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畔
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あぜ
ふりがな文庫
“
畔
(
あぜ
)” の例文
九月二日——ゆうべ星を見ていると、その星がおれの家の東にあたる
畔
(
あぜ
)
の境の上に出ている時、左から右へとつづいて消えていった。
世界怪談名作集:04 妖物
(新字新仮名)
/
アンブローズ・ビアス
(著)
背後で、子供に乳を含ましている女房に注意されて、そッちの窓外をみると、
田圃
(
たんぼ
)
の
畔
(
あぜ
)
に青く
痩
(
や
)
せこけた若者がウロウロしていた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
菫
(
すみれ
)
、たんぽぽ、げんげ、桜草、———そんな物でも畑の
畔
(
あぜ
)
や田舎道などに生えていると、
忽
(
たちま
)
ちチョコチョコと駆けて行って摘もうとする。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二人が蜜柑畑の中の
畔
(
あぜ
)
に腰を下ろして、
割籠
(
わりご
)
を開こうとしたときだった。蜜柑の畑の中に遊んでいたらしい子供が声を上げた。
船医の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
山田の
畔
(
あぜ
)
にしれいのごとき草花面白きは何と云うものにや。この辺りまで畑打つ男女
何処
(
どこ
)
となく悠長に京びたるなどもうれし。茶畑多くあり。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
と、誰か向ふの
畔
(
あぜ
)
を走りながら、叫ぶ者がある。山県はちらと見たが、「あ、僕の家らしい!」と叫んで、そして
跣足
(
はだし
)
の
儘
(
まゝ
)
、
慌
(
あわ
)
てて飛出した。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
天照らす大神が田を作つておられたその田の
畔
(
あぜ
)
を
毀
(
こわ
)
したり
溝
(
みぞ
)
を
埋
(
う
)
めたりし、また食事をなさる御殿に
屎
(
くそ
)
をし散らしました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
大てい
畔
(
あぜ
)
にそって雪は解ける。雪の断層ができて、山岳でいう雪の廊下のようになる。それがくずれて、南側の日あたりに枯草の地面が顔を出す。
山の春
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
伝二郎は
跣足
(
はだし
)
のまま半
破
(
こわ
)
れの寮を飛び出して、田圃の
畔
(
あぜ
)
を
転
(
こ
)
けつまろびつ河内屋の隠居の家まで走り続けて、さてそこで彼は気を失ったのである。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何、ほっておけ。けっして悪い気でするのではない。きたないものは、
酔
(
よ
)
ったまぎれに
吐
(
は
)
いたのであろう。
畔
(
あぜ
)
やみぞをこわしたのは、せっかくの地面を
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
すなわちウブメ鳥と名づくる一種の
怪禽
(
かいきん
)
の話を別にして考えると、ウブメは必ず深夜に道の
畔
(
あぜ
)
に出現し
赤子
(
あかご
)
を抱いてくれといって通行人を呼び留める。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
雨上りの田の
畔
(
あぜ
)
をいい気持になって散歩をして帰って来たら、「今帰らっしたところじゃがKKという人が来たが、東京の人だそうだがお前知ってるか」
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
鼠色の柳が水を
覗
(
のぞ
)
いている、道は少しずつの上りで沢を渡り田の
畔
(
あぜ
)
を通る、朝仕事にゆく馬を曳いた男にも逢う、稲を刈りにゆく赤い帯をした女にも逢う
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
畠
(
はたけ
)
のもの、
畔
(
あぜ
)
に立つ
榛
(
はん
)
の木、
蛙
(
かえる
)
の声、鳥の音、
苟
(
いやし
)
くも彼の郷土に存在する自然なら、一点一画の微に至る迄
悉
(
ことごと
)
く其地方の特色を
具
(
そな
)
えて叙述の筆に上っている。
『土』に就て:長塚節著『土』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
拝田村の村と、村の田の
畦
(
くろ
)
と、畑の
畔
(
あぜ
)
とを走る幼い時の自分の姿が、まざまざと眼の前に現われて来ました。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いつかの日、信之助と別れた
二岐道
(
ふたまたみち
)
の
畔
(
あぜ
)
に、小さな
草庵
(
そうあん
)
を建て、朝夕を静かな看経に送り迎えしていた。
春いくたび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は
呆然
(
ばうぜん
)
と路の上に立つて、その人影を確めようと眼を
睜
(
みは
)
つた。人影は、路から野面の方へ田の
畔
(
あぜ
)
をでも伝ふらしく、石地蔵のあたりから折れ曲つた。さうして!
