天上てんじやう)” の例文
をとこすそ見出みだししかば、ものをもはず一嘴ひとくちばし引咬ひつくはへてばせば、美少年びせうねんはもんどりつて、天上てんじやう舞上まひあがり、雲雀ひばり姿すがたもなかりしとぞ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
劇場の中に入ると、女達の心持は一層浮立ち、緞帳の縫取に感心したり、天井を見上て驚嘆したり、棧敷に坐つたまゝ、天上てんじやうしてしまひさうな樣子だつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
よしや此縁このえんいとひたりとも野末のずゑ草花さうくわ書院しよゐん花瓶くわびんにさゝれんものか、恩愛おんないふかきおやさせてれはおなじき地上ちじやう彷徨さまよはんとりあやまちても天上てんじやうかなひがたし
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし、昨夜さくや海嘯つなみは、吾等われら一同いちどう希望きぼう天上てんじやうより、絶望ぜつぼう谷底たにそこ蹴落けおとしたとおもはれます。』
奧深くして風荒るる天上てんじやうのいづこの庭に
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
天上てんじやう二十八宿しゆく連錢れんぜん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
つひくだんかめりて、もこ/\と天上てんじやうす。令史れいしあへうごかず、のぼること漂々へう/\として愈々いよ/\たかく、やがて、高山かうざんいたゞきいつ蔚然うつぜんたるはやしあひだいたる。こゝに翠帳すゐちやうあり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みぎひだりひかけては大溝おほどぶなか蹴落けおとして一人ひとりから/\と高笑たかわらひ、ものなくて天上てんじやうのおつきさま皓々こう/\てらたまふをさぶいといふことらぬなればたゞこゝちよくさはやかにて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝ、天上てんじやうから地獄ぢごくそこ蹴落けおとされたとて、人間にんげんまで失望しつぼうするものではあるまい。
れんや、それはね、おほきな五色ごしきはねがあつて天上てんじやうあそんでるうつくしいねえさんだよ)
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
暫時しばしがほどもまじはりし社會しやくわいゆめ天上てんじやうあそべるとおなじく、いまさらにおもひやるもほどとほし、櫻町家さくらまちけ一年いちねん幾度いくど出替でがはり、小間使こまづかひといへばひとらしけれど御寵愛ごちようあいには犬猫いぬねこ御膝おひざをけがすものぞかし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いま松島海軍大佐閣下まつしまかいぐんたいさかくかは、英國エイこくテームス河口かこう造船所ざうせんじよから、新造軍艦しんざうぐんかん」の廻航中くわいかうちうで、本艦ほんかん昨曉さくげうアデン海口かいこうで、いましも此印度洋を進航しんかうしてると、丁度ちやうど輕氣球けいきゝゆう天上てんじやうからちてたので
天上てんじやうか、奈落ならくか、山懷やまふところ大釜おほがまのまゝに、すごいほど色白いろじろをんな行水ぎやうずゐする姿すがたた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たまか、黄金こがねか、にもたうと宝什たからひそんで、群立むらだつよ、と憧憬あこがれながら、かぜ音信たよりもなければ、もみぢを分入わけいみちらず……あたか燦爛さんらんとして五彩ごさいきらめく、天上てんじやうほしゆびさしても
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)