けみ)” の例文
あしたにはポヽロの廣こうぢに出でゝ、競馬の準備こゝろがまへを觀、夕にはコルソオの大道をゆきかへりて、店々の窓にさらせる假粧けしやうの衣類をけみしつ。
基督キリスト現れてわずかに二千年、人類は少なくも有史以来六、七千年の歳月をけみしているのであるから、その前四、五千年間は禽獣と等しき
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
徳さんは嘗て「正弘公懐旧紀事」をけみして、安政元年に米使との談判に成つた条約の連署中に、伊沢美作守の名があるのを見たと云ふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それから春秋をけみすること十幾回、モリニというとまだ天才少女のように思っているが、実はもはや三十歳の婦人であるべき筈である。
しかしまた、かつてのふみけみすれば、国難の大事に当って、私心なく、身を救国の捨て草にした無名の牢人は、どれほどあるか知れぬ。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
…………私はいろ/\な心持をけみした後で、どうも眼がえて眠られなかつた。ふいにごとりとTの寝返りを打つのが聞えた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
世の中は不患議なもので、わたしもそのまま死にもせず、あれから幾十いくその寂しさ厭苦つらさをけみした上でわたしは漸々ようよう死にました。
皆敬い、なずいていたが、日もたず目を煩って久しくえないので、英書をけみし、数字を書くことが出来なくなったので、弟子は皆断った。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わがくに皇統連綿、天地ときわまりなし。しかして上世のふみけみするに、天孫降臨すというもの、これを今日にちょうすれば、はなはだ疑うべきがごとし。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
遠くで細部はよく見えなかったが人生をけみして来たあじわいが美貌のうちに沈んでしまって実に何ともいえぬ顔のようであった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
文筆生活に這入はいってから、氏は年をけみしていない。で氏は飽迄あくまでも自分自身を、アマチュアを以て任じて居られる。で氏は時々云われるのである。
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
滄桑五十載そうそうごじっさいけみしたのちでも、秋山図はやはり無事だったのです。のみならず私も面識がある、王氏の手中に入ったのです。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
朝六時半病牀びょうしょう眠起。家人暖炉だんろく。新聞を見る。昨日帝国議会停会を命ぜられし時の記事あり。繃帯ほうたいを取りかふ。かゆわんすする。梅の俳句をけみす。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ニクエサがパナマ地峡に植民地を作って苦労した時まで十年をけみしているのであるが、この地峡の狭いことを突きとめようとした人は一人もなかった。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
自由な今暗澹あんたんたる時をけみしている。ローマ法王らは理性の光を禁じている。パリーの法王らは天の光を消している。
それが一つ一つの全きものになりましたなら、一つ一つの生涯になりましたなら、その人は千万の生涯をけみする事が出来ましょうではございませんか。
日露戦争の終った年の暮、彼は一の心的革命をけみして、まさに東京を去り山に入る決心をして居た時、ある夜彼は新橋停車場の雑沓ざっとうの中に故人を見出した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
苦労をするとか、喜怒哀楽をけみするとかいふことはさて置き、なんの為めに理想なんぞを持つてゐるのだらう。明日は己を知つてゐるものがみな死んでしまふ。
その間、年をけみする二十八、巻帙かんちつ百六冊の多きに達す。その気根の大なるは東西古今にりんを絶しておる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
大田南畝おおたなんぽが先人自得翁の墓誌を見るに、享保二十年七月、将軍吉宗公中川狩猟の時徒兵の游泳をけみするや自得翁水練すいれんに達したるを以て嘉賞する処となりしといふ。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
されど峯の方へ走り行くを見て始めて安堵あんどの思ひをし、案内と共にかの処に来りて其跡をけみするに、怪獣のふん樹下にうづたかく、その多きこと一箕いっきばかりあり
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
頃来このごろ書肆駸々堂主人一小冊を携えて来り、居士に一言をかんせん事を望む、受て之をけみすれば、即ち三遊亭圓朝氏のえんぜし人情談話にんじょうばなし美人びじん生埋いきうめを筆記せるものなり。
松の操美人の生埋:01 序 (新字新仮名) / 宇田川文海(著)
しかしまた郷里のような地理的に歴史的に孤立した状態で長い年月をけみして来た国の民族の骨相には
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いつもかう云ふ場合にはセルギウスは一種の内生活の争闘をけみしてゐる。殊に本堂で勤行をするとなると、その争闘を強く起してゐる。争闘と云ふのは別ではない。
私たちもこうして暮して、九年の月日がけみされたことを痛切に感じました。そんないろんなことから思いかえせば、あの夕立、やっぱりなかなか可愛いと思います。
