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温気
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うんき
ふりがな文庫
“
温気
(
うんき
)” の例文
楯彦氏はそこらの明いてゐた椅子に腰を下して美しい花嫁の笑顔など幻に描いてゐるうち、
四辺
(
あたり
)
の
温気
(
うんき
)
でついうと/\と
居睡
(
ゐねむり
)
を始めた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
(よした、よした、
大餒
(
おおす
)
えに餒えている。この
温気
(
うんき
)
だと、命仕事だ。)(あなたや……私はもう我慢が出来ない、お酒はどう。)
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこからはいってみると、バスと
洗面所
(
トイレット
)
との間の廊下で、空家らしい気持の悪い
温気
(
うんき
)
をたたえて、壁や天井が薄白く光っている。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
戸が細めに開いて、一陣の生温かい
温気
(
うんき
)
が、婦人部屋に特有な好い匂いの中にエーテルのらしい臭気をまじえて、むっと彼の顔へ吹きつけた。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
二人が食堂へはいると、台所の
温気
(
うんき
)
でうだって緋の衣みたいな顔色をしたサモイレンコが、ぷりぷりしながら立っている。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
▼ もっと見る
何処かに
温気
(
うんき
)
を含んだ静かな大気と軒燈の光りとが、遠くへ人の心を誘った。壮助は誘わるるままに明るい通りを人込みに交って流れていった。
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
道庵は、お通夜と朝参りの群衆の中へ坐り込んで、人の
温気
(
うんき
)
でいい心持になり、前後も知らず居眠りの熟睡をはじめる。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
蝋燭の
焔
(
ほのほ
)
と炭火の熱と
多人数
(
たにんず
)
の
熱蒸
(
いきれ
)
と混じたる一種の
温気
(
うんき
)
は
殆
(
ほとん
)
ど凝りて動かざる一間の内を、
莨
(
たばこ
)
の
煙
(
けふり
)
と
燈火
(
ともしび
)
の油煙とは
更
(
たがひ
)
に
縺
(
もつ
)
れて渦巻きつつ立迷へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
溶けた雪水の溜りは一日々々と大きく、いたる所に沼をつくった。粉のような羽虫がその上に
撒
(
ま
)
かれた。汚れはてた雪が、陽と土の
温気
(
うんき
)
に
翻弄
(
ほんろう
)
された。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
灰色の
薄琥珀
(
タフェタ
)
の室内服を
寛
(
ゆるや
)
かに着こなし、いささか熟し過ぎたる
橙
(
だいだい
)
のごとき頬の色をしているのは、室内の
温気
(
うんき
)
に上気したためであろうと見受けられた。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
窓外の風景が何かしら妙に明るく
白
(
しら
)
ばくれ、その上に妙な
温気
(
うんき
)
さえも天上地下にたちこめているらしいのを私は感じる、風景に限らず、乗客全体の話声からしてが
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
「早いどころか、これは
晩種
(
おく
)
でございます。
早種
(
わせ
)
は正月から出始めます。寒の中でもあの通り石垣に日が当りますから苺は石の
温気
(
うんき
)
を夏だと思って
途轍
(
とてつ
)
もない時に熟します」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
この頃の
温気
(
うんき
)
に
中
(
あ
)
てられたせいか、地上に近い大気は、晴れながら、どんよりと濁つて、その所々に、
霰
(
あられ
)
を
炮烙
(
ほうろく
)
で煎つたやうな、形ばかりの雲の峰が、つぶつぶと浮かんでゐる。
酒虫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そうかと思うと、夏になってみんなが家を
留守
(
るす
)
にするときなんか、松を座敷へ入れたまんま雨戸をたてて錠をおろしてしまう。帰ってみると、松が
温気
(
うんき
)
でむれてまっ赤になっている。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
