“母家:おもや” の例文
“母家:おもや”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂19
林不忘2
久生十蘭2
加能作次郎2
北原白秋2
“母家:おもや”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語5.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.1%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
山の手の広い構え、土蔵と店の間を抜けて、母家おもやへ廻る道々、又次郎は泣き出さんばかりの様子で、こうささやきます。
山の手の廣いかまへ、土藏と店の間を拔けて、母家おもやへ廻る道々、又次郎は泣き出さんばかりの樣子で、斯う囁きます。
別に、小褄こづまをからげるでもなく、そのまま奥庭のくらがりの、植込みの蔭につとより添って、母家おもやの方をじっとみつめる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
と云ひながらその人は又自分達を中門ちゆうもんの中まで案内して置いて母家おもやの窓の下へ寄つて夫人に声を掛けた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
母家おもやの方は九畳の坐敷に八畳のなか、六畳の居間、ほかに二畳と三畳と台所、それに今の隠居所でした。
「昨夜、この離室はなれへ曲者が來たのは、眞夜中過ぎのやうだが、母家おもやの方で、氣のついた者はありませんか」
コゼットは父が病気なのを見て、母家おもやをすて、小さな離室はなれと裏の中庭とにまた多くいるようになった。
と云つて、夫人は母家おもやの方へかれた。しばらくすると露のしたゝ紅薔薇べにばらの花を沢山たくさん持つて来られた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さうしてれた米を足舂きにするのには、母家おもやの方で下男が一人、かゝり切りにするほどであつた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
母家おもやから、そんなに遠くはありません。御主人は、これに氣の付かない筈はないと思ふのですが」
「親分さん、外廻りを御覽下さいませんか、土藏と母家おもやの間の路地は、その儘にしてある筈ですが」
そばに夫の姿が見えないので、不安になって起き上がり、方々部屋を見回り、階下したへ降りて行き、母家おもやと軒つづきの銀行の事務所へ行ってみた。
母家おもやに引返すと、お勝手口で、もう下女のお今をつかまへて、輕い調子で話込んでゐる平次です。
そこそこに出て手も洗わずに母家おもやの方へ来て寝た、しかしとこへ入っても中々なかなか寝られないが彼はそれまでこんな事はあんまり信じなかったので
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
「へエ、落ちる途中で、聲を出したかもわかりません。兎に角、私が聞いたのはたつた一聲だけで、驚いて母家おもやから飛出して抱き起すと、もういけませんでした」
突然清逸の注意は母家おもやの茶の間の方にき曲げられた。ばかげて声高な純次に譲らないほど父の声も高くとがっていた。言い争いの発端ほったんは判らない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
母家おもやから別れたその小さな低い鱗葺こけらぶきの屋根といい、竹格子の窓といい、入口いりくちの杉戸といい、殊に手を洗う縁先の水鉢みずばち柄杓ひしゃく
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
へーい、と母家おもやから女中ぢよちうくと、……たれない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ちょうどお茶が入って、職人が皆んな向うの母家おもやの方へ行っておりましたよ」
軒を貸して母家おもやを取られる——ということわざがあるが、まさにそのとおり。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そして彼は、母家おもやの屋根裏に動いてる光を、木立ち越しにエポニーヌにさしてみせた。それは洗濯物せんだくものをひろげるためにトゥーサンがともしてる灯火であった。
向うの端にある小さい物置小屋は、母家おもやからは一町も離れてゐるでせう。
増田屋金兵衞は、離家はなれ母家おもやを繋ぐ、廊下の端で刺されました。
と、母家おもやと廊下つづきの戸の隙間に、派手な娘友禅がちらと動いた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
默つて母家おもやの方を伏し拜むと、心靜かに取上げたのは言ふ迄もなく短刀。蝋塗ろぬりさやを拂つて、懷紙をキリキリと卷くと、紋服の肌をくつろげて、左脇腹へ——。
お冬はそう言いながら、留吉を抱いて、母家おもやの方へ帰って行きます。
練吉若夫婦は診察所の二階を居部屋にしてゐた。そこと正文夫婦の住む母家おもやとの間には一見して判る気風の相違が現れてゐた。正雄はそこへ近づかないやうに云ひふくめられてゐた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
母家おもやの店に居りました、少しばかり帳合の殘りが御座いまして」
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
お冬はさう言ひ乍ら、留吉を抱いて、母家おもやの方へ歸つて行きます。
林太郎はしろ公をつれて、母家おもやのまわりをかけまわりました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ことに便所は座敷のわきの細い濡椽ぬれえん伝いに母家おもやと離れている様な具合、当人もすこぶる気に入ったのですぐ家主やぬしうちへ行って相談してみると
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
離屋と言つても、母家おもやは廊下續きの三四間先にあります。
畑の中央部につた可愛らしい小さな家も無論取こぼたれた。それを取囲んでゐたかぐはしいにほひを放つ多くの草花は無造作に引抜かれて、母家おもやの庭の隅つこへ移し植ゑられた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
さう言ひ捨てて、お源は母家おもやの方に急ぎました。
無數の小さな河魚は醉つぱらつて浮き上り、酒の流れに口をつけて飮んだ人は泥醉して僅に燒け殘つた母家おもやころがり込み、金箔の古ぼけた大きな佛壇の扉をがしたり歌つたり踊つたりした。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
