御新姐ごしんぞ)” の例文
「そこでございます、御新姐ごしんぞはな、年紀としは、さて、たれが目にも大略たいりゃくは分ります、先ず二十三、四、それとも五、六かと言うところで、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ふん、難産の呻吟声うめきごえだ。はあ、御新姐ごしんぞうならしっけえ、姑獲鳥うぶめになって鳴くだあよ。もの、奥の小座敷の方で聞えべいがね。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あの、後程のちほど内證ないしよう御新姐ごしんぞさんが。きつ御待おまあそばせよ。此處こゝに。ござんすか。」とさゝやいて、すぐに、ちよろりとえる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
でね、此を聞くと、人のい、気の優しい、哥太寛の御新姐ごしんぞが、おゝ、と云つて、そでひらく……主人もはた、と手をつて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
でね、これくと、ひとい、やさしい、哥太寛こたいくわん御新姐ごしんぞが、おゝ、とつて、そでひらく……主人しゆじんもはた、とつて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お嬢さんの方は、名を縫子さんと言うんで、申さずとも娘ッ子じゃありません、こりゃ御新姐ごしんぞ……じゃあねえね——若奥様。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さ、これもじゃ、玉脇の家の客人だち、主人まじりに、御新姐ごしんぞが、庭の築山つきやまを遊んだと思えば、それまででありましょうに。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引込ひきこまれて、はッと礼を返したが、それッきり。御新姐ごしんぞの方は見られなくって、わきを向くと貴下あなた一厘土器いちもんかわらけ怪訝けげん顔色かおつき
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
の一日前にちまへ暮方くれがたに、千助せんすけは、團右衞門方だんゑもんかた切戸口きりどぐちから、庭前ていぜん𢌞まはつた。座敷ざしき御新姐ごしんぞことを、あらかじつてのうへ
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其時そのとき茫乎ぼんやりと思ひ出したのは、昨夜ゆうべの其の、奥方だか、姫様ひいさまだか、それとも御新姐ごしんぞだか、魔だか、鬼だか、おねやへ召しました一件のおやかただが、当座はただかっ取逆上とりのぼせ
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
以前は影絵、うつし絵などでは、巫山戯ふざけたその光景を見せたそうで。——御新姐ごしんぞさん、……奥さま。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遠くから足のさき爪立つまだって、お殺しでない、打棄うっちゃっておくれ、御新姐ごしんぞは病気のせいで物事ものごと気にしてなんねえから、と女中たちが口をそろえていうもんだでね、げえもねえ
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仁右衛門が見た御新姐ごしんぞのように、この手が触って血を吐きながら、莞爾にっこりとしたらどうしょう。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……こゝの御新姐ごしんぞの、人形町にんぎやうちやう娘時代むすめじだいあづかつた、女學校ぢよがくかう先生せんせいとほして、ほのかに樣子やうすつてゐるので……以前いぜんわたしちひさなさくなかに、すこ家造やづくりだけ借用しやくようしたことがある。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今しがた小雨こさめが降って、お天気が上ると、お前様めえさま、雨よりは大きい紅色べにいろの露がぽったりぽったりする、あの桃の木の下のとこさ、背戸口せどぐちから御新姐ごしんぞが、紫色の蝙蝠傘こうもりがささして出てござって
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それには及ばんですよ、ええ、何の、御新姐ごしんぞ。」と面啖めんくらって我知らず口走って、ニコチンの毒を説く時のような真面目まじめな態度になって、衣兜かくしに手を突込つっこんで、肩をもそもそとゆすって
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女紅場ぢよこうばで、お師匠ししやうさんをなさります、のおこゝろうちぞんじながら、勿體もつたいない、引張ひつぱりの地獄宿ぢごくやどで、たこあしかじりながら、袖崎そでさき御新姐ごしんぞ直傳ぢきでんだ、と紀伊國きいのくに音無瀬川おとなせがはきつねいた人畜にんちく
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
草に鼻筋の通った顔は、忘れもせぬ鶴谷の嫁、初産ういざんに世を去った御新姐ごしんぞである。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うへ、ぞつこんおもひこがれる御新姐ごしんぞくみが、やさしい風流ふうりうのあるのをうかゞつて、居𢌞ゐまはりの夜店よみせ表紙へうしやぶれた御存ごぞんじのうたほんあさつてて、なんとなくひとせるやうにひねくつてたのであつた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「もし、それぢや、のおかたは、袖崎そでさきさんの御新姐ごしんぞぢやござりませんか。」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もうその時分は、大旦那がお亡くなんなすったあとで、御新姐ごしんぞさんと今のお嬢さんとお二人、小体こていに絵草紙屋をしておいでなすった。そこでもお前火災にお逢いなすったんだろうじゃないか。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たしなみも気風もこれであるから、院長の夫人よりも、大店向おおだなむき御新姐ごしんぞらしい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いきほひじようじて、立所たちどころ一國一城いつこくいちじやうあるじこゝろざしてねらひをつけたのは、あらうことか、用人ようにん團右衞門だんゑもん御新姐ごしんぞ、おくみととしやうや二十はたちく、如何いかにも、一國一城いつこくいちじやうたぐへつべきいたつてうつくしいのであつた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「生意気な事を言やがる。」お婆さんの御新姐ごしんぞが持って来た冷酒ひやざけ
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御新姐ごしんぞは、気分がすぐれねえとって、二階に寝てござらしけえ。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町で老舗しにせ紅屋べにやの内儀……お悦という御新姐ごしんぞ
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ、こちらの御新姐ごしんぞですか。」
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)