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稚
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おさな
ふりがな文庫
“
稚
(
おさな
)” の例文
それは俳句には限らぬが、総ての技芸について見ても、始めの
稚
(
おさな
)
い時は同一の団体に属して居るものはほぼ同一の径路をたどって行く。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
K—は、郷里では名門の
子息
(
むすこ
)
で、
稚
(
おさな
)
い時分、笹村も学校帰りに、その広い邸へ遊びに行ったことなどが、
朧
(
おぼろ
)
げに記憶に残っていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「それではお
暇
(
いとま
)
いたしましょう。
稚
(
おさな
)
い事を、
貴僧
(
あなた
)
にはお恥かしいが、明さんに一式のお
愛相
(
あいそ
)
に、手毬をついて見せましょう、あの……」
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
稚
(
おさな
)
い者に話す時には、稚い者にもわかるように、よく噛んで話してくれるのが、慈円座主の偉さであった。都という話が出た時に
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『女大学』という書に、「婦人に三従の道あり、
稚
(
おさな
)
き時は父母に従い、
嫁
(
よめ
)
いる時は夫に従い、老いては子に従うべし」と言えり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
本堂の前を過ぎ
庫裏
(
くり
)
と人家との間の路地に入るに、迂回して金剛寺坂の中腹に出でたり。路地の中に
稚
(
おさな
)
き頃見覚えし車井戸なほあるを見たり。
礫川徜徉記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
私たちも一面に
蒲公英
(
たんぽぽ
)
や
土筆
(
つくし
)
の生えている堤の斜面に腰を下して、橋の袂の掛茶屋で買った
餡
(
あん
)
パンをかたみに食べた。私たちもまだ
稚
(
おさな
)
かった。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
もとよりこの書には、ことにその初めの頃のものは
稚
(
おさな
)
く、かつ若さに伴う
衒気
(
げんき
)
と感傷とをかなりな程度まで含んでいる。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
今度新潮文庫に入れるに際し、読みかえしてみたが、十年前の文章など
稚
(
おさな
)
く
拙
(
つたな
)
い。しかし、これもその時期の記念と思ってそのままにしておいた。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
もちろんまだ
稚
(
おさな
)
かった日本が老大支那の文物に触れはじめたのは、恐しく早い昔からであった。漢字漢文を理解し得たのも決して遅いことではない。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
まだ
稚
(
おさな
)
そうだし、背中には美しい縞を持っているが、動作も緩慢なうえにひどくもの憂げな眼つきをしていた。
松風の門
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
されど我国の人は
稚
(
おさな
)
きより
目
(
め
)
なれたる事なればめづらしからず、
垂氷
(
つらゝ
)
を
吟詠
(
ぎんえい
)
に入るものなし。右のつらゝ
明
(
あか
)
りにさはるゆゑ
朝毎
(
あさごと
)
に
木鋤
(
こすき
)
にてみな打おとさす。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
やがて湧き立つ様に野をこめる
蛙
(
かえる
)
の声が、どんなにめずらしくなつかしく、かやの
稚
(
おさな
)
い心をそそる夜も、秋祭りの野太鼓が、しきりに響いて渡る頃であっても
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして
稚
(
おさな
)
い女の子の気まぐれのように、ふと思い出して風炉の釜に湯を沸かして、薄茶を立てて飲ましたりした。そして、そこにある塗り物の菓子箱を指さして
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
美しい娘も老いて
俤
(
おもかげ
)
が変ったのであろう。私の
稚
(
おさな
)
い眼には格別の美人とも見えなかった。店の入口には小さい庭があって、飛石伝いに奥へ
這入
(
はい
)
るようになっていた。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
巻三(二九〇)に、「倉橋の山を高みか
夜
(
よ
)
ごもりに出で来る月の光ともしき」とあるのも全体が似て居るが、この巻七の歌の方が、何となく
稚
(
おさな
)
く素朴に出来ている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
今こうして
市井
(
しせい
)
の巷を庶民に
伍
(
ご
)
してもまれもまれて
徒歩
(
ひろ
)
っているのを誰ひとり知るものもないという、
稚
(
おさな
)
い、けれども満ちたりたよろこびなどはすこしもなかった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
