トップ
>
欄
>
らん
ふりがな文庫
“
欄
(
らん
)” の例文
頼朝は、
欄
(
らん
)
へ出ると、肺にいっぱいの大気を吸った。まだうす暗いが、空は落着いて、美しい晴空が、天の一角から澄みかけていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
柳
(
やなぎ
)
嚲
(
た
)
れて
条々
(
じょうじょう
)
の煙を
欄
(
らん
)
に吹き込むほどの雨の日である。
衣桁
(
いこう
)
に
懸
(
か
)
けた
紺
(
こん
)
の背広の暗く下がるしたに、黒い
靴足袋
(
くつたび
)
が
三分一
(
さんぶいち
)
裏返しに丸く
蹲踞
(
うずくま
)
っている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その間にも万兵衛は胸をかきむしって苦しみ藻掻き、
欄
(
らん
)
干に這い寄ると、大川尻の水の上へ、したたか吐きました。
銭形平次捕物控:152 棟梁の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それぞれの
欄
(
らん
)
に、「大河無門、二十七
歳
(
さい
)
、千葉県、小学校代用教員、中学卒」と記入してあり、備考欄には
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
操行の
欄
(
らん
)
には「オ友達ニ親切デス。」と書かれてあった。いい先生だなと私は思った。この間しづちゃんから「星マデ高ク飛ベ。」という手習いが送られてきた。
前途なお
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
▼ もっと見る
港外のモンゴリヤ号は已に
錨
(
いかり
)
を抜かんとして、見送りに来た葛城の姉もお
馨
(
けい
)
さんもとくに去り、葛城独甲板の
欄
(
らん
)
に
倚
(
よ
)
って居た。時間が無いので
匆々
(
そこそこ
)
に別を告げた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
欄
(
らん
)
近き籐椅子に
倚
(
よ
)
り
候
(
さふら
)
ふに、見渡さるる限りのオレンヂの森、海のやうにて、近き庭には名も知らぬ百花、百花と云ふ字の貧弱なることよ、
万花
(
ばんくわ
)
とや申し
候
(
さふら
)
ふべき。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
何ぞ知らん此家は青樓の一で、今女に導かれて入つた座敷は海に臨んだ
一室
(
ひとま
)
、
欄
(
らん
)
に
凭
(
よ
)
れば港内は勿論入江の奧、野の末、さては西なる海の
涯
(
はて
)
までも見渡されるのである。
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
眼を
娯
(
たの
)
しますものもないから、
欄
(
らん
)
に
倚
(
よ
)
りかゝって、前の二階の客が煙草を喫ったり、話しをしていたり、やはり、つくねんとして
此方
(
こっち
)
を見ているのを見る他、眼をどうしても
渋温泉の秋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その途端に、金魚のように紅と白との
尾鰭
(
おひれ
)
を動かした幻影が鼻の先を通りすぎるのが感ぜられた。僕は「袴の無い若い職業婦人」の
欄
(
らん
)
へ、一本のブルブル
震
(
ふる
)
えた棒を横にひいた。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
明くる夜の河はばひろき嵯峨の
欄
(
らん
)
きぬ水色の
二人
(
ふたり
)
の夏よ
みだれ髪
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
欄
(
らん
)
に、おゝ、何のおもひで。
おもひで
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
丹塗
(
にぬり
)
の
欄
(
らん
)
の
長廊
(
わたどの
)
に
桜さく島:春のかはたれ
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
虹のような
朱
(
あけ
)
の
欄
(
らん
)
を架けた中庭の
反橋
(
そりばし
)
を越えて来たのである。
扈従
(
こじゅう
)
の家臣や小姓たちさえ、
眩
(
まば
)
ゆいばかりな衣裳や腰の物を着けていた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして目録のカードを担当に示して、そのカードの裏面の
欄
(
らん
)
に、いる舎房の番号と自身の称呼番号とを記入してもらうのである。三、四日して本は舎房の方に届けられた。
その人
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そこで彼は、新聞紙をいくたびか
畳
(
たたみ
)
かえして、そういう記事のある
欄
(
らん
)
を探した。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
余が千歳村に引越した其夏、遊びに来た一学生をちと
没義道
(
もぎどう
)
に追払ったら、学生は立腹して
一
(
ひと
)
はがき五拾銭の通信料をもらわるゝ
万朝報
(
よろずちょうほう
)
の
文界
(
ぶんかい
)
短信
(
たんしん
)
欄
(
らん
)
に
福富
(
ふくとみ
)
源次郎
(
げんじろう
)
は発狂したと投書した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
