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杏
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あんず
ふりがな文庫
“
杏
(
あんず
)” の例文
杏
(
あんず
)
と
巴旦杏
(
はだんきやう
)
。杏は二本とも若木であるが、巴旦杏は本當ならいま實を結ぶわけであつた。花は咲いたが、どうもこの木、枯れるらしい。
たべものの木
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
が、彼の記憶の中には未だに大きい白牛が一頭、花を盛った
杏
(
あんず
)
の枝の下の柵によった彼を見上げている。しみじみと、懐しそうに。………
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
材料は、いちじく、
杏
(
あんず
)
、
金柑
(
きんかん
)
、グレープ・フルーツの皮など、果物はもちろんであるが、その他にも、野菜に重きをおいているそうである。
桃林堂の砂糖づけ
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
玄徳がふと
驢
(
ろ
)
を止めて見ていると、その邸の並びの
杏
(
あんず
)
の並木道を今、
鄙
(
ひな
)
には
稀
(
まれ
)
な麗人が、白馬に乗って通ってゆくのが見えた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
殊にナブルスの谷は、清泉
処々
(
しよ/\
)
に湧きて、
橄欖
(
かんらん
)
、
無花果
(
いちじゆく
)
、
杏
(
あんず
)
、桑、林檎、葡萄、各種野菜など青々と茂り、小川の末には
蛙
(
かはづ
)
の音さへ聞こえぬ。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
あとで、千種さんもかいで置くといいな——
杏
(
あんず
)
の匂いがしませんか、
巴丹杏
(
はたんきょう
)
や、
杏仁水
(
きょうじんすい
)
などと同じような酸味のある匂いです
死の予告
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そしてそういう秋までには梅、
一位
(
いちい
)
、
杏
(
あんず
)
、桃が間もない春には、いかに美しく暖かに咲き出るかということを少年は解いた。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
それから家のまわりには
杏
(
あんず
)
や栗の木などもありフミエや洋一はその木々のためにも三太郎おじさんをすきにならずにはいられないほどなのです。
柿の木のある家
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
門の前は一めんに柳が
植
(
う
)
わり、
牆
(
かき
)
の内には桃や
杏
(
あんず
)
の花が盛りで、それに長い竹をあしらってあったが、野の鳥はその中へ来て
格傑
(
かっけつ
)
と鳴いていた。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
杏
(
あんず
)
やすももの白い花が
咲
(
さ
)
き、
次
(
つい
)
では
木立
(
こだち
)
も草地もまっ
青
(
さお
)
になり、もはや
玉髄
(
ぎょくずい
)
の雲の
峯
(
みね
)
が、四方の空を
繞
(
めぐ
)
る
頃
(
ころ
)
となりました。
雁の童子
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
よく熟れた
杏
(
あんず
)
のような色をして、小山のような火星が、暗黒の宙に浮いているその姿は、凄絶きわまりなき光景だった。
火星探険
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
第六十四
杏
(
あんず
)
のゼリー 生の杏は煮てその汁ともに裏漉しにします。
鑵詰
(
かんづめ
)
のものはそのまま汁ともに裏漉しにします。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
工事がとどこおりなく終って、ある日、崔は自分の園中で
杏
(
あんず
)
の実を食っている時、俄かに思い出したように言った。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あなたから、この手記の初めに書いた、
杏
(
あんず
)
の実を貰ったのは、その問題があった日の昼のことでしたから——。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
珈琲
(
コーヒー
)
店の軒には花樹が茂り、町に日蔭のある情趣を添えていた。四つ辻の赤いポストも美しく、煙草屋の店にいる娘さえも、
杏
(
あんず
)
のように明るくて
可憐
(
かれん
)
