幾歳いくつ)” の例文
「君達は幾歳いくつになっても子供だから困るよ。こんなくだらない狂言を書かずに前もって知らせてくれゝば案内のしようもあったのに」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それはもう幾歳いくつになつたから親に別れて可いと理窟りくつはありませんけれど、いささか慰むるに足ると、まあ、思召おぼしめさなければなりません
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
誰は幾歳いくつ、誰は何歳と判じ合つてゐたところが、百貨店の支配人が、高木氏の年齡をいくつ位ゐかと問はれたのに對して、言下に
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
「うそよ、梨枝ちやん……そんな変なことぢやないのよ。どら、もう一度、見せて頂戴……。それ、ママの幾歳いくつの時かしら……?」
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「また、詰らないことを言出したよ。幾歳いくつだねえ、お前さんは。そんなこと云っていて、人の心配も何も出来るものじゃない。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
階段の昇降あがりおりに、岸本はそこいらに遊び戯れている仏蘭西の子供等のそばへよく行った。皆が幾歳いくつになるかということをよく尋ねた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何も不思議は無いサ、その頃はウラ若いんだからね、岡本君はお幾歳いくつかしらんが、僕が同志社を出たのは二十二でした。十三年も昔なんです。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
森君は三十幾歳いくつの今年まで独身で、老婢ばあやひとりと書生一人の気楽な生活である。雑誌などへ時どき寄稿するぐらいで、別に定まった職業はない。
慈悲心鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あなたはお幾歳いくつでしたかしら。お年齢としのことも考えていただきたい——そう言われたようにひびいて、年上のお蓮様は、ゲンナリしてしまいました。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「たとえ幾歳いくつに見えようと年はやはり年でござる」「よろしいそれでは注意して柔かくあしらってやりましょう」「さようさ、それならよろしかろう」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そなた幾歳いくつとや十九か二十か、我れに比らべてよほどの弟とおぼゆるに、我れはまあ幾歳いくつほどに見ゆるぞや、されば一の※君か、何として何として
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本当にこんな親孝行者に苦労をさせてい気になってちゃア済まないよ、お前幾歳いくつにおなりだ、四十の坂を越して、何うしたんだねまア、此のに不孝だよ
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼女は兩親がくなつてから何年になるかといた。それから、幾歳いくつになるか、名は何んと云ふのか、讀んだり、書いたり、お裁縫はりが少しは出來るかといた。
「おい万作! お前は幾歳いくつになつた。」と問ひますと「十二です!」と元気よく答へますが、其時「来年は何歳いくつになる?」と問ひますと、もう黙つてしまひます。
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
伊勢佐木町いせざきちょうの手前でタキシイを乗りて、繁華な通りをぶらついたが、幾歳いくつになっても気持の若い雪枝は、子供のようによろこんで支那服姿で身軽に飛び歩いていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「当り前さ、今から死んでたまるものかね。そう言えば、お前さん今年幾歳いくつになったんだっけね?」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
娘は自分より幾歳いくつの姉で、自分は娘の前では小児であるということ,また娘はただ一時の逗留客とうりゅうきゃくで日ならずこの土地を去る人ということ,自分は娘を愛しているのか
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
「今曉一時、天王寺の自宅でやつたんだ。先刻知らせがあつたものだから一寸行つて來たが、悲慘だよ。細君と、子供が三人、六十幾歳いくつだかになるお母さんが居る。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
まだ唐人髷とうじんまげに結っていた十幾歳いくつかの、乏しいお小遣いで、親に内密で買った湖月抄の第二巻門石の巻の一綴りに、何やかや、竹柏園先生のお講義も書き入れてあるのを
「種を見せない以上は何とも云えないが、まあ勘弁してやろう。時に糸公御前今年幾歳いくつになるね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
毎春まいはる年の改まったについて、年ごとに起こる感じが再びで、おれはもう幾歳いくつになったなアと、年を数え二十年前、三十年前に比べて、どれほど進んだか思いくらべると
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
というのが死んだ親父の口癖で御座いましたが、全くその通りの懸価かけねなしで、五十幾歳いくつのこの年になって、ようようの事、世間が見えて来ましたがチット遅う御座いましたナア。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
昔、の島に一人の極めて哀れな男がいた。年齢としを数えるという不自然な習慣が此の辺には無いので、幾歳いくつということはハッキリ言えないが、余り若くないことだけは確かであった。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「それは、御愁傷様でございます、お年は幾歳いくつでございました」と、主翁が云った。
立山の亡者宿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
MRミスタ・シュータン! もう一度あなたの年を教えて欲しい! 幾歳いくつと言った?」
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「何だ大きな声して——幾歳いくつになると思ふ」と云ひさまね起きたる剛造のいきおひ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
喰居くひゐるに越前守殿どうだ三吉其方の年は幾歳いくつになると聞れけるに三吉は早少し馴染なじみつきさまにてハイ私は當年十歳になりますと答へければオヽ十歳になるかよくこたへが分る至極しごく温和おとなしい奴ぢやいま尋ねる事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「君は一体幾歳いくつになるんだい。井上が大変それを気にしてたぜ。」
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ルピック夫人——お前さんは、もう幾歳いくつだっけ、オノリイヌ?
