不氣味ぶきみ)” の例文
新字:不気味
呼吸いきめて、うむとこらへて凍着こゞえつくが、古家ふるいへすゝにむせると、時々とき/″\遣切やりきれなくつて、ひそめたくしやめ、ハツと噴出ふきだしさうで不氣味ぶきみ眞夜中まよなか
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
院長ゐんちやう不覺そゞろあはれにも、また不氣味ぶきみにもかんじて、猶太人ジウあといて、其禿頭そのはげあたまだの、あしくるぶしなどをみまはしながら、別室べつしつまでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あの廣間や、あの暗い廣い階段や、そしてあの長い冷たい廊下などからうけた不氣味ぶきみな印象は、この活々した私の小さな部屋の容子ようすで幾らか消された。
おなじく身動きひとつ出來ない樣な靜けさを感ずることがあるが、しかも冬と違つて不氣味ぶきみな靜けさではない、ものなつかしい靜けさである。明るい靜けさである。
……わたし身邊しんぺんには、あいにくそんな新造しんぞないが、とにかく、ふくろにして不氣味ぶきみがる。がふくろのこゑは、そんな生優なまやさしいものではない。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はなすと、いことに、あたり近所きんじよの、我朝わがてう※樣あねさま仰向あをむけ抱込だきこんで、ひつくりかへりさうであぶないから、不氣味ぶきみらしくもからはおとさず……
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、かへつて坂下さかした小戻こもどりにつか/\とちかづいたが、あまそばると、もやが、ねば/\としてかほきさうで、不氣味ぶきみひかへた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つきかげかげともしびかげゆきはな朧々おぼろ/\のあかりにも、かげのないひまはなし……かげあれば不氣味ぶきみさ、可厭いやさ、可恐おそろしさ、可忌いまはしさに堪兼たへかねる。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
へん陰氣いんき不氣味ぶきみばんでございました。ちやうどなすつたとき目白めじろこゝのつをきましたが、いつものつころほど寂寞ひつそりして、びゆう/\かぜばかりさ、おかみさん。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大地震おほぢしんを、あのときすでに、不氣味ぶきみ按摩あんま豫覺よかくしたるにあらざるか。しからば八千八聲はつせんやこゑきつゝも、生命せいめいだけはたすかつたらう。きぬあらひしむすめも、みづはだこがすまい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……電車通でんしやどほりへつて、こんなおはなしをしたんぢあ、あはれも、不氣味ぶきみとほして、お不動樣ふどうさま縁日えんにちにカンカンカンカンカン——と小屋掛こやがけかねをたゝくのも同然どうぜんですがね。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これでは、ぬまが、なんだか不氣味ぶきみなやうですが、なに一寸ちよつとことで、——四さがり、五まへ時刻じこく——あつで、大層たいそうつかれて、みぎはにぐつたりとつて一息ひといきいてうちには、くも
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……黒海老くろえび、むかで、やみがらす、と不氣味ぶきみになり、黒虎くろとら青蜘蛛あをぐもとすごくなる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つらながさは三じやくばかり、あごやせ眉間尺みけんじやく大額おほびたひ、ぬつとて、薄霧うすぎりつゝまれた不氣味ぶきみなのは、よくると、のきつた秋祭あきまつり提灯ちやうちんで、一けん取込とりこむのをわすれたのであらう、寂寞ひつそりした侍町さむらひまちたゞ一箇ひとつ
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)