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ぶ
ふりがな文庫
“
打
(
ぶ
)” の例文
「
打
(
ぶ
)
つ。おまいに、おれを打つ力があるものか。もし、おれを打つてみろ、お父さんにつかまつて、手にお
炙
(
きう
)
をすゑられるからな。」
鳩の鳴く時計
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
笹村には思っていることをあまり顔に出さないような深山の胸に横たわっている力強いあるものに
打
(
ぶ
)
ッ
突
(
つ
)
かったような気がしていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
まあとおせんは
打
(
ぶ
)
たれでもしたように片手で頬を押えた。源六はそれを見て眉をしかめ、良心の
苛責
(
かしゃく
)
を受ける者のように眼を伏せた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そうして君等の指図通りにこの事件の運命を運んでみようと思ってこうして相談を
打
(
ぶ
)
っているんだ。ドンナ無理な筋書でも驚かない。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と山袴に蔓巻の刀を
打
(
ぶ
)
ッ
込
(
こ
)
んだ、八、九人の荒くれ男が、五ツ抱えもある杉の大樹を取り巻いてさっきから二度も三度も叫んでいた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
「一
度
(
ど
)
ならず、二
度
(
ど
)
三
度
(
ど
)
、
不思議
(
ふしぎ
)
打
(
ぶ
)
たせて
知
(
し
)
らせたに……」
婆
(
ばあ
)
さんの
聲
(
こゑ
)
が
次
(
つい
)
で
響
(
ひゞ
)
いた。
勘次
(
かんじ
)
もおつぎも
只
(
たゞ
)
凝然
(
ぢつ
)
として
居
(
ゐ
)
るのみである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
誰
(
だれ
)
だ
己
(
おれ
)
の
真似
(
まね
)
をするのは。と
云
(
い
)
つて腹を立て、
其男
(
そのをとこ
)
を
引摺
(
ひきず
)
り出して
打
(
ぶ
)
ん
殴
(
なぐ
)
つたところが、
昨日
(
きのふ
)
自分の
連
(
つ
)
れて歩いた
車夫
(
しやふ
)
でございました。
年始まはり
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この倶楽部に入ってからと云うものは殆ど負らしい負も見ずにとんとん拍子に素晴らしい目にばかり
打
(
ぶ
)
つかるのじゃありませんか。
象牙の牌
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
「
打
(
ぶ
)
つなら打ってごらんなさい。女だと思って馬鹿にして貰いますまいよ。さあ只今からでも、何処へなりと出て行って下さい。」
変な男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それからその前お茶の手前が上がったとおっしゃって、下すったあの
仁清
(
にんせい
)
の
香合
(
こうごう
)
なんぞは、石へ
打
(
ぶ
)
つけて
破
(
こわ
)
してしまうからいいわ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
多賀屋の二階二た間を
打
(
ぶ
)
ち抜き、善美を尽した調度の中に、
眩
(
まばゆ
)
いばかりの銀燭に照されて、凄まじくも
早桶
(
はやおけ
)
が一つ置いてあったのです。
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
大方遊んでばかりいやがったのだろう、この
食
(
く
)
い
潰
(
つぶ
)
し
野郎
(
やろう
)
めッてえんでもって、釣竿を
引奪
(
ひったく
)
られて、
逃
(
に
)
げるところを
斜
(
はす
)
に
打
(
ぶ
)
たれたんだ。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
前には正気を失っている所を、日本の看護卒が見つけて介抱してやった。今は喧嘩の相手が、そこをつけこんで
打
(
ぶ
)
ったり蹴ったりする。
首が落ちた話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
丁度何年か前、上級生に
打
(
ぶ
)
たれた時に感じた、あの「肉体への屈服」と、「精神への蔑視」とを、彼は再び事新しく感じるのであった。
プウルの傍で
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
風が波に
打
(
ぶ
)
っつかり、マストに突き当たり、リギンに切られて、泣きわめいた。海はその知らぬ底で大きく低く、長く
啀
(
いが
)
んでいた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
いったい四角な石壁は、なんの必要があって出来ているのだろう? 部屋にしては戸口がない。
打
(
ぶ
)
っても叩いてもビクともしない。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
