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柄杓
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ひしやく
ふりがな文庫
“
柄杓
(
ひしやく
)” の例文
新公はその音に驚いたやうに、ひつそりしたあたりを見廻した。それから手さぐりに流し元へ下りると、
柄杓
(
ひしやく
)
になみなみと水を
酌
(
く
)
んだ。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「へエ、來ましたが、お茶を
淹
(
い
)
れて上げると、喉が乾いて面倒臭せえから水をくんろ——と言つてね、
柄杓
(
ひしやく
)
で一杯飮んで——」
銭形平次捕物控:057 死の矢文
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
柄杓
(
ひしやく
)
の水を茶碗に取りてわれにすゝめ、和尚の死骸を情容赦もなくクル/\と
菰
(
こも
)
に包み、荒縄に引つくゝりて土間へ卸しつ。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
病症
(
びやうしやう
)
は
脊髓腦膜炎
(
せきずゐなうまくえん
)
とかいふ
劇症
(
げきしやう
)
で、二三
日
(
にち
)
風邪
(
かぜ
)
の
氣味
(
きみ
)
で
寐
(
ね
)
てゐたが、
便所
(
べんじよ
)
へ
行
(
い
)
つた
歸
(
かへ
)
りに、
手
(
て
)
を
洗
(
あら
)
はうとして、
柄杓
(
ひしやく
)
を
持
(
も
)
つた
儘
(
まゝ
)
卒倒
(
そつたう
)
したなり
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
水
(
みづ
)
飮
(
の
)
ませて
見
(
み
)
ろ」
彼
(
かれ
)
は
慌
(
あわ
)
てるといふことを
知
(
し
)
らぬものゝ
如
(
ごと
)
く一
言
(
ごん
)
いつた。おつぎは
直
(
すぐ
)
に
柄杓
(
ひしやく
)
で
水
(
みづ
)
を
汲
(
く
)
んだ。
與吉
(
よきち
)
は
幾
(
いく
)
らでも
柄
(
え
)
に
縋
(
すが
)
つて
飮
(
の
)
んだ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
▼ もっと見る
『そら、そこに、湯の元があるだらう。そこで、
柄杓
(
ひしやく
)
で湯を
掬
(
すく
)
つて飲んだり何かしたんだよ。覚えてゐないかねえ?』
父親
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
大日様には方方のお寺にあるやうに柿色や花色の奉納の手拭のさがつた掘りぬき井戸があつて、草双紙に阿波の鳴戸のお鶴がもつてる
曲物
(
まげもの
)
の
柄杓
(
ひしやく
)
が浮いてゐた。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
何といふ可憐な魚の呼吸であらう。見よその
柄杓
(
ひしやく
)
一杯の水の底に八月の青空が映つてゐるではないか。
八月の星座
(新字旧仮名)
/
吉田絃二郎
(著)
いつの頃からのならはしか、土地の人達は
柄杓
(
ひしやく
)
ですくふ湯を頭に浴びながら歌ふ。うたの拍子は湯をうつ柄杓の音から起る。きぬたでも聽くやうで、野趣があつた。
山陰土産
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
臺所
(
だいどころ
)
の
豪傑儕
(
がうけつばら
)
、
座敷方
(
ざしきがた
)
の
僭上
(
せんじやう
)
、
榮耀榮華
(
えいえうえいぐわ
)
に
憤
(
いきどほり
)
を
發
(
はつ
)
し、しや
討
(
う
)
て、
緋縮緬小褄
(
ひぢりめんこづま
)
の
前
(
まへ
)
を
奪取
(
ばひと
)
れとて、
竈將軍
(
かまどしやうぐん
)
が
押取
(
おつと
)
つた
柄杓
(
ひしやく
)
の
采配
(
さいはい
)
、
火吹竹
(
ひふきだけ
)
の
貝
(
かひ
)
を
吹
(
ふ
)
いて、
鍋釜
(
なべかま
)
の
鎧武者
(
よろひむしや
)
が
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
メァリーは、顏を上げて、私を見つめた。彼女が火に
焙
(
あぶ
)
つてゐる二羽の
雛
(
ひな
)
に
肉汁
(
にくじふ
)
を垂らしてゐた
柄杓
(
ひしやく
)
は、凡そ三分間位の間何もないところにつき出されたまゝだつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
付て海へ
沈
(
しづ
)
め其身は用意の
伊勢參宮
(
いせまゐり
)
の
姿
(
すがた
)
に改め彼二
品
(
しな
)
を
莚包
(
むしろづゝみ
)
として
背負
(
せお
)
ひ
柄杓
(
ひしやく
)
を持て其場を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
