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狼狽
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ろうばい
ふりがな文庫
“
狼狽
(
ろうばい
)” の例文
不意に伊豆守が不思議なほどな
狼狽
(
ろうばい
)
の色を見せて、右門の鋭い凝視をあわててさけながら、濁すともなくことばを濁されましたので
右門捕物帖:03 血染めの手形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
脚燈の火に触れはすまいかと
狼狽
(
ろうばい
)
しているが、一方では
鞭
(
むち
)
打たれて、無理にも獅子だということを思い起こさせられているのである。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
残る一人がちょっと
狼狽
(
ろうばい
)
したところを、飛びかかって、肩を
抑
(
おさ
)
えて二三度こづき廻したら、あっけに取られて、眼をぱちぱちさせた。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
首を振ったが、それは事実そのとおりなのだが、どうしてか顔が熱くなり、兄やつなの眼が
眩
(
まぶ
)
しくなった。そこで彼は自分で
狼狽
(
ろうばい
)
し
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それから上野が
斬
(
き
)
られて犬のようにころがるだけでなく、もう少し恐怖と
狼狽
(
ろうばい
)
とを示す簡潔で有力な幾コマかをフラッシュで見せたい。
映画雑感(Ⅲ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
私もまごついたが、相手は、もっと
狼狽
(
ろうばい
)
したようであった。れいの秀才らしい生徒である。
白皙
(
はくせき
)
の顔を真赤にして、あははと笑い
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
吾輩は実をいうとこの時に内心
頗
(
すこぶ
)
る
狼狽
(
ろうばい
)
したね。タッタ今歯で引抜いた黒い毛は、どこかへ吐き出すか
嚥込
(
のみこ
)
むかしてしまっている。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
馬関
(
ばかん
)
に来り虎病患者死せし頃は船中の
狼狽
(
ろうばい
)
たとへんにものなく乗組将校もわれらも船長事務長と言ひ争そひて果ては
喧嘩
(
けんか
)
の如くなりぬ。
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
すると意外にもお芳が一人、
煉瓦塀
(
れんがべい
)
の前に
佇
(
たたず
)
んだまま、彼等の馬車に目礼していた。重吉はちょっと
狼狽
(
ろうばい
)
し、彼の帽を上げようとした。
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
格別! と言い切って、口をまた固く結んだその
余音
(
よいん
)
が何物を以ても動かせない強さに響きましたので、いまさらに女は
狼狽
(
ろうばい
)
して
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
狼狽
(
ろうばい
)
と混迷の極から、お駒は、急に立ちなおってきた。すっかりおちつきを取りもどして、しずかに、お民のほうへすわり直した。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「
清
(
きよ
)
さん清さん。」という声が聞こえた。その声は
狼狽
(
ろうばい
)
した声であった。余が
蹶起
(
けっき
)
して病床に行く時に妹君も次の間から出て来られた。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
僕は、西洋の事なんぞは、なるたけ言わないようにしているのに、お母様に西洋の例を引いて弁じ附けられて、僕は少し
狼狽
(
ろうばい
)
した。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そうとは思っていたにしろ、カビ博士がこうして
素直
(
すなお
)
にそれを認めたとなると、僕はあらたな
狼狽
(
ろうばい
)
におちいらないわけにいかなかった。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
この間から
無闇
(
むやみ
)
と話を急いだ様子や、たった今の
狼狽
(
ろうばい
)
したような態度を見ると、矢張知っていたのであろうかと思わざるを得なかった。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ゲルベルトの
月琴
(
タムブル
)
⁉」検事は法水の唐突な変説に
狼狽
(
ろうばい
)
してしまった。「いったい
月琴
(
タムブル
)
なんてものが、鐘の
化物
(
ばけもの
)
にどんな関係があるね」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼は自ら進んでこの条件を、認容したのだといったふうに、見せかけたかったが、あまりにも
狼狽
(
ろうばい
)
した彼にはその方法もできなかった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
又お二人にしても余り不覚な、それしきの事に
狼狽
(
ろうばい
)
される方ではなかつたに、これまでの御寿命であつたか、
残多
(
のこりおほ
)
い事を致しました
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と
魔
(
ま
)
もののように
吼
(
ほ
)
えた呂宋兵衛は、すでに、
味方
(
みかた
)
の
半
(
なか
)
ばはきずつき、半ばはどこかへ逃げうせたのを見て、いよいよ
狼狽
(
ろうばい
)
したようす。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はじめアリスは冗談と思ったのだが、
良人
(
おっと
)
の手に力が加わって、
真気
(
ほんき
)
に沈めようとかかっているので、急に
狼狽
(
ろうばい
)
して
踠
(
もが
)
き始めた。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
両親も多少は
狼狽
(
ろうばい
)
したものか、御仲人様に私の身体の不浄を申し上げたのは、披露の宴も大方すもうとした頃で御座いました。
秘密の相似
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
こういた場合にもあまり
狼狽
(
ろうばい
)
した様子を見せない弟は、こう慰めるように言って、今度は行李を置いてFと二人で出て行った。
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
それは彼を喜ばせるよりもむしろ
狼狽
(
ろうばい
)
させたのであった。俺は一体どこへ連れて来られたのであろう、ここは一体どこなのだ?
