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厭味
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いやみ
ふりがな文庫
“
厭味
(
いやみ
)” の例文
厭味
(
いやみ
)
な喉を振りしぼつて、ほろゝん、ほろゝんの唄などをうたひ出した容子が、鷹揚な機關手の
眼
(
まなこ
)
に餘程異樣と映つたのであらう。
城ヶ島の春
(旧字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
隨分
(
ずゐぶん
)
厭味
(
いやみ
)
に
出來
(
でき
)
あがつて、いゝ
氣
(
き
)
の
骨頂
(
こつちやう
)
の
奴
(
やつ
)
ではないか、
己
(
お
)
れは
親方
(
おやかた
)
の
息子
(
むすこ
)
だけれど
彼奴
(
あいつ
)
ばかりは
何
(
ど
)
うしても
主人
(
しゆじん
)
とは
思
(
おも
)
はれない
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
民間は官途に一
目
(
もく
)
置くものと信じているから、大谷夫人の
厭味
(
いやみ
)
を当然の
卑下
(
ひげ
)
と認めて、御機嫌よく暇を告げた。大谷夫人はこれからだ。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
毎日夕方からお湯に入りに行くことを日課にしているその女の意気がった髪に掛けた青い色の
手絡
(
てがら
)
は
堪
(
たま
)
らなく
厭味
(
いやみ
)
に思うものであった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
時たま
厭味
(
いやみ
)
のようなことを云わぬではなかったが、正面から責めたことはない。細君のあけみに対しても同じ態度をとっていた。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
尊重し、みずから『無縁の衆生』と称し、あるいは『新興階級者に……ならしてもらおうとも思わない』といったりする……女性的な
厭味
(
いやみ
)
片信
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
馬鹿律氣
(
ばかりちぎ
)
なものに
厭味
(
いやみ
)
も
利
(
き
)
いた風もあり樣はない。其處に重厚な
好所
(
かうしよ
)
があるとすれば、子規の畫は正に働きのない愚直ものゝ旨さである。
子規の画
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
母から
厭味
(
いやみ
)
や皮肉を言われて泣いたのは
唯
(
た
)
だ悲くって泣いたので、自分が優しく慰さむれば心も次第に静まり、別に文句は無いのである。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
箱根の山の大自然の中に、
茲
(
ここ
)
ばかり
一寸
(
ちょっと
)
人間が細工をしたと云ったような、こましゃくれた、しかし、
厭味
(
いやみ
)
のない小公園だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかして古雅幽玄なる消極的美の弊害は一種の
厭味
(
いやみ
)
を生じ、今日の俗宗匠の俳句の俗にして
嘔吐
(
おうと
)
を催さしむるに至るを見るに
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
とかく
柔弱
(
にやけ
)
たがる金縁の眼鏡も
厭味
(
いやみ
)
に見えず、男の眼にも男らしい男振りであるから、遊女なぞにはわけて好かれそうである。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
……柱も天井も丈夫造りで、床の間の
誂
(
あつら
)
えにもいささかの
厭味
(
いやみ
)
がない、玄関つきとは似もつかない、しっかりした屋台である。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ところが私にはそれが
旺盛
(
おうせい
)
で、その点では咢堂の
厭味
(
いやみ
)
を徹底的にもっている。自分ながらウンザリするほど咢堂的な臭気を持ちすぎている。
石の思い
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
春宵怨
(
しゅんしょうえん
)
」とも言うべき、こうしたエロチカル・センチメントを歌うことで、芭蕉は全く
無為
(
むい
)
であり、末流俳句は卑俗な
厭味
(
いやみ
)
に低落している。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
すなわち感情が事実に
混
(
こん
)
じやすい。ゆえに事実を冷静に客観的に述べないで、あるいは
厭味
(
いやみ
)
を付加したりあるいは喜ぶ意を含ましめたりする。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そんな
厭味
(
いやみ
)
な、
気障
(
きざ
)
な態度は、およしなさい。不満があるなら男らしく、はっきりおっしゃって下さい。私は、そんな言いかたは、きらいです。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
予は
和蘭
(
ヲランダ
)
派のリユウバンスに
就
(
つい
)
て
其
(
その
)
気魄
(
きはく
)
と精力の偉大、
其
(
その
)
技巧の自由を驚歎し
乍
(
なが
)
ら、何となく官臭とも云ふべき
厭味
(
いやみ
