恐怖きょうふ)” の例文
が、資本だの搾取さくしゅだのと云う言葉にある尊敬——と云うよりもある恐怖きょうふを感じていた。彼はその恐怖を利用し、度たび僕を論難した。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一同がなわをひくと! 見よ! たくたくたる丈余じょうよの灰色の巨鳥きょちょう! 足はかたくしばられ、恐怖きょうふ疲労ひろうのために気息きそくえんえんとしている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もうわたしもおとぎ話にあるわかいはつかねずみのように、見るもの聞くものが驚嘆きょうたん恐怖きょうふたねになるというようなことはなかった。
新婚まもなく若い稚気ちきのぬけなかった夫人は、恐らく恐怖きょうふにふるえながらも、人生の最も楽しく忘れ得ない夢を経験したのだ。
外国の事情じじょうに通ぜざる日本人はこれを見て、本国政府の意向いこう云々うんぬんならんとみだり推測すいそくして恐怖きょうふいだきたるものありしかども
たださえ兇暴きょうぼう野武士のぶしが焼けだされてきた日には、どんな残虐ざんぎゃくをほしいままにするかも知れないと、家をざして村中恐怖きょうふにおののいている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何も知らない若者の恋人はそれをみると恐怖きょうふさけびを発しようとしたが、若者は手をつよくにぎりしめてそれを制した。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
なんとなれば、無智むちには幾分いくぶんか、意識いしき意旨いしとがある。が、作用さようにはなにもない。たいして恐怖きょうふいだ臆病者おくびょうものは、のことをもっ自分じぶんなぐさめることが出来できる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そこにえているむらさきはなしろはなとは、おもわず、恐怖きょうふにふるえながら、かお見合みあってささやいたのでした。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は思わず恐怖きょうふの声を立ててさけんだ、すると何と? この時は目に見えて、上からぼたりぼたりと真黒なせた筋の入った雨が体へ降かかって来たではないか。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
男は、言いおわってぽんとトーマスのかたをたたいた。トーマスは、きゃっと恐怖きょうふのさけびごえをあげ
かれは、その発信人が道江であることを知った瞬間しゅんかん、おどろくというよりは、むしろ恐怖きょうふに似た感じで胸をふるわした。かれには、すぐには封を切る勇気が出なかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「ウウウウエイ。三十五歳。アツレキ三十一年七月一日夜、表、アフリカ、コンゴオの林中の空地に於て故なくしてほしいままに出現、舞踏ぶとう中の土地人を恐怖きょうふ散乱せしめたる件。」
水というものから恐怖きょうふを取り去り、親しみを持たせるため家伝を倍加して小初を躾けた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
次第に聴衆が増し、彼等の表情が、自分の物語の一弛一張いっしいっちょうにつれて、あるいは安堵あんどの・あるいは恐怖きょうふの・いつわりならぬ色をうかべるのを見るにつけ、この面白さはおさえきれぬものとなった。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
カニザワ東京区長は、そう語りながら、ハンカチーフを出して、顔のあせをぬぐった。おそらく氏は、その戦争勃発ぼっぱつ一歩前の息づまるような恐怖きょうふを、今またおもいだしたからであろう。
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
車はあるいは急角度に横にまがりななめにおち、ガッタンガッタンと、登ったかとおもえば、また陥ちる、頭のかみが、風にふかれてい上がるのも、恐怖きょうふに追われ逆立つおもいでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
小野 (文麻呂の異様な態度に不気味な恐怖きょうふを感じ始める)俺には聞えない……
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
『そしたら、もう万事休すだ』……けれど、不思議な感情が——好奇心こうきしんよりも強く、嫉妬しっとなどよりまだ強く、恐怖きょうふよりも強い感情が、わたしを引止めた。わたしは、じっと目をこらし始めた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
わたしは現在げんざいあらゆる危険きけんから庇護ひごされていることはわかっているのに、恐怖きょうふがいよいよつのって、もうふるえが出るまでになっている。
凶悪きょうあく海蛇うみへびがギロギロ目を光らして、洞前に立ちふさがってでもいるような恐怖きょうふが、一同の胸をしめつけた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
