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撚
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よ
ふりがな文庫
“
撚
(
よ
)” の例文
その
炭車
(
トロッコ
)
の左右十六個の車輪の一つ一つには、軌条から湧き出す無数の火花が、赤い蛇のように
撚
(
よ
)
じれ、波打ちつつ巻付いていた。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
経緯
(
いきさつ
)
を
悉皆
(
すっかり
)
打ち明けて、もっと真面目になれと忠告した後、長倉家の方も君の態度次第で話の
撚
(
よ
)
りを戻すことが出来ると伝えた。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そこで彼は狭窄衣の丈夫な袖を縄に
撚
(
よ
)
り、鉄棒の
尖
(
さき
)
の
槍
(
やり
)
になっているところへ引っかけて、全身の重みでそれにぶら下がった。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
夫
(
それ
)
からは原稿料が手に
入
(
い
)
ると、直ぐ多少余分の送金もして、
他
(
ほか
)
の物を
撚
(
よ
)
っても、
観世撚
(
かんぜより
)
だけは
撚
(
よ
)
って呉れるなと言って
遣
(
や
)
った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
つまりこの場合は、
弦
(
つる
)
を
撚
(
よ
)
ってある
橐荑木
(
ビクスクラエ
)
の繊維紐三本のうちで、そのうちの一本に、抱水クロラールを塗沫しておくのです。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
再び
撚
(
よ
)
りを戻そうなぞという料簡はなかったんですが、この幽霊藻を抱いているうちに、又むらむらと気が変って、すぐに町まで行きました。
水鬼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お前がその意地なら腕に
撚
(
よ
)
りをかけてやってみろ、幸い、あの遊行上人は、
天竺
(
てんじく
)
から来たという
黄金
(
きん
)
の
曼陀羅
(
まんだら
)
の
香盒
(
こうごう
)
というものを持っている
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
つないで
撚
(
よ
)
りをあたえて一すじの糸にして行くことで、
蚕
(
かいこ
)
のはく糸の細いものを五つ七つと合わせて行くのとは、仕事がまるで反対になっている。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
まことに景気のいい手紙を寄越しますものですから、私どももこの秋こそは一つ腕に
撚
(
よ
)
りをかけて角の
万戸屋
(
まんどや
)
さんに負けんように儲けにゃならんと
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
重い物体をひっかける
化物
(
ばけもの
)
のようにでっかい
鈎
(
かぎ
)
が、太い
撚
(
よ
)
り
鋼線
(
ロープ
)
で
吊
(
つ
)
ってあり、また橋梁の
一隅
(
いちぐう
)
には、
鉄板
(
てっぱん
)
で囲った小屋が
載
(
の
)
っていて、その中には
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼が
何時
(
いつ
)
もの通り服装を改めて座敷へ出た時、赤と白と
撚
(
よ
)
り合せた細い糸で
括
(
くく
)
られた例の書類は兄の膝の上にあった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
百合
(
ゆり
)
ちゃん、あの男と
撚
(
よ
)
りを戻そうなんて弱気になっちゃだめよ。いっそ方針を変えて、一年や二年遊んで暮らせるだけ
搾
(
しぼ
)
り取っておやりなさいよ」
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
私とナオミとが間もなく
撚
(
よ
)
りを戻すようになることを、———それが不思議でも何でもない、当然の成り行きであることを、予想されたでありましょう。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
窓のへりへ、顔を伏せて、露八はぐったりと
肱
(
ひじ
)
をもたせていた。どぶり、どぶり、と耳の下で夕波が
撚
(
よ
)
れる。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
例えば『諸国咄』では義経やその従者の悪口棚卸しに人の
臍
(
へそ
)
を
撚
(
よ
)
り、『一代女』には自堕落女のさまざまの暴露があり、『一代男』には美女のあら捜しがある。
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
糸編みの品で、
煙管入
(
きせるいれ
)
や
燧石袋
(
ひうちいしぶくろ
)
や、これに
煙草入
(
たばこいれ
)
や
火口
(
ほくち
)
の
粉炭入
(
こなずみいれ
)
など一式揃っているものでありますが、面白いことにこれには必ず強く
撚
(
よ
)
った糸の
総
(
ふさ
)
を長く垂らします。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
これを結びたる天糸は、本磨き細手の八本
撚
(
よ
)
りにて、玲瓏たる玉質、水晶の縄かとも見るを得べく、結び目の切り端の、
処々
(
しょしょ
)
に放射状を為すは、
野蚕
(
やさん
)
の
背毛
(