かの橋の上には村のもの四五人集まっていて、
欄
(
らん
)
に
倚
(
よ
)
って何事をか語り何事をか笑い、何事をか歌っていた。その中に一人の
老翁
(
ろうおう
)
がまざっていて、しきりに若い者の話や歌をまぜッかえしていた。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「変ったのう」しみじみと、範宴はいって、ふと、橋の
欄
(
らん
)
から見下ろすと、そこを行く加茂の水ばかりは、
淙々
(
そうそう
)
として変りがない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
欄
(
らん
)
へ一本のブルブル震えた棒を横にひくと、
恐
(
こわ
)
いもの見たさに似た気持で、その白い
脛
(
はぎ
)
をのぞきこんだ。僕はあんなに魅力のある脛をみたことがない。実にすんなりと伸びた脛だった。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今朝起きぬけにわが家の新聞をひろげたら、運勢の
欄
(
らん
)
が眼につきました。
わが師への書
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
欄
(
らん
)
を前に、一室の
卓
(
たく
)
で、宋江は独り
暢
(
の
)
びやかに病後の心を養った。酒はよし、
包丁
(
ほうちょう
)
もよし、
器
(
うつわ
)
なども、さすが「天下有名楼」であった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いくら無住同様な寺にせよ、
欄
(
らん
)
や建具は手当り次第、
薪
(
まき
)
にしているし、大小便をした
坑
(
あな
)
に土さえ
埋
(
い
)
けて行こうとした様子もない。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ああ」四条の仮橋の
欄
(
らん
)
を見ると、綿のようにつかれた体は、無意識にそれへ
縋
(
すが
)
った。夜来の雨で、加茂川は赤くにごっていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たちまち、
欄
(
らん
)
の方に分れていた武士の組、
僧形
(
そうぎょう
)
たちの組、ほかすべても、日野蔵人俊基をめぐって、その左右に、大きな輪となって居流れた。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いい月とは何の月?
欄
(
らん
)
に
凭
(
もた
)
れたお綱の
眸
(
ひとみ
)
は、
現
(
うつつ
)
のような色気に濡れて、弦之丞の腕の冴えならぬあの姿に、吸いつけられているではないか。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清麗な琴の音は、風に遊んで
欄
(
らん
)
をめぐり、夜空の月に吹かれては、また満地の兵の耳へ、露のごとくこぼれてきた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
朱実と並びあって橋の
欄
(
らん
)
へ
肱
(
ひじ
)
を
倚
(
よ
)
せていた武蔵は、朱実が懸命になって向ける
囁
(
ささや
)
きへ、いちいち微かに
頷
(
うなず
)
いてはいるけれど、彼女が女の
羞恥
(
はじ
)
もすてて
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、室内ではあり、足元の悪さに、またしても西門慶の一蹴が成功して、彼の剣は蹴落され、剣は
氷片
(
ひょうへん
)
のごとく、
欄
(
らん
)
を越えて、どこかへ素ッ飛んだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さようでございまする。——もういくらもございますまい」云い合わしたように、
性善坊
(
しょうぜんぼう
)
も、橋の中ほどまで来ると、
欄
(
らん
)
に身を
倚
(
よ
)
せかけて、
一憩
(
ひとやす
)
みした。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すぐ裏へ廻ってみると、果たして、亭のうちは狼藉だった。破られた妻戸が
欄
(
らん
)
に仆れかかり、上着やら帯やら、女のものが、室内から縁へかけて乱れていた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
左慈は、一
竿
(
かん
)
を持って、
欄
(
らん
)
の外へ、糸をたれた。
玄武池
(
げんぶち
)
の水は、満々とそよぎ立ち彼の袖がひるがえるたびに、たちまち、大きな
鱸
(
すずき
)
が何尾も釣りあげられた。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「殿。……おう、そこの
欄
(
らん
)
に肱をおかけなされていては、お危のうございます。欄も腐っておりましょうに」
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
陽あたりのよい壁に、
青梅
(
あおうめ
)
の
実
(
み
)
のついた老梅の影が描かれていた。そこの
欄
(
らん
)
に、片足をのせて、佐々木小次郎は、
先刻
(
さっき
)
から、森の集まりを見ていたのであった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
みな、
一偈
(
いちげ
)
を唱えた。もう焔は
欄
(
らん
)
をこえて、快川のすそを焦がしていた。
稚子
(
ちご
)
老幼の
阿鼻叫喚
(
あびきょうかん
