“咽喉:のど” の例文
“咽喉:のど”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花61
中里介山33
夢野久作31
宮沢賢治30
夏目漱石28
“咽喉:のど”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語12.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)4.6%
文学 > 日本文学 > 詩歌1.8%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
馬は泡を吹いた口を咽喉のどりつけて、とがった耳を前に立てたが、いきなり前足をそろえてもろに飛び出した。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこらが一ト片着き片着いてしまうと、みんなは火鉢の傍へ寄って、母親がんで出す朝茶に咽喉のどうるおした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
れた人間離にんげんばなれのした嗄声しゃがれごえ咽喉のどいて迸出ほとばしりでたが、応ずる者なし。
土佐とさ咽喉のどを切って自殺する事を「フロヲハネル」と言うが、この「フロ」が偶然出て来たのはずいぶん人を笑わせる。
しばらくもがいた後に、ようやく咽喉のどの自由だけが出来たから、さいぜんから叫びつづけているが、身の自由はかない。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
文句として見ると出鱈目の散文に過ぎないけれども、この子供の咽喉のどを通して聞くと、歌になり、詩になって現われるのです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
誰も彼も惨として一語なきところに、咽喉のども裂けるばかりに号泣してこの場へ駆けつけて来たのは、まだいたいけな子供です。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして私たちがそこに待っている間中、彼は咽喉のどの詰る思いをしているかのように絶えず唾をごくりごくりと嚥みこんでいた。
ちょうど咽喉のどかわいていたので、椰子水でも貰おうかと、豚の逃亡を防ぐための柵を乗越して裏から家の庭にはいった。
誰も彼もみな、眼が塩ッ辛くなって、シバシバして開けていられない。咽喉のどの奥がからからになって、鼻の中がツンツンする。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
咽喉のどの乾いたゆき子は、そのコップの水をがぶがぶと美味うまさうに飲み干して、わけのわからぬ事をしやべつてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
顔面にはひどい掻き傷が多数あり、咽喉のどにも黒ずんだ傷と、深い爪のあととがあって、被害者は絞め殺されたようであった。
萩の花の落ちこぼれた水のしたたりは、静かな夕暮の中に、幾度いくたび愛子あいこの小さい咽喉のどうるおした。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やさしく咽喉のどべり込む長いあごを奥へ引いて、上眼に小野さんの姿をながめた小夜子は、変る眼鏡を見た。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
両人ふたりはわざと対話をやめて、しばらく耳をそばだてたが、いったん鳴きそこねた咽喉のどは容易にけぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それは……」といいかけたドレゴは、後の言葉を咽喉のどの奥にのみこんだ。そして彼は視線をホーテンスの顔かららせた。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
ちょうどへりから幾分下方に当る所に、疑うべくもない拇指痕が、レヴェズの咽喉のどに印されたのと同一の形で現われた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
咽喉のどを切り開かれている将校を見た時には、血の出るのも気付かずに、自分の咽喉仏の上を掻きむしっていたようです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
右の利腕ききうでを取られている金助は、この時ガーッと咽喉のどを鳴らして、米友の面上めがけて吐きかけようとしたから、
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
力の限り悶掻もがけども、更にそのせんなきのみか咽喉のどは次第にしばり行きて、苦しきこといはんかたなし。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
むかし、ロスキルドのアブサロン僧正という坊さんが、ここバルチック海の咽喉のどズイランド島に「すこしの土地を買った」。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
気絶どころか、二、三日食物も咽喉のどへ通らないで床に就いたくらいだが、こうして寝ながら、メリイ・カルヴィンは考えたのだ。
と言って咽喉のどを鳴らしました。温かい酒と、温かい飯の誘惑が、おのれを物狂わしくするのを制することができません。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夢ではないかとおもったが、夢ではない証拠に、左胸部のきずが、はげしく痛んでいる。咽喉のどが渇いて、相当に高熱だ。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
