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妖艶
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ようえん
ふりがな文庫
“
妖艶
(
ようえん
)” の例文
楽劇「サロメ」の「七つのヴェールの踊り」は有名な
妖艶
(
ようえん
)
な場面で、レコードもたくさん入っているが、困ったことに皆新しくない。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
僕は
茫然
(
ぼうぜん
)
と女史の、あられもない
屍体
(
したい
)
の前に立ちつくした。僕はいまだにその
妖艶
(
ようえん
)
とも怪奇とも形容に絶する光景を忘れたことがない。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
いつかれる神が武人の守護神のようにいわれる八幡宮、おろがむは
妖艶
(
ようえん
)
な女形——この取り合せが、いぶかしいといえばいぶかしかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
のごとき
妖艶
(
ようえん
)
を極めたるものあり。そのほか春月、春水、暮春などいえる春の題を艶なる方に詠み出でたるは蕪村なり。
例
(
たと
)
えば
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
少女にはあり得ないほどの冷静さで
他人事
(
ひとごと
)
のように
二人
(
ふたり
)
の間のいきさつを伏し目ながらに見守る愛子の一種の毒々しい
妖艶
(
ようえん
)
さ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
兵法
(
ひょうほう
)
に曰く柔よく剛を制すと、深川夫人が
物馴
(
ものな
)
れたる
扱
(
あつかい
)
に、
妖艶
(
ようえん
)
なる
妖精
(
ばけもの
)
は
火焔
(
かえん
)
を収め、静々と導かれて、
階下
(
した
)
なる談話室兼事務所に
行
(
ゆ
)
けり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私はよしやこの女が狐であっても、その正体がこんな
妖艶
(
ようえん
)
なものであるなら、
寧
(
むし
)
ろ喜んで魅せられることを望んだでしょう。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
笑えば人を魅するような
妖艶
(
ようえん
)
な色が出て来ました。そして何事を差置いても、その
色艶
(
いろつや
)
に修飾を加えることが、お君の第一の勤めとなりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
能楽を大成させた世阿弥は尭孝の世を去る一年前に亡くなったが、彼の能楽を仕立てるねらいは、
妖艶
(
ようえん
)
な美しさにあった。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
枝垂桜は夢のように浮かびでて現代的の照明を
妖艶
(
ようえん
)
な全身に浴びている。美の神をまのあたり見るとでもいいたい。私は桜の周囲を歩いては
佇
(
たたず
)
む。
祇園の枝垂桜
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
そこに見返りお綱がいる! あの
妖艶
(
ようえん
)
なお嬢様姿や、
粋
(
いき
)
な引っかけ帯とは、また打って変った被布姿でいるのが、いよいよ不思議にたえぬのであった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ある時は支度金を取って諸侯の
妾
(
しょう
)
に住み込み、故意に
臥所
(
ふしど
)
に
溺
(
いばり
)
して暇になった。そしてその姿態は
妖艶
(
ようえん
)
であった。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
妖艶
(
ようえん
)
の
巣窟
(
そうくつ
)
の浅草公園で、ことに腕前の
凄
(
すご
)
いといわれたおとめのことは、種にしようと思ったから近づいたのだ。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
着け終ると、舞踊が始まり、つひにプリマドンナが橋がかりの突端まで進み出て、
妖艶
(
ようえん
)
きはまるポーズを作る。
わが心の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
そしてあの海のように青い目をしたセット子爵夫人が主宰していた有名な恋愛会は、しとやかさを目ざしたこのカヌズーに
妖艶
(
ようえん
)
の賞を与えたことであろう。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
妖艶
(
ようえん
)
溌剌
(
はつらつ
)
を極めた龍代の女王ぶりに、魂を奪われてばかりおりましたのは、何といっても一生の不覚でした。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それは柏の所謂「愛の杯」から其儘抜出してきたような彼女が白衣の
軽羅
(
うすもの
)
を纏って、日ざしの明るい森を背にして睡蓮の咲く池畔に立っている
妖艶
(
ようえん
)
な姿であった。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
その一歩うしろにさがって
綸子
(
りんず
)
白衣の行服に
緋
(
ひ
)
のはかまうちはきながら、口に怪しき