新蔵は毎度の事ながら、この時もやはり頭痛さえ忘れるほど、何とも云えない恐怖きょうふを感じて、思わず救いを求めるごとく、ほかの乗客たちの顔を見廻しました。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
で、かれももう思慮かんがえることの無益むえきなのをさとり、すっかり失望しつぼうと、恐怖きょうふとのふちしずんでしまったのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たといこれを拒絶きょぜつするも真実しんじつ国と国との開戦かいせんいたらざるは請合うけあいなりとてしきりに拒絶論きょぜつろんとなえたれども、幕府の当局者は彼の権幕けんまく恐怖きょうふしてただち償金しょうきんはらわたしたり。
つぎはズボン、そのつぎはふく恐怖きょうふに顔をひきつらして、かの女が部屋へやをうろうろとげまどうと、どこからともなく、からからとあざわらうつめたい声がきこえてきた。
廂うらの垂木たるきをガリガリとはしってきた小猿こざるが、咲耶子のかたにとびついて手をやるとまた足もとへとび、おそろしくなにかに恐怖きょうふしたらしく、彼女のまわりをグルグルまわりだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真理しんり奉仕ほうしする、野口英世のぐちひでよのようなひとれば、これまで発見はっけん困難こんなんとされた病菌びょうきんとたたかって、人間にんげん恐怖きょうふから、解放かいほうするであろうし、そういう科学者かがくしゃ幾人いくにんれば、どれほど
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
相手が冗談を言っているのでもなく、気が狂っているのでもなく、また自分が聞き違えをしているのでもないことを確かめると、彼はほとんど恐怖きょうふに近い狼狽ろうばいを示して、どもりながら叫んだ。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
いかりに燃えあがったのか、それとも恐怖きょうふにたえ切れなくなったためか。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また今更のように恐怖きょうふの感情を眼の色にほとばしらした。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
(女の子とつぜん恐怖きょうふにとらわれて立ちあがる)
病む子の祭 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
待て、どろぼう……そしてほかの人たちも仲間なかまになって追っかけていた。けれどもわたしたちはどんどんかけた。恐怖きょうふがわたしたちの速力そくりょくを進めた。
雨がようやく小降こぶりになった。東の空にあかつきの色が動きそめた。恐怖きょうふの夜が、明けようとしている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
浄観じょうかんは大きい目をしたまま、黙然もくねんとただ伝吉を見上げた。その顔に現れた感情は何とも云われない恐怖きょうふだった。伝吉は刀を構えながら、冷やかにこの恐怖を享楽した。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さてまたかんがえればかんがうるほどまよって、心中しんちゅうはいよいよ苦悶くもんと、恐怖きょうふとにあっしられる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
びこんでくるなり、トーマスは恐怖きょうふにおののきながら、大声でさけんだ。
手下どもも、見えぬ敵の恐怖きょうふにおそわれた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、博士はひとりで恐怖きょうふしていた。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
恐怖きょうふおぼえたのです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はじめは恐怖きょうふがわたしをかれから遠ざけたけれど、このごろはなんとは知れないが、ぼんやりと、いわば尊敬そんけい感情かんじょうがかれとわたしをへだてていた。
いつもかれはこのところでいくどか躊躇ちゅうちょした、かれは生蕃をおそれたのであった、がかれはいま、それを考えたとき恐怖きょうふの念が夢のごとく消えてしまった。でかれは堂々とらっぱをふいた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
恐怖きょうふ陰謀者いんぼうしゃ
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
恐怖きょうふ驚愕きょうがく
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでわたしは恐怖きょうふなしにねむった。かれがけっして手をはなさないことをわたしはよく知っていた。
もっとも昼の光をはなれて地のそこへはいって行くということには、ずいぶんの恐怖きょうふと心配がないではなかった。ぐんぐん坑道こうどうを下りて行ったとき、わたしは思わずふりあおいだ。