はいもう
)
の一
叢
(
むら
)
の如し。
大利根の大物釣
(新字新仮名)
/
石井研堂
(著)
その關係が出來た後、義雄の未練から再び愛の
撚
(
よ
)
りがかかる時、女は義雄に申しわけがなかつたと云ふ意味で、アヒサンを服して死にかけた。それは義雄の出發間ぎはのことだ。
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
糸は麻を
撚
(
よ
)
った、
確
(
しっか
)
りしたもので、腕と拳とで輪がねた
罠
(
わな
)
は、直径七八寸。これに首を突っ込んで絞めるためには、火箸でも挾んで、相当締めつけなければならなかったでしょう。
銭形平次捕物控:244 凧の糸目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうすると透き通るようにきれいになる。それを十六本、右
撚
(
よ
)
りなら右撚りに、最初は出来ないけれども少し慣れると訳なく出来ますことで、
片撚
(
かたよ
)
りに撚る。そうして一つ拵える。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
青い
綾織
(
あやお
)
りのズボンは
傷
(
いた
)
んですり切れ、片
膝
(
ひざ
)
は白くなり、片膝には穴があいている。ぼろぼろな灰色の上衣には、
撚
(
よ
)
り糸で縫われた青ラシャの
補綴
(
はぎ
)
が一方の
肱
(
ひじ
)
の所にあたっている。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
というのはそのうちにこの私が、腕に
撚
(
よ
)
りをかけて秘密を探って一切合財をあばき立てて、一網打尽に引っ捕えて、獄門台へかけるという意味なので。ナーニわけはありませんよ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
やがてその先端がきたかと思うと、妙なことに、そこにはまた別の、今度はずっと細い
紐
(
ひも
)
の先がしっかり
撚
(
よ
)
りつけてある。引っ張る。ところがこれがまたおなじようになかなか長い。
灯台鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
道糸は秋田の渋糸の十五
撚
(
よ
)
りか二十撚りを竿の長さだけつけるのである。
鈎素
(
はりす
)
は磨きテグスの一厘か一厘半で、鈎は袖型の七、八分がよかろう。
錘
(
おもり
)
は調節を自由にするため、板鉛を使う。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
姉のエルネスチイヌは腕に
撚
(
よ
)
りをかける。ルピック氏は、両手を背中に組んで、物好きな他人みたいに、仕事の運びを見物している。ルピック夫人は、
情
(
なさけ
)
ない声で
嘆息
(
たんそく
)
の叫びを発する——
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
青銭
(
あをぜに
)
は穴あき
銭
(
ぜに
)
よ、字のおもて寛永通宝、裏に波文久永宝、よく数へよく刺し
貫
(
ぬ
)
くと、手もすまにそろへて締むと、幼な児や息づかし我、
青太藺
(
あをふとゐ
)
綯
(
な
)
ひし小縄の、
撚
(
よ
)
りつよきその緒くくりて
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
六本かためて
撚
(
よ
)
ったようなものらしいと、藤吉は、局所の皮膚の
捻
(
ねじ
)
れ工合いなどから判断したのだが、それならいっそう、そんな糸で首を絞めつけたぐらいで、あの武右衛門が即死しようとは
釘抜藤吉捕物覚書:11 影人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
うまく
紙撚
(
こより
)
をよれる人が少いので、広瀬先生や正木先生が、手伝ってくださる。僕たちの中では、砂岡君がうまく
撚
(
よ
)
る。僕は「へえ、器用だね」と、感心して見ていた。もちろん僕には撚れない。
水の三日
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今日
(
けふ
)
は
思
(
おも
)
ふ
心
(
こゝろ
)
もらさんか
明日
(
あす
)
は
胸
(
むね
)
の
中
(
うち
)
うち
明
(
あ
)
けんかと、
眞實
(
まめ
)
なる
人
(
ひと
)
ほど
戀
(
こひ
)
は
苦
(
く
)
るし、
斯
(
か
)
かるおもひの
幾筋
(
いくすぢ
)
を
撚
(
よ
)
り
合
(
あ
)
はされし
身
(
み
)
なるものから、
糸子
(
いとこ
)
が
心
(
こゝろ
)
は
春
(
はる
)
の
柳
(
やなぎ
)
、そむかず
靡
(
な
)
びかずなよ/\として
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
いろいろな形に面白く
撚
(
よ
)
つてある白い鳥の羽毛をつけた、黒い大きな羅紗の帽子の下から、こぼしてゐる彼女は、手に金色の呼笛のついた小さな鞭を持つて、軽くわしを叩きながら、かう叫んだ。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
笴は細き竹或は
葭
(
よし
)
を以て作り、弓は木或は
太
(
ふと
)
き竹を以て作りしならん。
絃
(
げん
)
の原料は植物の皮或は
獸類
(
じゆうるゐ
)
の皮を細く
截
(
き
)
りしものなりし事
勿論
(
もつろん
)
なれど、余は此絃には
好
(
よ
)
く
撚
(
よ
)
りを
掛
(
か
)
け有りしならんと考ふ。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
そうすると、幾分弦が弛むだろうから、その反動で
撚
(
よ
)
