)” の例文
その炭車トロッコの左右十六個の車輪の一つ一つには、軌条から湧き出す無数の火花が、赤い蛇のようにじれ、波打ちつつ巻付いていた。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
経緯いきさつ悉皆すっかり打ち明けて、もっと真面目になれと忠告した後、長倉家の方も君の態度次第で話のりを戻すことが出来ると伝えた。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこで彼は狭窄衣の丈夫な袖を縄にり、鉄棒のさきやりになっているところへ引っかけて、全身の重みでそれにぶら下がった。
それからは原稿料が手にると、直ぐ多少余分の送金もして、ほかの物をっても、観世撚かんぜよりだけはって呉れるなと言ってった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
つまりこの場合は、つるってある橐荑木ビクスクラエの繊維紐三本のうちで、そのうちの一本に、抱水クロラールを塗沫しておくのです。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
再びりを戻そうなぞという料簡はなかったんですが、この幽霊藻を抱いているうちに、又むらむらと気が変って、すぐに町まで行きました。
水鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お前がその意地なら腕にりをかけてやってみろ、幸い、あの遊行上人は、天竺てんじくから来たという黄金きん曼陀羅まんだら香盒こうごうというものを持っている
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つないでりをあたえて一すじの糸にして行くことで、かいこのはく糸の細いものを五つ七つと合わせて行くのとは、仕事がまるで反対になっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
まことに景気のいい手紙を寄越しますものですから、私どももこの秋こそは一つ腕にりをかけて角の万戸屋まんどやさんに負けんように儲けにゃならんと
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
重い物体をひっかける化物ばけもののようにでっかいかぎが、太い鋼線ロープってあり、また橋梁の一隅いちぐうには、鉄板てっぱんで囲った小屋がっていて、その中には
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼が何時いつもの通り服装を改めて座敷へ出た時、赤と白とり合せた細い糸でくくられた例の書類は兄の膝の上にあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
百合ゆりちゃん、あの男とりを戻そうなんて弱気になっちゃだめよ。いっそ方針を変えて、一年や二年遊んで暮らせるだけしぼり取っておやりなさいよ」
宝石の序曲 (新字新仮名) / 松本泰(著)
私とナオミとが間もなくりを戻すようになることを、———それが不思議でも何でもない、当然の成り行きであることを、予想されたでありましょう。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
窓のへりへ、顔を伏せて、露八はぐったりとひじをもたせていた。どぶり、どぶり、と耳の下で夕波がれる。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例えば『諸国咄』では義経やその従者の悪口棚卸しに人のへそり、『一代女』には自堕落女のさまざまの暴露があり、『一代男』には美女のあら捜しがある。
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
糸編みの品で、煙管入きせるいれ燧石袋ひうちいしぶくろや、これに煙草入たばこいれ火口ほくち粉炭入こなずみいれなど一式揃っているものでありますが、面白いことにこれには必ず強くった糸のふさを長く垂らします。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
これを結びたる天糸は、本磨き細手の八本りにて、玲瓏たる玉質、水晶の縄かとも見るを得べく、結び目の切り端の、処々しょしょに放射状を為すは、野蚕やさん背毛はいもうの一むらの如し。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
その關係が出來た後、義雄の未練から再び愛のりがかかる時、女は義雄に申しわけがなかつたと云ふ意味で、アヒサンを服して死にかけた。それは義雄の出發間ぎはのことだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
糸は麻をった、しっかりしたもので、腕と拳とで輪がねたわなは、直径七八寸。これに首を突っ込んで絞めるためには、火箸でも挾んで、相当締めつけなければならなかったでしょう。
そうすると透き通るようにきれいになる。それを十六本、右りなら右撚りに、最初は出来ないけれども少し慣れると訳なく出来ますことで、片撚かたよりに撚る。そうして一つ拵える。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
青い綾織あやおりのズボンはいたんですり切れ、片ひざは白くなり、片膝には穴があいている。ぼろぼろな灰色の上衣には、り糸で縫われた青ラシャの補綴はぎが一方のひじの所にあたっている。
というのはそのうちにこの私が、腕にりをかけて秘密を探って一切合財をあばき立てて、一網打尽に引っ捕えて、獄門台へかけるという意味なので。ナーニわけはありませんよ。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やがてその先端がきたかと思うと、妙なことに、そこにはまた別の、今度はずっと細いひもの先がしっかりりつけてある。引っ張る。ところがこれがまたおなじようになかなか長い。
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
道糸は秋田の渋糸の十五りか二十撚りを竿の長さだけつけるのである。鈎素はりすは磨きテグスの一厘か一厘半で、鈎は袖型の七、八分がよかろう。おもりは調節を自由にするため、板鉛を使う。
雪代山女魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
姉のエルネスチイヌは腕にりをかける。ルピック氏は、両手を背中に組んで、物好きな他人みたいに、仕事の運びを見物している。ルピック夫人は、なさけない声で嘆息たんそくの叫びを発する——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
