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とりこ
ふりがな文庫
“
虜
(
とりこ
)” の例文
クリストフはユーディットの利己心を、その冷血を、その凡庸な性格を、見て取った。彼はすっかり
虜
(
とりこ
)
になってしまう
隙
(
ひま
)
がなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その未練をこの頃考へ出すのをなるべく避けてゐて、而も私はそれにすつかり
虜
(
とりこ
)
にされ、容赦なく
苛
(
さいな
)
まれ虐げられてゐたのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
ショウが「人と超人」を書いた一九〇三年には自覚のある少数の男が生物的な(生の)力に
虜
(
とりこ
)
になることを恐れ、それに抵抗した。
人間の結婚:結婚のモラル
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
保名
(
やすな
)
の
家来
(
けらい
)
は
残
(
のこ
)
らず
討
(
う
)
たれて、
保名
(
やすな
)
も
体中
(
からだじゅう
)
刀傷
(
かたなきず
)
や
矢傷
(
やきず
)
を
負
(
お
)
った上に、大ぜいに
手足
(
てあし
)
をつかまえられて、
虜
(
とりこ
)
にされてしまいました。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
十三連隊が
虜
(
とりこ
)
にした、ロスケの
赤鬚
(
あかひげ
)
が、練兵場の仮小屋の中に入れられる、というので、私達は村の人達と一緒に見に行った。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
▼ もっと見る
このところまったく私も烈しい煩悩の
虜
(
とりこ
)
となり果てていたのであったが、さて、そうした夜がおよそ幾晩くらいも続いた頃であったろうか。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
縄なくて
十重
(
とえ
)
に
括
(
くく
)
る
虜
(
とりこ
)
は、捕われたるを
誇顔
(
ほこりがお
)
に、
麾
(
さしまね
)
けば来り、
指
(
ゆびさ
)
せば走るを、他意なしとのみ弄びたるに、奇麗な葉を裏返せば毛虫がいる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
建築を通して見た古い昔の民族の素朴な魂と単純な感情に、極めて
雄渾
(
ゆうこん
)
で
溌溂
(
はつらつ
)
とした生命が
溢
(
あふ
)
れてゐるのに、彼は精神を
虜
(
とりこ
)
にされてしまつた。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
払えども去らぬ、蛇の様な執念の
虜
(
とりこ
)
であった。そして、わしは人を殺した。アア、わしは世にも恐ろしい殺人者なのだ。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さうかと思ふと、
仏蘭西
(
フランス
)
の女の兵隊と
独逸
(
ドイツ
)
の兵隊とが
対峙
(
たいぢ
)
してゐる、独逸の兵隊は
虜
(
とりこ
)
にした幼児を
楯
(
たて
)
にして
控
(
ひか
)
へてゐる。
近頃の幽霊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
結局はどうしても彼女の
虜
(
とりこ
)
になるのではないかと、自分ながらも一種の不安を感じて来たので、努めて彼女に接近するのを避けているのであるが
半七捕物帳:33 旅絵師
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「いまに
肋骨
(
あばら
)
が折れるかもしれないぜ、男が恋の
虜
(
とりこ
)
になると我を忘れるからな、——さあ云えよ、おまえはなに者なんだ、つなはどこにいるんだ」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ははあん、この女はやはり俺をすっかり
虜
(
とりこ
)
にした気で得意なんだが、おぬいさんに少々プライドを傷けられているな……ひとつやってやるかな」
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
清正は更に開城を経た後大陸を横断して西海岸に出で、
海汀倉
(
かいていそう
)
に大勝し長駆
豆満江
(
とまんこう
)
辺の会寧に至った。此処で先の臨海君順和君の二王子を
虜
(
とりこ
)
にした。
碧蹄館の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
また或時は欲求した
染着
(
せんちやく
)
した心の
虜
(
とりこ
)
となつて、美しいものすぐれたものに向つてその魂を浪費した。かれは本当なもの真剣なものの探検者であつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
考えてみるが
可
(
いい
)
。第一敵のために
虜
(
とりこ
)
にされるというがあるか。抵抗してかなわなかったら、なぜ切腹をしなかった。
海城発電
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
こんな人間はまず少ないであろうが、これとよく似た係蹄に我れとわが手にかかって人の
虜
(
とりこ
)
になり生き恥をさらす人は実に数え切れないほど多数である。