呪文
(
じゅもん
)
を唱えていた者は、これぞ
妖艶
(
ようえん
)
そのもののごとき、尋ねる比丘尼行者でした。
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
何かが抵抗すべからざる力で若い彼の心臓をわき立たせ、真昼の端正な「伎芸天」までが
妖艶
(
ようえん
)
、
婀娜
(
あだ
)
な姿に変じて燃える目で彼を内から外へ誘い駆りたてるのであった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
すると、私の眼の前の老女の姿は、
忽
(
たちま
)
ちに消えてしまって、
清長
(
きよなが
)
の美人画から抜け出して来たような、水もたるるような
妖艶
(
ようえん
)
な、町女房の姿が頭の中に
歴々
(
ありあり
)
と浮びました。
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その
妃
(
きさき
)
を描き
女神
(
めがみ
)
を描き、
或
(
ある
)
は
紅
(
くれない
)
の島に群れなして
波間
(
なみま
)
に浮ぶナンフ或は
妖艶
(
ようえん
)
の人魚の姫。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
既
(
すで
)
に三十の
身
(
み
)
ではあったが、十四五の
頃
(
ころ
)
から
早
(
はや
)
くも
本多小町
(
ほんだこまち
)
と
謳
(
うた
)
われたお
蓮
(
れん
)
は、まだ
漸
(
ようやく
)
く二十四五にしか
見
(
み
)
えず、いずれかといえば
妖艶
(
ようえん
)
なかたちの、
情熱
(
じょうねつ
)
に
燃
(
も
)
えた
眼
(
め
)
を
据
(
す
)
えて
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
そして、このとき今まで
彫刻的
(
ちょうこくてき
)
に見えた小初の肉体から
妖艶
(
ようえん
)
な
雰囲気
(
ふんいき
)
が
月暈
(
つきがさ
)
のようにほのめき出て、四囲の自然の風端の中に一
箇
(
こ
)
不自然な人工的の生々しい
魅惑
(
みわく
)
を
掻
(
か
)
き開かせた。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
仔馬
(
こうま
)
の様に
精悍
(
せいかん
)
で、すらりと引き締った肉体を持ち、あるものは、蛇の様に
妖艶
(
ようえん
)
で、クネクネと自在に動く肉体を持ち、あるものは、ゴム
鞠
(
まり
)
の様に肥え太って、脂肪と弾力に富む肉体を持ち
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「ほほほほ」お宮は
莫蓮者
(
ばくれんもの
)
らしい
妖艶
(
ようえん
)
な
表情
(
かおつき
)
をして意味ありそうに笑った。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
使いの女というのは、二十二三、柳橋あたりのお茶屋の女とはどうしても思えない、少し武家風な、そのくせ
妖艶
(
ようえん
)
なところのある年増でした。
銭形平次捕物控:035 傀儡名臣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その刹那から、己の目の前には、現実の世界が消えてしまって、
燦爛
(
さんらん
)
たる色彩と、
妖艶
(
ようえん
)
なる
女神
(
めがみ
)
と、
甘美
(
かんび
)
なる空気との世界ばかりが見えて居た。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
また
希有
(
けぶ
)
なのは、このあたり(大笹)では、蛙が、女神にささげ物の、みの、
髢
(
かもじ
)
を授けると、小さな
河童
(
かっぱ
)
の形になる。しかしてあるものは
妖艶
(
ようえん
)
な少女に化ける。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
奇妙とも
妖艶
(
ようえん
)
ともつかない婦人の
金切声
(
かなきりごえ
)
が頭の上の方から聞えたかと思うと、ドタドタという物凄い音響がして、佐和山女史の大きな身体が
逆
(
さかさ
)
になって
転
(
ころが
)
り落ちて来ると
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
きくだに
妖艶
(
ようえん
)
、その面影もさながらに
彷彿
(
ほうふつ
)
できるへび使いの美人行者、そもなんの目的をもって三人の小町娘をさらい去ったか、疑問はただその一点! 日は
旱天
(
かんてん
)
、駕籠は
韋駄天
(
いだてん
)
。
右門捕物帖:17 へび使い小町
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
玄関先に立っている、もしくは客間に上り込んでいる
妖艶
(
ようえん
)
な夫人の姿を、想像しながら、それに必死に突っかゝって行く覚悟の
臍
(
ほぞ
)
を固めながら、信一郎は自分の家の門を、潜った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
どこからかそら豆を
茹
(
ゆで
)
る青い
匂
(
におい
)
がした。古風な紅白の棒の看板を立てた
理髪店
(
りはつてん
)
がある。
妖艶
(
ようえん
)
な
柳
(
やなぎ
)
が地上にとどくまで
枝垂
(
しだ
)
れている。それから五六
軒
(
けん
)
置いて
錆
(
さび
)
朽
(
く
)
