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馴染
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なじ
ふりがな文庫
“
馴染
(
なじ
)” の例文
そしてその思いにも落ちつき、新しい周囲にも心が
馴染
(
なじ
)
んで来るにしたがって、峻には珍しく静かな心持がやって来るようになった。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
男
(
をとこ
)
は
女蕩
(
をんなた
)
らしの
浮氣
(
うはき
)
もの、
近頃
(
ちかごろ
)
は
嫂
(
あによめ
)
の
年増振
(
としまぶり
)
に
目
(
め
)
を
着
(
つ
)
けて、
多日
(
しばらく
)
遠々
(
とほ/″\
)
しくなつて
居
(
ゐ
)
たが、
最
(
も
)
う
一二年
(
いちにねん
)
、
深
(
ふか
)
く
馴染
(
なじ
)
んで
居
(
ゐ
)
たのであつた。
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
楽しみ、それは演ぜられてる芝居から受けるのではなくて、よく知ってる癖をまた見て取られる
馴染
(
なじ
)
みの役者から受けるのであった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しばらく棲んだ自分の小屋でありながら、下からしみじみ見あげる自然木の
垂木
(
たるき
)
や小枝の
木舞
(
こま
)
いはひどく
馴染
(
なじ
)
みのないものであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
吉原の仲之町、そこの夜桜よりは
桐佐
(
きりさ
)
のお才といわれたお綱の母と、まだ三十二、三であった世阿弥とは、かなり永い
馴染
(
なじ
)
みだった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
ソーリン (ステッキにもたれながら)わたしはどうも、
田舎
(
いなか
)
が苦手でな、この分じゃてっきり、一生この土地には
馴染
(
なじ
)
めまいよ。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そして今度は先にいた旅館には行かず、ずっと上京の方の、気の張らない、以前から
馴染
(
なじ
)
みのある家に往って滞泊することにした。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
また
南洲
(
なんしゅう
)
自身についていえば、
見
(
み
)
ようによりては
外貌
(
がいぼう
)
が
怖
(
おそ
)
ろしい人のようにも思われ、あるいは子供も
馴染
(
なじ
)
むような
柔和
(
にゅうわ
)
な点もあった。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
毎日
馴染
(
なじ
)
みの家をぐるぐる
回
(
まわ
)
って歩いているうちには、背中の荷がだんだん
軽
(
かろ
)
くなって、しまいに
紺
(
こん
)
の
風呂敷
(
ふろしき
)
と
真田紐
(
さなだひも
)
だけが残る。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
本郷
界隈
(
かいわい
)
の或禅寺の住職で、名は
禅超
(
ぜんてう
)
と云つたさうである。それがやはり
嫖客
(
へうかく
)
となつて、玉屋の
錦木
(
にしきぎ
)
と云ふ
華魁
(
おいらん
)
に
馴染
(
なじ
)
んでゐた。
孤独地獄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
一年足らずのうちに新吉はすっかり巴里に
馴染
(
なじ
)
んでしまった。巴里は遂に新吉に故郷東京を忘れさせ今日の
追放人
(
エキスパトリエ
)
にするまで新吉を捉えた。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
なるほどなるほど、味噌は
巧
(
うま
)
く板に
馴染
(
なじ
)
んでいるから
剥落
(
はくらく
)
もせず、よい工合に少し
焦
(
こ
)
げて、人の
※意
(
さんい
)
を
催
(
もよお
)
させる
香気
(
こうき
)
を発する。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかし、また二、三日すると、目に
馴染
(
なじ
)
んで来て、今度来た方の狆が、どうも本当の狆というものだということが分りました。
幕末維新懐古談:54 好き狆のモデルを得たはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
あれほどまでに心を許し慣れ
馴染
(
なじ
)
んで来た浦里が、これという特別の理由もないのに、彼の心に従わないのが、彼には不満でならなかった。
紅白縮緬組
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「いやあ、どうだい」医科の三番を漕いでいる背の高い西川という男が、高等学校以来の
馴染
(
なじ
)
みでこっちの窪田に話しかけた。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
ほかの女と一緒に居並んでいる
店頭
(
みせさき
)
の薄暗いなかを、
馴染
(
なじ
)