)
はいうまでもない。いま
偈
(
げ
)
を叫んだ僧も
唸
(
うめ
)
いてのたうちまわっていた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とすれば、どこへいったのかしら——と
彼女
(
かのじょ
)
が
欄
(
らん
)
の
南側
(
みなみがわ
)
から
奥庭
(
おくにわ
)
の
廂
(
ひさし
)
をのぞいていると、とつぜん
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主殿
(
しゅでん
)
の中門廊のほとりに、廊の
欄
(
らん
)
へ寄せて、牛を
外
(
はず
)
した一
輛
(
りょう
)
の女車がすえられてあり、ややはなれた所には、供の人々であろうか、ひれ伏した人影が、すべて声もなく
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ひらりと
欄
(
らん
)
を越えた平四郎の影は二、三名の者を刎ねとばして、裏山の闇ふかく——いやもう
小禽
(
ことり
)
の声に明けかけた水色の
黎明
(
れいめい
)
の中へ、溶け入るように紛れてしまった。
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
将台の
欄
(
らん
)
まぢかに移されたので、梁中書は白銀の椅子を欄前にまで進め、折から北京七門の楼門上には、大きな日輪が夕雲に落ちかけてきたので、
縁飾
(
ふちかざ
)
り美しい
蓋傘
(
おいがさ
)
は
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
重喜
(
しげよし
)
の身の廻りの物を運ぶ
侍女
(
こしもと
)
たちや、
潮除
(
しおよ
)
けの
幔幕
(
まんまく
)
を張りめぐらす者や、
櫂
(
かい
)
をしらべる
水夫楫主
(
かこかんどり
)
、または
朱塗
(
しゅぬり
)
の
欄
(
らん
)
の所々に、槍お
船印
(
ふなじるし
)
の差物を立てならべる
侍
(
さむらい
)
などが
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その三太郎がおどろいてとび
降
(
お
)
りてきたところをみると、やはり、
鷲
(
わし
)
はこの
閣
(
かく
)
の
屋根
(
やね
)
に
翼
(
つばさ
)
を
止
(
と
)
めているのであろう——と
咲耶子
(
さくやこ
)
が
欄
(
らん
)
に手をやって、屋根をふりあおぐと
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、橋の
欄
(
らん
)
に縛られているお由利を、彼はまだ痛々しげに、眼から捨てきれない容子で訊いた。
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしらぬ顔して、彼は、
舷
(
ふなべり
)
の
欄
(
らん
)
へ
肱
(
ひじ
)
をかけ、
艫舵
(
ともかじ
)
の下にうず巻いている青ぐろい瀬を見ていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よく見ると、額堂の中には、少なくとも二十人以上と思われる人数が、あぐらをくみ、柱にもたれ、
欄
(
らん
)
に
倚
(
よ
)
り、思い思いなかっこうをして
怪異
(
かいい
)
な集合をしているのだった。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信長は楼上の
欄
(
らん
)
へ出て、その小さいすがたと半兵衛の影が城門を出てゆくまで見送っていた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、本願寺側でも、その以前に、あらゆる
什物
(
じゅうもつ
)
宝器
(
ほうき
)
を展列して、いちいち目録を添え、
塵
(
ちり
)
を払い、
欄
(
らん
)
を
浄
(
きよ
)
め、立つ鳥水を濁さず——のことばの通りきれいにして去っていた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俊基は、廊の
欄
(
らん
)
の
際
(
きわ
)
まで身を
辷
(
すべ
)
り出して行った。そしてその上半身を、欄に
屈
(
かが
)
ませると
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それと聞いて、
呂宋兵衛
(
るそんべえ
)
は、はじめてかれに疑いをいだき、櫓の
欄
(
らん
)
に駈けよって、
漆
(
うるし
)
のような海面を見わたしたが、もとより一
片
(
ぺん
)
の小舟が、ひろい
闇
(
やみ
)
から見いだされるはずもない。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わしが眼をもって見くらべたところでは、清十郎殿には九分九厘まで勝目がない。この正月の一日の朝、五条大橋の
欄
(
らん
)
に武蔵という男を見かけ、その途端にこれはいけないと思ったのだ。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
楼台は蜘蛛の巣に
煤
(
すす
)
け、
珠簾
(
しゅれん
)
は破れ、
欄
(
らん
)
は朽ち、帝の
御衣
(
ぎょい
)
さえ寒げではないか。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
欄
常用漢字
中学
部首:⽊
20画
“欄”を含む語句
欄干
勾欄
欄干越
鉄欄
欄間
欄間彫
欄外
橋欄
手欄
高欄
紫羅欄花
欄杆
朱欄干
朱欄
木欄
曲欄
欄干橋
文芸欄
欄干下
粉壁朱欄
...