ちた洋館作りの写真館が在る。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
妖艶
(
ようえん
)
な、若い葉子の一挙一動を、絶えず興味深くじっと見守るように見えた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
石川豊信
(
いしかわとよのぶ
)
らと並んで
頗
(
すこぶ
)
る
妖艶
(
ようえん
)
なる婦女の
痴態
(
ちたい
)
を描きまた役者絵も
尠
(
すくな
)
しとせず。然れどもこの時代には役者絵の流行既に享保元文時代の如く盛んならず、その板刻
時
(
とき
)
に
甚
(
はなはだ
)
粗雑となるの傾きありき。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
さきの一例で
懲
(
こ
)
りているので、今日は大事をとるつもりだろうが、その
妖艶
(
ようえん
)
な
媚
(
こ
)
びといったらない。たとえば
蜘蛛
(
くも
)
がその
獲物
(
えもの
)
を徐々に巣の糸に
縢
(
かが
)
り殺して、やがて愉しみ喰らおうとするようだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
灯を背にして、ほの白い顔、
岩佐又兵衛
(
いわさまたべえ
)
の絵から抜け出したような、
妖艶
(
ようえん
)
な
姿態
(
ポーズ
)
が、相手を
苛立
(
いらだ
)
たせずにはおきません。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
考えて見ると彼女の顔にあんな
妖艶
(
ようえん
)
な表情が
溢
(
あふ
)
れたところを、私は今日まで一度も見たことがありません。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこで曲目は
断層
(
だんそう
)
をしたかのように変化し、
奔放
(
ほんぽう
)
にして
妖艶
(
ようえん
)
かぎりなき吸血鬼の踊りとなる——この舞台のうちで、一番怪奇であって絢爛、妖艶であって勇壮な大舞踊となる。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何代か封建制度の下に凝り固めた情熱を、明治、大正になつてまだ点火されず、
若
(
も
)
し点火されたら
恨
(
うら
)
みの色を帯びた
妖艶
(
ようえん
)
な
焔
(
ほのお
)
となつて燃えさうな、全部白臘で作つたやうな脂肉のいろ
光沢
(
つや
)
だつた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
黒髪を乱した
妖艶
(
ようえん
)
な女の頭、矢で貫かれた心臓
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
二十七八——どうかしたらもう少し若いでしょうが、とにかく、素晴らしい肉体を持った女で、その
妖艶
(
ようえん
)
な美しさは興奮した後だけに、かえって眼の覚めるようです。
銭形平次捕物控:030 くるい咲き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
恨めしそうに
睨
(
にら
)
んでなさるだけですねんけど、その眼エえらい
妖艶
(
ようえん
)
で、何ともいえんなまめかしい
風情
(
ふぜい
)
あって、「なあ姉ちゃん」いいながら甘えるようにその眼エ使われたら
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
度強
(
どぎつ
)
い電燈の明りや太陽の光線の下でこそ、お白粉の濃いのは
賤
(
いや
)
しく見える事もあろうが、今夜のような青白い月光の下に、飽くまで
妖艶
(
ようえん
)
な美女の厚化粧をした顔は、却って神秘な
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お勢の
妖艶
(
ようえん
)
な顔も、さすがに
蒼
(
あお
)
く
引緊
(
ひきしま
)
って、日頃の
寛闊
(
かんかつ
)
さは
微塵
(
みじん
)
もありません。
銭形平次捕物控:054 麝香の匂い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
日本ではあまり問題にされないが、どのレコードも
妖艶
(
ようえん
)
したたるばかりだ。邪道と言えば邪道だがアメリカ人にはさぞ受けるだろう。それだけの派手な声を持っていて、オペラは歌っていない。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
それは残忍の苦味を帯びた
妖艶
(
ようえん
)
な美である。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
敷居に
崩折
(
くずお
)
れるように、お六の怨じた眼は
妖艶
(
ようえん
)
を極めます。
銭形平次捕物控:082 お局お六
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
敷居に崩折れるやうに、お六の
怨
(
ゑん
)
じた眼は
妖艶
(
ようえん
)
を極めます。
銭形平次捕物控:082 お局お六
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“妖艶”の意味
《名詞》
妖艶(ようえん)
妖しいほど美しいさま。
艶かしく色っぽいさま。
(出典:Wiktionary)
妖
常用漢字
中学
部首:⼥
7画
艶
常用漢字
中学
部首:⾊
19画
“妖”で始まる語句
妖
妖怪
妖精
妖女
妖気
妖術
妖怪変化
妖婦
妖魔
妖婆