出家しゆつけ)” の例文
この矮小わいせう若僧じやくそうは、まだ出家しゆつけをしないまへ、たゞの俗人ぞくじんとして此所こゝ修業しゆげふとき七日なのかあひだ結跏けつかしたぎりすこしもうごかなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其方儀そのはうぎ出家しゆつけとして淺草阿部川町了源寺にて盜賊たうぞくに及び其上京都日野家に於て惡人共に荷擔かたんなし又此度嘉川主税之助にたのまれ島が死骸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「何んだつて頭なんか丸めたのか、色戀沙汰に出家しゆつけ得度とくどは變だと思つて訊くと、成程これには深い仔細があつたさうで」
……みづなかからともなく、そらからともなく、かすか細々ほそ/″\としたえるやうな、わかをんなこゑで、出家しゆつけんだ、とひます。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
忠家はこのを聞いた時に「心うきことにも逢ひぬるかな。世にありて何かはせん。出家しゆつけせん」と思ひ立つた。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此の住持じうぢは丹波の郷士がうし大庄屋おほじやうやをつとめた家の二男だが、京に上つて学問がたい計りに両親ふたおや散々さん/″\泣かせたうへで十三の時に出家しゆつけし、六条の本山ほんざんの学林を卒業してから江戸へ出て国書を学び
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
かのこん屋七兵衛は此㕝より発心ほつしんしてのち出家しゆつけしけるとぞ。
よ/\、おなまぼろしながら、かげ出家しゆつけくちよりつたへられたやうな、さかさまうつばりつるされる、繊弱かよは可哀あはれなものではい。真直まつすぐに、たゞしく、うるはしくつ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今迄はゆるさゞりしが夫程迄に思ひつめし事なればとめたりとも止るまじ因て只今身のいとまつかはすべし其方出家しゆつけ致すからは此以後對面たいめんかなはぬぞさりながら女の身にて遠路の處身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……ひとらぬが、此処こゝ老人らうじんに、みづなか姿すがたあらはすまぼろしをんな廻向えかうを、とたのまれて、出家しゆつけやくぢや、……よひから念仏ねんぶつとなへてつ、と時刻じこくた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つくさせたくわたくしは出家しゆつけ遁世とんせいゆゑ母や弟をたすけ候事なれば身命しんめいすて候てもすくはんとぞんじ其盜賊なりと申いつはり候其夜全くの盜賊は迯去にげさりたり其譯そのわけは私事はゝや弟をたづねんと所々方々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
まさかにいたほどでもあるまいが、それ本当ほんたうならば見殺みごろしぢや、みちわたし出家しゆつけからだれるまでに宿やどいて屋根やねしたるにはおよばぬ、追着おツついて引戻ひきもどしてらう。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(これは、なんでござりまする、)と山国やまぐにひとなどはこと出家しゆつけると丁寧ていねいにいつてくれる。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わし其時分そのじぶん果敢はかないもので、さう天氣てんきふねるのは、じつあしはうであつたが。出家しゆつけ生命いのちをしむかと、ひとおもはくもはづかしくて、怯氣々々びく/\もので乘込のりこみましたぢや。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
出家しゆつけのいふことでも、おしへだの、いましめだの、説法せつぱふとばかりはかぎらぬ、わかいの、かつしやい、といつかたした。あとくと宗門しうもん名誉めいよ説教師せつけうしで、六明寺りくみんじ宗朝しうてうといふ大和尚だいおしやうであつたさうな。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかわし出家しゆつけで、ひと心配しんぱいけてはむまい。し、し。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)