まだ重態であることを自覚していないらしい病人の神経を
刺戟
(
しげき
)
するより、こう云う風に直接
打
(
ぶ
)
つかってしまった方がよいであろうこと
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこへテントを片付けて居った人たちが
慌
(
あわ
)
てて遣って来て、犬に石を
打
(
ぶ
)
っ付けて追い飛ばしたので犬はことごとく去ってしまった。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
それは一日の例外もなしに、
打
(
ぶ
)
ツ續けに、何處迄行つても限りのない循環小數のやうに續く。——もう澤山だ! さう云ひたくなる位だ。
一九二八年三月十五日
(旧字旧仮名)
/
小林多喜二
(著)
鞄の中では一枚の毛布をくるくる捲いて、底にあたるところに毛布の折目を廻し、
打
(
ぶ
)
っつけても動かないように固くとじていた。
陶古の女人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
始めて、幾何学のピタゴラスの定理に
打
(
ぶ
)
つかった時にはそれでも三週間頭をひねったが、おしまいには遂にその証明に成効した。
アインシュタイン
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「お宅の庭の
流
(
ながれ
)
にかかった、橋廊下の欄干より低いくらいで、……すぐ、富士山の
裾
(
すそ
)
を引いた波なんですな。よく風で
打
(
ぶ
)
つけませんね。」
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてそれをずつと下へ引くと、番人の目も口もすつぽり隠れてしまつた。それから大きなヰオリンを振り上げて番人を
打
(
ぶ
)
つわ、打つわ。
十三時
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
がたんがたんと、戸、障子、
欄間
(
らんま
)
の
張紙
(
はりがみ
)
が動く。縁先の植込みに、淋しい風の音が、水でも
打
(
ぶ
)
ちあけるように、突然聞えて突然に
断
(
た
)
える。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
好きでもないのに好いてると思われるのは
癪
(
しゃく
)
で、豹一は返答に困った。しかし、嫌いだというのは
打
(
ぶ
)
ち
壊
(
こわ
)
しだ。そう思ったので
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「この間、
或寄合
(
あるよりあい
)
で一緒になったら、
俺
(
わし
)
は六十二だから見渡したところ一番
年頭
(
としがしら
)
だと言って、上座に
打
(
ぶ
)
っ
坐
(
つわ
)
っている。馬鹿だよ、彼奴は」
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
まるで天体みたいに、多くの標章を
打
(
ぶ
)
ち
撒
(
ま
)
けておいて、その類推と総合とで、ある一つの恐ろしいものを暗示しようとしている。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「どうも取んだ
麁相
(
そそう
)
を致しまして、何とも相済みませんでございます。おや、お顔を! お目を
打
(
ぶ
)
ちましたか、まあどうも……」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「君とこゝで鐵砲
打
(
ぶ
)
ちに來て、半日飮んで居たつけナ」と言ふと、B君も同じやうに洋行以前のことを思出したらしい調子で
烏帽子山麓の牧場
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
が、これはすでに読者諸君のよく知って
居
(
お
)
られるところでして、例えば、眼に何物かが
打
(
ぶ
)
つかろうとすると、
眼瞼
(
まぶた
)
は
所謂
(
いわゆる
)
反射的に閉じます。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それから地面に引きずり倒して、踏む蹴る、いや大変な騒ぎです。私がとめようとすると、今度は手綱を引掴んでぴしぴし
打
(
ぶ
)
ちだすのです。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
私は予期していたことに
打
(
ぶ
)
つかったような気がして、
痛
(
いたま
)
しく思い、どうぞ無事でいてくれればよいがと、心に念じていました。
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
これは腐敗しかけてゐるのだ。これは
打
(
ぶ
)
ちまけて、新しく
醸
(
つく
)
り直すがよい。と、申しました。諸君、
抑
(
そもそ
)
も此の四聖の言葉は……
愚助大和尚
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
打
(
ぶ
)
つかつても破れない物質の頭は鉄だ。そして此の金属が人間に尊ばれるのは何にぶつかつても、破れない此の強い力なのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
