戸外こぐわい)” の例文
是はわからない方がこのましいので、必要のないかぎりは、あにの日々の戸外こぐわい生活に就て決して研究しないのである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
周章狼狽あわてふためき戸外こぐわい飛出とびだしてると、今迄いまゝで北斗七星ほくとしちせい爛々らん/\かゞやいてつたそらは、一面いちめんすみながせるごとく、かぎりなき海洋かいやう表面ひやうめん怒濤どたう澎湃ぼうはい水煙すいえんてんみなぎつてる。
とき丁度ちやうど時過じすぎ。いつもなら院長ゐんちやう自分じぶんへやからへやへとあるいてゐると、ダリユシカが、麥酒ビール旦那樣だんなさま如何いかゞですか、と刻限こくげん戸外こぐわいしづか晴渡はれわたつた天氣てんきである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
戸外こぐわいスポオツにしても、野球やきう勿論もちろんだが、近頃ちかごろそれと人氣にんき角逐かくちくしかけて蹴球しうきうにしてもその今日こんにちるまでには慶應義塾蹴球部けいおうぎじゆくしうきうぶかくれたるなが努力どりよくがあつた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
彼等かれらいそがしくうごかしてるとともこゑころしてひそ/\とかもちかられて笑語さゞめいた。彼等かれら戸外こぐわいきこえをはばからぬならば興味きようみじようじて放膽はうたんさわはずでなければならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
なに製造せいぞうするのか、間断かんだんなしきしむでゐる車輪しやりんひびきは、戸外こぐわいに立つひとみみろうせんばかりだ。工場こうば天井てんじよう八重やえわたした調革てうかくは、あみとおしてのたつ大蛇のはらのやうに見えた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
戸外こぐわいには天鵞絨びろうどのぬめりの光
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
戸外こぐわい真昼間まつぴるまさぞ心持こゝろもちだつたらうと思ふ。席は天然のいしだ。堂々としてゐる。与次郎の様なものは、さう云ふ所へれてつて、少し見せてやるとい」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こくは、草木くさきねむる、一時いちじ二時にじとのあひだ談話だんわ暫時しばし途絶とだえたとき、ふと、みゝすますと、何處いづこともなく轟々ごう/\と、あだか遠雷えんらいとゞろくがごとひゞき同時どうじ戸外こぐわいでは、猛犬稻妻まうけんいなづまがけたゝましく吠立ほえたてるので
「僕は戸外こぐわいい。あつくもさむくもない、奇麗なそらしたで、うつくしい空気を呼吸して、うつくしい芝居が見たい。透明な空気の様な、純粋で単簡な芝居が出来さうなものだ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その翌日よくじつになると、日出雄少年ひでをせうねんは、稻妻いなづまといふよき朋友ともだち出來できたので、最早もはやわたくしそばにのみはらず、朝早あさはやくから戸外こぐわいでゝ、なみあをく、すなしろ海岸かいがんへんに、いぬ脊中せなかまたがつたり、くび抱着いだきついたりして
代助のあたまには今具体的な何物をもとゞめてゐない。恰かも戸外こぐわいの天気の様に、それがしづかにじつはたらいてゐる。が、其底には微塵みじんの如き本体の分らぬものが無数に押し合つてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちと戸外こぐわい空氣くうき呼吸こきふさせるやうにしてやらなくてはどくだとおもひながらあるいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
女同志の間には、もう一遍競技を見に行かうかと云ふ相談があつたが、みぢかくなりかけた秋の日が大分まはつたのと、まはるに連れて、ひろ戸外こぐわい肌寒はださむが漸く増してくるので、かへる事に話が極まる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)