多弁な惟光は相手を説得する心で
上手
(
じょうず
)
にいろいろ話したが、僧都も尼君も少納言も
稚
(
おさな
)
い女王への結婚の申し込みはどう解釈すべきであろうとあきれているばかりだった。
源氏物語:05 若紫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
どれもこれも一様に日本語がかなり出来るのも、妙にその発音が
稚
(
おさな
)
い子供のように寂しかった。
ヒッポドロム
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
皆家元の家来もしくは書生同様に育てられるので、
稚
(
おさな
)
いうちは学校に遣ってもらう、
傍
(
かたわ
)
ら兄弟子から芸を仕込まれたり、自分で研究したりする。つまり一種の天才教育である。
能とは何か
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
花が
発
(
ひら
)
くのと同じで、万象の色が真の瞬間に改まる、槍と穂高と、
兀々
(
ごつごつ
)
した
巉岩
(
ざんがん
)
が、先ず浄い天火に洗われて
容
(
かたち
)
を改めた、自分の踏んでいる脚の下の
石楠花
(
しゃくなげ
)
や
偃松
(
はいまつ
)
や、白樺の
稚
(
おさな
)
いのが
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
稚
(
おさな
)
い
詩心
(
リリスム
)
のほかに、なにかもっと別な意味があるのではないだろうか、って……。
キャラコさん:08 月光曲
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
稚
(
おさな
)
きより金の不自由は知らで育てし身が、何に感じてやらそれはそれは尋常ならぬ心得方、五厘の銅貨を二つにも三つにも割りて遣ひたしといふほどの心意気、溜めた上にも溜めて溜めて
心の鬼
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
いつの頃か、まだひどく
稚
(
おさな
)
い子供だった自分が、丁度これに似た気持を味わったことがあった。めざす目的に向っていながら、どう手をおろすべきかについてなかなか心が定まらなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
更に
稚
(
おさな
)
きもの、商人、学生、教員、画家、牧畜家、官吏、玄人筋らしい老婆と娘、各種の中流階級の人々が、仰向き、横向き、斜め向き、手を曲げ、足を蹴ぬき、
潜
(
くぐ
)
まり、反り出し、歯をむき
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
百足山
(
むかでやま
)
昔に変らず、
田原藤太
(
たわらとうた
)
の名と共にいつまでも
稚
(
おさな
)
き耳に響きし事は忘れざるべし。湖上の景色見飽かざる間に彦根城いつしか後になり、
胆吹山
(
いぶきやま
)
に綿雲這いて
美濃路
(
みのじ
)
に入れば空は雨模様となる。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
銀行員だった幾田君の青白い坊っちゃん坊ちゃんした顔を
憶
(
おも
)
いだしながら原稿をめくった。「退屈な町」というのが題名で、
馬糞
(
ばふん
)
に汚れた
此
(
この
)
町の事をスケッチしたものだが、まだ
稚
(
おさな
)
い作品だった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
そんなことを想いだすままに泡鳴に説明した。また鶴見の
稚
(
おさな
)
かった時分には、
表
(
おもて
)
二階に意気な婆あさんがいて、折々三味線の音じめが聞える。町内の
若衆
(
わかいしゅ
)
を相手に
常磐津
(
ときわず
)
でも
浚
(
さら
)
っていたのだろう。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
切って逃げたのは私です。その女は私の
稚
(
おさな
)
友達だったのですから
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
出代
(
でがわり
)
や
稚
(
おさな
)
心に物あはれ
嵐雪
(
らんせつ
)
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
最終に右の条々
稚
(
おさな
)
き時より能く訓う可し云々、今の代の人、女子に衣服道具など多く与えて婚姻せしむるよりも此条々を云々
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
衣笠
(
きぬがさ
)
のふき
颪
(
おろし
)
は、
小禽
(
ことり
)
の肌には寒すぎた。チチチチチ野に啼く声も
稚
(
おさな
)
く聞えて耳に寒い。人々は、
鞘
(
さや
)
の中の刀から腰の冷えて来る心地がした。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
道具屋は、
稚
(
おさな
)
いのを
憐
(
あわ
)
れがって、嘘で
庇
(
かば
)
ってくれたのであろうも知れない。——思出すたびに空恐ろしい気がいつもする。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いつも学校でみんなから変な目で見られて
憂鬱
(
ゆううつ
)
になっている長女の身のうえか、それとも
稚
(
おさな
)
い次女に何か起こったのかと、瞬間目先きが
晦
(
くら
)