映画雑感(Ⅲ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ははあ、これだな、先刻、御簾の間の、闇にひとりぽっちの
爛酔
(
らんすい
)
の客、しきりに
囈語
(
うわごと
)
を吐いて後に、小兎一匹を
虜
(
とりこ
)
にしてとぐろを巻いて
蠕動
(
ぜんどう
)
していた客。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
が、越王
勾践
(
こうせん
)
は、
会稽
(
かいけい
)
の一戦にやぶれて、呉王の
虜
(
とりこ
)
になり、呉城の土牢に入れられて、幾年かすぎていた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は
我儘
(
わがまま
)
になり、もっとも放縦な気まぐれにふけり、まったく手におえない激情の
虜
(
とりこ
)
となってしまった。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
「横須賀の軍港へこの塔をもっていくと、ワタクシたちまるでわざわざ
虜
(
とりこ
)
になりにいくようなものです」
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
青年が新刊書を喜ぶということはその知識欲の
旺盛
(
おうせい
)
を示すものであって排斥すべきことではないが、しかしそこにはまた単なる好奇心の
虜
(
とりこ
)
になる危険もあるのである。
如何に読書すべきか
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
「イヤ、さような儀ではない。いたって野育ちの女芸人、余にチト考えがあって、かように
虜
(
とりこ
)
にいたしておくのじゃ。
側女
(
そばめ
)
などでは断じてない。安心せい、安心せい」
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そう云うわけで、その後のことは少しも存じませんでしたが、そうこうする内に、今度は文麻呂様御自身がすっかりその娘の恋の
虜
(
とりこ
)
になってしまわれたらしいのです。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
愚直な爺は先達をあの怖ろしい忿怒の
虜
(
とりこ
)
にさせたのが彼自身であることを
迂濶
(
うかつ
)
にも知らない。男はいよいよ火花のように燃え上って、元三の襟首をぎゅっと掴み寄せた。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
今日のごとき不埒な神職に愛国心や民の元気を鼓吹せしめんと謀るは、何ぞ梁の武帝が敵寇至るに沙門を集めて『摩訶般若心経』を講じて
虜
(
とりこ
)
となり餓死せしに異ならん。
神社合祀に関する意見
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私はそれの
虜
(
とりこ
)
となっている。それは私を翼でおおい、あらゆる
襞
(
ひだ
)
で抱きしめる。その
花崗岩
(
かこうがん
)
の壁に私を閉じこめ、その鉄の錠の下に私を幽閉し、その看守の目で私を監視する。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「あなたは自然の
虜
(
とりこ
)
となりました。あなたは、永遠に人間の世界に帰ることは出来ません」
空中征服
(新字新仮名)
/
賀川豊彦
(著)
クララの風にも堪えないような
華奢
(
きゃしゃ
)
な美しさはシューマンを
虜
(
とりこ
)
にした最大の原因ではなかった。天才少女クララの練達無比なピアノも、シューマンの傾倒の全部ではなかった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
田代 僕は、だから、
虜
(
とりこ
)
も同然だ。しかし、罪はお前さんばかりにあつたんぢやない。
昨今横浜異聞(一幕)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
どんな珍しいものを見るかと思って……段々海へ乗出して
往
(
ゆ
)
く
中
(
うち
)
には、
為朝
(
ためとも
)
なんかのように、海賊を
平
(
たい
)
らげたり、
虜
(
とりこ
)
になってるお姫さまを助けるような事があるかも知れませんからね。
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
龐涓
(
はうけん
)
自
(
みづか
)
ら・
智
(
ち
)
窮
(
きは
)
まり
兵
(
へい
)
敗
(
やぶ
)
るるを
知
(
し
)
り、
乃
(
すなは
)
ち
(五七)
自剄
(
じけい
)
して
曰
(
いは
)
く、『
遂
(
つひ
)
に
(五八)
豎子
(
じゆし
)
の
名
(
な
)
を
成
(
な
)
せり』と。
齊
(
せい
)
、
因
(
よ
)
つて
勝
(
かち
)
に
乘
(
じよう
)
じて
盡
(
ことごと
)
く
其軍
(
そのぐん
)
を
破
(
やぶ
)
り、
魏
(
ぎ
)
の
太子
(
たいし
)
申
(
しん
)
を
虜
(
とりこ
)
にし
(五九)
以
(
ゐ
)
て
歸
(
かへ
)
る。
国訳史記列伝:05 孫子呉起列伝第五
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
土寇の群は
掠奪
(
りゃくだつ
)
をほしいままにして、家を焼き、
巌穴
(
いわあな
)
に
匿
(
かく
)
れている者まで捜し出して、殺したり
虜
(
とりこ
)
