トップ
>
陥
>
おとしい
ふりがな文庫
“
陥
(
おとしい
)” の例文
旧字:
陷
お互いに怪しみ、探り合わせながら、どうしてもめぐり合う事が出来ないと言う不可思議な、気味の悪い運命に
陥
(
おとしい
)
れて行くと同時に
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
まだその他に商業上の利害の反目からフランシスコ・ザヹリオ以来日本の貿易と布教とを一手に占めてゐた
葡萄牙
(
ポルトガル
)
人を
陥
(
おとしい
)
れようとして
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
君達はいい加減のことを云って、僕を
陥
(
おとしい
)
れようとしているのだ。サア、僕をN市へ連れて行って下さい。そして雪子と対決させて下さい
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
妾
(
わたくし
)
は、法律の網を
潜
(
くぐ
)
るばかりでなく、法律を道具に使って、善人を
陥
(
おとしい
)
れようとする悪魔を、法律に代って、罰してやろうと思うのです。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
遺恨
(
いこん
)
に思って、それから後は、事ごとに、貴様たちが、わしの一家を
陥
(
おとしい
)
れようと計っていたに違いない。噂は、俺の耳に入っている
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
脅
(
おど
)
かして名刺を見せましたけど、刑事とも何とも書いて無いんですの。偽刑事が人を
罠
(
わな
)
に
陥
(
おとしい
)
れようと云う
悪企
(
わるだく
)
みなんですわ……
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
自分を死刑に
陥
(
おとしい
)
れた法律と、自分を死刑に行うべき執行人とを合せて焼き尽さなんだ事を残念に思うて居るのであろうか。
恋
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
私たちが「弓と鉄砲」の話をかつぎ廻っていた翌年には、
独墺
(
どくおう
)
合邦という爆弾的宣言が、欧洲を一挙に
驚愕
(
きょうがく
)
の
淵
(
ふち
)
に
陥
(
おとしい
)
れた。
原子爆弾雑話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「あんた詫りなさることあれしませんわ。あんたは何も知りなされへんのんです。わたしたち
陥
(
おとしい
)
れよとしてる者いますから、気イつけなさいや」
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
愛人「それは困りましたね。あなたを
陥
(
おとしい
)
れる黒幕の主人公がはっきり分って居れば、僕はその人物をミシンで
血煙
(
ちけむり
)
をたたせてやるのですがねえ」
諜報中継局
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
潜水夫を殺したのも、立花博士を窮地に
陥
(
おとしい
)
れたのも、正平爺やを殺したのも、堤防をきったのも、花井を刺したのも、みんな助手の滝山でした。
水中の宮殿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大本教
(
おおもときょう
)
は二、三年前大地震を予言して幾分我々を不安に
陥
(
おとしい
)
れたが、地震に対する防備に着手させるだけの力はなかった。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
純友は部下の藤原恒利といふ頼み切つた奴に裏斬りをされて大敗した後ですら、余勇を
鼓
(
こ
)
して一挙して
太宰府
(
だざいふ
)
を
陥
(
おとしい
)
れた。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
頗
(
すこぶ
)
る
変梃
(
へんてこ
)
な話であるが、これは大杉を窮地に
陥
(
おとしい
)
れて自暴自棄させないための生活の便宜を与える高等政策であったろう。
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
じりじりと照りつける陽の光と
腹匍
(
はらば
)
いになった塚の熱砂の熱さとが、小初の肉体を上下から
挟
(
はさ
)
んで、いおうようない苦痛の
甘美
(
かんび
)
に、小初を
陥
(
おとしい
)
れる。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
態
(
わざ
)
と知らせぬように育てたる其
報
(
むくい
)
は、女子をして家の経済に
迂闊
(
うかつ
)
ならしめ、生涯夢中の不幸に
陥
(
おとしい
)
れたるものと言う可し。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
娘時代に我が理想なぞという生意気な心を出すのは
他日
(
たじつ
)
身を不幸の地に
陥
(
おとしい
)
れる
基
(
もと
)
だとよく兄が申しますから私は決して未来の事を自分では考えません
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
ことに神尾主膳のために駒井能登守が
陥
(
おとしい
)