んだようだった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
八重わが
家
(
や
)
に来りてよりはわが
稚
(
おさな
)
き時より見覚えたるさまざまの
手道具
(
てどうぐ
)
皆手入よく綺麗にふき清められて
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「千枝松という名はあまりに
稚
(
おさな
)
げじゃと仰せられて、お師匠さまが千枝太郎と呼びかえて下された。しかも泰親の一字を分けて、元服の朝から
泰清
(
やすきよ
)
と呼ばるるのじゃ」
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三月の末、
雲雀
(
ひばり
)
が野の彼処に声を落し、太陽が
赫
(
あか
)
く森の向うに残紅をとどめていた。森の樹々は、まだ短くて
稚
(
おさな
)
い芽を、ぱらぱらに立てていた。風がすこし寒くなって来た。
兄妹
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
稚
(
おさな
)
い時から肯かぬ気性だったが、三人張を引いて敵無しとは驚いた、と舌を巻いたのである。
粗忽評判記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は私の実際生活の上に落ちかかったこの大問題に貧しい
稚
(
おさな
)
い思想をもって面接することを、どんなに心細くもおぼつかなくも思ったであろう。苦しんでも悶えてもいい考えは出なかった。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
我が
稚
(
おさな
)
かりし時におもひくらべて見るに、今は物の
模様
(
もやう
)
を
織
(
お
)
るなど
錦
(
にしき
)
をおる
機作
(
はたどり
)
にもをさ/\
劣
(
おとら
)
ず、いかやうなるむづかしき
模様
(
もやう
)
をもおり、
縞
(
しま
)
も
飛白
(
かすり
)
も甚上手になりて
種々
(
しゆ/″\
)
の
奇工
(
きかう
)
をいだせり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
とある杉垣の内を
覗
(
のぞ
)
けば立ち並ぶ墓碑
苔
(
こけ
)
黒き中にまだ生々しき
土饅頭
(
どまんじゅう
)
一つ、その前にぬかずきて合掌せるは二十前後の女三人と
稚
(
おさな
)
き女の子一人、いずれも身なり
賤
(
いや
)
しからぬに
白粉気
(
おしろいけ
)
なき耳の根色白し。
半日ある記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
稚
(
おさな
)
い金作は読みかけの「外史」から上気した瞳をあげた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
無理はない、無理はない! この子たちには、酒飲みで無理解で乱暴な男親はあるが、貧しい中にも、
稚
(
おさな
)
い心を温めてくれる女親の肌がない。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さる継母に養わるる姉上の身の思わるるに、いい知らず悲しくなりて、かくはわれ小銀の
譚
(
ものがたり
)
に泣きしなる。その
理由
(
いわれ
)
を語るべき我が舌は余り
稚
(
おさな
)
かりき。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかしてその布局は和蘭陀
銅板画
(
どうばんが
)
を模倣したる
稚
(
おさな
)
き技巧のためにかへつて一種愛すべき風趣を帯びたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
是等は
都
(
すべ
)
て家風に存することにして、
稚
(
おさな
)
き子供の父たる家の主人が不行跡にて、内に
妾
(
めかけ
)
を飼い外に花柳に戯るゝなどの乱暴にては、如何に子供を教訓せんとするも
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
美しい娘も老いておもかげが変ったのであろう、私の
稚
(
おさな
)
い眼には格別の美人とも見えなかった。店の入口には小さい庭があって、飛び石伝いに奥へはいるようになっていた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は表現の権威につきては十分注意したつもりであった。表現の価値を批判しつつ、みずからも言い女の言をも聞いた気であった。しかしなんといっても私が
魯
(
おろ
)
かにして
稚
(
おさな
)
かったに相違ない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
稚
(
おさな
)
い時分から、始終劣敗の地位に
虐
(
しいた
)
げられて来た、すべての点に不完全の自分の
生立
(
おいた
)
ちが、まざまざと胸に浮んだ。それより一層退化されてこの世へ出て来る、赤子のことを考えるのも厭であった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
伸びる
勢
(
いきおい
)
の
不揃
(
ふぞろ
)
ひなところが自由で、
稚
(
おさな
)
く、愛らしかつた。
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
稚
常用漢字
中学
部首:⽲
13画
“稚”を含む語句
幼稚
稚子
稚児
稚兒
稚心
天稚彦
丁稚
稚内
幼稚園
稚顔
稚気
稚児髷
稚氣
丁稚小僧
稚郎子
稚時
幼稚意
稚拙
丁稚奉公
稚児輪
...