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
たとい田の
畔
(
あぜ
)
での農夫と農婦との野合からはいった結婚でさえも、仲人結婚より勝っている。こんな人生の大道を真直ぐに歩まないのでは後のことは話しにならない。
女性の諸問題
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
ただ
畔
(
あぜ
)
のような
街道
(
かいどう
)
端
(
ばた
)
まで、福井の車夫は、笠を手にして見送りつつ、われさえ指す
方
(
かた
)
を知らぬ
状
(
さま
)
ながら、
式
(
かた
)
ばかり日にやけた黒い手を挙げて、
白雲
(
しらくも
)
の
前途
(
ゆくて
)
を指した。
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大作と、関良輔とは、堤の上から、田圃の
畔
(
あぜ
)
へ降りて、紙燭をたよりに、村の方へ歩いて行った。
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
昼に弁当とお茶を持って
其処
(
そこ
)
に行くと、皆が
畔
(
あぜ
)
に腰を掛けて食事を始める。立てて置いた鍬の柄に赤蜻蛉が止って、その
尻
(
し
)
っぽの先が高い山の
巓
(
いただき
)
とすれすれになっている。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
引
(
ひく
)
機會
(
はずみ
)
に兩手の
指
(
ゆび
)
は
破羅々々
(
ばら/\
)
と落て流るゝ
血雫
(
ちしづく
)
に
畔
(
あぜ
)
の千草の
韓紅
(
からくれなゐ
)
折から見ゆる人影に刄を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
かくすること毎日少しも変わらず、例刻に到り
米舂
(
こめつき
)
場の
辺
(
あた
)
り田畑の
畔
(
あぜ
)
に
琅々
(
ろうろう
)
の声聞うれば、弟玉木文之進(松陰の叔父なり)常に笑って曰く、「ヤアまた兄さんのが始まった」と。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
それから
百舌
(
もず
)
に
頬白
(
ほおじろ
)
、頬白がいる位だから、里の田の
畔
(
あぜ
)
、
稲叢
(
いなむら
)
のあたりに、こまッちゃくれた雀共が、仔細ありげにピョンピョンと飛び跳ねながら、群れたかっていたとてさらに不思議はない。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
金三はこう云いかけたなり、桑畑の
畔
(
あぜ
)
へもぐりこんだ。桑畑の
中生十文字
(
なかてじゅうもんじ
)
はもう
縦横
(
たてよこ
)
に伸ばした枝に、二銭銅貨ほどの葉をつけていた。良平もその枝をくぐりくぐり、金三の
跡
(
あと
)
を追って行った。
百合
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分は疲れたように、
空虚
(
くうきょ
)
になった身を村に向かった。もう耕地には稲を刈り残してある田は一枚も見えなかった。
組稲
(
くみいね
)
の立ってる
畔
(
あぜ
)
から、各家に稲をかつぐ人達が、おちこちに四五人も見える。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
菱形に白く霜置く田の
畔
(
あぜ
)
のさむざむしもよ田にと続きて (一一八頁)
文庫版『雀の卵』覚書
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
あぶらの乗った春の黒鶫は枝々のあいだに翼の光を日の中にちらつかせ、田の
畔
(
あぜ
)
も、川の面にも、
濛々
(
もうもう
)
たる春色が立ちこめていて、二人の若者はうす
睡
(
ねむ
)
たいような気持で美しい橘の姿を見入った。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
畔
(
あぜ
)
に残っていた薩兵の一人が、槍の
石突
(
いしづき
)
で、彼の頭を、突き下ろした。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
麥生と野菜畑と、さうして其れを圍む
畔
(
あぜ
)
の木立は大抵椿です。椿の下には島の名物である背の高い水仙の花が叢を成して咲いて居ます。北岸と違つて山上は日當りが好いので、どの椿も眞盛りです。
初島紀行
(旧字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
こんな話を残して行った里の娘たちも、苗代田の
畔
(
あぜ
)
に、めいめいのかざしの躑躅花を挿して帰った。其は昼のこと、田舎は田舎らしい
閨
(
ねや
)
の中に、今は寝ついたであろう。夜はひた更けに、更けて行く。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
八束穂
(
やつかほ
)
のしげる飯田の
畔
(
あぜ
)
にさへ君に仕ふる道はありけり
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
畔
(
あぜ
)
の上に匍ひ上つて眺めてゐたが
都会と田園