れられた一条を聞いて、兵馬は気の毒と腹立ちとに堪ゆることができません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
盛んに
空取引
(
からとりひき
)
の手を
拡
(
ひろ
)
めて、幾年かの間に大きな穴をあけ、さしも大身代の主家を破産の悲運に
陥
(
おとしい
)
れたものであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あるときは、ほとんど
危
(
あや
)
うかったところを
逃
(
のが
)
れられて
逆
(
ぎゃく
)
に
敵軍
(
てきぐん
)
を
陥
(
おとしい
)
れられたこと、あるときは、
重
(
おも
)
い
病気
(
びょうき
)
にかかられたのを、
神術
(
しんじゅつ
)
を
使
(
つか
)
う
巫女
(
みこ
)
が
現
(
あらわ
)
れて
北海の白鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
父親を
陥穽
(
わな
)
に
陥
(
おとしい
)
れ、一家を離散させ、母親を自害させ、限りない苦悩のどん底に投げ入れたのだと思うと、雪之丞は、只、すぐに一刀に斬り殺したのでは
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
それより進んで大軍は厩橋、沼田、松山、箕輪、河越の諸城を次々に
陥
(
おとしい
)
れ、最後に鉢形城を囲んだのである。
老狸伝
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
自白すると、突然兄から
捕
(
つら
)
まって危く死地に
陥
(
おとしい
)
れられそうになったのも、実はこういう得意の瞬間であった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おお、どうしてそれを取り除く事を余儀なくするようなはめに自らを
陥
(
おとしい
)
れたのであるか。吾々にはこの処置を弁護すべき弁護らしい弁証があり得るであろうか。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
不幸は、不思議な
寂寞
(
せきばく
)
のうちに当の人を
陥
(
おとしい
)
れるものである。一般に人は不幸を本能的に
嫌悪
(
けんお
)
する。あたかも不幸が伝染しはすまいかと恐れてるかのようである。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
僕はかくのごとき言葉を聞くと、常に
不愉快
(
ふゆかい
)
に思い、また人を
陥
(
おとしい
)
るる手段をめぐらしているなと思う気がして、この言葉に対しては常に気味が悪い感想を
懐
(
いだ
)
く。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
○同六月二十四日、京都奉行大久保伊勢守西丸留守居に転ず(長野主膳のために
陥
(
おとしい
)
れられたるなり)。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
親しくなるに従ってきぬの確信は強くなった。良三郎は優れた才能を持っている、それを周囲が認めない許りでなく、寧ろそのために、
嫉妬
(
しっと
)
の余り共同で彼を
陥
(
おとしい
)
れるのだ。
山椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
太史令は
故
(
ゆえ
)
あって
弐師
(
じし
)
将軍と
隙
(
げき
)
あり、遷が陵を
褒
(
ほ
)
めるのは、それによって、今度、陵に先立って
出塞
(
しゅっさい
)
して功のなかった弐師将軍を
陥
(
おとしい
)
れんがためであると言う者も出てきた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
自分で自分を
窮地
(
きゅうち
)
に
陥
(
おとしい
)
れて苦労をしてみるのも面白いではないか、という意見が出、更にそれが、「無計画の計画」という大沢の哲学めいた言葉にまで発展して、翌日から
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
餅を
搗
(
つ
)
いて
臼
(
うす
)
ながら猿に負わせたり、臼を
卸
(
おろ
)
さずに藤の花を折らせたり、いろいろと無理な策略をもって相手を危地に
陥
(
おとしい
)
れた話であるが、地方によっては
瓢箪
(
ひょうたん
)
と針千本とを
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
支那でも『西遊記』に烏鶏国王を井に
陥
(
おとしい
)
れ封じた道士がその王に化けて国を治む、王の太子母后に尋ねて父王の身三年来氷のごとく冷たしと聞き、その
変化
(
へんげ
)
の物たるを知り
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
sech
(
ゼッヒ
)
と
Stempel
(
シュテムペル
)
(刻印)の間に不必要な
休止
(
ポーズ
)
を置いたのですから、それ以下の韻律を混乱に
陥
(
おとしい
)
れてしまったことは云うまでもありません、何故セレナ夫人は
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
階下の工場で、一分間に数千枚の新聞紙を
刷
(
す
)
りだす、アルバート会社製の高速度輪転機が、附近二十余軒の住民を、不眠性神経衰弱に
陥
(
おとしい
)
れながら、
轟々
(
ごうごう
)