言語學といふ
乾枯
(
ひから
)
びたやうな學問の教ふるところは別として、たとへば日本語の
柄杓
(
ひしやく
)
といふ言葉を聞くと、それが如何にもあの液體を掬ふ長い柄の附いた器物のやうに思はれるし
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
標識に
蔽膝
(
まへかけ
)
と
柄杓
(
ひしやく
)
とを選んだ所以である。今の語を以て言へば、此黨は一種の生産組合である。又類例を以て云へば、天香西田氏詰の唱道する所が、種々の點に於てこれに近似してゐる。
古い手帳から
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
重い
柄杓
(
ひしやく
)
に水を溢れさせて、口移しに飲まうとすると、サラリと髪が落つる。髪を
被
(
かづ
)
いた顔が水に映つた。
先刻
(
さつき
)
から
断間
(
しきり
)
なしに
熱
(
ほて
)
つてるのに、
周辺
(
あたり
)
の青葉の故か、顔が
例
(
いつも
)
よりも青く見える。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
柄杓
(
ひしやく
)
で汲まなきや
蛍の灯台
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
「その上、夕方かごめ/\か何んかやつて遊んでゐて、不意に見えなくなつた。
菅笠
(
すげがさ
)
も
柄杓
(
ひしやく
)
も仕度をする間がありませんよ」
銭形平次捕物控:140 五つの命
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「そうれお
前等
(
めえら
)
注
(
つ
)
えで
遣
(
や
)
んのにそんな
小鉢
(
こばち
)
なんぞ
桶
(
をけ
)
の
上
(
うへ
)
さ
突出
(
つんだ
)
させちや
畢
(
を
)
へねえな、それだらだら
垂
(
た
)
ツらあ、
柄杓
(
ひしやく
)
そつちへおん
出
(
だ
)
して
行
(
や
)
るもんだ」
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼女は
柄杓
(
ひしやく
)
を捨てるが早いか、乞食の存在も忘れたやうに、板の間の上に立ち上つた。さうして晴れ晴れと微笑しながら、棚の上の猫を呼ぶやうにした。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さて逃ぐる者は逃ぐるに任せつつ、死骸狼藉たる無人の刑場を見まはし、片隅に取り残されたる手桶
柄杓
(
ひしやく
)
を取り上げ、初花の
磔刑柱
(
はりつけばしら
)
の下に進み寄りて心静かに跪き礼拝しつ。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
如何
(
いか
)
なることがあらうも
知
(
し
)
れずと、
目
(
め
)
を
瞑
(
ねむ
)
つて、
行燈
(
あんどう
)
をうしろに
差置
(
さしお
)
き、わなゝき/\
柄杓
(
ひしやく
)
を
取
(
と
)
つて、
埋
(
う
)
もれた
雪
(
ゆき
)
を
拂
(
はら
)
ひながら、カチリとあたる
水
(
みづ
)
を
灌
(
そゝ
)
いで、
投
(
な
)
げるやうに
放
(
はな
)
したトタン
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
父
(
とう
)
さんのお
家
(
うち
)
には
井戸
(
ゐど
)
が
掘
(
ほ
)
つてありました。その
井戸
(
ゐど
)
は
柄杓
(
ひしやく
)
で
水
(
みづ
)
の
汲
(
く
)
めるやうな
淺
(
あさ
)
い
井戸
(
ゐど
)
ではありません。
釣
(
つ
)
いても、
釣
(
つ
)
いても、なか/\
釣瓶
(
つるべ
)
の
上
(
あが
)
つて
來
(
こ
)
ないやうな、
深
(
ふか
)
い/\
井戸
(
ゐど
)
でした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
柄杓
(
ひしやく
)
にざぶざぶ
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
男なら盥を
跨
(
また
)
いでやるところだ。不思議でたまらないから
柄杓
(
ひしやく
)
か茶碗を貸してくれといふと、チヨコチヨコと刻み足に駈け出して、
草履
(
ざうり
)
を内輪に脱いだ
銭形平次捕物控:104 活き仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
簡單
(
かんたん
)
乍
(
なが
)
ら一
日
(
にち
)
の
式
(
しき
)
が
畢
(
をは
)
つた
時
(
とき
)
四
斗樽
(
とだる
)
の
甘酒
(
あまざけ
)
が
柄杓
(
ひしやく
)
で
汲出
(
くみだ
)
して
周圍
(
しうゐ
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る
人々
