御褒美ごほうび)” の例文
「ふーむ、なるほど、一太郎は小発明家というわけだね。それじゃ一つ、眼鏡のお礼に、何か御褒美ごほうびを出さなくてはなるまいな」
智恵の一太郎 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのうちに、あなたもわかってきますよ。いちばんとうと御褒美ごほうびっていうのは、名誉めいよにだけなって、べつとくにはならないような御褒美ごほうびです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
「フウン——お前さんが五歳いつつで、菊ちゃんが三歳みっつ——そう御悧好おりこうじゃ、御褒美ごほうびを出さずば成るまい——菊ちゃんにも御土産おみやが有りますよ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その代りまた、詩歌管絃の道に長じてさえ居りますれば、無位無官の侍でも、身に余るような御褒美ごほうびを受けた事がございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「いちばん怖い話をした人と、それからいちばん上手に花籠を置いて来た人に、村正のおじさんが、すてきな御褒美ごほうびを上げる」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だって、貴女、先生がお嬢さんのお酌で快く御酒を召食めしあがれば、それに越した事はありません。いまにその筋から御褒美ごほうびが出ます。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもいました。そこで天子てんしさまにねがって、自分じぶん御褒美ごほうびいただわりに、宗任むねとうはじめてきのとりこをのこらずゆるしてやりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「お前には後でお菓子を御褒美ごほうびに出すからね。貴方あなた、これはあの気違さんとこの頃懇意になつて了ひましてね。気違の取次は金に限るのです」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
御褒美ごほうびかねはいくらでも遣るから本当の事を云ってくれ……一体お前は何と云ってヤングに欺されたのか。どうして船の中に連れ込まれたのか。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「あら、まあ、お母さんはたいへん愛想のいいことが言えるようになりましたわね。御褒美ごほうびにあたし接吻してあげるわ」
してくれれば、それでいいのだから——してくれるわねえ——あそんでくれるわねえ——何でも好きな御褒美ごほうびをそなたの——ほしいものを上げるから
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「ええ——でもお越なんか疑っちゃいけませんよ。お奉行所へそう申上げれば、あれは御褒美ごほうびの出る奉公人ですよ」
「まあ、坊ちやまのおりこうなこと、お父様やお母様に申し上げませう。そしたら、きつと大へんおよろこびになつて、坊ちやまに御褒美ごほうびを下さいますよ。」
鳩の鳴く時計 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「やはりあなたの勝ちよ。あなたはあて事がお上手じょうずだから岡さんを譲って上げたらうまくあたったわ。今御褒美ごほうびを上げるからそこで見ていらっしゃいよ」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
これは私があんまりロンシャン競馬場の泥みたいな土耳古珈琲トルココーヒーにコニャックを入れ過ぎたので、その御褒美ごほうび
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
そこで乾菓子ひがしや西洋菓子の美しいのをこの画に添へて、御褒美ごほうびだといふて隣へ持たせてやつた。(三月十四日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いつだったか父母ちちははが旅中お祖母ばあ様とお留守居の御褒美ごほうびに西洋木馬を買っていただいたのもその家であった。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
で、そのお父さんが、何かにつけて、御褒美ごほうびをくださるのに、女の子の、浜子が望むのは、刀なので——
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
上野城を分捕り、三郎兵衛の首を得るときは、何びとにもあれ、その功を上達じょうたつし、存分、御褒美ごほうびを取らすであろうぞ。——時を得ずして僻村へきそんにある勇者は出でよ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は『勧善訓蒙かんぜんくんもう』だの『輿地誌略よちしりゃく』だのを抱いて喜びの余り飛んでうちへ帰った昔を思い出した。御褒美ごほうびをもらう前の晩夢に見たあおい竜と白い虎の事も思い出した。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
四十年来の閲歴えつれき聞人達もんじんたち気風きふう呑込のみこみたれば、たゞ諸名家しよめいか御休息所ごきうそくじよを作り、御褒美ごほうびにはうめぽんづゝうゑくだされと、かね卑劣ひれついでざる名案めいあんうめぽん寄附主きふぬし
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ところがあまた公家くげたちの歌よみの中で私のがいちばんすぐれているとて天皇のお気に召したのだよ。そして御褒美ごほうびをばいただいた。私は恐縮してさがろうとした。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
友だちを取って投げて、女にありがたがられて、きれいな身柄を二、三日預かって、そのうえ殿様からはたんまり御褒美ごほうびをもらう。こんなうまい話はまたとあるまい。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
