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掌
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てのひら
ふりがな文庫
“
掌
(
てのひら
)” の例文
背嚢
(
ルックザック
)
から
乾麺麭
(
かんパン
)
の包みを取りだすと、
掌
(
てのひら
)
の中でこなごなにくだき、たいへん熟練したやりかたで
唾
(
つば
)
といっしょに
鵜
(
う
)
飲みにしてしまう。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
狐のような顔が歪んで、泣き出したいような表情になるのを、伊助は自分の
掌
(
てのひら
)
で、よく禿げた頭の上から、ツルリと撫で下げました。
銭形平次捕物控:059 酒屋火事
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何だか水晶の珠を香水で
暖
(
あつ
)
ためて、
掌
(
てのひら
)
へ握つて見た様な心持ちがした。年寄の方が脊は低い。然し顔はよく似て居るから親子だらう。
坊っちやん
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
奥様が、烏は
脚
(
あし
)
では受取らない、とおつしやつて、男が
掌
(
てのひら
)
にのせました指環を、
此処
(
ここ
)
をお
開
(
ひら
)
きなさいまして、(
咽喉
(
のど
)
のあく
処
(
ところ
)
を示す)
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それであるから
縦
(
たと
)
ひ大人であつてもそこから余程
川下
(
かはしも
)
の橋を渡るときに、信心ふかい者はいつもこの淵に向つて
掌
(
てのひら
)
を合せたものである。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
▼ もっと見る
おじいさんは、ひざを
折
(
お
)
って、うやうやしく
青
(
あお
)
い
珠
(
たま
)
を
掌
(
てのひら
)
の
上
(
うえ
)
に
載
(
の
)
せてながめていましたが、その
中
(
なか
)
から、一つ、一つ
分
(
わ
)
けはじめました。
ひすいを愛された妃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
たった一粒、ひやりとした
頬
(
ほっ
)
ぺたに
掌
(
てのひら
)
をあてて、澤は後の方の空を振仰いだ。先刻の雲が、月に向ってちぎれて飛んで行くのであった。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
彼は
掌
(
てのひら
)
でばたばたと鳥居の柱を敲きながら
矢鱈
(
やたら
)
に身体をも打ち付けた。打ち付け打ち付け
罵詈讒謗
(
ばりざんぼう
)
を極めて見たが鳥居は動かなかった。
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「成程、こいつあ尤だ。そいつから考えるのが順当だ。……壁に耳あり、喋舌っちゃァ不可ねえ。こいつァひとつ
掌
(
てのひら
)
でも書きやしょう」
天主閣の音
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と言いながら、一つ一つ手にとって指頭で触ってみたり、鼻へ当てて嗅いだりしていたが、やがて、そのうちの一つを
掌
(
てのひら
)
へ載せて
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
野球のミットのような
掌
(
てのひら
)
を広げると、土佐絵に盛りあげた菜の花の黄か——黄色い蝶をつかんできたのかと思うほど鮮かな色があった。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
盲人たちは信じかねて、
躊躇
(
ちうちよ
)
しながら、それでもそつと手を差出しました。その
掌
(
てのひら
)
へ、エミリアンは金貨を一枚づつのせてやりました。
エミリアンの旅
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その時氏はまた美しいペーパーの張ってある小さい鑵の中から白い粉を取り出して、それを
掌
(
てのひら
)
にこすりつけて両手を擦り合わした。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
当人がそれを
喋
(
しゃべ
)
るわけじゃなし、それでちゃあんと
掌
(
てのひら
)
を指すように言い当てておしまいなさる、あれが
仏眼
(
ぶつがん
)
というものでございますな。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
低い鼻と、
膨
(
ふく
)
れた赤い
頬
(
ほ
)
っぺたをもった若者は、五本の指で足りずにモ一つの
掌
(
てのひら
)
をひろげて数えたてたが、またフイと云い出した。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
と、その男は、人前もなく、じゃんか
面
(
づら
)
に、ぼろぼろと涙をこぼし、その涙を、
掌
(
てのひら
)
で逆さに撫でて嗚咽していたが、人々が驚いて