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
ひねもす疲れて
畔
(
あぜ
)
に居しに
蝶を夢む
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
はたけの
畔
(
あぜ
)
に
小さな鶯
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
最もよき場所は
畔
(
あぜ
)
を越えたるところに在り、とモルガンは指さして教えたれば、われらは低き
槲
(
かしわ
)
の林をゆき過ぎて、草むらに沿うて行きぬ。
世界怪談名作集:04 妖物
(新字新仮名)
/
アンブローズ・ビアス
(著)
刈った稲束は一たん田の
畔
(
あぜ
)
に逆さに並べられて幾日か置かれる。それからやがて本式に
稲架
(
はぜ
)
にかけ並べられる。
山の秋
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
畑にはようやく芽を出しかけた桑、眼もさめるように黄いろい菜の花、げんげや
菫
(
すみれ
)
や草の
生
(
は
)
えている
畔
(
あぜ
)
、遠くに杉や
樫
(
かし
)
の森にかこまれた豪農の
白壁
(
しらかべ
)
も見える。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
お前の家ではもう田を打ったか、いやまだ打たぬというとそんだら打ってやるから何月何日の晩に、三本
鍬
(
くわ
)
と一緒に餅を三升ほど
搗
(
つ
)
いて田の
畔
(
あぜ
)
に置けという。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あちこちに稲を刈っている。
畔
(
あぜ
)
に刈穂を積み上げて
扱
(
こ
)
いている女の赤い帯もあちらこちらに見える。
鴫つき
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
汚いとあっては、武士の不面目とばかり、滝川一益、羽柴秀吉、柵外に出たのはよかったが、苦もなく打破られて仕舞った。
畔
(
あぜ
)
を渡り泥田を渉って三の柵に逃げ込んだ。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「あれ、また来たぜ、按摩の笛が、北の方の辻から聞える。……ヤ、そんなにまだ夜は更けまいのに、屋根
越
(
ごし
)
の町一つ、こう……
田圃
(
たんぼ
)
の
畔
(
あぜ
)
かとも思う処でも吹いていら。」
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鶏の居ない夜だけ、鎖から放して置くことにした犬が、今ごろ、田の
畔
(
あぜ
)
をでも元気よく跳びまはつて居るかと想像することが、
寝牀
(
ねどこ
)
のなかで彼をのびのびした気持にした。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
そして、立木の蔭、田の
畔
(
あぜ
)
、百姓家の壁に隠れて、白い煙を、上げているだけであった。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
田の
畔
(
あぜ
)
を通る村人二三人を呼び止めて、お婆さんが同じように問いかけました。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その勢いに乗ってお
暴
(
あば
)
れだしになって、女神がお作らせになっている田の
畔
(
あぜ
)
をこわしたり、みぞを
埋
(
う
)
めたり、しまいには女神がお
初穂
(
はつほ
)
を
召
(
め
)
しあがる
御殿
(
ごてん
)
へ、うんこをひりちらすというような
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
事共なさず半四郎は力に任せて
打合
(
うちあへ
)
ども死生知らずの雲助ども十七八人
群
(
むら
)
がり立此方は助る味方もなく只一人の事なれば大力無双の身なれども
先刻
(
せんこく
)
よりの打合に今は
勢根
(
せいこん
)
も
盡果
(
つきはて
)
たれば
傍邊
(
かたへ
)
の
畔
(
あぜ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
畔
(
あぜ
)
は畔田は田の
型
(
かた
)
につもりたりおもしろの雪やおもしろの雪や
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
道端にかた寄って水田を見つめつつ
畔
(
あぜ
)
にしゃがんで見た。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
古いところでは『倭名鈔』の郷名に
上総
(
かずさ
)
畔治
(
あはる
)
郷がある。まず
畔
(
あぜ
)
を築いて後に田を開くことあたかも近年の
築地
(
つきじ
)
、築出し新田のごときものを意味するのであろうか。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
畔
常用漢字
中学
部首:⽥
10画
“畔”を含む語句
河畔
川畔
橋畔
畔道
池畔
湖畔
墓畔
畔路
畔放
江畔
田畔
畔倉
畦畔
畔傳
畔田翠山
畔柳芥舟
畔柳
畔田
水畔
宍道湖畔
...