“逗留:とうりゅう” の例文
“逗留:とうりゅう”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治25
中里介山17
夏目漱石13
泉鏡花11
島崎藤村7
“逗留:とうりゅう”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語3.6%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
福島の役人衆もずっと逗留とうりゅうしていて、在郷の村々へ手分けをしては催促に出かけたが、伊那の人足は容易に動かなかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたくしもも少し逗留とうりゅうして、お話もいたしましょうし、ごあんばいのいいのを見て帰りたいのでございますが——」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そうだ。わたしたちはこの小屋に逗留とうりゅうするほかはない。ぶくろのひもをかたくしめておく、それだけのことだ。
さてお話ですが、当時私は避寒旁々かたがた少し仕事を持って、熱海あたみ温泉のある旅館に逗留とうりゅうしていました。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
廊下や風呂場で出逢う逗留とうりゅうの客も、三度の膳を運んで来る旅館の女中たちも、毎日この同じ挨拶を繰り返している。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雨のために、やむなく逗留とうりゅうする友だちを慰めようとして、やがて半蔵は囲炉裏ばたから奥の部屋へやの方へ香蔵を誘った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
名倉の父は二週間ばかり逗留とうりゅうして、東京の学校の方へ帰るお福を送りながら、一緒に三吉の家をって行った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
打見るところ、何か、出張の目的あって、自分よりも以前にこの家に逗留とうりゅうしつつ、その所用を果しつつあるのだな。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
新羅使の一行が、対馬つしま浅茅浦あさじのうら碇泊ていはくした時、順風を得ずして五日間逗留とうりゅうした。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それからそこへ逗留とうりゅうしておるうちに私が長い間連れて歩いた二ひきの羊がくなったという始末なんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「持病とあれば左程さほど案じることもなかろう、なおるまで逗留とうりゅうして、それから出発せらるるがい」
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「この上なく愉快なご逗留とうりゅうをいのります。」とかれは足をうしろへ引いておじぎをしながら、やぎのなくような声を出した。
阿部一族は評議の末、このたび先代一週忌の法会ほうえのために下向して、まだ逗留とうりゅうしている天祐和尚にすがることにした。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一行は諏訪に三日逗留とうりゅうし、同勢四百人ほどをあとに残して置いて、三留野みどの泊まりで木曾路を上って来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ある町場に近い温泉場ゆばへつれて行った時、父親はそこで三日も四日も逗留とうりゅうして、しまいに芸者をあげて騒ぎだした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
問題の今の新お代官、つまり、仮りに自分が逗留とうりゅうしているところの主人が、この芸妓に目をつけて、ものにしようとしている。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「お同伴つれはまだ気を失っておるようじゃの。まあ、こんなところだが、ゆるゆる逗留とうりゅうして、からだの回復をお待ちなせえ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
僕はカビ博士の努力によって、ようやく考古学の標本または実験動物として、この世界に逗留とうりゅうを黙認されている次第しだいだ。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その商いをする所に三日ばかり逗留とうりゅうして見て居りましたところが、誠につまらない話が一つ起って参りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
信濃屋の番頭は宿帳をしらべて、その客は上州太田のざいの百姓甚右衛門四十二歳で、去年の暮の二十四日から逗留とうりゅうしていた。
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おりからの悪病流行で、あの大名ですら途中の諏訪すわに三日も逗留とうりゅうを余儀なくせられたくらいのころだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬籠の方に彼女を待つ夫ばかりでなく、娘のことも心にかかって、そう長くは生家さと逗留とうりゅうしなかった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