癩
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
次郎は何も考える余裕がないほど
狼狽
(
ろうばい
)
していた。で、ほとんど反射的にそんな言葉が彼の口からつぎつぎに爆発したのである。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
そして次の十九日、即ち犯罪の行われた翌々朝、
狼狽
(
ろうばい
)
した当局者の
横面
(
よこつら
)
をはり飛ばす様に、又しても、前代未聞の
椿事
(
ちんじ
)
が突発したのである。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
少し
狼狽
(
ろうばい
)
して、庸三は出て見たが、「二度と
己
(
おれ
)
の家の
閾
(
しきい
)
を
跨
(
また
)
ぐな」と
尖
(
とが
)
った声を浴びせかけて、ぴしゃりと障子を締め切った。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
テナルディエは
慄然
(
りつぜん
)
とした。しばらくすると、脱走が発見された後に起こる
狼狽
(
ろうばい
)
し混雑した騒ぎが監獄のうちに起こってきた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
狼狽
(
ろうばい
)
していたと云ってもよかった。美奈子は、全身の血が、凍ってしまったように、じっと身体を縮ませながら、立っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
地震
(
ぢしん
)
に
出會
(
であ
)
つた
一瞬間
(
いつしゆんかん
)
、
心
(
こゝろ
)
の
落着
(
おちつき
)
を
失
(
うしな
)
つて
狼狽
(
ろうばい
)
もすれば、
徒
(
いたづ
)
らに
逃
(
に
)
げ
惑
(
まど
)
ふ
一方
(
いつぽう
)
のみに
走
(
はし
)
るものもある。
平日
(
へいじつ
)
の
心得
(
こゝろえ
)
の
足
(
た
)
りない
人
(
ひと
)
にこれが
多
(
おほ
)
い。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
「僕がまいりましたのは……」と、アリョーシャは
狼狽
(
ろうばい
)
しながら、口ごもった。「僕は……兄の使いでまいったのです……」
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ゆえにこの想像がなかったならば
狼狽
(
ろうばい
)
すべかりし場合にも、うんこれは例の夢が実現せられているんだと、思いきりがつく。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
と岸本が病室の方へ節子を誘おうとした時は、さすがに
狼狽
(
ろうばい
)
の色が彼女の顔に動いた。節子は岸本に
随
(
つ
)
いて病室に入ると直ぐ窓の方へ行った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
此
(
この
)
時
(
とき
)
の父の様子は余程
狼狽
(
ろうばい
)
して居るようでした。それで声さえ
平時
(
いつも
)
と変り、僕は
可怕
(
こわ
)
くなりましたから、しく/\泣き出すと、父は
益々
(
ますます
)
狼狽
(
うろた
)
え
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
此の前、
見張台
(
みはりだい
)
でグラマンを見たとき、私は
狼狽
(
ろうばい
)
はしたけれど、恐いとは思わなかったのだ。今、私をとらえたあの不思議な恐怖は何であろう。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
そこで実際生活に必要なことは、
如何
(
いか
)
なる不意を喰ってもこれに
狼狽
(
ろうばい
)
しないだけの心胆を錬っておくことであると思う。
青年の元気で奮闘する我輩の一日
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
多くの草刈
夥間
(
なかま
)
は
驟雨
(
ゆうだち
)
に
狼狽
(
ろうばい
)
して、蟻のごとく走り去りしに、
渠
(
かれ
)
一人老体の疲労
劇
(
はげ
)
しく、足
蹌踉
(
よろぼ
)
いて避け得ざりしなり。
金時計
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
戦場なら、こんなみじめな思いはしないと、後程人に話したが、人の親清盛の
狼狽
(
ろうばい
)