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ちょっと驚いたらしく
掌
(
てのひら
)
を見ると、白い柔らかい、平べったい、豆腐の破片みたようなものが手の平へ二三枚ヘバリ付いている。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
女は顔に
双手
(
りょうて
)
の
掌
(
てのひら
)
を当てていた。それはたしかに泣いているらしかった。彼はもう
夕飯
(
ゆうめし
)
のことも忘れてじっとして女の方を見ていた……。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
と言うのはまっ赤な石炭の火が、私の
掌
(
てのひら
)
を離れると同時に、無数の美しい金貨になって、雨のように床の上へこぼれ飛んだからなのです。
魔術
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、同時に、その血は頸筋へかけてすうっと流れ出したではないか? 思わず
掌
(
てのひら
)
を出して、赤羽主任はその上へ拡げてみた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
掌
(
てのひら
)
に一本の手筋もない純白のこのきゃしゃな右手に
依
(
よ
)
って、こちらの胸も苦しくなるくらいに哀れに表情せられているのが、わかる筈だ。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
丸く平べったい、
掌
(
てのひら
)
位の小罐であったが、非常に綺麗に装飾がしてあって、私は、中味よりも罐が気に入って、それを選んだ程であった。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「今年はいつまでも、ほんとに暑いな。」と云った時お雪は「
鳥渡
(
ちょいと
)
しずかに。」と云いながらわたくしの額にとまった蚊を
掌
(
てのひら
)
でおさえた。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
獅子は百獣の王、その毛を持っていれば、さすがの狂犬も
慴伏
(
しゅうふく
)
して寄りつかぬというのだ。
掌
(
てのひら
)
に虎の字を書く
往昔
(
むかし
)
の落語を思い出される。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
皮膚を侵す病は
最早
(
もう
)
彼女の
掌
(
てのひら
)
全体に渡っていて、神経の鋭くなった指のあたりからはどうかすると血が流れるとのことであった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
体をひねり、持つて来た薄い雑誌をむざ/\花床の上に敷いて片
肘
(
ひじ
)
まげる。河の流れへ顔を向けて貝の片殻のやうに
展
(
ひろ
)
げた
掌
(
てのひら
)
に
頬
(
ほお
)
を乗せる。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
文子はそういうと、ポケットから
掌
(
てのひら
)
へかくれてしまうくらいの小さな懐中電灯を取だして、「・・——・・——」と光らせた。
危し‼ 潜水艦の秘密
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、それから一二分の後には、次郎の両手は、勘作の木の根のような
掌
(
てのひら
)
の中に、しっかりと握りしめられていたのである。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
掌
(
てのひら
)
を両方の膝の上にひろげて、全く時ならぬ時に途方もないのに、長く、大きな声で、びっくりするような笑い声を爆発させたのであった。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
予ハサン/″\駄々ヲ捏ネテ皆ヲ手古摺ラシタガ、突然右ノ
掌
(
てのひら
)
ニモウ一ツノ柔イ掌ヲ感ジタ。颯子ガ手ヲ取ッテイルノダッタ。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その中に珍しい何梃かの消音
拳銃
(
ピストル
)
が含まれていた。極めて最新型の右
掌
(
てのひら
)
の中に完全に隠れてしまうくらいの、ごくごく小型なものであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あれぢやたとへキモノを着てゐたところで
襤褸
(
ぼろ
)
つきれで
掌
(
てのひら
)
の機械油をごしごし拭きつけた人なることは一目
瞭然
(
りょうぜん
)
ぢやないか。
三つの挿話
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
例の小さい帖を
掌
(
てのひら
)
の上に載せて、口の中では句を練りつつ唱へて居た作者が、ふと目を上げて灯の暗いのに気が附いた時に
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
掌
(
てのひら
)
を
翻
(
かえ
)
したようで
可笑
(
おか
)
しいが、僕は今はお父さんに日本中の面白いところを是非隈なく歩いて戴かなければならない。その
次第
(
わけ
)
は先ず斯うだ。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その間も、師の