みであった日本橋の方の帽子問屋の番頭が、知らん顔をして通って行ったりした。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
太宰さんは硝子のはずれたのは天の与えとばかり、
馴染
(
なじ
)
みのスタンドへ持参し、これを交換物資として酒を所望したのである。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
二年前に船で
馴染
(
なじ
)
みになった時、二人はいろいろの事情から本当の氏名も名乗り合わず、境遇も住所も知らせずにいるうちに上海へ着いた。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
馬
(
うま
)
の
方
(
ほう
)
でも
亦
(
また
)
私
(
わたくし
)
によく
馴染
(
なじ
)
んで、
私
(
わたくし
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えようものなら、さもうれしいと
言
(
い
)
った
表情
(
ひょうじょう
)
をして、あの
巨
(
おお
)
きな
躯
(
からだ
)
をすり
附
(
つ
)
けて
来
(
く
)
るのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ふとしたことから
馴染
(
なじ
)
んだ客に、つとめを離れて惹かれて、ひそかにこの足留稲荷へ願をかけた一夜妻もあったであろう……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
よく
馴染
(
なじ
)
んでおいでにならない姫君を、父君へ渡して立って行くのも、自分らの気がかり千万なことであろうし、話をお聞きになった以上は
源氏物語:22 玉鬘
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
彼女もいつかは此の都会の自然に
馴染
(
なじ
)
む事だらうと思つてゐたが、彼女の斯かる新鮮な透明な自然への要求は遂に身を終るまで変らなかつた。
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
悪獣毒蛇でも、
馴染
(
なじ
)
めばなじめるのだから、日月星辰にも、近寄ろうとすれば近寄れない限りはないと想いつつあります。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女は元は
洲崎
(
すさき
)
かどこかに出ていて、留さんとはそこで
馴染
(
なじ
)
んだ。そのあと潮来かどこかへ変ってからも、幾たびか留さんが逢いにいったらしい。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
文章のきめの荒さや作者の身についている一つのぬーっとした
脂
(
あぶら
)
こさが、鼻にぬけるアメリカ英語と共通な反撥を感じさせるようで
馴染
(
なじ
)
めなかった。
文学の大陸的性格について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして内地に帰って来て一箇月ばかりの間に飲み
馴染
(
なじ
)
んでいた
灘
(
なだ
)
の酒に、いよいよ別れて往かなくてはならぬと云う軽いのこり惜しさを感じて来た。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私はもう四十だ。さらでも早く年を取る女の事、私は昔
馴染
(
なじ
)
んだ女の
年老
(
としと
)
つたのを見るに忍びない氣がする。強ひても見たくないと思つてゐる………
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
それへ蓋をして軽い
圧
(
お
)
しをして二時間ほど置くと中の物がよく
馴染
(
なじ
)
み合いますからそれを二寸角位に切って出します。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
一しょに行こうじゃないか。己の方ではもうその考えに
馴染
(
なじ
)
んでしまっている。アルフレットのいう事なんぞはもう
疾
(
と
)
うから己は
当
(
あて
)
にしていないのだ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
如何
(
いか
)
に
馴染
(
なじ
)
みでも、こんな遅い客を入れる事が出来ないのは明瞭だから彼はざるを積み終って電気を消そうとした。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
お菊はなかなか用心深くて、庭の樹の下なぞに
独
(
ひと
)
りで遊んでいる方で、容易に他の子供と
馴染
(
なじ
)
もうともしなかった。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
お杉は重蔵に比べると、殆ど
十歳
(
とう
)
ばかりの姉であったが、
何時
(
いつ
)
か
此
(
この
)
二人が
狎
(
なれ
)
馴染
(
なじ
)
んで、一旦は山の奥へ身を隠した。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お初も、
馴染
(
なじ
)
むうちに、いつか、相手の本体を知った。が、知ってしまうと、尚一そう、その性格や渡世にまで愛着を感じないわけにはいかなかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それは妹の子供と同級の子供で、前には集団疎開に加わって
田舎
(
いなか
)
に行っていたのだが、そこの生活にどうしても
馴染
(
なじ
)