)
のあるのに服しなかつたが
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
それでも、高等学校の時分、三造には、この伯父のこうした時代離れのした厳格さが、甚だ気障な
厭味
(
いやみ
)
なものに見えた。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
もし上手に描いたとしたら、それは拙いよりもなおなお
厭味
(
いやみ
)
である。文章にしてもこの時代においてかなり嫌味である。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「そんならお前も奧さんが死なはるやうに、風呂の踏石のことを旦那に言はんのやなア、あゝさうか。」と、定吉は
厭味
(
いやみ
)
らしく言つて横を向いた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
リストは、気高い長老で曲馬師で新古典派で
香具師
(
やし
)
、実際の気高さと偽りの気高さとの同分量の混合、晴朗な理想と
厭味
(
いやみ
)
な老練さとの同分量の混合。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
今まで
甘酸
(
あまず
)
っぱいような
厭味
(
いやみ
)
を感じていた提琴の音のよさがわかり、ジムバリスト、ハイフェツなどのおのおのの
弾
(
ひ
)
き方の相違が感づけるくらいの
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
然し『方丈記』に現れた處では長明の思想は不徹底です。のみならず、その厭世的態度には何となくわざとらしい、誇張されたやうな
厭味
(
いやみ
)
があります。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
私は一種の尊敬を以て、此のハイカラな
厭味
(
いやみ
)
もないではないが、いかにも青年らしい清純な姿の前に頭を下げた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
男の我々が見ると
堪
(
たま
)
らなくキザで鼻持がならないもんだが、当時の若い女をゾクゾクさした作で、キザな
厭味
(
いやみ
)
な文句を文学少女は皆
暗誦
(
あんしょう
)
していたもんだ。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
恰
(
あたか
)
も生きた人間にむかって物言うごとき態度に出て、
毫
(
ごう
)
も
厭味
(
いやみ
)
を感じないのは、直接であからさまで、擬人などという意図を余り意識しないからである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
何うして花里さんが伊之さんと切れられるものかね、また無理もないから、男ぶりも
好
(
よ
)
く
厭味
(
いやみ
)
ッ気がないのだもの
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
緑雨の小説随筆はこれを再読した時、案外に浅薄でまた
甚
(
はなはだ
)
厭味
(
いやみ
)
な心持がした。わたくしは今日に至っても露伴先生の『讕言長語』の二巻を折々
繙
(
ひもと
)
いている。
正宗谷崎両氏の批評に答う
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それから漱石氏はあまり
厭味
(
いやみ
)
のない気取った態度で
駈足
(
かけあし
)
をしてその的のほとりに落ち散っている矢を拾いに行って、それを拾ってもどってから肌を入れて
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
今だから正直に言うと、その時あの人の顔には、下品な、皮肉とも
厭味
(
いやみ
)
ともつかぬ表情が浮かんでいました。
華やかな罪過
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「
厭味
(
いやみ
)
な婆あにすりゃあいいんだから、よくなくってどうするんだ。手近に、そのままのがいるじゃあねえか。そっくりそのまま真似ときゃあ、すむんだ。」
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
年輩の経理は
厭味
(
いやみ
)
な笑を作って——若いの、分っている癖に、あっさりとって置け——という眼付をした。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
実に馬鹿らしく形式だった
厭味
(
いやみ
)
なものであるので、吾輩の抹茶についても時折
嘲笑
(
ちょうしょう
)
的痛罵を
頂戴
(
ちょうだい
)
したことがあったのである、だがそれもやはり酒のような筆法で
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
自分が少し知っていることで得意になって、ほかの人を
軽蔑
(
けいべつ
)
することのできる
厭味
(
いやみ
)
な女が多いんですよ。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
故意
(
わざ
)
とならぬ
眺
(
ながめ
)
はまた格別なもので、火をくれて枝を
撓
(
た
)
わめた
作花
(
つくりばな
)
の
厭味
(
いやみ
)
のある色の及ぶところでない。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そこに篏めている眼玉のようにギラギラした大きな
指環
(
ゆびわ
)
も、日本人ならきっと
厭味
(
いやみ