であった。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
節句の
粽
(
ちまき
)
貰いしが、
五把
(
ごわ
)
の
中
(
うち
)
に
篠
(
ささ
)
ばかりなるが二ツありき。
杏
(
あんず
)
、青梅、
李
(
すもも
)
など、幼き時は欲しきものよ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
よく考えて食い、ゆるゆると味わおうじゃないか。あわてないがいい。春を見たまえ。春も急げば失敗する、すなわち凍る。あまり熱心なのは、桃や
杏
(
あんず
)
を害する。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
以前に伊那南殿村の稲葉家(おまんの
生家
(
さと
)
)からもらい受けて来た
杏
(
あんず
)
の
樹
(
き
)
がその年も本家の庭に花をつけたが、あの樹はまだ和助の記憶にあるだろうかと書いた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あまりの事に医師はあきれて暫らく、
為
(
な
)
すところを知らなかったが、やがて彼女を抱き起してその手を除くと、驚いたことに右の下瞼が
杏
(
あんず
)
の大きさに腫れ上っていた。
怪談綺談
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
一、花といふ者必ず桜花なるを要せず、梅、桃、
李
(
すもも
)
、
杏
(
あんず
)
固より可なり。他季の花を用うるまた可なり。花と言はずして桜といふ固より可なり。各人の適宜に任すべし。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
この八幡の興行でお客様が木戸銭の代わりに干した
杏
(
あんず
)
の袋入りや、カチ栗を風呂敷へ包んだのや、なかにはお芋を持ってやって来るのもあったのにはおどろきましたね。
初看板
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
信州では、梅、桃、桜、
杏
(
あんず
)
、
李
(
すもも
)
といふやうな、春の花がいつときに咲き出すと言はれてゐます。
果物の木の在所
(新字旧仮名)
/
津村信夫
(著)
ひろ子は、下駄をはいて、
杏
(
あんず
)
の樹の陰から台所へまわった。小枝が、一方に柴木を積み上げた土間に
跼
(
かが
)
んで、茶の間のやりとりに耳を傾けながら馬鈴薯の皮をむいていた。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
朝は時間を云ひ合せて街角で出合つて登校をして、帰りも必ず一緒に校門を出ました。
杏
(
あんず
)
の木の下の
空井戸
(
からゐど
)
の
竹簀
(
たけず
)
の蓋にもたれて昼の休時間は二人で話ばかりして過しました。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
声を涸らした
老鶯
(
ろうおう
)
が白い
杏
(
あんず
)
の花の間で間延びに経を読んでいる。山国の春の
最中
(
もなか
)
らしい。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
七月の空はよく晴れてゐて、枝に透いた
杏
(
あんず
)
の実の丸い黄色が、私は、このときほど果実のまるい美しさを見たことがない。そこへ、B29の銀色の羽根がナイフのようにやって来た。
詩集『花電車』序
(新字旧仮名)
/
横光利一
(著)
児どもでも老人のようには見えませんか、青いうちに皺の入った瘠地の
杏
(
あんず
)
のように。
別
(
わ
)
けて中産階級の児どもは。犬でも鶏でも、どうも私達の国のものは年寄り染みてるらしいのです。
ガルスワーシーの家
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
主人が渋い顔をして居るので、丸髷の婦人は急いで風呂敷包の
土産物
(
みやげもの
)
を取出し
主人夫妻
(
しゅじんふさい
)
の前にならべた。葡萄液
一瓶
(
ひとびん
)
、「
醗酵
(
はっこう
)
しない真の
葡萄汁
(
ぶどうしる
)
です」と男が註を入れた。
杏
(
あんず
)
の缶詰が二個。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
貴方
(
あなた
)
は
那樣哲學
(
そんなてつがく
)
は、
暖
(
あたゝか
)
な
杏
(
あんず
)
の
花
(
はな
)
の
香
(
にほひ
)
のする
希臘
(
ギリシヤ
)
に
行
(
い
)
つてお
傳
(
つた
)
へなさい、
此處
(
こゝ
)
では
那樣哲學
(
そんなてつがく
)
は
氣候
(
きこう
)
に
合
(
あ
)
ひません。いやさうと、
私
(
わたくし
)
は
誰
(
たれ
)
かとヂオゲンの
話
(
はなし
)
を
爲
(
し
)
ましたつけ、
貴方
(
あなた
)
とでしたらうか?
