ねら)” の例文
ぼくおもふに、いつたい僕等ぼくら日本人にほんじん麻雀マージヤンあそかた神經質しんけいしつぎる。あるひ末梢的まつせうてきぎる。勿論もちろんあらそひ、とらへ、相手あひてねら勝負事しようぶごとだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
兵馬は無論、これが敵とねらう机竜之助であろうとは夢にも知るはずがない、ただ扱いにくい竹刀かなと内心にいささかれ気味です。
丈助は今度は突こうかとねらって居る処へバタ/\/\/\と駈けて来ましたのは山口屋の音羽でございますが、此の足音を聞き附け
という意味で、アルミ弁当箱の内側にゼラチンのようなものをひいて置くと、奇妙に飯粒が附着しないことをねらった特許願である。
科学時潮 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
その間にかたきねらう上野介の身に異変でもあったらどうするかと、一に仇討の決行を主張するものとがあって、硬軟両派に分れていた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
「わざと此家をねらって来たんです、出口をふさがれてしまってね、大目附の私宅なら安全だと思って、逆に虎穴を選んだわけですよ」
めおと蝶 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうしてペンキ塗の交番をたてに、巡査の立っている横から女の顔をねらうように見た。そうしてその表情の変化にまた驚ろかされた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
米噛こめかみは興奮にふくれているし——月丸の隙をねらっていたが、微かな不安と、恐怖とがあって、突込んで行けば、抜討を食うかもしれないし
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
逞ましい枝振の羽根飾はねかざりをした遊苑に、深緑の廣々した芝生の上で、竿の端に置いた木製の鳥をねらつて火繩銃の射的をしてゐる。
石工 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
庄三郎はそれから富士権現ふじごんげんの前へ往った。ほこらの影から頬冠ほおかむりした男がそっと出て来て、庄三郎にねらい寄り、手にしている出刃で横腹をえぐった。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お互に黙つて歯を食ひしばつてゐて、そしてお互に肉体的に精神的にひとつになることをねらつてゐるやうなものではないか。
三月の創作 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
村の子供をいじめて、子供の持っている銭を取上る、町へ出ては商家あきないやの隙をねらって品物を盗んで来る。だからこの吉太を善く言うものはなかった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まるで、空巣ねらいのようにあたりをうかがいながら、ソロソロと小舎をぬけ出すと、一散に庭を駆け抜け、待たしてあったタクシイに飛び乗って
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
東片町にすまった頃、近所に常磐津を上手に語る家があった。二葉亭は毎晩その刻限をねらっては垣根越しに聞きに行った。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
何時いつまで経っても大久保家から召し還しの使者が来ないばかりでなく、反対に刺客を放って、山浦丈太郎をねらっているという噂さえ立ち始めました。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
恐ろしい大蛇のような者から附けねらわれてでもいるかのように気味悪るがって、矢もたてもなく不安でたまらなかった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
かれちひさな怪我人けがにんから聯想れんさうしてれも毎日まいにちにはねらつて與吉よきちうれした。かれ脚力きやくりよくおよかぎ歸途きといそいだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
尚、むかしから言い伝えられている男の急所をも一応は考えてみたけれども、これはやはり下品な気がして、傲邁ごうまいな男のねらうところではないと思った。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
矢もたてもたまらずにねらいをつけた異性へと飛びついて行くのであったが、やがて生活が彼女の思いあがった慾望に添わないことが苦痛になるか、または
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
機会をねらっていたが、大元竜ヶ馬場方面ももろく敗退した為、大元と大聖院との間の竜ヶ馬場と称する山上へ登り
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これまでなりと観念したる白糸は、持ちたる出刃を取り直し、躍り狂う内儀ののんど目懸めがけてただ一突きと突きたりしに、ねらいをはずして肩頭かたさきりたり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吾助は得たりと太刀たち振上ふりあげたゞ一刀に討たんとするやお花は二ツと見えし時友次郎がえいと打たる小柄こづか手裏劍しゆりけんねらたがはず吾助が右のひぢに打込みければ忽ち白刄しらは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「正月」の句と「水無月」の句とは、全くいつにするわけではないが、ほぼ同じような点をねらっている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ル・ヴァーヤンも、みずから鳥が四フィートばかり隔てて、蛇にねらわるるを見しに、身体痙攣ひきつりて動く能わず。