唖然あぜんたる対馬守の顔へ、宗匠は相変わらず、百年をけみした静かな笑みを送りながら、また筆をとって
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
幾世紀かの年月をけみするうちに、いつしか、つめたく冷え切ってしまったように思われるのだった。
初雪 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
何たる節操なき心ぞ、わずかに八年の年月をけみしたばかりであるのに、こうも変ろうとは誰が思おう。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
獨逸等ドイツとうおと名高なだか國々くに/″\名所めいしよ古跡こせき遍歴へんれきして、其間そのあひだつきけみすること二十有餘箇月いうよかげつ大約おほよそまん千里せんり長途ながたびあとにして、つひ伊太利イタリーり、往昔むかしから美術國びじゆつこく光譽ほまれたか
一切経いっさいきょうひらけみすること数遍に及び、自宗他宗の書物眼に当てないというものはなかった。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
元より、歌舞伎役者の常として、色子いろことして舞台を踏んだ十二三の頃から、数多くの色々の色情生活をけみしている。四十を越えた今日までには幾十人の女を知ったか分らない。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
人その擬する所とならざるや、彼は全幅の憤怒を挙て、これに加えずんばまず。試みに彼が当時の文稿をけみせよ、その交友中、何人なんぴとか彼の怒鋒どほう罵刃ばじんに触れざるものあるか。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
人類は幾多の世紀をけみするうちに、いつしかピラミッド形に積まれてしまった。そして高きにある者と低きにある者とを問わず、このピラミッドの内部に置かれた者こそわざわいである。
あるひは秘かな烈しさにみちた変化をけみして行つたか、——十指にあまらうといふ大海人ノ皇子の妃や次妃や夫人たちの間にあつて、姫王の位置がどのやうに移り変つて行つたか
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
時代をり時代に順応して、八十幾歳の長い生涯に複雑な経歴をけみしつつ、しかも平凡に、そのために更に自由に身を処して、未亡人として思うままの享楽も為尽しつくして、晩年は二
私は斯の如くして『ホトトギス』の塾生諸君を引連れて四、五十年の月日をけみした。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
又王が孝孺を送るの詩に、士をけみはなはだ多し、我は希直を敬すの句あり。又其一章に
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
家に帰へりて「奥の細道」をけみするに、蕉翁は左の如く松島に於てしるせり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ナポレオンがロングウッドの住居において臨終の苦悶をけみしつつある間に、ワーテルローの平野に倒れた六万の人々は静かに腐乱してゆき、彼らの平和のあるものは世界にひろがっていった。
そして病人の身の上にも、側に付いている女の身の上にも、ある新時期の来たのを認めた。それは人間が深い感動をけみした跡で到達する時期である。その時期には希望もなければ恐怖もない。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
汝また善く汝の理學をけみせば、いまだ幾葉ならざるに汝等のわざのつとめて
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
戦後の混乱の文化機構の中に、この大組織網としての図書館構造の形成の中核として立ち上りつつあるわが国立国会図書館は、まことに容易ならざる三年間を、ここにけみしたというべきであろう。
またほとんどかぞえることのできない歳月としつきけみしたということでございます。
春風秋雨半世紀以上をた今日に於てこれをけみして見ると、その中でなんぼも実績が挙がっていないのに一驚を喫する。今日これを回想すれば爾来有為の活動時代に私は何をして過ごして来たのか。
... ただに実用に益なきのみならず、かえつて害を招かんも、また計るべからず」という立場から、「英亜えいあ開版の歴史地理誌数書をけみし中にいて西洋列国のじょうを抄約し、毎条必ずその要を掲げて、史記、政治、 ...
福沢諭吉 (新字新仮名) / 服部之総(著)
此邊は秋已に深く、萬樹霜をけみし、狐色になつた樹々の間に、イタヤ楓は火の如く、北海道の銀杏なる桂は黄の焔を上げて居る。旭川から五時間餘走つて、汽車は狩勝驛かりかちえきに來た。石狩十勝の境である。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
前篇を書いてから、いつしか五年の歳月がけみしている。
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)
のち明治二十三年に保さんは島田篁村しまだこうそんうて、再びこの『論語』を見た。篁村はこれを細川十洲ほそかわじっしゅうさんに借りてけみしていたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
旅劵をけみする國境には、けふも洞穴の中に山羊の群をなせるあり。されどフエデリゴが筆に上りし當時の牧童は見えざりき。
爾来じらい七八年をけみした今日こんにち、保吉の僅かに覚えているのは大きい粟野さんの右の手の彼の目の前へ出たことだけである。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)