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
隣室の医科の男が雪ちゃんに命じて
杏
(
あんず
)
を買って来さして二人で食っていた。
雪ちゃん
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
肺の悪いひとによくあるように、頬が
杏
(
あんず
)
色にぼうっと紅らみ、それがえぐい顔のつくりをいっそう印象的なものにしている。勉強家らしく、強度の近眼だと思われるのになぜか、眼鏡をかけていない。
ノア
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
徳三郎の
優姿
(
やさすがた
)
を
見初
(
みそ
)
めて、顔を
杏
(
あんず
)
のやうに
赧
(
あか
)
くした。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
熟したる
杏
(
あんず
)
地に割れゐし朝
鶴彬全川柳
(新字旧仮名)
/
鶴彬
(著)
杏
(
あんず
)
はあかし、そこここに。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
杏
(
あんず
)
咲くさびしき田舎
閑人詩話
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
「僕は一番はじめに
杏
(
あんず
)
の王様のお城をたづねるよ。そしてお姫様をさらって行ったばけ物を退治するんだ。そんなばけ物がきっとどこかにあるね。」
いてふの実
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その仕事のかたわらにこの
杏
(
あんず
)
夫人がいて、杏夫人は夜になると昼間よりも最っとふくれて見え、藤村はそれを他人に見とれる美しさで見とれていた。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
が、腐敗した
杏
(
あんず
)
の匂に近い死体の臭気は不快だつた。彼の友だちは
眉間
(
みけん
)
をひそめ、静かにメスを動かして行つた。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
だが、塀ごしの
杏
(
あんず
)
の花は、しとどに散って、送る
主
(
あるじ
)
と、去る客の蓑を、惜しむ行く春の
斑
(
ふ
)
にしらじらと
彩
(
いろど
)
った。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
目白が、チ、チ、と鳴きながら、
蕾
(
つぼみ
)
の赤らんだ
杏
(
あんず
)
の枝を渡り歩いている。とつぜん、お母さんは克子を乳房からはなし、抱きかえて日向の方へその顔をさしむけた。
大根の葉
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
第五十一
杏
(
あんず
)
のグラスカスター は前の通りなカスターを拵えておいて生の杏ならば砂糖を入れて煮て裏漉しにしたものを大匙に一杯半加えて前の通りに致します。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
杏
(
あんず
)
や、桃を欲しがった時分とは違うて、あんた色気が着いた。それでな、
旧
(
もと
)
のように、小母さん、姉さんは、と
言悪
(
いいにく
)
い。ところで、つい、言いそそくれておしまいのであろ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
木の実で熟するものには青梅、
杏
(
あんず
)
などある中に、ことに伊之助に時を感じさせるのは、もはや
畦塗
(
あぜぬ
)
りのできたと聞く
田圃
(
たんぼ
)
道から幼い子供らの見つけて来る木いちごであった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし、ぼくは今日、ロスアンゼルスで買った記念の
財布
(
さいふ
)
のなかから、あのとき大洋丸で、あなたに貰った、
杏
(
あんず
)
の実を、とりだし、ここ
京城
(
けいじょう
)
の
陋屋
(
ろうおく
)
の
陽
(
ひ
)
もささぬ裏庭に
棄
(
す
)
てました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
やがて強盗谷、強盗泉あり。岩壁の下、
草地
(
くさぢ
)
数弓
(
すきう
)
、荷を卸して駱駝臥し、人憩ふ。
我儕
(
われら
)
の馬も水のみて行く。やがてまた十数頭の駱駝
鈴
(
りん
)
を鳴らし驢馬の人これを駆り来るを見る。荷は皆
杏
(
あんず
)
。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
貴方
(
あなた
)
はそんな
哲学
(
てつがく
)
は、
暖
(
あたたか
)
な
杏
(
あんず
)
の
花
(
はな
)
の
香
(
におい
)
のする
希臘
(
ギリシヤ
)
に
行
(
い
)
ってお
伝
(
つた
)
えなさい、ここではそんな
哲学
(
てつがく
)
は
気候
(
きこう
)
に
合
(
あ
)
いません。いやそうと、
私
(
わたくし
)
は
誰
(
たれ
)
かとジオゲンの
話
(
はなし
)
をしましたっけ、
貴方
(
あなた
)
とでしたろうか?
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
杏
(
あんず
)
の罐を開き、
鶏
(
とり
)
の毛をむしり、
麺麭
(
パン
)
屋へ駈けつけて、鶏の死骸が無事にパン
焼竈
(
やきかまど
)
に納ったのを見届けて駈けもどり、
玉菜
(
ぎょくさい
)
をゆで、
菠薐草
(
ほうれんそう
)
をすりつぶし、
馬鈴薯
(
じゃがいも
)
を揚げ、肉に
衣
(
ころも
)
をつけ、その合間には
ノンシャラン道中記:01 八人の小悪魔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
口取は焼玉子、
栄螺
(
さざえ
)
(?)栗、
杏
(
あんず
)
及び青き
柑
(
かん
)
類の
煮
(
に
)
たる者。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
落ちし
杏
(
あんず
)
をつつくなり。
海豹と雲
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
杏
(
あんず
)
の木12・2(夕)
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
杏
漢検準1級
部首:⽊
7画
“杏”を含む語句
銀杏返
銀杏
巴旦杏
杏仁水
銀杏樹
杏花
杏仁
銀杏髷
大銀杏
杏子
巴丹杏
杏坪
銀杏形
乾杏
細銀杏
杏庵
頼杏坪
杏花楼
杏雲堂
銀杏加藤
...