トップ
>
已
>
やむ
ふりがな文庫
“
已
(
やむ
)” の例文
けれども御弓の
菩提所
(
ぼだいじ
)
を僕が知ろうはずがなかった。僕は
呻吟
(
しんぎん
)
しながら、
已
(
やむ
)
を得なければ姉に聞くよりほかに仕方あるまいと答えた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
御境遇をお察し申せば
已
(
やむ
)
を得ないと存じます。私は始終お次の間に
息
(
やす
)
んで居ましたが、夜は殆んどお息みになったことはなかったと存じます。
蛇性の執念
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
兵粮方
(
ひょうろうかた
)
の親族に死なれ、それから
已
(
やむ
)
を得ず再び玄関を
開
(
ひら
)
くと、
祝融
(
しゅくゆう
)
の神に憎まれて
全焼
(
まるやけ
)
と相成ったじゃ、それからというものは
為
(
す
)
る事なす事
鶍
(
いすか
)
の
嘴
(
はし
)
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
いはんや我国の如き極めて史学の幼稚なるに当ては材料の捜索に数層の困難を覚ゆるにおいてをや。限りあるの人生、限あるの能力また
已
(
やむ
)
を得ざるなり。
史論の流行
(新字旧仮名)
/
津田左右吉
(著)
この人生観を
布衍
(
ふえん
)
していつか小説にかきたい。相手が馬鹿な真似をして切り込んでくると、賢人も
已
(
やむ
)
を得ず馬鹿になって喧嘩をする。そこで社会が堕落する。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
▼ もっと見る
勢ひ
已
(
やむ
)
を得ざるより身分に応じ
夫々
(
それぞれ
)
に物を出して施すもあり、力及ばぬ
輩
(
やから
)
は余儀なく党に加はるをもて、
忽
(
たちま
)
ち其の党多人数に至り、
軈
(
やが
)
て何町貧窮人と紙に書いたる
幟
(
のぼり
)
をおし立て
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
歩いて還ることの出来ない
貨物
(
しろもの
)
なので、
已
(
やむ
)
を得ず、氷のやうな泥の中に、乗り込んで、還ツたことあるですが、既に釣を以て楽しまうとする上は、此の位の辛抱は、何とも思はんです。
元日の釣
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
善
(
ぜん
)
と
知
(
し
)
りつゝも
夫
(
それ
)
を
行
(
おこな
)
ふことが
出來
(
でき
)
ない、
美
(
び
)
を
欲
(
ほつ
)
しても
夫
(
それ
)
を
現
(
あら
)
はすことが
出來
(
でき
)
ない、
已
(
やむ
)
を
得
(
え
)
ず
缺點
(
けつてん
)
だらけの
家
(
いへ
)
を
造
(
つく
)
つて、その
中
(
なか
)
に
不愉快
(
ふゆくわい
)
を
忍
(
しの
)
んで
生活
(
せいくわつ
)
して
居
(
ゐ
)
るのが
大多數
(
だいたすう
)
であらうと
思
(
おも
)
ふ。
建築の本義
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
だが
已
(
やむ
)
を得ざる次第じゃないか? マア積ッてもみるがいい、旦那もそうだが、おれにしてもこんなケチな所にゃいられない、けだしモウじきに冬だが、田舎の冬というやつは忍ぶべからずだ
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
だから若し果して信用しているのなら、
已
(
やむ
)
を得ないのサ
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
余は其時自分の小説を毎日一回ずつ書いていたので、「土」を読み返す暇がなかった。
已
(
やむ
)
を得ず自分の仕事が済む迄待ってくれと答えた。
『土』に就て:長塚節著『土』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
時間がないので
已
(
やむ
)
を得ず今日学校をやすんで『帝文』の方をかきあげました。これは六十四枚ばかり。実はもっとかかんといけないが時が出ないからあとを省略しました。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
已
(
やむ
)
を得ない場合だったとは云え、ああいう恐しい人に係り合った以上、帰朝してもしなくっても、私の身に迫っている危険から逃がれるということは出来そうもありません。
機密の魅惑
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
これは
已
(
やむ
)
を得ずして通俗の表現法に従ったまでである。
歴史の矛盾性
