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芥子
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けし
ふりがな文庫
“
芥子
(
けし
)” の例文
下水の桶から発散する臭気や、
葱
(
ねぎ
)
や、
山椒
(
さんしょう
)
や、
芥子
(
けし
)
などの支那人好みの野菜の香が街に充ち充ちた煙りと共に人の嗅覚を麻痺させる。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
右手には、塗香と、加持物、房花、扇、箸、三種の護摩木を置き、左手には、
芥子
(
けし
)
、丸香、散香、薬種、名香、切花を置いてある。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
法海和尚は「今は老朽ちて、
験
(
しるし
)
あるべくもおぼえ
侍
(
はべ
)
らねど、君が家の
災
(
わざわい
)
を
黙
(
もだ
)
してやあらん」と云って
芥子
(
けし
)
の
香
(
か
)
のしみた
袈裟
(
けさ
)
を
執
(
と
)
りだして
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
芥子
(
けし
)
の実ほどの
眇少
(
かわいら
)
しい
智慧
(
ちえ
)
を両足に打込んで、飛だり
跳
(
はね
)
たりを夢にまで見る「ミス」某も出た。お乳母も出たお
爨婢
(
さんどん
)
も出た。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
鉄条網の間から赤い
芥子
(
けし
)
の花が夏草の中に交って咲き出ているのも、血を連想させるというよりはもっと深い意味に於いて美しく感じられた。
ヴェルダン
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
▼ もっと見る
麦の中に
芥子
(
けし
)
の花の咲いたのは
畢
(
つひ
)
に偶然と云ふ外はない。我々の一生を支配する力はやはりそこにも動いてゐるのである。
西方の人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「お手の筋だ。しかし、
売女
(
ばいた
)
のお品と江戸前のお綱とは
芥子
(
けし
)
に
牡丹
(
ぼたん
)
ほどの違いがある。すぐ片ッ方は追い返してしまった」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
以上の文句の通りに軽々と疱瘡痲疹の大厄を済まして
芥子
(
けし
)
ほどの
痘痕
(
いも
)
さえ残らぬようという縁喜が軽焼の売れた理由で
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
君は、
芥子
(
けし
)
つぶほどの蟹を見たことがあるか。芥子つぶほどの蟹と、芥子つぶほどの蟹とが、いのちかけて争っていた。私、あのとき、
凝然
(
ぎょうせん
)
とした。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
狭いはずの十七字の天地が案外狭くなくって、仏者が
芥子
(
けし
)
粒の中に三千大千世界を
見出
(
みいだ
)
すようになるのであります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「誰だい」こう云って振返ると、
濛々
(
もうもう
)
たる湯気の中に卵のように白い
膚
(
はだ
)
と
芥子
(
けし
)
の花のように赤いものが見えた。
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
五町ほど沖合に、
芥子
(
けし
)
の花のような薄赤い色が浮き沈みしている。波にゆりあげられてチラと見えたと思うと、すぐ次の波のしたに沈んでしまうのだった。
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
だから将門が火の手をあげると、八箇国はべた/\となつて、京では七
斛余
(
こくよ
)
の
芥子
(
けし
)
を調伏祈祷の
護摩
(
ごま
)
に
焚
(
た
)
いて、将門の
頓死屯滅
(
とんしとんめつ
)
を祈らせたと
云伝
(
いひつた
)
へられて居る。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
だから
芥子
(
けし
)
の種の中に、須弥山を発見することは出来るのであつて、すぐれた作の不朽的価値は、箇の中にその金剛不壊なる全、法、自然を包んでゐるからである。
孤独と法身
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
そこには人の
衣
(
きぬ
)
を染めるような濃緑の草や木が高く
生
(
お
)
い茂っていて、限りもないほどに広い花園には、人間の血よりも
紅
(
あか
)
い
芥子
(
けし
)
の花や、鬼の顔よりも大きい百合の花が
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何故
(
なぜ
)
、その、それだけの姿が、もの狂おしいまで私の心を乱したんでしょうか。——大宇宙に咲く小さな花を、
芥子
(
けし
)
粒ほどの、この人間、私だけが見たからでしょうな。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夕景に