ぶりは想像にあまりあるものがある。
現代語訳 平家物語:03 第三巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
成は
慨然
(
がいぜん
)
としてついて来た。そして寝室の前にいくと周は石を取って入口の扉を打った。内ではひどく
狼狽
(
ろうばい
)
しだした。周はつづけざまに扉を打った。
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
処が、以外にも氏の顔には、今が今、自分の口から出た言葉に
吃驚
(
びっくり
)
し
狼狽
(
ろうばい
)
して居る色が私達の吃驚以上に認められた。
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「僕の関係した事でないから、僕は何とも云うまい。だから君もそう落胆イヤ
狼狽
(
ろうばい
)
して
遁辞
(
とんじ
)
を設ける必要も有るまい」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
我が作れる狭き獄室に
惰眠
(
だみん
)
を
貪
(
むさぼ
)
る
徒輩
(
とはい
)
は、ここにおいて
狼狽
(
ろうばい
)
し、
奮激
(
ふんげき
)
し、あらん限りの手段をもって、
血眼
(
ちまなこ
)
になって、我が勇敢なる侵略者を迫害する。
初めて見たる小樽
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
庄吉もまったく
狼狽
(
ろうばい
)
して実家へ問い合せたがそこにも居らず、探してみると浮田信之と失踪していることが分った。
オモチャ箱
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
物も言わずに突き膝で
箪笥
(
たんす
)
の方へにじり寄り、それをしまいこむその腰のあたりを見ると、安二郎はなぜかおかしいほど
狼狽
(
ろうばい
)
して、しぶしぶ承知した。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
貴子
(
たかこ
)
さんも
狼狽
(
ろうばい
)
した。実は事によるとほんとうにおいでになるかもしれないと思って、三、四日用心していたのをあいにく今日から油断したのだった。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
同人は
驚愕
(
きょうがく
)
のあまり大声をあげて泥棒泥棒と連呼し隣室に就寝中の竜太郎氏に救いを求めたので、賊は
狼狽
(
ろうばい
)
の極
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
学者の輩がかくも
狼狽
(
ろうばい
)
して、一朝にして一大学校を
空了
(
くうりょう
)
して、日本国の洋学が幕府とともに廃滅したるは何ぞや。
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
狼狽
(
ろうばい
)
した振りで
本村町
(
ほんむらちょう
)
へ行き、清岡先生に三番町の千代田という家へ行った事を告げると、先生は
俄
(
にわか
)
に不快な顔色をして、いろいろ弁解するのも聴かず
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それだけの
狼狽
(
ろうばい
)
をさせるにしても快い事だと思っていた。葉子は宿直
部屋
(
べや
)
に行って、しだらなく
睡入
(
ねい
)
った当番の看護婦を呼び起こして
人力車
(
じんりきしゃ
)
を頼ました。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
併し其等は一切無益であった。彼女は歩度を緩めて彼を振向いた。足を
停
(
と
)
めた。最早取返しは付かなくなった。
狼狽
(
ろうばい
)
の余り
却
(
かえっ
)
て
誤間化
(
ごまか
)
す事が出来なかった。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
田中は私の余りに
狼狽
(
ろうばい
)
した手紙に非常に驚いたとみえまして、十分覚悟をして、万一破壊の暁にはと言った風なことも決心して参りましたので御座います。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
“狼狽”の意味
《名詞》
狼 狽(ろうばい)
思わぬ出来事に遭い、慌てること。
(出典:Wiktionary)
狼
漢検準1級
部首:⽝
10画
狽
漢検準1級
部首:⽝
10画
“狼狽”で始まる語句
狼狽者
狼狽方
狼狽気味
狼狽敷
狼狽眼
狼狽居士
狼狽驚愕