わたしもあそこへ腰をかけて、疲れをいやして、咽喉のどもうるおして、髪でもかきあげてたずねるところへゆくとしよう。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「清ちやん! 清ちやん!」おきみは叱りつけるやうに叫んでゐたが、やがてこれも涙に咽喉のどを詰まらして默つてしまつた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
あとで、事情をきいて見ると、その夜、彼女は剃刀で私の咽喉のどをきり、然る後自分の頸動脈をきって自殺を遂げたそうです。
遺伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
何でもナルコポンの注射をするとあとで咽喉のどがかわいてしょうがないというので、しょっちゅう蜜柑ばかり食べていました。
アパートの殺人 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
咽喉のどに巻いたる古手拭ふるてぬぐいのばして、覆面す――さながら猿轡さるぐつわのごとくおのが口をばゆわう。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父は申訳ほど左腹部に刀を立て、そしてその返す刀を咽喉のどにあてゝ突つぷし、頸動脈を見事に断ち切つて了つたのであつた。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
きりやうはよく無いが、おかみさんの實の娘だと云つても通りさうないゝ體格で、流石に咽喉のどの太さが目につくのであつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
胸から上は素裸にされて、其の上を腰ひもか何かで後手うしろでにぐるぐる巻にされ、その端が咽喉のどにまきつけてありました。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
それが申し合せたように、今夜は不思議に静粛である。庄亮までが、風邪気味で咽喉のどを痛めたというので、さして左が利かない。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
鞍上あんじょうの人ももとより咽喉のどが渇いているであろうが、馬も烈日の威に堪えず、あえぎ喘ぎ歩みつつある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
もっとも電話の上に咽喉のどが痛いので、詳しい話はできなかったから、そのつもりでいてくれというのが彼の用向であった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
枕元には人間の大きさ位の青蛙の看護婦が二人、黄金きん色の眼を光らして、白い咽喉のどをヒクヒクさせながら腰をかけています。
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
咽喉のどが苦しい、ああ、呼吸いきが出来ない。素人らしいが、(と莞爾にっこりして、)口移しに薬を飲まして……」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
するとミーロはとうとう決心したようにいきなり咽喉のどきはだけて、はんの木の下の空箱の上に立ってしまいました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ググググッとマダムが咽喉のどを鳴らすと、グパッと心臓を吐出すような音をたてて、立ち上りかけた卓子に俯伏うつぶせになった。
障子押しあけ、飛びついた男の手には白刃しらはがある。男は脇差わきざしを抜いて咽喉のどへ突き立てるところでした。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
対手あいての節の隙間を切って、伸縮のびちぢみをめつ、緩めつ、声の重味を刎上はねあげて、咽喉のどの呼吸を突崩す。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神尾主膳はふたたび大盃の酒を傾けて咽喉のどを鳴らしながら、意地悪くお銀様の面を見つめて、しばらく黙っておりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
精々何にも当飼あてがわないで、咽喉のど腹を乾しとかないと、この上また何かの始末でもさせられるようじゃどうすると思うんだ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「よろしい、それではこのはしを、咽喉のどへ入れてやって呉れ。」畜産の教師は云いながら、ズックの管を助手に渡す。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼は、夫人に会えば、こう云おうあゝ云おうと思っていた言葉が、咽喉のどにからんでしまって、たゞモジ/\興奮するばかりだった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
お婆さんは、咽喉のどに引っ掛かるような声をしぼって、二番目の孫娘を呼んだ。併し、それにはなんの答えもなかった。
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
南無三なむさん! と覚悟を決めたとき、足は、懐中ふところの小判を越えて、はうように咽喉のどからあごへ――。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
私が手に取りあげて見せますと、妻はにっこりと笑いましたが、それと同時に咽喉のどが、一度に鳴って、静かに瞑目して行きました。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