以前の母家おもやから持って来たものであろう。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「どうして母家おもやに一緒にはゐないのです」
手早く衣服を着換へて母家おもやの方へ来た。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
私は伯父やお雪伯母には秘密にして居た。家では出来るだけ我慢して居たが台所の隅や母家おもやと勧工場との間の細い露地などに隠れて喫つた。水汲みに井戸へ行つた時には、必ず井戸端で一本喫ふのを常とした。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
額髪ぬかがみ女童めろも交りて、ほつほつと、ひとりひとりに、軽き提げ重きはかつぎて、あなかなし五浦少女、草いきれ暑き小径こみちを、潮しぶく東の磯の潮見堂、その母家おもやまで、山越え野越え。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「あそこに家が、百姓家が見えるでしょう。もう少し右。ええ、そこです。双眼鏡で見てごらんなさい。母家おもやの横に、小さな納屋なやが見えるでしょう。そこの、軒下のきしたに何か下っているでしょう。見えますか」
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
もっともズット以前の明治三十年頃までは、深良家の先祖代々が住んでいた巨大な母家おもやが、雑木林の下の段の平地に残っていたが、それが現在の牛九郎爺さんの代になると、極端な労働アラシコ嫌いの算盤そろばん信心で
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「死んだお直さんは、時々フラフラ歩くと言つた、——この母家おもやへも何にかに引かされるやうに、フラフラと入つて來たに違ひない。御隱居がそれを心配して、御内儀の殺された晩も、この母家のお勝手口へ搜しに來た筈だ」
母家おもやで藤さんと呼ぶ。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
一刻も早く屋敷のそとへ! と決した栄三郎、ぶつかった鈴川方の一人をパッサリ! と割りさげておいて、泥沫はねをあげて左膳を襲い、そのダッとなるところをすかさず、泰軒をうながして母家おもやえんへ駈けあがった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その上、熊手のが濡れて居るのも變ですが、從妹いとこのお光が殺された日、母家おもやにはその死骸を運び入れて、とむらひの支度の眞つ最中に、主人の喜太郎が、藁細工の物置に入つて居たのも不思議でなければなりません。
母家おもやの右手に、納屋なやのような小屋が建っていて、そこの板敷の上に十七八になる娘がつくばいながら、米のぎ汁のような色をした水の中へ両手をけて、わくふるってはさっとすくい上げている。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そいでも後になってからの話に、「あて知らん間アに、傍にいる人を姉ちゃんと間違うたのんや」と、そない自分でいやはりますのんで、それやったら罪は夫の方にあることになるのんですが、夫の自白聞きましたら、二日目の昼過ぎお梅どん母家おもやの方い行ってて
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
細君が指輪ゆびわをなくしたので、此頃勝手元の手伝てつだいに来る隣字となりあざのおすずに頼み、きちさんに見てもらったら、母家おもやいぬい方角ほうがく高い処にのって居る、三日みっか稲荷様いなりさまを信心すると出て来る、と云うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
どうぞ哀れと思って、と畳に喰いついてどうしても帰ると言わない。金三郎も、はじめはきついことを言っていましたが、とうとうお米の情にほだされてわりない仲になった。……お米はそれから夜の六ツごろになると忍んで来て夜があけるとそっと母家おもやへ帰って行く。
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「ここから入ります。……母家おもやはお通夜でごった返して離家には誰もいないはずですが、それだと言ったって、だんまりで座敷へ踏みこむわけにもゆきません。屋根の破風はふ下見したみをすこしばかり毀しますから、窮屈でもどうかそこからお入りなすってください」
顎十郎捕物帳:24 蠑螈 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
門の内は稻をいだり、もみを乾したりするのに使はれる庭で、隅の方に柿の木が一二本立つてゐる外には、納家なやと土藏と塀と門と、それから藁葺きの屋根が小山のやうに高い母家おもやとに取り圍まれたこの眞四角な廣場が、百姓のひまな此頃はガランとしてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「あの人は、主人が死ねばお清さんの後見人になつて、跡繼の決まるまでは、此家を自由にすることになつて居ります。さうなれば、平常から仲の惡い私を追ひ出して、此處に入ることになるでせう。この離屋が氣に入つて、何んとかして私を母家おもやに入れて、自分は此離屋に住まはうとした人ですから」
「少し遲れたら、母家おもやまでやられるところでした。それに、主人徳右衞門の部屋は、急には内から出られないやうに、外から材木を凭せかけてあつた相で、——材木と言つたところで、大したものぢやありませんが、縁の下に轉がしてあつた一間ばかりの角材で、あれでも戸を開ける邪魔にはなりますね」
氣性者のをさめが、全く人に殺されたとわかり、遺書も僞物ときまると、その僞の遺書を書いた本人、日頃小姑こじうとの納と仲が惡い上に、母家おもや離屋はなれと別れて居ても、この太田屋の屋根の下に留守をして居た、主人の後添へのお縫に恐ろしい疑ひが、眞つ向からのしかゝつて行くのは當然なことです。
「何んとも言へない、無氣味なことばかりなんです。私は離屋の入口の、お母さんの隣の部屋に寢んで居ますが、夜中に變な物音がしたり、雨戸の外で人の聲がしたり、私を此處から追ひ出さうとして居る樣子なんです。番頭の爲之助どんに相談すると、離屋に泊つて居ちや危ないから、母家おもやへ移つた方が無事だらうと言ひますが」
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「下女のお作でございます。離屋の三度の食事は母家おもやから運ぶことになつて居りますので、今朝卯刻半むつはん(七時)少し前にお作が朝食を持つて行くと、雨戸が締つてゐて開かなかつたさうで、暫らく叩いたり呼んだりして居ましたが、到頭手代の徳次が行つて、道具まで持出して雨戸を一枚コジ開けて入ると、この有樣でございました」