青銭あをぜには穴あきぜによ、字のおもて寛永通宝、裏に波文久永宝、よく数へよく刺しくと、手もすまにそろへて締むと、幼な児や息づかし我、青太藺あをふとゐひし小縄の、りつよきその緒くくりて
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
六本かためてったようなものらしいと、藤吉は、局所の皮膚のねじれ工合いなどから判断したのだが、それならいっそう、そんな糸で首を絞めつけたぐらいで、あの武右衛門が即死しようとは
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形 (新字新仮名) / 林不忘(著)
うまく紙撚こよりをよれる人が少いので、広瀬先生や正木先生が、手伝ってくださる。僕たちの中では、砂岡君がうまくる。僕は「へえ、器用だね」と、感心して見ていた。もちろん僕には撚れない。
水の三日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今日けふおもこゝろもらさんか明日あすむねうちうちけんかと、眞實まめなるひとほどこひるし、かるおもひの幾筋いくすぢはされしなるものから、糸子いとここゝろはるやなぎ、そむかずびかずなよ/\として
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いろいろな形に面白くつてある白い鳥の羽毛をつけた、黒い大きな羅紗の帽子の下から、こぼしてゐる彼女は、手に金色の呼笛のついた小さな鞭を持つて、軽くわしを叩きながら、かう叫んだ。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
笴は細き竹或はよしを以て作り、弓は木或はふとき竹を以て作りしならん。げんの原料は植物の皮或は獸類じゆうるゐの皮を細くりしものなりし事勿論もつろんなれど、余は此絃にはりをけ有りしならんと考ふ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
そうすると、幾分弦が弛むだろうから、その反動でり目が釘からはずれ、したがってが壁から開いて、当然そこに角度が作られなければならない。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と大声もろともすかさず投げ付けた丈夫なり麻の投縄——それが見事蠅男の左腕の中程をキリリと締め上げた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ああいう行き方が不憫で堪らなかった、といってなまじい同情を寄せてりを戻してはよろしくないに相違ない、我輩は頑として近寄ることをしなかったが
生前身後の事 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いつでも自分の欲する時にりを戻すことが出来たのに、今やそのことが不可能になったので、そのための口惜しさがおもな原因であつたのだと、云えなくもあるまい。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
若し此事が六号活字子ごうかつじしの耳に入って、雪江せっこうの親達は観世撚かんぜよりってるそうだ、一寸ちょっとちんだね、なぞと素破抜すっぱぬかれては余り名誉でないと、名誉心も手伝って、急に始末気しまつぎを出し
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
手拭をってこしらえたへびを地上において、それが今に本当の蛇になると云って、その周囲に円を描いて歩きながら、笛を吹いて往来の暇人を釣っていた妙な男の事を思い出した。
雑記(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
幕間まくあいに、わたしは父に連れられて劇場の外へ出た。今日の劇場の草履ぞうりの鼻緒は大抵青いようであるが、その頃の草履の鼻緒は白と紅との太いにしてあったように記憶している。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
れ撚れになった皮膚が白い骨と爪だけに纏わりついて現れてまいりました。
蒲団 (新字新仮名) / 橘外男(著)
わしの髪をつたりいたりしてゐるのである。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
ブーンブーンとって糸を作っているのです。
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
と新太郎君は大分りが戻っていた。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
帯揚ゲハ絽ノ生地ニ白ト薄イピンクノぼかシ。帯締メハ金ト銀トヲ縄ノヨウニッタモノ。指環ハ琅玕ノ翡翠。白ノビーズノハンドバッグノ小サイノヲ左手ニ抱エテイル。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
実は、その繊維のったものを、二本甘瓢かんぴょう形〓に組んで、犯人は弦の中に隠しておいたのだよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それを長くして、二本合わせると、手早くりあわせた。そしてポケットからナイフを取出すと、その刃を出し、手で握る方についているに、毛糸の端をしっかりと結えた。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その頃の名流をりすぐった各種の演芸のすいを抜いて番組をこしらえました。また主人や出入りの者もおのおの腕にりをかけて、その隠し芸を発揮しようということでありました。
両親が内職に観世撚かんぜよりるという手紙をた時には、又一寸ちょっと妙な心持がした。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
この曖昧さ加減を最も明らかに吾人に示すのは綿糸のり糸である。一条の撚り糸を与えられてその長さを精密に測ろうと企てた人は、ここに述べた困難を切実に味わう事が出来ようと思う。
方則について (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
眼前の猿芝居——まるで腹の皮がれるほど、滑稽な恐怖をわらってやりたかったに相違ない。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あの針は、太い銅線あかせんを結びつけ、その撚り銅線を長く下に垂らし、地面の下に埋め、なおその先に、一尺四方以上の大きな金属板をつけて置かなくちゃあ、避雷装置になりません。
(新字新仮名) / 海野十三(著)