り目が釘からはずれ、したがって
弩
(
ど
)
が壁から開いて、当然そこに角度が作られなければならない。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と大声もろともすかさず投げ付けた丈夫な
撚
(
よ
)
り麻の投縄——それが見事蠅男の左腕の中程をキリリと締め上げた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ああいう行き方が不憫で堪らなかった、といってなまじい同情を寄せて
撚
(
よ
)
りを戻してはよろしくないに相違ない、我輩は頑として近寄ることをしなかったが
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いつでも自分の欲する時に
撚
(
よ
)
りを戻すことが出来たのに、今やそのことが不可能になったので、そのための口惜しさが
重
(
おも
)
な原因であつたのだと、云えなくもあるまい。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
若し此事が
夫
(
か
)
の
六号活字子
(
ごうかつじし
)
の耳に入って、
雪江
(
せっこう
)
の親達は
観世撚
(
かんぜより
)
を
撚
(
よ
)
ってるそうだ、
一寸
(
ちょっと
)
珍
(
ちん
)
だね、なぞと
素破抜
(
すっぱぬ
)
かれては余り名誉でないと、名誉心も手伝って、急に
始末気
(
しまつぎ
)
を出し
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
手拭を
撚
(
よ
)
ってこしらえた
蛇
(
へび
)
を地上において、それが今に本当の蛇になると云って、その周囲に円を描いて歩きながら、笛を吹いて往来の暇人を釣っていた妙な男の事を思い出した。
雑記(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
幕間
(
まくあい
)
に、わたしは父に連れられて劇場の外へ出た。今日の劇場の
草履
(
ぞうり
)
の鼻緒は大抵青いようであるが、その頃の草履の鼻緒は白と紅との太い
撚
(
よ
)
り
緒
(
お
)
にしてあったように記憶している。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
撚
(
よ
)
れ撚れになった皮膚が白い骨と爪だけに纏わりついて現れてまいりました。
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
わしの髪を
撚
(
よ
)
つたり
捲
(
ま
)
いたりしてゐるのである。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
ブーンブーンと
撚
(
よ
)
って糸を作っているのです。
オシャベリ姫
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
かぐつちみどり
(著)
と新太郎君は大分
撚
(
よ
)
りが戻っていた。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
帯揚ゲハ絽ノ生地ニ白ト薄イピンクノ
暈
(
ぼか
)
シ。帯締メハ金ト銀トヲ縄ノヨウニ
撚
(
よ
)
ッタモノ。指環ハ琅玕ノ翡翠。白ノビーズノハンドバッグノ小サイノヲ左手ニ抱エテイル。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
実は、その繊維の
撚
(
よ
)
ったものを、二本
甘瓢
(
かんぴょう
)
形〓に組んで、犯人は弦の中に隠しておいたのだよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それを長くして、二本合わせると、手早く
撚
(
よ
)
りあわせた。そしてポケットからナイフを取出すと、その刃を出し、手で握る方についている
環
(
わ
)
に、毛糸の端をしっかりと結えた。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その頃の名流を
択
(
え
)
りすぐった各種の演芸の
粋
(
すい
)
を抜いて番組をこしらえました。また主人や出入りの者もおのおの腕に
撚
(
よ
)
りをかけて、その隠し芸を発揮しようということでありました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
両親が内職に
観世撚
(
かんぜより
)
を
撚
(
よ
)
るという手紙を
覧
(
み
)
た時には、又
一寸
(
ちょっと
)
妙な心持がした。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
この曖昧さ加減を最も明らかに吾人に示すのは綿糸の
撚
(
よ
)
り糸である。一条の撚り糸を与えられてその長さを精密に測ろうと企てた人は、ここに述べた困難を切実に味わう事が出来ようと思う。
方則について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
眼前の猿芝居——まるで腹の皮が
撚
(
よ
)
れるほど、滑稽な恐怖を
嗤
(
わら
)
ってやりたかったに相違ない。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
あの針は、太い
撚
(
よ
)
り
銅線
(
あかせん
)
を結びつけ、その撚り銅線を長く下に垂らし、地面の下に埋め、なおその先に、一尺四方以上の大きな金属板をつけて置かなくちゃあ、避雷装置になりません。
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
撚
漢検準1級
部首:⼿
15画
“撚”を含む語句
紙撚
観世撚
小撚
撚糸
觀世撚
勧進撚
撚合
撚揚
撚目
撚紐
漫撚
片撚
紙撚網
逆撚