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抓
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つね
ふりがな文庫
“
抓
(
つね
)” の例文
或る晩などは
逃後
(
にげおく
)
れた輝方氏が女中に
掴
(
つか
)
まつて、恋女房の蕉園女史にしか触らせた事のない口の
端
(
はた
)
を思ひ切り
抓
(
つね
)
られたものださうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「あ。そしてね、もし島崎がいい気もちになって、こっちの約束を忘れているようだったら、人のいない所で、お尻を
抓
(
つね
)
っておやりよ」
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分で己れの身を
抓
(
つね
)
ってこの
位
(
くらい
)
力を入れればなるほどこの位痛いものだと独りでいじめて独りで涙ぐんでいるようなものである。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
固くちゃんとしているので、
指尖
(
ゆびさき
)
にかからない、絹布に
皺
(
しわ
)
を拵えようと、
抓
(
つね
)
るでもなく、
撫
(
な
)
でるでもなく、
爪
(
つま
)
さぐって
莞爾
(
にっこり
)
して
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
肥つたおかみが顫えてゐる小娘を手でかう
抓
(
つね
)
るやうな氣もするし、また、痛々しく小衝くやうにも思はれ、さうかと思ふと
蒼白き巣窟
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
内地にいる時と、外地にいる時と、自分ながら、まるでもう人が違っているような気がして、われとわが
股
(
もも
)
を
抓
(
つね
)
ってみたくなるような思いだ。
雀
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
自分は、
淋巴質
(
りんぱしつ
)
の、ひょろひょろの、顔に粉をふいたピエロ——むだとは知りながら、痛くなるほど、血の
気
(
け
)
のない自分の皮膚を
抓
(
つね
)
りあげた。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
ミチはきつい眼になり、その白い頬を
痙攣
(
けいれん
)
させ、構えもせずに
牝豹
(
めひょう
)
を思わせる
敏捷
(
びんしょう
)
さで男に飛びつくと、その口に近い皮膚を力をこめて
抓
(
つね
)
った。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
彼女は赤ん坊が小便をしたといっては
胯
(
また
)
を
抓
(
つね
)
った。乳の
呑
(
の
)
み方が悪いといっては平手で頭を
撲
(
ぶ
)
った。それからすべての器物にも手荒く当たった。
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「どうしてお前は、来てくれない、憎い、悔やしいと、おれを打つなり
抓
(
つね
)
るなりしないのだ」などとお言い続けになった。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
と豊子さんは僕の手の甲を
抓
(
つね
)
ってくれたのだった。僕はこれを好意の一徴候と解した。達三君はその後もう来なくなった。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「おやおや、
打
(
ぶ
)
ちやがったな、女だてらに男を打ちやがったぜ、女の子に
抓
(
つね
)
られるのは悪くはねえが、こう色気なしに打たれちゃあ勘弁がならねえ」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
骨髄に徹する憎悪を右腕一つにこめて繰出したエビルの突きは二倍の力で撥ね返され、敵の横腹を
抓
(
つね
)
ろうとする彼女の手首は造作なく
捩
(
ね
)
じ上げられた。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「そうでございますかねえ、じゃ、ま、
抓
(
つね
)
っても見たり……」と冗談にして、自分を救ったが、誰も笑わなかった。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
『そんなら
福鼠
(
ふくねずみ
)
だ!』と
彼等
(
かれら
)
二人
(
ふたり
)
は
叫
(
さけ
)
んで、『
起
(
お
)
きろ、
福鼠
(
ふくねずみ
)
!』と
云
(
い
)
ひさま、
同時
(
どうじ
)
に
兩方
(
りやうはう
)
からそれを
抓
(
つね
)
りました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
變な聲を出してかういふと、旦那はツイと立ち上つたが、立ち際に毒々しいほど幅の廣い金指輪の光る節くれ立つた手を伸ばして、お光の
孱弱
(
かぼそ
)
い膝を
抓
(
つね
)
つた。
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
よく見ると
縦半分
(
たてはんぶん
)
に切断した二人の身体を半分ずつ
接
(
つ
)