蚊遣
(
かやり
)
を焚いて居る様子、庭の方を見ると、下らぬ花壇が出来て居りまして、其処に
芥子
(
けし
)
や
紫陽花
(
あじさい
)
などが植えて有って、
隣家
(
となり
)
も遠い所のさびしい
住居
(
すまい
)
でございます。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
法師も
即
(
やが
)
て
詣
(
まう
)
でなんとて、
三七七
芥子
(
けし
)
の
香
(
か
)
にしみたる
袈裟
(
けさ
)
とり出でて、庄司にあたへ、
畜
(
かれ
)
を
三七八
やすくすかしよせて、これをもて
頭
(
かしら
)
に打ち
帔
(
かづ
)
け、力を出して押しふせ給へ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「莫迦らしいとはお思いになりませんか。推摩居士が、真実竜樹の化身ですのなら、何故南天の鉄塔を破った時のように、七粒の
芥子
(
けし
)
を投げて、密室を破らなかったのでしょう」
夢殿殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
丁度われわれが子供の頃食べた
金米糖
(
こんぺいとう
)
を作る時、砂糖をとかした中へ
芥子
(
けし
)
の実を入れて動かしていると、その芥子の実が芯となってそれに砂糖が附いて金米糖が生長するように
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
風俗問題とか女子の服装問題とかいう議論が守旧派の人々の間にはかまびすしく持ち出されている間に、その反対の傾向は、
殻
(
から
)
を破った
芥子
(
けし
)
の
種
(
たね
)
のように四方八方に飛び散った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
極込細工
(
きめこみざいく
)
の
尉
(
じょう
)
と
姥
(
うば
)
や、
西京
(
さいきょう
)
の
芥子
(
けし
)
人形、伏見人形、
伊豆蔵
(
いずくら
)
人形などを二人のまわりへ綺麗に列べ、さま/″\の男女の姿をした首人形を二畳程の畳の目へ数知れず挿し込んで見せた。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
見よ、彼は自らの
芥子
(
けし
)
の種子ほどの智識を
以
(
もっ
)
てかの無上土を測ろうとする、その論を更に今私は繰り返すだも
恥
(
は
)
ずる処であるが実証の為にこれを
指摘
(
してき
)
するならば彼は斯う云っている。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼女の蒼ざめた顔が迫ってくる、皺ばんだ枯れた腕をさし伸ばしている、それから、おずおず多勢の押しひしがれてる母たちの中へ呑みこまれてゆく、
芥子
(
けし
)
粒のように小さくなる——。
歩む
(新字新仮名)
/
戸田豊子
(著)
船橋から千葉の方の浅瀬から始まつて、川崎沖横浜近くで終る。
芥子
(
けし
)
の花が咲くと始める。八十八夜過ぎである。私の方では七月いつぱいは釣れる。浅瀬へ産卵にやつて来るのであらう。
夏と魚
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
真
(
ほん
)
ものゝ植物以上に生々と浮き出てゐる草花が染付けられてゐる鉄
辰砂
(
しんしゃ
)
の水差や、
掌
(
てのひら
)
の中に握り隠せるほどの大きさの中に、恋も、嘆きも、男女の
媚態
(
びたい
)
も大まかに現はれてゐる
芥子
(
けし
)
人形や
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
寺の門に近づくに人群集せり。
何故
(
なにゆえ
)
ならんと
訝
(
いぶか
)
りつつ門を入れば、
紅
(
くれない
)
の
芥子
(
けし
)
の花咲き満ち、見渡すかぎりも知らず。いよいよ心持よし。この花の間に
亡
(
な
)
くなりし父立てり。お前もきたのかという。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ある晩方、つひ見たことのない、七八つ位のお
芥子
(
けし
)
坊主が庭へ来て
仲のわるい姉妹
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
桜の種子にても大根の種子にても
芥子
(
けし
)
の種子にても、これを発育してその中より梅の葉や花を現ぜしむることができそうのものであるのに、そのできざるは、梅の葉や花は梅の種子の中に具していて
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
かのひとは しろき
芥子
(
けし
)
の花のごとく
蛇の花嫁
(新字旧仮名)
/
大手拓次
(著)
どこともなく、
芥子
(
けし
)
の花が
死落
(
しにお
)
ち
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
芥子
(
けし
)
の花咲や傘ほす日の移り 烏水
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
つごもりや由なき
芥子
(
けし
)
の花あかり
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