)
になるでしょうに、
却
(
かえ
)
って指を繊麗に見せ、気品の高い、
豪奢
(
ごうしゃ
)
な趣を添えています。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
頭髪
(
かみ
)
は
項
(
うなじ
)
の
辺
(
あたり
)
で
切
(
き
)
って
背後
(
うしろ
)
に
下
(
さ
)
げ、
足
(
あし
)
には
分厚
(
ぶあつ
)
の
草履
(
ぞうり
)
を
突
(
つ
)
かっけ、すべてがいかにも
無造作
(
むざうさ
)
で、どこをさがしても
厭味
(
いやみ
)
のないのが、むしろ
不思議
(
ふしぎ
)
な
位
(
くらい
)
でございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
大きなカステラの
函
(
はこ
)
を
手土産
(
てみやげ
)
に持って行ったので、大叔父は義理に
搦
(
から
)
まれて、要求されただけの金をその場で払わされたとかで、私はさんざ大叔母に
厭味
(
いやみ
)
を言われた上
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
彼女たちは絶えず彼にながしめをくれ、つきまとい、思わせぶりや
厭味
(
いやみ
)
などで彼をうるさがらせた。それだけならよかったが、やがて黒門のお登女さまの問題が起こった。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
頭がよく
厭味
(
いやみ
)
のない久兵衛のひとそのものに
惚
(
ほ
)
れて通って来る者ばかりといって
過言
(
かごん
)
ではない。
握り寿司の名人
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
鳴尾君の意識に
厭味
(
いやみ
)
な文学趣味など毛ほどもなかったことは云うまでもない。私はまた鳴尾君のことを時に「讃美歌牧師」と云ったりした。鳴尾君の声は純粋のバスだった。
西隣塾記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
我知らず熱心になつて、時には自分の考へを言つても見るが、其麽時には、信吾は大袈裟に同感して見せる。歸つた後で考へてみると、男には矢張り
氣障
(
きざ
)
な
厭味
(
いやみ
)
な事が多い。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
さはあれ、このお嬢様、べつに女
紀文
(
きぶん
)
を気どる次第でもなく、
厭味
(
いやみ
)
な所もさらさらない。ただこうした色彩の
雰囲気
(
ふんいき
)
につつまれているのがわけもなく面白いのであるらしい。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この性格において私は先生の偉大さを切実に認めるとともに、そこに少しの
厭味
(
いやみ
)
をも伴うことなく、どこまでも懐かしさを感ぜしめることを、まことに貴とくも思うのである。
左千夫先生への追憶
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
よく禅僧などの墨せきにいやな力みの出ているものがあるが、そういう
厭味
(
いやみ
)
がまるでない。強いけれども、あくどくない。ぼくとつだが品位は高い。思うままだが乱暴ではない。
黄山谷について
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
私は、まだ名前を承わらぬと、
厭味
(
いやみ
)
をいわれたので、それにはいささか当惑しながら
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
萬
(
まん
)
一
目的
(
もくてき
)
が
遂
(
と
)
げられたことが
有
(
あ
)
つたとしても
其
(
そ
)
れは
只
(
たゞ
)
一
人
(
にん
)
に
限
(
かぎ
)
られて
居
(
ゐ
)
て、
爾餘
(
じよ
)
の
幾人
(
いくにん
)
は
空
(
むな
)
しく
然
(
しか
)
も
極
(
きは
)
めて
輕
(
かる
)
い
不快
(
ふくわい
)
と
嫉妬
(
しつと
)
とから
口々
(
くちぐち
)
に
其
(
その
)
一
人
(
にん
)
に
向
(
むか
)
つて
厭味
(
いやみ
)
をいうて
止
(
や
)
まねば
成
(
な
)
らぬ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
と八五郎、何とか
厭味
(
いやみ
)
なことを言われながらも、職業意識は独りで働きかけます。
銭形平次捕物控:013 美女を洗い出す
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ところで、今、幸い山鹿の方では気づかぬようなので、この間に帰ろうか、それとも、一言
厭味
(
いやみ
)
でもいってやろうか——と考えてみたが、とてもあの
悪辣
(
あくらつ
)
な男にはかなうまい、というより
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
事件のこの転回を見て自分の
口惜
(
くや
)
しさをまったく隠しきれなくて、人はみんな自分自分のことをかまっていればいいものだ、というような
厭味
(
いやみ
)
を一つ二つ言うよりほかにしようがなかった。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
厭
漢検準1級
部首:⼚
14画
味
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“厭味”で始まる語句
厭味気