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
所
(
ところ
)
が
杉原
(
すぎはら
)
の
方
(
はう
)
では、
妙
(
めう
)
な
引掛
(
ひつかゝ
)
りから、
宗助
(
そうすけ
)
の
此所
(
こゝ
)
に
燻
(
くす
)
ぶつてゐる
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
き
出
(
だ
)
して、
強
(
し
)
いて
面會
(
めんくわい
)
を
希望
(
きばう
)
するので、
宗助
(
そうすけ
)
も
已
(
やむ
)
を
得
(
え
)
ず
我
(
が
)
を
折
(
を
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は
遂々
(
とうとう
)
思い切って、ある晩、一雄に云いました。妻としての資格がないから、何事も打ち開けて下さらないのでしょう。それなら
已
(
やむ
)
を得ませんから離縁して頂きますわ、と云って、迫りました。
恐怖の幻兵団員
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
学問をする人が
煩瑣
(
うるさ
)
い
俗
(
ぞく
)
用を避けて、成るべく単純な生活に我慢するのは、みんな研究の為め
已
(
やむ
)
を得ないんだから仕方がない。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
あいつどこへも
文
(
ふみ
)
をやる所がないものだから、
已
(
やむ
)
を得ず姉と
己
(
おれ
)
に対してだけ、時間を
費
(
つい
)
やして
音信
(
たより
)
を
怠
(
おこた
)
らないんだと、腹の中で云うでしょう。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
咄嗟
(
とつさ
)
に辨ずる手際がない爲めに、
已
(
やむ
)
を
得
(
え
)
ず省略の
捷徑
(
せふけい
)
を棄てゝ、几帳面な塗抹主義を根氣に實行したとすれば、
拙
(
せつ
)
の一字は何うしても免れ難い。
子規の画
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
今度
(
こんど
)
辞職した以上は、容易に
口
(
くち
)
が
見付
(
みつ
)
かりさうもない事、
已
(
やむ
)
を得ず、それ迄妻を国
元
(
もと
)
へ
預
(
あづ
)
けた事——
中々
(
なか/\
)
尽きさうもない。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
室中
(
しつちゆう
)
に
入
(
い
)
る
以上
(
いじやう
)
は、
何
(
なに
)
か
見解
(
けんげ
)
を
呈
(
てい
)
しない
譯
(
わけ
)
に
行
(
い
)
かないので、
已
(
やむ
)
を
得
(
え
)
ず
納
(
をさ
)
まらない
所
(
ところ
)
を、わざと
納
(
をさ
)
まつた
樣
(
やう
)
に
取繕
(
とりつくろ
)
つた、
其場
(
そのば
)
限
(
かぎ
)
りの
挨拶
(
あいさつ
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
二人
(
ふたり
)
の
後
(
あと
)
から
続々
(
ぞく/\
)
聴講生が
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る。三四郎は
已
(
やむ
)
を得ず無言の儘
階子
(
はしご
)
段を
降
(
お
)
りて横手の玄関から、図書館
傍
(
わき
)
の
空地
(
あきち
)
へ
出
(
で
)
て、始めて与次郎を
顧
(
かへり
)
みた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
已
(
やむ
)
を得ずそのままにして置いたのが、いつか習慣になって、今では、この男に限って、平気に先生として通している。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
又平岡のうちへ行って逢う事は代助に取って一種の苦痛があった。代助は
已
(
やむ
)
を得ず、自分にも三千代にも関係のない所で逢うより外に道はないと思った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
斯う云つた平岡は、急に調子を
落
(
おと
)
して、
極
(
きわ
)
めて気のない返事をした。代助は
夫限
(
それぎり
)
食
(
く
)
ひ
込
(
こ
)
めなくなつた。
已
(
やむ
)
を得ず
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
此先
(
このさき
)
何
(
ど
)
んな変化がないとも
限
(
かぎ
)
