トップ
>
髯
>
ひげ
ふりがな文庫
“
髯
(
ひげ
)” の例文
そう言うのは、五十に近かろうと思われる見る蔭もない男、涙と鼻水と一緒にかなぐり上げて、一生懸命さが無精
髯
(
ひげ
)
の面に溢れます。
銭形平次捕物控:060 蝉丸の香炉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
住職は四十前後で、色の白い、
髯
(
ひげ
)
のあとの青い人であった。客の一人は侍、一人は御用聞きというので、住職も疎略に扱わなかった。
半七捕物帳:01 お文の魂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
髯
(
ひげ
)
ある者、
腕車
(
くるま
)
を走らす者、
外套
(
がいとう
)
を着たものなどを、
同一
(
おなじ
)
世に住むとは思わず、
同胞
(
はらから
)
であることなどは忘れてしまって、憂きことを
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし我我は同じ言葉に
髯
(
ひげ
)
の長い西洋人を髣髴している。これはひとり神に限らず、何ごとにも起り得るものと思わなければならぬ。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
髯
(
ひげ
)
の中の一握りの束をしごき、
絨毯
(
じゅうたん
)
の上に
眼差
(
まなざし
)
を投げていたが、どうもちょうどKがレーニといっしょにころがった場所らしかった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
▼ もっと見る
原口さんは無論ゐる。一番
先
(
さき
)
へ
来
(
き
)
て、世話を
焼
(
や
)
いたり、愛嬌を振り
蒔
(
ま
)
いたり、仏蘭西式の
髯
(
ひげ
)
を
撮
(
つま
)
んで見たり、万事
忙
(
いそ
)
がしさうである。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
何事ならんと頭を
擡
(
もた
)
げて見れば前の肥えたる曹長にはあらで
髯
(
ひげ
)
のむさくるしき一人の曹長が余ら一行の居場を縮めよと命ずるなり。
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
ガンダーラの浮き彫り彫刻などで見ると、一つの構図の端の方にはギリシアの神様がいたり、哲学者らしい
髯
(
ひげ
)
の多い老人がいたりする。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「ねえ、私たちの前を、へんな自動車が走って行くわよ。
髯
(
ひげ
)
もじゃの紳士が、のっていて、
反射鏡
(
はんしゃきょう
)
で、しきりに、こっちをみているわ」
人造人間の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
髯
(
ひげ
)
だらけの男がふたり、ボウトの上から野獣のような眼をして警官を見返していた。夕方のことである。相互から同時に発砲していた。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
何事かと思って覗いてみると勿体らしい衣冠束帯をした櫛田神社の宮司が、拝殿の上に立って長い
髯
(
ひげ
)
を撫でながら演説をしている。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
俺は近ごろ
足軽
(
あしがる
)
というものの
髯
(
ひげ
)
づらを眺めていて
恍惚
(
こうこつ
)
とすることがある。あの無智な力の美しさはどうだ。
宗湛
(
そうたん
)
もよい
蛇足
(
じゃそく
)
もよい。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
彼は何度もそういう一片で朝飯にありついたことがあった。彼はそういう仕事に得意で、そのことを「床屋の
髯
(
ひげ
)
をそる」と称していた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
髯
(
ひげ
)
の白い老主人が立っている。——それにたいして七、八名の若い者をうしろに連れた背のたかい壮漢が、なにかがんがん言っていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし折々、従容と歩を運ぶ教諭のウォオタンのような帽子とユピテルのような
髯
(
ひげ
)
を見ると、みんな神妙な眼つきでさっと帽を脱いだ……
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
彼は中年を過ぎていて、髪は半白で、やはり半白の薄い
髯
(
ひげ
)
を生やしていたが、その顔には知識と教養のあとがいちじるしく目立っていた。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
その道ばたに、白い
髯
(
ひげ
)
のあるお
爺
(
ぢい
)
さんが一人
屈
(
かが
)
みこんで、パイプの
煙草
(
たばこ
)