めないので両親の
許
(
もと
)
へ引取られていた。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そして彼はどこへ行っても、自分自らのこの上もなく貧しい事と、何物とも
馴染
(
なじ
)
み得ない孤独とを感じた。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
練吉の息子の正雄はこの新しい母親に
馴染
(
なじ
)
まなかつた。それが正文夫婦には茂子の大変な欠点に見えた。正文は今ではさすがに練吉についてはあきらめてゐた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
「馬鹿をいえ。お前たちの目にも、ここが○○市だってぇことが分るはずだ。ほら向うを見ろ。幾度もいってお
馴染
(
なじ
)
みの
木馬館
(
もくばかん
)
の塔があそこに見えるじゃないか」
戦時旅行鞄:――金博士シリーズ・6――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自分はその頃もっぱら焼酎で、催眠剤を用いてはいませんでしたが、しかし、不眠は自分の持病のようなものでしたから、たいていの催眠剤にはお
馴染
(
なじ
)
みでした。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
……ハテ……どこかで聞いたような……と思い思い新聞を見るふりをして聞くともなく聞いていると、それは顔
馴染
(
なじ
)
みの警視庁のT刑事と、下宿の
女将
(
おかみ
)
の話声だった。
冗談に殺す
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
文子はそのころもう宗右衛門町の芸者で、そんな
稼業
(
かぎょう
)
とそして踊りに浮かれた気分が、幼な
馴染
(
なじ
)
みの私に声を掛けさせたといえましょうが、しかし、私は
嬉
(
うれ
)
しかった。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
奥の方に通り抜け、私の席についた。食器に麦酒がトクトクとつがれるのを眺めながら、私は此の
騒然
(
そうぜん
)
たる雰囲気に何か
馴染
(
なじ
)
めない気がした。卓が白い泡で汚れている。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
はじめは
何処
(
どこ
)
のお子さんと
訊
(
き
)
いたりして、姉妹で私の肩上げをつまんだり
袂
(
たもと
)
の振りを揃えて見たりしていたが、段々に
馴染
(
なじ
)
んで
先方
(
むこう
)
でも大っぴらに表の障子を明け
開
(
ひろ
)
げて
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
其れが
為
(
た
)
め特に
良人
(
をつと
)
の妹を地方から来て貰つて留守を任せた。子供等は叔母さんに
直
(
す
)
ぐ
馴染
(
なじ
)
んで
仕舞
(
しま
)
つた。叔母さんからの手紙は断えず子供等の無事な様子を報じて来る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
僅か三時間ほど
馴染
(
なじ
)
んだだけで、これだけの信頼を見せる右文の動作はいたく私の心をうった。部屋の隅で子守唄を歌ってやると、すぐ眠った。二十年ぶりの子守唄だった。
一つ身の着物
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
朝暮
(
あけくれ
)
馴染
(
なじ
)
んでいた柳の木の事であれば、伐るにしても、もっと伐りようがあると思うのであるが、家主方にはかえってその情けがなくって、他の木と違って柳の事であれば
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
とさりげなく調子は合わせたが、大分少年が
馴染
(
なじ
)
んできたのを見ると、ここで方向を換えた。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
以前は自分もよく彼に
馴染
(
なじ
)
んで、無二の親友であつたのだが今云ふ如く自分の反對黨のために推されて、その旗頭の地位に立つに及び小膽者の自分は
飜然
(
ほんぜん
)
として彼を忌み憎み
古い村
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
夏も平林も、そうして私の心にも赤児が乳母の乳首に
馴染
(
なじ
)
んでくれればよいと思った。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
……だが、今ジナイーダの身に
漠然
(
ばくぜん
)
と感じられる
或
(
あ
)
ること、——それには何としても
馴染
(
なじ
)
むことができなかった。……「男たらし」と、わたしの母はいつぞや彼女のことを
罵
(
ののし
)
った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
まだ
物馴
(
ものな
)
れぬときのことで、弥一右衛門や嫡子権兵衛と懇意でないために、思いやりがなく、自分の手元に使って
馴染
(
なじ
)
みのある市太夫がために加増になるというところに目をつけて
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
馴
漢検準1級
部首:⾺
13画
染
常用漢字
小6
部首:⽊
9画
“馴染”で始まる語句
馴染客
馴染甲斐
馴染効
馴染深
馴染帳