そも)” の例文
——「是は又異なお頼み……なれども夫れだけの仔細ござらば、お頼みに応ぜぬものでもござらぬ。……そも、相手は何者でござるな?」
赤格子九郎右衛門 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
知らず其の語るところのもの何ぞや。珙は柳荘居士りゅうそうこじと号す。時に年けだし七十に近し。そもまた何の欲するところあって燕王に勧めて反せしめしや。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そも〻、将門少年の日より、名籍を太政大殿に奉ずる今に十数年、相国摂政の世に、思はざりき、かゝる匪事ひじあげられんとは。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何しろここで心中をするのだから、それだけじゃあ済みますまい。お芝居の紋切り型で『そも初会しょかいの其の日より』
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
逍遙子がシエクスピイヤの戲曲を評せし言葉の天下の耳目を驚かしゝはそも何故ぞや。答へていはく。シエクスピイヤの曲を沒理想なりといひければなり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
附添さへあるまらうどの身にして、いやしきものにあつかはるる手代風情ふぜいと、しかもその邸内やしきうちこみちに相見て、万一不慮の事などあらば、我等夫婦はそも幾許いかばかり恥辱を受くるならん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しゃさけ出来栄できばえに、たちまち一部の册子そうしとなりぬ。そもこの話説はなしの初集二集は土竈どがまのパットせし事もなく。起炭おこりずみにぎやかなる場とてもあらねど後編は。駱駝炭らくだずみ立消たちぎえなく。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
元来今云ったような宇宙論的な観念はそも々認識なるものの内容となり得るものではない、そういう意味に於てこうした宇宙論的諸観念はイデーに他ならない、という。
辞典 (新字新仮名) / 戸坂潤(著)
やくに今日けふは如何せしや出來いでこぬは不思議なりとてさゝやきけるこゝ名主なぬし甚左衞門のせがれがフト心付お三ばゞの方へいたり戸を押明おしあけて見ればそも如何いかにお三ばゝは圍爐裡ゐろりの中へかしら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
アアこの怪人物は、三谷と倭文子に対して、そもそも如何なる因縁いんねんを持っていたのであろうか。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
およそ傲逸彼の如きは、乱世にありて一仏徒として終ること能はざるところなり、然るに彼をして遂に剣鎗につゑつかずして、経典にらしめたるもの、そもいかなる鬼物の神力ならむ。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
そも々、外的関係に於て仏陀とより近き関係に立ちながら、単に仏陀の教の形骸をのみ捕へて、その内部的な、実質的な生命を洞察し理解し得ないものが所謂小乗の徒であるならば
つるぎつゑに。松陰まつかげの。いはほさゝへて。吐息といきつく。時哉をりしも見ゆる。若武者わかむしやは。そもいくさの。使つかひかや。ればころもの。美麗うるはしさ。新郎はなむことかも。あやまたる。其鬚髯そのほうひげの。新剃にひそりは。秋田あきたを刈れる。刈稻かりしねの。そろへるさまに。
「西周哲学著作集」序 (旧字旧仮名) / 井上哲次郎(著)
燕府えんぷこぞって殺気陰森いんしんたるに際し、天もまた応ぜるか、時そも至れるか、颷風ひょうふう暴雨卒然としておおいに起りぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大きい花魁と云うのは其の家のおしょくとか二枚目とかいう立派ななか町張ちょうばりの花魁が、若いおいらんを突出つきだしますので、そも突出しの初めからという文句が有りますから
『異なことを申される。あの曲者と、そも、何の縁故があって、そのようなかばい立てを召さるか』
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
申立るやつかな汝ごときの者何事もわきまへざるとおぼえたりそも棄子すてごを致したりと有ては容易ようい成ざる罪人なり然るを何ぞや汝が罪をも思はず右樣申立るは畢竟ひつきやう久八へ千太郎より恩義おんぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこへ又、の怪しい男があけみたる身をよこたえたのである。昔から魔所と伝えられた虎ヶ窟の前に、かかる浅ましい姿の者が四個よつまでもならんだのを見た人々は、そも如何いかに感じたであろう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ある時はわが大学に在りしことを聞知ききしりてか、学士がくし博士はかせなどいう人々三文さんもんあたいなしということしたりがおべんじぬ。さすがにことわりなきにもあらねど、これにてわれをきづつけんとおもうはそもまよいならずや。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
このとき程済は辛くもかたみを砕き得て、篋中きょうちゅうの物を取出とりいだす。でたる物はそも何ぞ。釈門しゃくもんの人ならでたれかは要すべき、大内などには有るべくも無き度牒どちょうというもの三ちょうありたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
押伏おしふせ忽ち高手小手にくゝし上れば富右衞門はたましひ天外にとび茫然ばうぜんとしてあきれしが是はそも何科なにとが有て此繩目なはめ私し身に取ていさゝかも御召捕めしとりになるべきおぼえ無しと云せも果ず役人は富右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「近頃、上流にあたる北方の天が、夜な夜な真赤に見えるが、あれはそも、何のせいか」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここ怜悧りこう観世物師みせものしがあったら、ただちに前代未聞と吹聴すべき山𤢖やまわろなるものの正体はそもんなであったか。勿論もちろん、彼等にもめすおすはあろうが、今ここに屍体となって現われたのは、たしかに女性であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此等は抑〻そも/\何に胚胎はいたいしてゐるのであらうか、又そも何を語つてゐるのだらうか。たゞ其の驍勇げうゆう慓悍へうかんをしのぶためのみならば、然程さほどにはなるまいでは無いか。考へどころは十二分にある。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「ああ、こはそもいかなる戦術か。呉には魏にもない器量の大将がおるとみえる」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老牛が死力を尽して猶しもとを受くるのを見ては、ああ、疲れたる牛、厳しき笞、荷は重くみちは遠くして、日はさかりに土は焦がる、飲まんとすれど滴水しずくも得ぬ其苦しさやそも如何ばかりぞや
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さだめしひしめき合っているであろうと予想してきてみると——こはそもいかに、楊柳は風もなく垂れ、水は淙々とかなで、陽ざしもいとうららかな長橋の上に、ただ一騎の人影が、ぽつねんと
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
円位と呼ばれしはそも何人にておはすや、と尋ぬれば、嬉しくも詣で来つるものよ、我を誰とは尋ねずもあれ、末葉吹く嵐の風のはげしさに園生の竹の露こぼれける露の身ぞ、よくひつるよ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
意気すこぶるさかんに、程普ていふをつれて、乱軍の中を縦横し、いでこの上は南郡の城に、呉の征旗を高々と掲げんものと、壕の辺まで進んでくると、こはそもいかに、城壁の上には、見馴れない旗や幟が
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(これはそもほんものなりや、にせものなりや)
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こはそもいかに? ——と眼をみはった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こはそも、いかなるわけか?」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そも、どんな人物か」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)