をふかしてゐました。エミリアンは近よつていつて、尋ねました。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
名を忘れてしまってすまないが何とかいう黒いあご
髯
(
ひげ
)
を生やした、声の大きい熱心な牧師さんがいていつも
獅子吼
(
ししく
)
していられた。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
自分は今、
髯
(
ひげ
)
をはやし、洋服を着ている。電気鉄道に乗って、鉄で出来た永代橋を渡るのだ。時代の激変をどうして感ぜずにいられよう。
深川の唄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
クララの前にはアグネスを従えて白い
髯
(
ひげ
)
を長く胸に垂れた盛装の
僧正
(
そうじょう
)
が立っている。クララが顔を上げると彼れは慈悲深げにほほえんだ。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
髯
(
ひげ
)
も
剃
(
そ
)
らずにいた私は、
剃刀
(
かみそり
)
をあてて、顔を洗って、セイセイとした心持になり、浜田と一緒に戸外へ出たのはかれこれ二時半頃でした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お
髯
(
ひげ
)
がないからお髯の
塵
(
ちり
)
を払うことは出来ないけれども、ご機嫌を伺うということはなかなか
力
(
つと
)
めたもので実に哀れなものです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
つやつや光る
竜
(
りゅう
)
の
髯
(
ひげ
)
のいちめん生えた少しのなだらに来たとき諒安はからだを
投
(
な
)
げるようにしてとろとろ
睡
(
ねむ
)
ってしまいました。
マグノリアの木
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「
咽喉
(
のど
)
を
潤
(
しめ
)
しておいてから……」と、山西は一口飲んで、隣の
食卓
(
テーブル
)
に
正宗
(
まさむね
)
の
壜
(
びん
)
を二三本並べている
髯
(
ひげ
)
の黒い男を気にしながら
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
三田はその前に立つて、これが一生の面倒に思はれる無類の濃い
髯
(
ひげ
)
を剃つてゐた。安全かみそりの齒の音が、心地惡く響いた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そして
其
(
その
)
髯
(
ひげ
)
が
鰻
(
うなぎ
)
のそれの如く両端遙かに頤の方向に垂下して居る、恐らく向上といふ事を忘却した精神の象徴はこれであらう。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そういう間、ジャン・ミシェル老人は、雨の中に、霧に
髯
(
ひげ
)
を濡らして、家の前で待っていた。
惨
(
みじ
)
めな息子の帰宅を待っていた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その辺は
龍
(
りゅう
)
の
髯
(
ひげ
)
なぞの深い
草叢
(
くさむら
)
をなして、青い中に点々とした濃い緑が一層あたりを
憂鬱
(
ゆううつ
)
なくらいに見せているところである。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
マリヤ物言わず、イエスも無言、ナルドの香油はイエスの
髯
(
ひげ
)
に流れ、衣の裾にまでしたたり、芳香
馥郁
(
ふくいく
)
として
室
(
へや
)
に満ちました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
上
(
あが
)
り
框
(
がまち
)
に仁王立ちになった蒲生泰軒は、左右の手に、チョビ安とお美夜ちゃんの頭をなでながら、
髯
(
ひげ
)
がものを言うような声で
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「ほう、
大
(
おお
)
まかに
出
(
で
)
やァがったな。
話
(
はなし
)
をしたなァおれなんだぜ。
行
(
ゆ
)
くんなら、せめておれの
髯
(
ひげ
)
だけでもあたッてッてくんねえ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
雨がっぱにくるまった
髯
(
ひげ
)
の交通巡査が、学校がよいの子供を自動車や電車から守り、子供たちの敬礼ににこにこしてみせた。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
また、インド人が己の
髯
(
ひげ
)
を
毛抜器
(
けぬき
)
をもっていちいち抜き取るのを見た。これも彼らの迷信で、顔面にかみそりをあてることを嫌うとのことだ。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
竜土軒の主人は八字
髯
(
ひげ
)