新「ヘエー有難うございます、ちょう咽喉のども乾いて居りますから、エヽ有難うございます、誠にわたくしも力を得ました」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それもみんな彼女の方から話しかけて、必要な返事だけを、云わば相手の咽喉のどからし出したようなものであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
怒ったふり気取けどられたくないと、物を言おうとすれば声は干乾ひからびついたようになる、たん咽喉のどへ引懸る。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
子供は噛み取った煎餅の破片をじゅうぶんに咀嚼そしゃくして咽喉のどへきれいにみ下してから次の端を噛み取ることにかかる。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
雄鶏おんどり牝鶏めんどりと遊ぶところへ、釣針つりばりをくれ、鳥の咽喉のどに引掛けて釣取るという。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この問には、三吉はひど狼狽ろうばいしたという様子をして、咽喉のど干乾ひからび付いたような声を出して、
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お今は肥った膝のうえに手巾ハンケチを拡げて、時々サイダに咽喉のどを潤していたが、室と口を利くようなことはめったになかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私の食慾はもう立派な機械になりきってしまって、するめがそしゃくされないうちに、私は水でそれをゴクゴク咽喉のどへ流し込むのだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
……眼に見えぬ嬢次様の手に頭髪を掴まれ、眼に見えぬ志村御夫婦の怨みの縄に咽喉のどを締められておいでにならなければなりませぬ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
という言葉が出かかって、そのまま咽喉のどにこびり付いてしまった。外に出たのはその口付きと呼吸いきだけであった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すると、拡声器の調節が悪いためか、歌がちょうど咽喉のどにでも引っかかるようにひっかかってぷつりぷつりと中断する。
沓掛より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
と膝の下にある懐剣を抜くより早く、咽喉のどへガバリッと突き立てましたから、孝助はびっくりし、あわてゝすがり付き、
烏のかしらを頂きたる、咽喉のどの黒き布をあけて、わかき女のおもてあらわし、酒を飲まんとして猶予ためらう。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちやうけに岡山をかやまのきび團子だんごべたところで、咽喉のどつまらせるはふはない。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ある時、ヒョックリと現われた湯川氏は、赤い毛布ケットをマントのように着て手拭てぬぐい咽喉のどのところに結びつけていた。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「坊主、咽喉のどが乾いたろうで、水のかわりに、すきなものを遣るぞ。おお、女房おっか肖如そっくりだい。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「わツ、」とさけんで、咽喉のどつかんだまゝ、けやうとして振挙ふりあげた
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天井から、釣鐘つりがねが、ガーンと落ちて、パイと白拍子が飛込む拍子に――御矢おんや咽喉のどささった。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「うぬ!畜生!」とルパンはショルムスに飛びついて咽喉のどめ上げた。ショルムスは苦しさに身をもがくばかり。
咽喉のどが、かわく。雨も、久しく降りませぬな。いつであったかな。後月あとげつの半ばであったかな、降ったのは」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「わかったか」と覆面の侍げらげらと咽喉のどを鳴らした。文次には記憶おぼえのある、小癪こしゃくにさわる音声だ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ふっくら丸いあごの下に、小娘のように咽喉のど元が、えり浅黄あさぎと美くしくなずんで、やさしく前にかさねた手の
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
休茶屋で、ラムネにかわいた咽喉のどいきる体をいやしつつ、帰路についたのは、日がもう大分かげりかけてからであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
貞藏これから片付けようというので、仰向に寝て居る貞藏の口の処へどんと腰を掛けながら、力任せに咽喉のどを突きましたから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
挨拶をしようと思う努力が、すぐ咽喉のどに障ったと見えて、今まで多少落ち付いていた咳嗽せきの発作が一度に来た。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
吾輩の主人は毎朝風呂場で含嗽うがいをやる時、楊枝ようじ咽喉のどをつっ突いて妙な声を無遠慮に出す癖がある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、彼は軽くき入つた、フラ/\となつた、しまつた! う思つた時には、もうそれが彼の咽喉のどまで押し寄せてゐた――。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