内
(
うち
)
へ
這入
(
はい
)
ると
足場
(
あしば
)
の悪い
梯子段
(
はしごだん
)
が立つてゐて、
其
(
そ
)
の
中程
(
なかほど
)
から
曲
(
まが
)
るあたりはもう
薄暗
(
うすぐら
)
く、
臭
(
くさ
)
い
生暖
(
なまあたゝか
)
い
人込
(
ひとごみ
)
の
温気
(
うんき
)
が
猶更
(
なほさら
)
暗い上の
方
(
はう
)
から吹き
下
(
お
)
りて来る。
頻
(
しきり
)
に役者の名を呼ぶ
掛声
(
かけごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
える。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
蒼空
(
あおぞら
)
は
培養硝子
(
ばいようガラス
)
を上から
冠
(
かぶ
)
せたように張り切ったまま、
温気
(
うんき
)
を
籠
(
こも
)
らせ、
界隈
(
かいわい
)
一面の
青蘆
(
あおあし
)
の
洲
(
す
)
はところどころ弱々しく
戦
(
おのの
)
いている。ほんの局部的な風である。大たい
鬱結
(
うっけつ
)
した暑気の天地だ。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大府
(
おおぶ
)
あたりから雨が降って来たのに、それも知らないで眠っているので、妙子が立って
窓硝子
(
まどガラス
)
を締めてやったが、彼方此方で
俄
(
にわか
)
に窓を締めたので、車室の中はひとしお蒸し暑い
温気
(
うんき
)
が
籠
(
こも
)
り
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
室内の
温気
(
うんき
)
の耐へ難きに、吾はそつと此処を滑り出でゝ喫煙室の方に行きぬ。婦人室の前を過ぐる時、
不図
(
ふと
)
室内を見入れたれば、
寂々
(
せき/\
)
たる室の一隅の暖炉を
擁
(
よう
)
し首を
鳩
(
あつ
)
めて物語る二人の美人。
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
冷たいものが近づく時に
温気
(
うんき
)
が失われるように、一般に軽蔑されてる人物を近づける時には尊敬が減ずるのである。しかし古い上流社会は、他の法則と同じくこの法則をも意に介しなかった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
温気
(
うんき
)
や
膿
(
のう
)
のにおいが、むっと部屋中にたてこめる。その中で栄介は黙々と手を動かしている。——昨日自分のギプスを眺めた時、彼の体を通り抜けた衝動と戦慄は、まさしくその記憶であった。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ゴム底の靴で猫のやうに足音も無くのこのこ歩いてゐるうちに春の
温気
(
うんき
)
にあてられ、何だか頭がぼんやりして来て、木造警察署の看板を、
木造
(
もくざう
)
警察署と読んで、なるほど
木造
(
もくざう
)
の建築物、と首肯き
津軽
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
彼の前面には何かしら
温気
(
うんき
)
のある
靄
(
もや
)
に包まれたやうな、不確かな、だが一歩ごとに物の形の明かになつて来る、汗ばみながらその方へ突進したい気を起させる、あの漠とした未知の世界があつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
暖炉のめぐりの、あのあかるい
温気
(
うんき
)
。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
腐肉
(
ふにく
)
にまとふ
温気
(
うんき
)
のみ。
ねたみ
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
「この
温気
(
うんき
)
にか?」
銭形平次捕物控:080 捕物仁義
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
温気
(
うんき
)
を混ぜた
南風
(
みなみかぜ
)
。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
時ならぬ
温気
(
うんき
)
のためか、それか、あらぬか、その頃熱海
一町
(
ひとまち
)
、三人寄れば、
風説
(
うわさ
)
をする、不思議な出来事というのがあった。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
舌の焼けるようなキャベツ汁と室内の
温気
(
うんき
)
のため、私は顔がかっかとほてった。イヷン・イヷーヌィチとソーボリもやはり真赤な顔をしていた。
妻
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