を生やした品の好い男で、耳が少し遠かった。細君は赤坂の八百勘で女中をしていた人で、始終粋な
丸髷
(
まるまげ
)
に結っていた。
芝、麻布
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
ステッキをついて
猩々
(
しょうじょう
)
のように
髯
(
ひげ
)
をはやしたばかに鼻の高い「おろしゃ人」が虎よりは見物人の方を見ながらのどかにパイプをふかしている。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
「でも、先生も、ちっともお変りなさいません——それは、お
髪
(
ぐし
)
や、お
髯
(
ひげ
)
は、めッきり白うお成りなさいましたけれど——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
すると白い
髯
(
ひげ
)
の生えた老人が玄關に出て來た。青年は少し意外に感じて、はつとしたらしい態度を示した。そして一禮した。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
同じ色の
髯
(
ひげ
)
が隙もなく伸びているあいだに、きみの悪いくらい赤く厚い唇と、大きな、黄色い歯の
剥
(
む
)
き出されるのが見えた。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ところが、あの人はどういうわけか、この二等大尉に腹を立てて、大ぜいのいる前で相手の
髯
(
ひげ
)
を引っつかんだのだそうです。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
五十を越した篤学者で、強度の近眼鏡をかけた、
痩
(
や
)
せて半白の
髯
(
ひげ
)
を
生
(
は
)
やした寮長は、懐中から厚ぼつたい銀側時計を出して時間を見計つてゐた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
頭髪も
髯
(
ひげ
)
も
胡麻白
(
ごまじろ
)
にて
塵
(
ちり
)
にまみれ、鼻の先のみ赤く、
頬
(
ほお
)
は土色せり。哀れいずくの誰ぞや、
指
(
さ
)
してゆくさきはいずくぞ、
行衛
(
ゆくえ
)
定めぬ旅なるかも。
たき火
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
見ると、涙が眼から頬を流れて、彼の白い
髯
(
ひげ
)
をしめらせています。彼は行儀よく
頭
(
かしら
)
をふりながら、悲しそうに叫びました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
病後のやつれた顔に
髯
(
ひげ
)
を蓄え、それにヘルメット形の帽子を被った居士の風采は今までとは全然異った印象を余に与えた。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
我々——二人とも
髯
(
ひげ
)
をはやし、而も一人は大男である——の顔へ提灯を差し上げた態度を、決して忘れることが出来ない。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
御用商人は頬から
顎
(
あご
)
にかけて、一面に
髯
(
ひげ
)
を持っていた。そして、自分では高く止っているような四角ばった声を出した。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
その「お
髯
(
ひげ
)
の伯父」(
甥
(
おい
)
たちはそう呼んでいた。)の物静かさに対して、上の伯父の狂躁性を帯びた峻厳が、彼には、大人げなく見えたのである。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
何日雨に打たれてどこを
彷徨
(
さまよ
)
うていたのか、あの大きな男の頬も
悴
(
こ
)
け身体も
痩
(
や
)
せて
髯
(
ひげ
)
ぼうぼうと、そして全身はふやけて見るも無残な姿であった。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
権九郎の方は四十過ぎらしく、肥えた
髯
(
ひげ
)
だらけの丸顔はやはり赤く色付いているが、これも負けずに喋舌るのであった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
此の島へ
上
(
あが
)
ってから
最早
(
もう
)
一年余になりますから、着物は切れ、
髯
(
ひげ
)
はぼう/\として、
何
(
ど
)
う見ても人間とは思われませぬ。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ふと文三等に物理を教えた外国教師の立派な
髯
(
ひげ
)
の生えた顔を憶い出すと、それと同時にまた木目の事は忘れてしまった。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
髯
漢検1級
部首:⾽
15画
“髯”を含む語句
長髯
白髯
頬髯
頤髯
青髯
髯面
虎髯
鬚髯
疎髯
黒髯
髭髯
鼻髯
顎髯
美髯
無精髯
腮髯
髯籠
八字髯
髯武者
髯剃
...