蒲衣子
(
ほいし
)
は一言も口をきかず、鮮緑の
孔雀石
(
くじゃくいし
)
を一つ
掌
(
てのひら
)
にのせて、深い
歓
(
よろこ
)
びを
湛
(
たた
)
えた穏やかな
眼差
(
まなざし
)
で、じっとそれを見つめていた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
自意識の旺盛なる爲に、一切我より出づとなして居るのは、自己の
掌
(
てのひら
)
を以て自己の眼を掩うて居るが如き状が有りはせぬか。
努力論
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
片手の
掌
(
てのひら
)
に
握
(
にぎ
)
り込むを得る程の石にて打ち、恰も
桶屋
(
おけや
)
が桶の籠を打ち込む時の如き
有樣
(
ありさま
)
に、手を
動
(
うご
)
かし、
次第次第
(
しだい/″\
)
に全形を作り上げしならん。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
始めに小さな包のようなものを筒口へ
投
(
ほう
)
り込んで、すぐその上へ銀色をした球を落し、またその上へ、
掌
(
てのひら
)
から何かしら粉のようなものを入れる。
雑記(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
かう言つて旦那は、お光に外させた比翼指輪を自分の節くれ立つた太い指に
嵌
(
は
)
めかけてみたり、
掌
(
てのひら
)
に載せてふは/\と目方を考へてみたりした。
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
そして間もなく出て来ると、垢にまみれた
猿
(
さる
)
みたいな
掌
(
てのひら
)
を、ぱつと開いて、真中に四角な穴のあいたお鳥目を一つ見せた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
したがって
掌
(
てのひら
)
全体がむきだしになり、そのため思惟の心が浅いものにみえるのである。作者の信仰が粗放であることを語っているように思えた。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
篩った粉を入れて
捏
(
こ
)
ねて固ければ牛乳で少し
緩
(
ゆる
)
めて小さくちぎって
掌
(
てのひら
)
でグルグルと細長くちょうど親指位の太さに
円
(
まる
)
めて
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
法水が悠久
磅礴
(
ほうはく
)
たるものに打たれたのみで、まるで巨大な
掌
(
てのひら
)
にグイと握り
竦
(
すく
)
められたかのような、一種名状の出来ぬ圧迫感を覚えたのであった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ふい討ちであり
苛烈
(
かれつ
)
であった。削封が申し渡されて、はッと頭をあげたとき彼らの身分は
掌
(
てのひら
)
をひるがえすように失墜していた。無になっていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
森木が驚いていると、子爵はだしぬけに、彼の左手をとって
掌
(
てのひら
)
に札をつかませると同時に其の手をぎゅっと握ったのだ。
正義
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
いつの間にか逃げ場を失って、ドアと反対のほうに追いつめられ、壁に背がつくようになった。社長の大きな
掌
(
てのひら
)
は艶子の手首を掴もうとしている。
五階の窓:04 合作の四
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「イヤなかなか御丁重な御馳走で……。」と兄貴は大きい
掌
(
てのひら
)
に猪口を載せて、莫迦叮寧なお辞儀をして、新吉に差した。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、
掌
(
てのひら
)
にひろげ、指できしきしさせながら、
夢
(
ゆめ
)
のように云っているのでした。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
パジョオルに従えば、この手のダニが二匹もいれば、子供の頭ぐらい
李
(
すもも
)
のように食べてしまうというのだ。彼は、そいつをにんじんの
掌
(
てのひら
)
へのせた。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
そして、台の左右には、まるで
掌
(
てのひら
)
に乗れそうな体のお爺さんが二人、真赤な地に金糸で
刺繍
(
ししゅう
)
をした着物を着、手には
睡蓮
(
すいれん
)
の花を持って立っています。
地は饒なり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
“掌”の意味
《名詞》
(てのひら、たなごころ)手首より先、手の物を掴むときに物と接する面。
(出典:Wiktionary)
掌
常用漢字
中学
部首:⼿
12画
“掌”を含む語句
掌中
合掌
両掌
掌上
職掌
仙人掌
掌握
手掌
鞅掌
熊掌
車掌
掌面
右掌
職掌柄
掌底
掌大
仏掌藷
掌裡
孤掌
平掌
...