主人あるじと妻と逗留とうりゅうに来て居る都の娘と、ランプを隅へしやって、螢と螢を眺むる子供を眺める。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「それでは私と同じ事、一眼お前様を見た時から、あの恋しく思いまして、主人の金を持ちながら、ついうかうかと逗留とうりゅうし、……」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……ですから、私は嬉しくなって、どこを見物しないでも、翌日も一日、ゆっくり逗留とうりゅうの事と思ったのです。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父は旅の毛布ケットやら荷物やらを田辺の家の奥二階でほどいて、そこで暫時しばらく逗留とうりゅうした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「きのうまで手前共に逗留とうりゅうでしたが、いつまでも手がかりが無いので、いったん江戸へ帰ると云って、今朝ほどお立ちになりました」
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
河の見える家に逗留とうりゅうして、皆なで一緒に時を送るということが、何よりお種母子おやこには楽しかった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
四日程逗留とうりゅうして、台所だいどこをしたり、裁縫しごと手伝てつだったり、折から不元気で居た妻を一方ならず助けて往った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
父はわたくしの家へ来て、少し長逗留とうりゅうになると、母は窮屈がって、釣にでも行ってらしてはと勧めました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この二十九日には、信長が安土を立つと聞いては、光秀もさすがに、ここ七日間の逗留とうりゅうを顧みて、心をせかれずにはいられなかった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日はこの温泉宿に逗留とうりゅうしているものばかりでなく、よそからも退屈顔な男女が呼ばれて来て、一切無礼講で遊ぶことに成った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「まあ当分そこに逗留とうりゅうするがいい。だが町もいい加減かげん見飽みあきたろうから、消してやろう」
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆっくり古市ふるいち逗留とうりゅうして、それこそついでに、……浅熊山あさまやまの雲も見よう、鼓ヶたけ調しらべも聞こう。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いいんにゃ、名古屋の人じゃねえ、暫く名古屋へ逗留とうりゅうしてから、やがて京大阪の方へ行ってみるのだ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あそこには長くおりましたよ、十日も逗留とうりゅうして、毎日、波ばかり描いていました。これがその波です」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかもその朝東京から出掛けて来た自分たちと軽井沢に逗留とうりゅうしていられる寺田さんたちとが、こうして同じ電車に落ち合ったのである。
寺田さんに最後に逢った時 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
するとそこに細君と年齢からその他の点に至るまで夫婦として、いかにも釣り合のいい男が逗留とうりゅうしていまして細君とすぐ懇意になります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は東海道を一息ひといきに京都まで来て、そこで四五日用足ようたしかたがた逗留とうりゅうしてから、同じ大阪の地を踏む考えであった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「何か、お前が出会でっくわした——黒門に逗留とうりゅうしてござらしゃるわけえ人が、手鞠てまりを拾ったちゅうはどこらだっけえ。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうすると、学校や家の都合で逗留とうりゅうできない私は、何にも見ないで帰らなければならないことになる。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そこは大きい町だから、ひじょうに悪い天気で五、六にち逗留とうりゅうしても、少しは興行こうぎょうつづけて回る見こみがあった。
思ったとおり、磯五はまだ逗留とうりゅうしているとのことだったが、そのときは、家にいないようすであった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
逗留とうりゅう三日、張松はこの城中にもてなされて、しかも一日でも一刻でも、不愉快なことは覚えなかった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勉の旅舎やどやはさ程離れてもいなかったし、それに名倉の母が逗留とうりゅう中なので、用達ようたしついでに来ては三吉の家へ寄った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
逗留とうりゅう中は勿論もちろん彼方あっちまかないも何もそっくりて呉れるはずであるが、水夫を始め日本人が洋食に慣れない
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
寺に逗留とうりゅうしているうちに遊びに来た猟人かりうどの案内で、三日分ほどの食糧を携帯したままで、山を分けて入り込んでしまったのです。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「私こそはこの家の主人あるじ。ようこそお出でくだされました。ゆるゆるご逗留とうりゅうあられるよう」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二十一日、この日もまた我が得べき筋の金を得ず、今しばらく待ちてよとの事に逗留とうりゅうと決しける。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
