を倫理的に発揮する事はできないかも知れないが、大体吹き抜けの
空筒
(
からづつ
)
で何でも隠さないところがよい。
文芸と道徳
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかのみならず五本の毛へこびりつくが早いか、十本に
蔓延
(
まんえん
)
する。十本やられたなと気が付くと、もう三十本引っ懸っている。吾輩は
淡泊
(
たんぱく
)
を愛する
茶人的猫
(
ちゃじんてきねこ
)
である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ところが学校というものはなかなか情実のあるもので、そう書生流に
淡泊
(
たんぱく
)
には
行
(
ゆ
)
かないですからね
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はそう云って
後
(
あと
)
から自分に断った。彼の
遣口
(
やりくち
)
は、彼女に取っても自分に取っても、面倒や迷惑の起り得ないほど
単簡
(
たんかん
)
で
淡泊
(
たんぱく
)
なものであった。しかしそれだから物足りなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「いいえ、僕ああまりそんな事を聞くのが
嫌
(
きらい
)
だから、それに、あの男はいっこう
何
(
なん
)
にも打ち明けない男でね。あれがもっと
淡泊
(
たんぱく
)
に思った事を云う風だと慰めようもあるんだけれども」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
事の
成行
(
なりゆき
)
を逆に眺め返しては、この
淡泊
(
たんぱく
)
な
挨拶
(
あいさつ
)
が、いかに自分らの歴史を濃く
彩
(
いろど
)
ったかを、胸の中であくまで味わいつつ、平凡な出来事を重大に変化させる運命の力を恐ろしがった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
奥さんは懇意になると、こんなところに
極
(
きわ
)
めて
淡泊
(
たんぱく
)
な
小供
(
こども
)
らしい心を見せた。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれども先生の性質が如何にも
淡泊
(
たんぱく
)
で
丁寧
(
ていねい
)
で、立派な英国風の紳士と極端なボヘミアニズムを
合併
(
がっぺい
)
したような特殊の人格を具えているのに敬服して教授上の苦情をいうものは一人もなかった。
博士問題とマードック先生と余
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おれはそれでも解らないから、
淡泊
(
たんぱく
)
にその女に聞いて見た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ちと正直に
淡泊
(
たんぱく
)
になさいと云うんです」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“淡泊”の意味
《名詞》
色・味などがしつこくないこと。
拘りがなく、態度や性格がさっぱりしていること。
そっけないこと。性的な関心が弱いこと。
(出典:Wiktionary)
淡
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
泊
常用漢字
中学
部首:⽔
8画
“淡泊”で始まる語句
淡泊な沈着