これはクーリーが下から豆の袋を
背負
(
しょ
)
って来て、加減の好い場所を見計らって、袋の口から、ばらに
打
(
ぶ
)
ち
撒
(
ま
)
けて行くのである。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一緒にいる時分は、ほんの
些
(
ちょい
)
とした
可笑
(
おかし
)
いことでも、
悔
(
くや
)
しいことでも即座に
打
(
ぶ
)
ちまけて何とか
彼
(
かん
)
とか言って貰わねば気が済まなかったものだ。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
侍は年のころ四十前後で、
生平
(
きびら
)
の
帷子
(
かたびら
)
に、同じ麻を鼠に染めた
打
(
ぶ
)
っ裂き羽織をきて、夏袴をつけて
雪駄
(
せった
)
をはいている。その人品も卑しくない。
半七捕物帳:41 一つ目小僧
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今はできるだけ人目に立たぬようにしなくちゃ……小事、小事が大事だ! こういう小事が、往々万事を
打
(
ぶ
)
ちこわすのだ……
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そしてをととひ踊りきることの出来なかつた、まんなかの処へ踏みこむと、赫つとなつて、鋤でひとつ地面を
打
(
ぶ
)
つたものだ。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:05 呪禁のかかつた土地
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
風はやつぱりひどくて、鞭で打つやうに、波が
打
(
ぶ
)
つ附かつて来ます。見渡す限り海の上には、波頭の白い泡が立つてゐます。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
人々はどんなにか
吃驚
(
びっくり
)
した事であったろう。房子は、物干のところで、まるで死体のようになって地べたへ
打
(
ぶ
)
っ倒れていた。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
その新しいことにわれわれが
打
(
ぶ
)
っ附かったのであって、新しい制度がどういう風に出来たかということは一向知りません。
幕末維新懐古談:67 帝室技芸員の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
人差指はその
家婦
(
かみさん
)
だ。
干鱈
(
ひだら
)
のやうに
乾涸
(
ひから
)
びた男まさり、
朝
(
あさ
)
つぱらから女中を
打
(
ぶ
)
ちどほしだ、
嫉
(
や
)
けるのだらう、徳利は手を離さない、好きだから。
五本の指
(旧字旧仮名)
/
ルイ・ベルトラン
(著)
が、僕らの方の勢いも相応に強いので、もし強いてそうしようとすれば、かえって会場の秩序をまったく
打
(
ぶ
)
ち
毀
(
こわ
)
してしまいそうな形勢になった。
新秩序の創造:評論の評論
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
陽があがれば野原に出て男達は木の根を掘っくりかえし、女達は
土塊
(
つちくれ
)
を
打
(
ぶ
)
っ
砕
(
くだ
)
き、
陽
(
ひ
)
が沈めば小屋に帰って
眠
(
ね
)
るのだった。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
翁は、自から大きな
鉄槌
(
かなづち
)
を取り上げて、少女の両手を拡げさせて、動脈の打つ
手頭
(
てくび
)
のあたりへ五寸釘を
打
(
ぶ
)
ち込んで、白木の十字架に打ち附けた。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
周囲を
鞘翅虫
(
せうしちう
)
が群り飛んで、木の幹に
打
(
ぶ
)
つ付かつては地に落ちる。セルギウスは夕食が済んだので、静な祈祷をし始めた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
彼は余りに急いだため、余りに夢中であつたため、丁度その時、上から降りようとした人に、烈しく
打
(
ぶ
)
つ
衝
(
つか
)
つてしまつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
日本橋、通三丁目の米屋が、
打
(
ぶ
)
っこわされるそうじゃあねえか——あんまり高値を、ボリやあがったからだ。ざまあ見ろ!
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
今時このせち辛えのに上納減らしの不腹や相談
打
(
ぶ
)
たねえお百姓なんど一人もいるもんじゃねえさ、その上に新田に竿入れやらかそうてんだものを。
天狗外伝 斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
打
常用漢字
小3
部首:⼿
5画
“打”を含む語句
打擲
打付
打衝
打捨
打倒
打突
打附
打撲
打合
打棄
打毀
打壊
打破
打切
打遣
打着
打砕
打伏
打叩
打込
...