さしも息苦き
温気
(
うんき
)
も、
咽
(
むせ
)
ばさるる
煙
(
けふり
)
の渦も、皆狂して知らざる如く、
寧
(
むし
)
ろ喜びて
罵
(
ののし
)
り
喚
(
わめ
)
く声、
笑頽
(
わらひくづ
)
るる声、
捩合
(
ねぢあ
)
ひ、
踏破
(
ふみしだ
)
く
犇
(
ひしめ
)
き、一斉に揚ぐる
響動
(
どよみ
)
など
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
病室の淡い薬の香の籠った
温気
(
うんき
)
が、壮助の心を
儚
(
はかな
)
いもののうちに
誘
(
さそ
)
い込んでいった。彼は苦しくなった。
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
内
(
うち
)
へ
這入
(
はい
)
ると足場の悪い
梯子段
(
はしごだん
)
が立っていて、その
中
(
なか
)
ほどから曲るあたりはもう薄暗く、臭い
生暖
(
なまあたたか
)
い
人込
(
ひとごみ
)
の
温気
(
うんき
)
がなお更暗い上の方から吹き下りて来る。
頻
(
しきり
)
に役者の名を呼ぶ
掛声
(
かけごえ
)
が聞える。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
獺
(
かわうそ
)
の
襟
(
えり
)
をつけた重いとんびを
纏
(
まと
)
った父も、少し厚手の
外套
(
がいとう
)
を着た自分も、
先刻
(
さっき
)
からの運動で、少し
温気
(
うんき
)
に
蒸
(
む
)
される気味であった。その春の半日を自分は父の
御蔭
(
おかげ
)
で、珍らしく方々引っ張り廻された。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
曇りたる日の
温気
(
うんき
)
は
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
この
温気
(
うんき
)
に何と、薄いものにしろ
襦袢
(
じゅばん
)
と合して三枚も
襲
(
かさ
)
ねている、
茄
(
うだ
)
った
阿魔女
(
あまっちょ
)
を煽がせられようとは思やしません、私はじめ夢の
様
(
よう
)
でさ、
胸気
(
むねき
)
じゃアありませんか。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
上衣をとったサモイレンコが、台所の
温気
(
うんき
)
に顔をかっかと火照らせて、汗だくではいって来た。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
階下
(
した
)
も二階もこの
温気
(
うんき
)
に、夕凪の
潮
(
うしお
)
を避け、南うけに座を移して、
伊勢三郎
(
いせのさぶろう
)
が
物見松
(
ものみのまつ
)
に、月もあらば盗むべく、
神路山
(
かみじやま
)
、
朝熊嶽
(
あさまがたけ
)
、五十鈴川、宮川の風にこがれているらしい。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それからがくがくして
歩行
(
ある
)
くのが少し
難渋
(
なんじゅう
)
になったけれども、ここで
倒
(
たお
)
れては
温気
(
うんき
)
で
蒸殺
(
むしころ
)
されるばかりじゃと、我身で我身を
激
(
はげ
)
まして首筋を取って引立てるようにして峠の方へ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それからがく/″\して
歩行
(
ある
)
くのが
少
(
すこ
)
し
難渋
(
なんじふ
)
になつたけれども、
此処
(
こゝ
)
で
倒
(
たふ
)
れては
温気
(
うんき
)
で
蒸殺
(
むしころ
)
されるばかりぢやと、
我身
(
わがみ
)
で
我身
(
わがみ
)
を
激
(
はげ
)
まして
首筋
(
くびすぢ
)
を
取
(
と
)
つて
引立
(
ひきた
)
てるやうにして
峠
(
たうげ
)
の
方
(
はう
)
へ。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
恰
(
あたか
)
もこの時であった。居る処の縁を横にして、振返れば
斜
(
ななめ
)
に
向合
(
むかいあ
)
う、そのまま居れば、
背
(
うしろ
)
さがりに並ぶ位置に、帯も袖も、四五人の女づれ、中には、人いきれと、
温気
(
うんき
)
にぐったりとしたのもある。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“温気”の意味
《名詞》
温かみ。
蒸し暑いこと。
体温が高いこと。熱気。
(出典:Wiktionary)
温
常用漢字
小3
部首:⽔
12画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“温”で始まる語句
温
温和
温泉
温順
温柔
温暖
温味
温泉宿
温泉場
温習