そのねらうところはいうまでもなく指揮権発動の実現によって法務大臣、次官はもとよりのこと、検事総長をはじめ検察庁の主な責任者を一人残らず引責辞職せしめ
彼が待ち設けていたのは——もっとも、その後はどうなるかわからないが——たとえば、アンリ・マルタンあらわすところの歴史大全れきしたいぜんが、ねらあやまたず飛んで来ることだった。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
いっそのこと早稲田の自邸から出てくる大隈をねらおうという気にもなったが、しかし、人通りのうすい場所で、そのあたりには身をひそめるところのないことがわかると
風蕭々 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
けれど、存外これが坂田の思ひであつたのかも知れない。はじめにぼんやり力を抜いて置いて、敵に無理攻めさせて、その隙に反撃を加へるといふねらひであつたかも知れない。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
之が法廷に於ける被告の多数だ。之を悪意がないと云つても、法律は許さない。社会の秩序が許さない。中にも今日こんにちの郵便窃盗の如く、最初から隙をねらつて居たものは論外である。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
彼の生命をねらわぬとも限らなかった。そのためには、羅卒を配備し守衛を増員した。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
佳い塩梅に、ねらって来た招牌の蔭に、立籠って、辰公は、ラジオを享楽して居る。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
いま相手はほんとになたを振上げて彼の手をねらっているのだ。彼は縋りつくように、その男の眼を波間から見上げる。眼だけで、縋りつくように、波間から……波間から……波間から……。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
引っくって、こんどは他の者がねらう。それは、谷の途中で沈んでしまった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海軍の無能によってナポレオンの計画は実行一歩手前に於て頓挫し、英国は墺、露を誘引して背後をねらわしめた。ナポレオンは一八〇五年八月遂に英国侵入の兵を転じて墺国征伐に決心した。
戦争史大観 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
鯉をねらふ大鳶が両翼を傾けて池の上空に巨大な橢円形を描いてゐる。あたし達は桑の木の蔭に身を潜めて、徐ろに下降する敵機の姿に眼を凝らしてゐると、やがて、「二百米!」と命令がくだる。
鵞鳥の家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
吉里がこちらを見ておらぬすきねらッては、眼を放し得なかッたのである。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
されどかくそろひて好き容量きりよういまだ見ずと、静緒は心に驚きつつ、蹈外ふみはづせし麁忽そこつははや忘れて、見据うる流盻ながしめはその物を奪はんとねらふが如く、吾を失へる顔は間抜けて、常は顧らるるかたちありながら
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
海上をさまよい歩いて、ねらったり盗んだりするがい。9460
雪隠の下の河童のねらふものは、しりこだまであつた。
河童の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
真ン中をねらって矢先やさきに力あり
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
根気よく附けねらっておった。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
米友はそこやここをウロウロと歩いて、戸の節穴や壁の隙間をねらっていました。誰かに見つかればまさしく泥棒の仕業であります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
僕はそこをねらい、一旦封印をして表口を閉じた上で、側方の壁から特設の冷水装置をつきだして棺桶の焼けるのを防ぐ仕掛けを作った。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「なに、危ないのは一ノ関のほうですよ」と七十郎が笑った、「貴方にだけ云っておきますがね、里見老が一ノ関をねらっているんです」
あの小便がややともすると眼をねらってしょぐってくるようだ。逃げるのは仕方がないから、どうか小便ばかりは垂れんように致したい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして心持に餘裕の生じてくると共に、そろそろ中學生らしい惡戲性が働き出して、意地惡く何かの隙をねらひ始めたのである。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
彼は銃を持ちなおして雑木ぞうきにかくれて松の下の方へ往った。そして、ねらいを定めて火縄を差した。強い音がしてたまの命中した手応てごたえがあった。
怪人の眼 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
益満は、ぴったりと、屋根の上へ、腹を当て、這い延びて、短銃たんづっを、棟瓦の上から、小藤次の家の方へ、ねらいをつけていた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「与市は金蔵に次いで店中の幅利きで、内々升屋の身上をねらっていた上、主人の女房のお蔦にも気があったそうです」
この男は沖縄人で相貌そうぼうが内地人らしくないのでうからねらわれていたのだそうだと、当人が後に来ての話である。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)