六兵衛はびっくりするやら、ホッとするやら、ゆめのような気がしてぼんやりしてしまいました。が、やがてたくさんの御褒美ごほうびをいただいて、よろこいさんで村へ帰って来ました。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「ほんとうはね、お母様が、子ひばりの代りにといって、昨日お二人ともお聞きわけがよかったので御褒美ごほうびに下さいましたのでございますよ、あとでお礼をおっしゃりあそばせ」
ひばりの子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
でも、私はアデェルのやうに御褒美ごほうびをいたゞいていゝといふ確信がございませんもの。
そのため一歩踏み出したばかりで、御褒美ごほうびの水引きを先へ頂戴してしまった。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
一方のかたましい女はもちろんこれをはねつけるが、その隣の女は僧を敬い、惜気おしげもなくはさみを入れて渡すと、それが実際は人の心の試験だったので、すぐ及第して大きな御褒美ごほうびを頂戴する。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「後にそのことが聞えたので、殿様から御褒美ごほうびが出たといいます。なんという人達だか、その名は伝わっていませんが、永代橋の落ちた時に刀を抜いて振りまわしたのと同じような手柄ですね」
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あれほどの大手柄をたてた艦に、なんとむご御褒美ごほうびでしょう。
太平洋雷撃戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御褒美ごほうびにバナナを貰って、いつか下へおりていった。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
御褒美ごほうび
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
生徒せいとさん、今日けふ學校がくかうですか。このさむいのに、よくおかよひですね。毎日々々まいにち/\さうして精出せいだしてくださると、このおばあさんも御褒美ごほうびをあげますよ。』
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
つたら、御褒美ごほうびぎんまいなんぢけたら按摩あんまをいたせ、」と此処こゝ約束やくそく出来できて、さて、シツペイのうちくらとる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あまり信用してくれなさそうですから、たいした御褒美ごほうびがあの世でわたしを待っているようにも思われませんからね
どうだね、一つやってみないかね。御褒美ごほうびをつけよう。君がその中へうまく這入れたら、チョコレートのはこ
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
天子てんしさまはたいそうおよろこびになって、頼光らいこうはじめ保昌ほうしょうや四天王てんのうたちにたくさん御褒美ごほうびくださいました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
したようなもの。しかしこうなってみると、こわいところにまた有難いことがある、あれを藤堂様なり紀州様なりに訴人そにんをすれば、莫大ばくだい御褒美ごほうびにありつける、め占め
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「大臣様は大そうな御心配で、誰でも御姫様を探し出して来たものには、厚い御褒美ごほうびを下さると云う仰せだから、それで我々二人も、御行方を尋ねて歩いているのだ。」
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「アハハハハ。そりゃあみんなよろこぶだろう。やってみろ。雨がふったら御褒美ごほうびをやるぞ」
雨ふり坊主 (新字新仮名) / 夢野久作香倶土三鳥(著)
何か御褒美ごほうびをやろうとおっしゃってくだすったから、あたいはなんにもいらないから、そのかわりに、こうこういうチョビ安兄さんという人の、父ちゃんや母ちゃんが知れるように
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
放火を捕まえるか、訴え出た者は、「御褒美ごほうび人数之多少にんずのたしょうらず」白銀三十枚ずつ、——当時にしては非常な奮発です。「江戸の花」と言われた火事はこうまで用心され、警戒されました。
ただし我邦わがくにでは印度いんどのように、敵の国がこちらの智恵をためしにくるなどということはないので、それをごくかんたんに殿とのさまの懸賞けんしょうで、これができた者には一万両の御褒美ごほうびなどというように
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「何か御褒美ごほうびをちょうだい」と女は急にあまえるように云った。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五郎 そちへの御褒美ごほうびは、あらためて沙汰さたするぞ。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御褒美ごほうびのかわりにお酒が飲みたい」
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
御褒美ごほうびは」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何か、何かッて、お前達は食べてばかりいるんだね。温順おとなしくして遊んでいると、父さんがまた節ちゃんに頼んで、御褒美ごほうびを出してもらってやるぜ」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
また国中くにじゅうの大さわぎになって、こんどこそうまくてて、御褒美ごほうびにありつこうとおもものが、ぞろぞろ殿様とのさま御殿ごてんへ、おとなりくにからた二ひき牝馬めうまに出かけました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「オオ、いい子だいい子だ」と云って御褒美ごほうびれたりしたものであるが、そうしてめられることが、身内が熱くなる程、恥しくて、いやでいやで、褒めてくれる相手に
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)