にしたりしていったのであった。甘の家ではますます阿英を徳として、神のように尊敬した。
阿英
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「この自分を
虜
(
とりこ
)
にできるならしてみるがいい! 己だけはならないぞ!」
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
垣根の真中から不意に生ひ出して来た野生の
藤蔓
(
ふぢづる
)
が人間の
拇指
(
おやゆび
)
よりももつと太い蔓になつて、生垣を突分け、その大樹の松の幹を、
恰
(
あたか
)
も
虜
(
とりこ
)
を捕へた綱のやうに、ぐるぐる巻きに巻きながら
攀
(
よ
)
ぢ登つて
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
「全くヘロインの
虜
(
とりこ
)
になっちまったんだ!」と幹太郎は思った。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
「お二人とも、きょうは
虜
(
とりこ
)
よ」
予言
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ヨジアス・クリングとラウベルとは、クリストフを
虜
(
とりこ
)
にしようと思って、最初彼に向かって敬意に満ちた態度を示した。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「おれの罪じゃないぜ、おまえがおれをこんな気持にさせたんだ、こんな狂暴な恋の
虜
(
とりこ
)
にさ、そこでひとつ云ってもらおう、つなはどこにいるんだ」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
北川氏は決して現実の
毒蜘蛛
(
どくぐも
)
に
噛
(
か
)
まれた訳ではなかった。
併
(
しか
)
し、毒蜘蛛にもまして恐ろしい執念の
虜
(
とりこ
)
となっていた。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
考へて見るが
可
(
いい
)
。第一敵のために
虜
(
とりこ
)
にされるといふがあるか。抵抗してかなはなかつたら、
何故
(
なぜ
)
切腹をしなかつた。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
直助はこれから魔力のある食べものを探して来て、それを
餌
(
えさ
)
にして私を
虜
(
とりこ
)
にしようとするものではないかしらん。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
唯その幸之助が留吉の
虜
(
とりこ
)
とならずに、どこへ姿を隠したか、それを詮議しなければならないと吉五郎は思った。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この化け物を
虜
(
とりこ
)
にしてやろう、人間が少し馬鹿だから、虜にするには
誂
(
あつらえ
)
むきだ、いよいよ当座のよいおもちゃが出来たものだと、主膳の興が湧き上りました。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それが友だちと二人で悪漢の銀行破りの現場に
虜
(
とりこ
)
になって後ろ手に縛られていながら、巧みにナイフを使って火災報知器の導線を
短絡
(
ショート
)
させて消防隊を呼び寄せるが
映画雑感(Ⅳ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私には彼がある異常な種類の恐怖の
虜
(
とりこ
)
になっているのがわかった。「僕は死ぬのだ」と彼は言うのだった。「こんな
惨
(
みじ
)
めなくだらないことで僕は死なねばならんのだ。 ...
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
自分は
虜
(
とりこ
)
だから、腰をかける訳に行かない。草の上に
胡坐
(
あぐら
)
をかいていた。足には大きな
藁沓
(
わらぐつ
)
を
穿
(
は
)
いていた。この時代の藁沓は深いものであった。立つと
膝頭
(
ひざがしら
)
まで来た。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
悪右衛門
(
あくうえもん
)
もとうとう
和尚
(
おしょう
)
さんに
言
(
い
)
い
伏
(
ふ
)
せられて、いったん
虜
(
とりこ
)
にした
保名
(
やすな
)
を
放
(
はな
)
してやりました。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「わん、わん、
御妹
(
おいもとご
)
様の御姫様は
笠置山
(
かさぎやま
)
の
洞穴
(
ほらあな
)
に
棲
(
す
)
んでいる
土蜘蛛
(
つちぐも
)
の
虜
(
とりこ
)
になっています。」
犬と笛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
第一に、そしてジャヴェルの主要な懸念もその事にあったが、彼はそこに
虜
(
とりこ
)
になってた男を捕えることができなかった。逃走する被害者は加害者よりも更に疑わしいものである。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
虜
常用漢字
中学
部首:⾌
13画
“虜”を含む語句
捕虜
俘虜
囚虜
虜囚
生虜
虜将
虜兵
醜虜
胡虜
虜首
虜掠
虜獲
肉虜
討虜将軍
辺塞遮虜鄣
遮虜鄣
黠虜
艶虜人
老虜将
破虜
...