ぎ合わせてあった。右がレッドで、左がヤーロ。ちっとも足並が揃わず、二本の手は激しく
抓
(
つね
)
り合っている。
一九五〇年の殺人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
しかし其月の折檻は普通の
継子
(
ままこ
)
いじめなどのように、打ったり蹴ったり
抓
(
つね
)
ったりするのではありません。
半七捕物帳:36 冬の金魚
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「イタイ! イタイ! なにをなさります! そんなところを
抓
(
つね
)
ってなぞして痛いではありませぬか!」
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「おお、嬉しい——あっ、痛い——同じ、
抓
(
つね
)
るなら、裏梅の形に、抓って下さんせいな、あれっ——」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
重ね重ねの奇妙不思議に当り前の者ならば、
屹度
(
きっと
)
気絶でもするか、それとも夢を見ているのだと思って
身体
(
からだ
)
でも
抓
(
つね
)
って見るところだが、
併
(
しか
)
し白髪小僧は平気であった。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
自分で自分の腕を
抓
(
つね
)
った
後
(
あと
)
「お重、今兄さんはここを抓ったが、お前の腕もそこが痛かったろう」と尋ねたり、または
室
(
へや
)
の中で茶碗の茶を自分一人で飲んでおきながら
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
露出
(
むきだ
)
しの男の膝を
抓
(
つね
)
ったり、莨の火をおっつけたりなどした。男はびっくりして
跳
(
は
)
ねあがった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と云ふと、福子はムツクリ起き上つて亭主の側にすわり直すと、いやと云ふ程
臀
(
しり
)
の肉を
抓
(
つね
)
つた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
孝「
痛
(
いと
)
うございます、どんなに突かれても
抓
(
つね
)
られても、覚えのない事は云いようがありません」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何物か私の
面
(
かお
)
の上に
覆
(
かぶ
)
さったようで、暖かな息が微かに頬に触れ、「憎らしいよ!」と笑を含んだ小声が耳元でするより早く、夜着の上に投出していた二の腕を
痛
(
したた
)
か
抓
(
つね
)
られた時
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
汪克児
(
オングル
)
(
成吉思汗
(
ジンギスカン
)
の前に進んで、妙な手つきをして月を仰ぐ)曇り、後晴れ。ああ、好い月じゃなあ。(自分へ)これ、外道、口が軽いぞ。(おのが口を
抓
(
つね
)
って、
蜻蛉返
(
とんぼがえ
)
りを打つ)
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
「古本屋のお神さんは、あんな
綺麗
(
きれい
)
な人だけれど、
裸体
(
はだか
)
になると、身体中傷だらけだ、叩かれたり
抓
(
つね
)
られたりした
痕
(
あと
)
に違いないわ。別に夫婦仲が悪くもない様だのに、おかしいわねえ」
D坂の殺人事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
坊やの狐はその手をひろげたり握ったり、
抓
(
つね
)
って見たり、
嗅
(
か
)
いで見たりしました。
手袋を買いに
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
彼の側にいる女は「りんせん」とか「なまし」とかいう、妙な助動詞のついた言葉で、彼に
凭
(
もた
)
れかかったり手を握ったり、それとなく
膝
(
ひざ
)
を
抓
(
つね
)
ったりしながら、頻りになにか話しかけた。
七日七夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
間夫
(
まぶ
)
」、「結び文」、「床へさし込む
朧
(
おぼ
)
ろ月」、「
櫺子
(
れんじ
)
」、「胸づくし」、「
鶏
(
とり
)
の
啼
(
な
)
くまで」、「
手管
(
てくだ
)
」、「
口舌
(
くぜつ
)
」、「
宵
(
よい
)
の客」、「傾城の誠」、「
抓
(
つね
)
る」、「廊下をすべる
上草履
(
うわぞうり
)
」
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
それでは、圧迫に対してはどうかというと、これも指でつまむくらいでは、いくら強くしても痛がらない。さきほどの客のように
抓
(
つね
)
って見たところで、ごく
稀
(
まれ
)
にしか悲鳴を発しないのである。
愛撫
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「夢じゃありませんよ、
抓
(
つね
)
りゃ痛いし、食った物は腹にたまっている」
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
