愛想あいさう)” の例文
仕事屋しごとやのおきやう今年ことしはるより此裏このうらへとしてものなれど物事ものごと氣才きさいきて長屋中ながやぢゆうへの交際つきあひもよく、大屋おほやなれば傘屋かさやものへは殊更ことさら愛想あいさう
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宰相は肥つた体躯からだを椅子にもたせて、何か善くない事を考へてゐたらしかつたが、この休職外交官を見ると、急に拵へたやうな愛想あいさうぶりを言つた。
まゐらするなり何も御座らぬつかみ料理澤山おあがりくだされよと亭主の愛想あいさうに人々は大いに悦び盃盞さかづき屡々しば/\巡るうち時分を計り傳吉は小用に行く體して叔母女房を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其處そこでもかれ宿やどからずに、終日しゆうじつ相變あひかはらず長椅子ながいすうへころがり、相變あひかはらずとも擧動きよどう愛想あいさうかしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いえなん貴僧あなた。おまいさん後程のちほどわたし一所いつしよにおべなさればいゝのに。こまつたひとでございますよ。)とそらさぬ愛想あいさう手早てばや同一おなじやうなぜんこしらえてならべてした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あれもお愛想あいさうさとわらつてるに、大底たいていにおしよ卷紙まきがみ二尋ふたひろいて二まい切手ぎつて大封おほふうじがお愛想あいさう出來できものかな、そしてひと赤坂以來あかさかから馴染なじみではないか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
米国のある陸軍将校が、最近仏蘭西軍の兵站へいたん部を訪ねると、そこに居合はせた司令官の一にん、四十恰好の髯の美しい陸軍大佐は、愛想あいさうよく出迎へて、何くれとなく打明けて話してくれた。
くらひに來りしにかれ如才じよさいなき者なれば我身代に取付とりつくは此時なりと思ひ愛想あいさうよく酒もまけつぎければ其の繁昌はんじやう大方ならず日毎に三十貫文餘りの利潤りじゆんを得て忽ちに大身代となりて酒店をもひらしかど昔しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これ大弓場だいきうば爺樣ぢいさんなり。ひとへば顏相がんさうをくづし、一種いつしゆ特有とくいうこゑはつして、「えひゝゝ。」と愛想あいさうわらひをなす、其顏そのかほては泣出なきださぬ嬰兒こどもを——、「あいつあ不思議ふしぎだよ。」とお花主とくい可愛かはいがる。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
帳塲ちやうば女主あるじもかけして唯今たゞいまありがたうと同音どうおん御禮おれいたのんでいたくるましとて此處こゝからしてせば、家中うちゞうおもておくしておいでまちまするの愛想あいさう御祝儀ごしうぎ餘光ひかりとしられて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人のいい牧師は立ちどまつてお愛想あいさうをいつた。
たえくるわへ足向もせず辛抱しんばうして居たりし程に見聞人毎ひとごとに久八の忠義により伊勢五の養子も人に成たりとほめければ久八もかげながらよろこびつゝおのれが今の姿すがたも打忘れてぞ居たりける然るに丁字屋の小夜衣は伯父をぢ長庵が惡計あくけいに罹りて戀しき人の憂目うきめに逢し事よりして愛想あいさう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
としずいわかけれどもきやくぶにめうありて、さのみは愛想あいさううれしがらせをふやうにもなくわがまゝ至極しごく振舞ふるまいすこ容貌きりよう自慢じまんかとおもへば小面こづらくいと蔭口かげぐちいふ朋輩はうばいもありけれど
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
画家ゑかきは幾らかお愛想あいさうのつもりで訊きかへした。
あさこゝろ思召おぼしめすか假令たとひどのやうなことあればとてあだびとなんのその笑顏わらひがほせてならうことかはやまほどのうらみもくるすぢあれば詮方せんかたなし君樣きみさま愛想あいさうつきての計略たくみかとはおことばながらあまりなりおやにつながるゝつみおなじと覺悟かくごながら其名そのなばかりはゆるしたまへよしや父樣とゝさまにどのやうなおにくしみあればとてかはらぬこゝろわたしこそ君樣きみさまつまなるものを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)