復一はあわてるほど、咽喉のどに貼りついて死ぬのではないかと思って、わあわあ泣き出しながら家の井戸端いどばたまで駆けて帰った。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
お君は、あの晩に、お松の口から思い切った忠告を聞いて、お松が帰ったあとで咽喉のどを突いて自殺しようとしました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの姿が、つまり今の己なのだと思ったとき、嗚咽おえつとも怒号どごうともつかない叫びが彼の咽喉のどを破った。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そうして返事の声を咽喉のどに詰まらせつつ、かろうじて顔だけ笑って見せていると、そのうちに、又も甲高い声が上から落ちて来た。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
別に疲れも怖れもしないが、いくら山の中の木の葉の繁みを歩いたからとて、夏のことだから汗も出れば咽喉のども乾く。
刀のつかへ手をかけて立ち上ったまがいの神尾主膳は、竜之助の槍の穂先で咽喉のどを押えられて動きが取れなくなってしまった。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
田山白雲の武勇のことになると、駒井は全く舌をまき、マドロス氏は恐れ入って、自分で自分の咽喉のどをしめるまねをして苦笑いをする。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いや、悪く取るなよ、実は飲みたいんだ、咽喉のどから手が出るほど飲みたいんだが――これを一杯飲むとあとを引く」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すなあびせられて、むちうたれて、あさからばんまで泣通なきどほしで、咽喉のどがかれて、いて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
激しい興奮のために、彼の身体はふるえ、彼の声は裂け、彼の言葉は咽喉のどにからんで、容易には出て来なかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
やがて老人の双の肩が高まって、咽喉のどがむせでもするようにブルブルとゆすれた。が顔の表情は少しも変らなかった。
が、おきみはこの理由を一言も言はなかつた。そのうちに、咽喉のどに詰る涙にむせびながら周三の膝の上へ訴へた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
のみならず狂乱に近くなった彼女は取り止めのない言葉を口走ると共に肌身離さぬ短剣をスラリと引き抜いて我れと我が咽喉のどに擬した。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
という一番高い節廻ふしまわしをば枯れた自分の咽喉のどをよく承知して、たくみに裏声を使って逃げてしまった。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いつか私も甘いものといえば一口も咽喉のどを通らぬ様になって、今は隣の湯豆腐、その又となりの鉢巻の岡田の方へ足が向く様になった。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
涙がはてしなく流出して咽喉のどが乾くので、彼は水を飲んでは泣き、水を飲んでは泣き、一日中とめどもなく虫のように泣いていました。
Sの背中 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
いくら咽喉のどしぼり声をらして怒鳴どなってみたってあなたがたはもう私の講演の要求の度を経過したのだからいけません。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
後の首筋を蒼くして、無暗むやみに御部屋の雑巾掛や御掃除をさせて、物を仰るにも御声が咽喉のどひからびついたようになります。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こわいことはない。念のためにきくのじゃ。遠慮のう言うてみい。さだめし咽喉のどから手が出おったろうに、なにゆえ拾わざったぞ」
葉子の目に、そこに憎みきれない狡獪わるごすい老人が、いくらか照れかくしに咽喉のどぜ撫ぜ坐っていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
腰間こしの濡れ燕に催促されて、「人が斬りたい、人が斬りたい!」と、ジリジリ咽喉のどがかわくような気分になったときの丹下左膳は。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
こう叫びかけた私の声は、まだ声にならないうちに、一種の唸り声みたようなものになって、咽喉のどの奥に引返した。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一匹の小蝦が咽喉のどを通らないのを無理に冷酒ひやざけで流し込んで『これが土産だ』と云ってその時の僕の全財産、二十銭を置いて来た
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いや、御本山の御見識、その咽喉のどを聞きに来たとなると……客にまずはかま穿かせる仕向しむけをするな、真剣勝負面白い。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
熱燗あつかんに舌をやきつつ、飲む酒も、ぐッぐと咽喉のどつかえさしていたのが、いちどきに、かっとなって、その横路地から
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)