むやみとその胸のあたりを
抓
(
つね
)
るのか引っ掻くのか妙な
折檻
(
せっかん
)
をする。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
清二の家の門口まで来かかると、路傍で遊んでいた
姪
(
めい
)
がまず声をかけ、つづいて一年生の甥がすばやく飛びついてくる。甥はぐいぐい彼の手を引張り、固い小さな
爪
(
つめ
)
で、正三の手首を
抓
(
つね
)
るのであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そして彼は前と同じような巧みな様子で三度目に私を
抓
(
つね
)
った。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
「おや
痛
(
いた
)
い、
抓
(
つね
)
らなくッてもいいじゃないか」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
自分で自分を
抓
(
つね
)
つてやりたくなる。
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
そっと自分の腿を
抓
(
つね
)
って
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
突いたり、
抓
(
つね
)
ったり、女のまねをして抱きついたり、さんざんふざけているうちに誰からともなく
鼾
(
いびき
)
をかいてぐっすりと寝こんでしまう。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
○
縁日
(
えんにち
)
の夜、
摺違
(
すれちが
)
ひに若き女のお尻を
抓
(
つね
)
つたりなんぞしてからかふ者あり。これからかふにして何もその女を姦せんと欲するがために非ず。
猥褻独問答
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「
拳固
(
げんこ
)
……
抓
(
つね
)
り
餅
(
もち
)
、……
赤
(
あか
)
いお
團子
(
だんご
)
。……それが
可厭
(
いや
)
なら
蝦蛄
(
しやこ
)
の
天麩羅
(
てんぷら
)
。」と、
一
(
ひと
)
ツづゝ
句切
(
くぎ
)
つて
憎體
(
にくた
)
らしく
節
(
ふし
)
をつける。
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「だってあたいがいなかったら、おじさまはびくびくして講演出来ないじゃないの。あたい、うしろに隠れていて、おしりを
抓
(
つね
)
っておあげするわ。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と安子さんは千吉君を
抓
(
つね
)
った。この細君は真剣に怒ると良人を抓る癖がある。尤も結婚当初は爪を隠していたが、二年目から遠慮がなくなったのである。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
夕刊を眺めた下役共は夢ではなからうかと自分の鼻先を
抓
(
つね
)
つてみたりした。その折省内の廊下でばつたり出会つた若い「通信局」と「管船局」とがあつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
『
其
(
そ
)
の
福鼠
(
ふくねずみ
)
を
彩色
(
いろど
)
れ』と
女王樣
(
ぢよわうさま
)
が
金切聲
(
かなきりごゑ
)
で
叫
(
さけ
)
ばれました。『
其
(
そ
)
の
福鼠
(
ふくねずみ
)
を
斬
(
き
)
れ!
其
(
そ
)
の
福鼠
(
ふくねずみ
)
を
法廷
(
はふてい
)
から
逐
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
せ!それ、
抑
(
おさ
)
えよ!そら
抓
(
つね
)
ろ!
其
(
そ
)
の
髯
(
ひげ
)
を
引
(
ひ
)
ッ
張
(
ぱ
)
れ』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
弟はたうとう兄の薄皮の手首を、女のやうにじーつと
抓
(
つね
)
つた。兄は真赤に顔を
歪
(
ゆが
)
めてそれを堪へてゐた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
人の太腿を
抓
(
つね
)
ったりすることは、あたりまえの挨拶と心得ているに過ぎない、下町の
棟割
(
むねわり
)
の社会などには、こんなことはざらにある、すなわち、親爺や兄貴などから
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と云うと、福子はムックリ起き上って亭主の側にすわり直すと、いやと云う程
臀
(
しり
)
の肉を
抓
(
つね
)
った。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二人の黒い女が
喚
(
わめ
)
き、叫び、突き、
抓
(
つね
)
り、泣き、倒れる。衣類が——昔は余り衣類をまとう習慣が無かったが、それだけに其の僅かの被覆物は最低限の絶対必要物であった。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
抓
漢検1級
部首:⼿
7画
“抓”を含む語句
引抓
一抓
掻抓
鼻抓
一抓一攫
一攫一抓
抓取
抓投
押抓
鷲抓