(
ひと/″\
)
に
與
(
あた
)
へられた。
主
(
しゆ
)
として
子供等
(
こどもら
)
が
先
(
さき
)
を
爭
(
あらそ
)
うて
其
(
その
)
大
(
おほ
)
きな
茶碗
(
ちやわん
)
を
換
(
か
)
へた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
誰
(
たれ
)
一人
(
ひとり
)
、
横
(
よこ
)
に
成
(
な
)
るなんど
場席
(
ばせき
)
はない。
花枕
(
はなまくら
)
、
草枕
(
くさまくら
)
、
旅枕
(
たびまくら
)
、
皮枕
(
かはまくら
)
、
縱
(
たて
)
に
横
(
よこ
)
に、
硝子窓
(
がらすまど
)
に
押着
(
おしつ
)
けた
形
(
かた
)
たるや、
浮嚢
(
うきぶくろ
)
を
取外
(
とりはづ
)
した
柄杓
(
ひしやく
)
を
持
(
も
)
たぬものの
如
(
ごと
)
く、
折
(
をり
)
から
外
(
そと
)
のどしや
降
(
ぶり
)
に、
宛然
(
さながら
)
人間
(
にんげん
)
の
海月
(
くらげ
)
に
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
る。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
釣瓶
(
つるべ
)
で
柄杓
(
ひしやく
)
で
未刊童謡
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
「下女のお源は
漏
(
も
)
りのある
柄杓
(
ひしやく
)
のやうな女で、腹にあることは一
刻
(
とき
)
とも持ち堪へられない性分ですよ」
銭形平次捕物控:197 罠に落ちた女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
柄杓
(
ひしやく
)
に
蛍の灯台
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
番太の老爺は縁臺の上で一とくさりやると本當に手桶を持出して、
柄杓
(
ひしやく
)
で水を撒き始めるのです。
銭形平次捕物控:226 名画紛失
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
柄杓
(
ひしやく
)
が庭に抛り出してあつたんだから、手を洗ふ前でも、手を洗つた後でも無いことは確かだ
銭形平次捕物控:252 敵持ち
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
入口の方から番傘が
覗
(
のぞ
)
いて、お勝手の方から
柄杓
(
ひしやく
)
と
俎板
(
まないた
)
が覗いてゐる世帶、淺ましくも凄まじい
家居
(
いへゐ
)
ですが、八五郎にのしかゝるやうに
啖呵
(
たんか
)
を浴びせてゐる女は見事でした。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「椽側の外の
手水鉢
(
てうづばち
)
の前へ
踞
(
しやが
)
んで、
柄杓
(
ひしやく
)
を取つたところを、下から突き上げられたのだ」
銭形平次捕物控:289 美しき人質
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「手水鉢は自然石のまことに立派なものですが、
柄杓
(
ひしやく
)
が見えなかつたやうですが——」
銭形平次捕物控:252 敵持ち
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
柄杓
(
ひしやく
)
の底へ仕掛をして、外から毒を持ち込んだやうに見せたり、恐ろしい手の込んだ細工をして、私の眼を
誤魔化
(
ごまか
)
さうとしましたが、曲者の片割れは、矢張り此家の中に居るに相違ありません
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
お勝手へ飛込むと、手桶からいきなり
柄杓
(
ひしやく
)
で水を一杯——
銭形平次捕物控:109 二人浜路
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「この
柄杓
(
ひしやく
)
は新しいやうだが、何時から使つてますか」
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「一杯呑み度いが、
柄杓
(
ひしやく
)
か茶碗を借り度いな」
銭形平次捕物控:104 活き仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
柄杓
(
ひしやく
)
は?」
銭形平次捕物控:217 歎きの幽沢
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“柄杓”の解説
柄杓(ひしゃく)は水や汁物を掬うための道具。柄がついた器状をしている。
(出典:Wikipedia)
柄
常用漢字
中学
部首:⽊
9画
杓
漢検準1級
部首:⽊
7画
“柄杓”で始まる語句
柄杓子