ろく)” の例文
『玉勝間』の記事は石見の人の書信または談話をろくしたものらしいが、島の大きさは周五里、岸は皆懸崖けんがいなり、浜田より五里といえど遠しとある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
日記というよりは、何となくあらさがし、不平ろくといったようなもののできるのは、第一に書くものの恥になります。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
むかふの主人しゆじんもおまへ姿すがためてるさうにいたぞと、ろくでもなきすりごと懶怠者なまけもの懶怠者なまけものだ、れは懶怠者なまけもの活地いくぢなしだとだいそべつて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ろくちゃん——そういう名まえでした——は、転校して来てまだ間もないとき、何か話してみろといわれて、躊躇するところなく落語を一つやりました。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
或る日、わたしはそれの目ろくながめながら、せめて百分の一べうぐらゐまでのシヤツタア裝置そうちのある三四十円の寫眞器しやしんきはうとおもつて、さう心をきめた。
ろくちゃんが行方不明になった時刻と二時間もちがっていることや、博士の家の女中が、不良少年の出てゆく後ろ姿を見ていたということ、しかも、昨日きのうになって
少年探偵呉田博士と与一 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
度牒は人の家をいでて僧となるとき官のゆるして認むる牒にて、これ無ければ僧も暗き身たるなり。三張の度牒、一には応文おうぶんの名のろくされ、一には応能おうのうの名あり、一には応賢おうけんの名あり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
雪の奇状きじやう奇事きじ大概たいがいは初編にいだせり。なほ軼事てつじあるを以此二編にしるす。すでに初編にのせたるも事のことなるは不舎すてずしてこれろくす。けだし刊本かんほん流伝りうでんひろきものゆゑ、初編をよまざるものためにするのあり。
雪の奇状きじやう奇事きじ大概たいがいは初編にいだせり。なほ軼事てつじあるを以此二編にしるす。すでに初編にのせたるも事のことなるは不舎すてずしてこれろくす。けだし刊本かんほん流伝りうでんひろきものゆゑ、初編をよまざるものためにするのあり。
私に金を持たせると、ろくな事はあるまいと、わざ/\金を持たしてやつて、質に入つて居る田地を受けて下すつたのです。——私は大地をこの額で叩いて、江戸の御主人におびをしました。
友人いうじん松井通昭まつゐつうせうわが七福しちふくえいずるのうたせらる。ろくするものこれなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
野々宮さんは目ろく記号しるしけるために、隠袋かくしへ手を入れて鉛筆をさがした。鉛筆がなくつて、一枚の活版ずり端書はがきた。見ると、美禰子の結婚披露の招待状であつた。披露はとうにんだ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
佐藤さとうさいの『言志げんしろく』にいわ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
へき がん ろく
茶の本:02 訳者のことば (新字新仮名) / 村岡博(著)
廣小路ひろこうぢいづればくるまもあり、阿關おせき紙入かみいれより紙幣しへいいくらか取出とりいだして小菊こぎくかみにしほらしくつゝみて、ろくさんこれはまこと失禮しつれいなれど鼻紙はながみなりともつてくだされ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
で、方なく小西、淺沼あさぬましんどうあたりから寫眞器しやしんきの目ろくりよせたりして、いはば高の花のいゝ寫眞器しやしんきの挿説明せつめいなどをむことによつて、持を慰さめてゐた。
「で、ろくちゃんは帰ってきたの?」
少年探偵呉田博士と与一 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
伯母おばさんをもはや安心あんしんさせておあげなさりまし、かげながらわたしいのります、うぞ以前いぜんろくさんにおりなされて、お立派りつぱにおみせをおひらきにりますところせてくだされ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あの手せい暗箱あんはこをこしらへたころ、毎日目ろくながめてはたのしんでゐたころ車の疾走しつそうなどを大さわぎでうつしてよろこんでゐたころ、それらをおもひ返すと、わたしむねには何かしらへんさびしさがいてくる。
「馬鹿にしていらあ、僕なんかもう中学の三年じゃないか、もう二ヶ月もたったら四年で、来年は高等学校へはいるんじゃないか。だけれど、ほんとうに、あの文房具屋の子供がさらわれちゃったのかい? あの子はろくちゃんといってね、可愛い子だったよ」
少年探偵呉田博士と与一 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
何時通つても覗かれて、あゝ高坂かうさかろくさんが子供であつたころ、學校の行返ゆきもどりに寄つては卷烟草のこぼれを貰ふて、生意氣らしう吸立てた物なれど今は何處に何をして
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何時通つてものぞかれて、ああ高坂かうさかろくさんが子供であつたころ、学校の行返ゆきもどりに寄つては巻烟草のこぼれを貰ふて、生意気らしう吸立てた物なれど、今は何処に何をして
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
新聞しんぶんながらあきなひするのとおもふてもたれど、はからぬひとゑんさだまりて、親々おや/\ことなればなん異存いぞんいれられやう、烟草たばこやろくさんにはとおもへどれはほんの子供こどもごゝろ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)