らない。君も心配だらう。然し絶交した以上は
已
(
やむ
)
を得ない。僕の在不在に
係
(
かゝ
)
はらず、
宅
(
うち
)
へ
出入
(
ではい
)
りする事丈は遠慮して
貰
(
もら
)
ひたい
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
主人
(
しゆじん
)
は
時間
(
じかん
)
に
制限
(
せいげん
)
のない
人
(
ひと
)
と
見
(
み
)
えて、
宗助
(
そうすけ
)
が、
成程
(
なるほど
)
とか、
左
(
さ
)
うですか、とか
云
(
い
)
つてゐると、
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
話
(
はな
)
してゐるので、
宗助
(
そうすけ
)
は
已
(
やむ
)
を
得
(
え
)
ず
中途
(
ちゆうと
)
で
立
(
た
)
ち
上
(
あ
)
がつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
当人は無論山の中で暮す気はなかったんだが、親の命令で
已
(
やむ
)
を得ず、故郷に封じ込められてしまったのである。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
当人は無論
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
で
暮
(
くら
)
す気はなかつたんだが、
親
(
おや
)
の命令で
已
(
やむ
)
を得ず、故郷に封じ込められて仕舞つたのである。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
日露戦争の永続せざる限り、世間がボルクマンの様な人間で充満しない限りは余裕だらけである。
而
(
しか
)
して吾人も
已
(
やむ
)
を得ざる場合の
外
(
ほか
)
は此余裕を喜ぶものである。
高浜虚子著『鶏頭』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
広瀬中佐の詩に至つては
毫
(
がう
)
も以上の条件を
具
(
そな
)
へてゐない。
已
(
やむ
)
を得ずして
拙
(
せつ
)
な詩を作つたと云ふ痕跡はなくつて、
已
(
やむ
)
を得るにも
拘
(
かゝ
)
はらず俗な句を並べたといふ疑ひがある。
艇長の遺書と中佐の詩
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
腕力の発現そのものが目的で人間が戦争をするのであるとするか、又は目的は
他
(
た
)
にあるが、それを
遂行
(
すゐかう
)
する手段として
已
(
やむ
)
を得ず戦争に訴へたのだとしなければならない。
点頭録
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
まづいと云ふ点から見れば双方ともに
下手
(
まづ
)
いに違ない。けれども佐久間大尉のは
已
(
やむ
)
を得ずして
拙
(
まづ
)
く出来たのである。呼吸が苦しくなる。部屋が暗くなる。鼓膜が破れさうになる。
艇長の遺書と中佐の詩
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「今から
七日
(
なぬか
)
過ぎた
後
(
あと
)
なら……」と叢中の蛇は不意を打れて
已
(
やむ
)
を得ず首を
擡
(
もた
)
げかかる。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれどもその快感のうちには涙が交っていた。苦痛を
逃
(
のが
)
れるために
已
(
やむ
)
を得ず流れるよりも、悲哀をできるだけ長く
抱
(
いだ
)
いていたい意味から出る涙が
交
(
まじ
)
っていた。彼は独身ものであった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
諸君子は
已
(
やむ
)
を得ず年にちなんで、鶏の事を書いたり、犬の事を書いたりするが、これは
寧
(
むし
)
ろ
駄洒落
(
だじゃれ
)
を引き延ばした位のもので、要するに元日及び新年の実質とは
痛痒相冒
(
つうようあいおか
)
す所なき閑事業である。
元日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
著者は
已
(
やむ
)
を得ず煤煙の切抜帳を
抱
(
いだ
)
いて、
大
(
おほい
)
に
詰
(
つ
)
まらながつてゐた。
『煤煙』の序
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
已
漢検1級
部首:⼰
3画
“已”を含む語句
已前
而已
已来
不得已
已下
已來
已上
已後
生滅滅已
已達
漢防已
而已歟
而已成
族而已
身子已是酥麻了
逝者已如水
我而已
成法已講
怨親已作平等心
已矣
...