散りて
後
(
のち
)
悟るすがたや
芥子
(
けし
)
の花
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
お
芥子
(
けし
)
の
頭
(
かみ
)
が
水
(
みづ
)
の
面
(
も
)
に
どんたく:絵入り小唄集
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
途中に
芥子
(
けし
)
を
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
芥子
(
けし
)
ちるか
秋の日
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
二三本の赤い
芥子
(
けし
)
の花を見せてやったさ、小供の心はすぐその花へ来た、小供は手を
延
(
の
)
べて
執
(
と
)
ろうとしたが執れない、そこで
雨夜草紙
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
信ずるものに対しては、いかなる疑惑も、いかなる悪魔もその力を揮ふことが出来ない。さうすれば我の中に世界の人間がある。
芥子
(
けし
)
の中に
須弥山
(
しゆみせん
)
があるのである。
解脱非解脱
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
蛍
(
ほたる
)
の尻の真珠、
鸚鵡
(
おうむ
)
の青い舌、永遠に散らぬ
芥子
(
けし
)
の花、
梟
(
ふくろう
)
の
耳朶
(
みみたぶ
)
、てんとう虫の爪、きりぎりすの奥歯、海底に咲いた梅の花一輪、その他、とても此の世で入手でき難いような貴重な品々を
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
諺
(
ことわざ
)
にも“
芥子
(
けし
)
は針の穴にも入る”とか。はしなくも
草簪
(
くさかんざし
)
の女の眼から事は重大になって行った。
沂水県
(
きすいけん
)
の県役署では、その日、村名主の密訴に接して、ただならぬ動きを俄に見せだしている。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其の胆の小なる
芥子
(
けし
)
の如く其の心の弱きこと芋殻の如し、さほどに貧乏が苦しくば、
安
(
いずくん
)
ぞ其始め
彫闈
(
ちょうい
)
錦帳の中に生れ来らざりし。破壁残軒の下に生を
享
(
う
)
けてパンを
咬
(
か
)
み水を飲む身も天ならずや。
おばけずきのいわれ少々と処女作
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ある時は河童のお
芥子
(
けし
)
坊主と畑の中で酒盛をしてゐた話もあります。
青い眼の人形
(新字新仮名)
/
野口雨情
(著)
寺の門に近づくに人群集せり。何ゆゑならんといぶかりつつ門を入れば、
紅
(
くれなゐ
)
の
芥子
(
けし
)
の花咲き満ち、見渡す限りも知らず。いよいよ心持よし。この花の間に亡くなりし父立てり。お前も来たのかといふ。
遠野物語
(新字旧仮名)
/
柳田国男
(著)
麦畑の萌黄天鵞絨
芥子
(
けし
)
の花五月の空にそよ風のふく
芥川竜之介歌集
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
どこともかく、
芥子
(
けし
)
の花が
死落
(
しにお
)
ち
心の姿の研究
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一三六
芥子
(
けし
)
たき
明
(
あか
)
すみじか夜の
牀
(
ゆか
)
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
緑蔭を出れば明るし
芥子
(
けし
)
は
実
(
み
)
に
五百句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
褄
(
つま
)
させ、てふ、
肩
(
かた
)
させ、と
鳴
(
な
)
きます
中
(
なか
)
に、
草
(
くさ
)
ですと、
其
(
そ
)
の
底
(
そこ
)
のやうな
處
(
ところ
)
に、
露
(
つゆ
)
が
白玉
(
しらたま
)
を
刻
(
きざ
)
んで
拵
(
こしら
)
へました、
寮
(
れう
)
の
枝折戸
(
しをりど
)
の
銀
(
ぎん
)
の
鈴
(
すゞ
)
に、
芥子
(
けし
)
ほどな
水鷄
(
くひな
)
が
音
(
おと
)
づれますやうに、ちん、ちん……と
幽
(
かすか
)
に
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
芥子
(
けし
)
たき
明
(
あか
)
すみじか夜の
牀
(
ゆか
)
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
“芥子”の意味
《名詞》
(かいし、がいし、からし)カラシナの種子。香辛料、薬用に用いる。特に漢方医学では「がいし」と呼ばれる。
(けし)ケシ科ケシ属に属する一年草。阿片の原料。
(出典:Wiktionary)
芥
漢検準1級
部首:⾋
7画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“芥子”で始まる語句
芥子粒
芥子坊主
芥子菜
芥子粉
芥子焼
芥子玉
芥子種
芥子園画伝
芥子劫
芥子屋