と廻転をし続けていた。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
先輩は
怒鳴
(
どな
)
りだした。当時
閥族
(
ばつぞく
)
政府へ肉薄して、政府をして
窘窮
(
きんきゅう
)
の極に
陥
(
おとしい
)
れていた野党の中でも、その中堅とせられている某党の
智嚢
(
ちのう
)
の死亡は、野党にとっての一大打撃であった。
雨夜草紙
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
けだし当時の王と称する者、皆いわゆる仁義を
仮
(
かり
)
て
覇
(
は
)
を
謀
(
はか
)
る者なり。これをもってその法王に
佞
(
ねい
)
する、彼がごとくついに世を救うゆえんのものをもって、民を
土炭
(
とたん
)
に
陥
(
おとしい
)
るるに至る。
教門論疑問
(新字新仮名)
/
柏原孝章
(著)
少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に
陥
(
おとしい
)
れて見たいような気にさえなる。そうしていつの間にか、消極的ではあるが、ある敵意をその人に対して抱くような事になる。
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「ねえ、——やっぱり僕はそう思うよ、本能寺を
陥
(
おとしい
)
れた光秀が何故京都あたりでいい気になって戦勝の夢に酔い中国からひっかえしてくる秀吉の軍勢に備えようとしなかったかというんだ」
菎蒻
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
そしてこれが私を、盗むことの余儀ない
破目
(
はめ
)
に
陥
(
おとしい
)
れた唯一の理由なのである。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「自分を推薦して貰うんでなくて、相手を
陥
(
おとしい
)
れることになるから御免蒙る」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
始のほどは
高利
(
かうり
)
の金を貸し付けて
暴利
(
ぼうり
)
を
貪
(
むさぼ
)
り、
作事
(
こしらへごと
)
を
構
(
かま
)
へて他を
陥
(
おとしい
)
れ、出ては
訴訟沙汰
(
そしようさた
)
、
入
(
い
)
ツては
俗事談判
(
ぞくじだんはん
)
の
絶
(
た
)
ゆる間も無き中に立ツて、
頑
(
ぐわん
)
として、たゞ其の
懐中
(
くわいちう
)
を
肥
(
こや
)
すことのみ
汲々
(
きふ/\
)
としてゐた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
最も同国人の
讃歎
(
さんたん
)
するところの面白い仕事は強盗である。あるいは他の部落を
陥
(
おとしい
)
れ幾人の人間を殺すことを非常な名誉と思うて居るんである。カムには強盗の歌がある。その
俗謡
(
ぞくよう
)
がなかなか面白い。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
おのが
陥
(
おとしい
)
れた
穽
(
あな
)
から左膳を引きあげるために!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
、
陥
(
おとしい
)
れおったな! この
怨
(
うら
)
みは忘れんぞう!
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
今朝、暗いうちに呼びかけられた時とは
全然
(
まるで
)
違った……否あの時よりも数層倍した、息苦しい立場に
陥
(
おとしい
)
れられてしまったのであった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
もしです! どうしても戦わんとなれば、この際、
遮
(
しゃ
)
二無二、一夜か半日の間に、長篠城を
陥
(
おとしい
)
れ、しかる後に、織田、徳川を迎えるべきでしょう
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平中は、老人を不幸に
陥
(
おとしい
)
れた
元兇
(
げんきょう
)
は自分であり、老人は何もそのことを知らずにいるのだと思うと、何と詫び言を云ってよいか分らないのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼、神尾は、自分にとって恩義のある駒井能登守を
陥
(
おとしい
)
れた小人であって、敵の片割れと言えば言えないこともない。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
暴漢は土足のまま
闖入
(
ちんにゅう
)
し、手当り次第什器を破壊し、婦人の寝室を襲い、吾輩を人事不省に
陥
(
おとしい
)
れて手籠めにした。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
妾此の頃、
智恵
(
ちえ
)
のある
怜悧
(
れいり
)
な方には、飽き/\していますの。また、その智恵を、人を苦しめたり
陥
(
おとしい
)
れたりする事に使う人達に、飽き/\していますのよ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
陥
常用漢字
中学
部首:⾩
10画
“陥”を含む語句
陥落
陥没
陥穽
欠陥
陥入
陥阱
陥込
陥欠
陥擠
陥滅
陥穴
陥穿
陥溺
陥没地震
陥没地
陥窪
陥殺
陥羂
陥隔
陥擠山
...