岸本は七日ばかりもこの旅の人を自分の許に逗留とうりゅうさせて置いた。その七日の後には、この落魄らくはくした太一の父親を救おうと決心した。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「私だって何だか、はじめて会った人のようには思えませんよ。——まだ永く逗留とうりゅうするんですか」
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
珠運しゅうんも思いがけなく色々の始末に七日余り逗留とうりゅうして、馴染なじむにつけ亭主ていしゅ頼もしく、おたつ可愛かわゆ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
仏頂寺、丸山は名うての者、逗留とうりゅうの冬籠りの連中も、それよりは異なった意味において、一癖も、二癖もありそうだから、無事では済むまい。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この海を写し得なければ、かの両神を描き出すことができない。願わくばここに逗留とうりゅうすること幾日、大眼を開いてこの海を見なければならぬ。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その宿に、一人、越中の氷見ひみの若い男の、商用で逗留とうりゅう中、茶の湯の稽古けいこをしているのに、茶をもてなされたと記してあります。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、深く注意もしなかったが、外に待っていた男は、編笠をかぶり、背丈せいもすがたも、離室に逗留とうりゅうしている若い武家とちがいなかった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうです、江戸のあのお医者の先生にも少し逗留とうりゅうしていただいて、あの先生をひとつ長浜から、大津まで送りがてら、お雪ちゃん、拙者をはじめ
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ご勅使、大原卿おおはらきょうの、供の内に加わって、後月あとげつから参っているが、ご逗留とうりゅうが永いので、吾々は毎日欠伸あくびだ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今から最早もう数年前すねんぜん、その俳優やくしゃが、地方を巡業して、加賀かが金沢市かなざわし暫時しばらく逗留とうりゅうして
因果 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
ちょうどあれから一年半余——武蔵は先に逗留とうりゅうし残した江戸へこれから出るつもりなのである。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時分はまだ一個のそう、家も二十軒あったのが、娘が来て一日二日、ついほだされて逗留とうりゅうした五日目から大雨が降出ふりだした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ここが阿蘇なら、あした六時に起きるがものはない。もう二三日にさんち逗留とうりゅうして、すぐ熊本へ引き返そうじゃないか」と碌さんがすぐ云う。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一揆の起こった翌日には代官所の役人も出張して来たが、村民らはみなみな中津川に逗留とうりゅうしていて、容易に退散する気色けしきもなかったとか。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ちょうどこの時に、この富永屋という宿屋に、一人の年増としまの女が逗留とうりゅうしていました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
心にかなって逗留とうりゅうもしようなら、用いて書見をなさいまし、と夜食の時に言ってくれた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あなた方は、この土地のお方でございますか、それとも、逗留とうりゅうのお客なのでございますか」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、秀吉は来意も聞いていないのに、逗留とうりゅう客でもねぎらうように独り合点してからすすめた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女の云うところによると、目的の人は静養のため、当分そこに逗留とうりゅうしているのであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この宿の居心のいいのにつけて、どこかへのつらあてにと、逗留とうりゅうする気になったのである。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夏二た月の逗留とうりゅうの間、自分はこの花瓶に入り替りしおらしい花を絶やしたことがなかった。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
河野はそれを縁にして時おり宮地翁の許へやって来て、二三日逗留とうりゅうしてゆくこともあった。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、しばらくの逗留とうりゅうを頼み、関羽も姓名や郷地を名乗って、将来の高誼こうぎを仰いだ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お島は四五日の逗留とうりゅうに、金を少し取寄せる必要を感じていたので、その事を、留守を頼んでおいた若い職人に頼んでから、そう言っていざなった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「お玉に違いない、お玉が、また逗留とうりゅうのお客様に呼ばれて間の山節を聞かせに行くのだ」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伊勢参りから帰り、お絹はそのお墓参りをしてここに逗留とうりゅうすることも久しくなりました。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いや、このかまど部屋は暖かくていいから、しばらく逗留とうりゅうさせておいてもらおう」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土地の誰かが、鉄道の開通した当座に、長い逗留とうりゅうの客を当て込んで建てた家であった。