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「男なら幾歳いくつぐらいで、侍か町人か、または百姓か職人か」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あれは幾歳いくつのときのことだったろう」
母子像 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「あなたは幾歳いくつだと御思ひだえ?」
秘密 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
『面白いのね。お幾歳いくつの時です?』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「困ったね。その子、幾歳いくつなの」
小さきもの (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
幾歳いくつになつたかおぼえてゐるか?
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「宮ちゃん、年は幾歳いくつ?」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「お玉は幾歳いくつだえ」
彼はその若々しい文句を漢詩の形で遺した人がまだ世にある頃には、愛子なぞが幾歳いくつぐらいの幼い娘であったろうと想って見た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
遊山ゆさんや酒のむためのこの旅かよ。権叔父も、ほどにしたがよい。幾歳いくつになっても、又八と同じように、年がいもない人じゃ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしは今のおことばで、決して心配はしますまい。現に朝夕飲んでおらるる、——この年紀としまで——(と打ちまもり)お幾歳いくつじゃな。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しの「はい、われは本当に辛抱人に成ったかえ、何んとマア魂消たな年は取ろうもんで、汝はもう幾歳いくつに成る」
「ああたずねたよ姉さんの事を。『あなたの姉さんお幾歳いくつ?』てね。いやに気取った云い方でね」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その時の彼は幾歳いくつだったかく覚えていないけれども、何でも長い間の修業をして立派な人間になって世間に出なければならないという慾が、もう充分きざしている頃であった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
故郷こきやう風景ふうけいもととほりである、しか自分じぶん最早もはや以前いぜん少年せうねんではない、自分じぶんはたゞ幾歳いくつかのとししたばかりでなく、かう不幸ふかうか、人生じんせい問題もんだいになやまされ、生死せいし問題もんだい深入ふかいりし
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「大きくなったな。お庄さんは幾歳いくつになるえね。」と、お庄の丸い顔をのぞき込んだ。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
後家ごけを立て通すが女性をんな義務つとめだと言はしやる、当分は其気で居たものの、まア、長二や、勿体もつたいないが、おやうらんで泣いたものよ——お前は今年幾歳いくつだ、三十を一つも出たばかりでないか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「ヘエ。幾歳いくつになりますか存じませんが。ヘエ。去年の夏の末頃までこの裏山に住んでおりまして、父親の跛爺の門八は、村役場の走り使いや、避病院ひびょういんの番人など致しておりましたが……」
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あゝはえますれどれで中々なか/\苦勞人くらうにんといふに、れはまあ幾歳いくつのとし其戀そのこひ出來できてかと奧樣おくさまおつしやれば、てゝ御覽ごらんあそばせ先方むかう村長そんちやういもと此方こちら水計みづばかりめしあがるお百姓ひやくしやうくもにかけはし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は玩具おもちゃすきです、幾歳いくつになっても稚気ちきを脱しないせいかも知れませんが、今でも玩具屋の前を真直まっすぐには通り切れません、ともかくも立停って一目ひとめずらりと見渡さなければ気が済まない位です。
我楽多玩具 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)