機関車 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
自分は雨のプラットフォームの上で、二三日箱根あたりで逗留とうりゅうするはずのお貞さんを見送ったあと、父や兄に別れてひとり自分の下宿へ帰った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
聞けば、夫人は一週間ばかり以前から上京して、南町の桐楊塾に逗留とうりゅうしていたとの事。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ。ようやくなれて来たが、あまりながくここに逗留とうりゅうしていると、病気になるね」
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さて珠運しゅうん様、あなたの逗留とうりゅうも既に長い事、あれ程ありし雪も大抵はきえ仕舞しまいました、此頃このごろの天気の
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
当時この町に逗留とうりゅうしていたピョートル・アレクサンドロヴィッチ・ミウーソフが、むしょうにこのフョードル・パーヴロヴィッチの思いつきに賛成した。
しかし、もう若松屋の女番頭として、金勘定や帳簿を見ているわけではなく、いわば客分として、若松屋惣七のいうままに、逗留とうりゅうしているかたちだった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ところが法務の都合で二人は偶然、京都に落合ってしばらく逗留とうりゅうする事になりました。
茶屋知らず物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
沢庵が胸に持って来たことは、こうして江戸城逗留とうりゅう中に、一つ一つ片がついて行った。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「遠国から、わざわざ来る衆も多いそうな。逗留とうりゅうしてみやげばなしに、見て行こうか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「長談義、ちと飽いた。——用がなくば、また来い。まだ当分は、都に逗留とうりゅうであろう」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その義経は今、鎌倉にはいなかった。使いの途中、近江の佐々木ノ庄に逗留とうりゅうしていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渡り縁をこえた宝蔵坊の一棟に、上泉伊勢守は、もうだいぶ長いこと逗留とうりゅうしている。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松島の風景を写さんがために逗留とうりゅうの画家が、当座の女中として、雇い入れたようにして宿をとり、白雲は駒井の紹介で、瑞巌寺の典竜老師を訪れたものです。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「だが男だろう、そりゃ。まさか女一人で逗留とうりゅうしているなんてえのはなかろう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「江戸趣味だか、呉服屋趣味だか知らないが、それから僕は爺さんとおおい肝胆相照かんたんあいてらして、二週間の間面白く逗留とうりゅうして帰って来たよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして、石町こくちょう旅人宿りょじんやど小山屋に、江州ごうしゅうの豪家垣見左内公儀に訴訟の筋あって出府したと称して逗留とうりゅうすることになった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「そんなに長く逗留とうりゅうする気なんですか。あぶねえ。およしなせえ。益もねえった。ろくでもねえものに引っかかって、どんな目に逢うか解りませんぜ」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さきおとといの二十九日の夜から、そこは右大臣信長の宿営となり、彼らにとっても、この日本で一番怖い人間が、つい目と鼻のさきに逗留とうりゅうしているからである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しばらくこの二要素を文学の方へかためて申しますと、推移の法則は文学の力学として論ずべき問題で、逗留とうりゅうの状態は文学の材料として考えるべき条項であります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
西郷さいごうの町に逗留とうりゅうしていた際に、宿の近くの大社教の分院に何か祝い事があって、島名物の村相撲むらずもうが、大層な景気で村々から乗り込んできた。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
二十年ぜんに其地を引き払い候儘、両度の上京に、五六日の逗留とうりゅうの外は、全く故郷の消息にうとく、万事不案内に候えば到着の上は定めて御厄介の事と存候。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
叔母が湯治に行く時、叔父も湯治場まで送って行って二、三日逗留とうりゅうした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「おいで、さあ、夜が明けると人が見るぜ。出後でおくれた日にゃあ一日逗留とうりゅうだ、」と言いながら、片手にともしを釣って片手で袖を引くようにして連込んだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)