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こわね
ふりがな文庫
“
声音
(
こわね
)” の例文
旧字:
聲音
そして
声音
(
こわね
)
で明らかに一人は大津定二郎一人は友人
某
(
ぼう
)
、一人は黒田の番頭ということが解る。富岡老人も細川繁も思わず聞耳を立てた。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
迦羅奢の
声音
(
こわね
)
は、次第に強いものに変って来た。忠興は、自分の愛が、彼女に
履
(
は
)
きちがえられたかと、残念そうに唇をふるわせた。
日本名婦伝:細川ガラシヤ夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
胡麻塩の頤髯を悠々と
撫
(
ぶ
)
し、威厳のある
声音
(
こわね
)
で急所々々を、ピタピタ抑えてまくし立てた様子は、爽快と云ってよいほどであった。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ちやうど彼の身につけた袴の
襞
(
ひだ
)
と同じやうに、一種云ふべからざる古雅な端正さがあり、それは同時に低い枯れた
声音
(
こわね
)
の中にも響いた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
閣下と呼ばれたその重症者の
声音
(
こわね
)
は、たしかに聞き覚えのあるものであった。が、それが誰だか、直ぐには考え出せそうもない。
人造人間殺害事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
渠は
茫々
(
ぼうぼう
)
たる天を仰ぎて、しばらく
悵然
(
ちょうぜん
)
たりき。その
面上
(
おもて
)
にはいうべからざる悲憤の色を見たり。白糸は情に
勝
(
た
)
えざる
声音
(
こわね
)
にて
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
不興気な呉羽之介の
声音
(
こわね
)
をきいて、お春は
訝
(
いぶか
)
しそうに恋人の顔を眺めたが、
然
(
しか
)
し何の疑いも抱かぬように大人しく座を立ちます。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「いやけっして」と法水は、諭すような和やかな
声音
(
こわね
)
で、「だいたい日本の民法では、そういう点がすこぶる寛大なんですから」
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
お杉の方に気がねでもあるかのごとく、もじもじと京弥が言いもよったので、退屈男は千
鈞
(
きん
)
の重みある
声音
(
こわね
)
で強く言いました。
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
米友は振り上げた棒を振り下ろすことなしに、この時ようやく犬の
声音
(
こわね
)
を聞き
咎
(
とが
)
めました。犬は
透
(
す
)
かさずその米友の足許へ寄って来ました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その時男の
声音
(
こわね
)
は全く聞えずして、唯
独
(
ひと
)
り女の
縦
(
ほしいま
)
まに
泣音
(
なくね
)
を
洩
(
もら
)
すのみなる。寤めたる貫一は
弥
(
いや
)
が上に寤めて、自ら
故
(
ゆゑ
)
を知らざる胸を
轟
(
とどろか
)
せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その
声音
(
こわね
)
までが同じであるので、婿の家も供の者も、どちらが
真者
(
ほんもの
)
であるか
偽者
(
にせもの
)
であるかを鑑別することが出来なくなった。
中国怪奇小説集:16 子不語(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
妃は髪黒く
丈
(
たけ
)
低く、褐いろの
御衣
(
おんぞ
)
あまり見映えせぬかわりには、
声音
(
こわね
)
いとやさしく、「おん身はフランスの
役
(
えき
)
に功ありしそれがしが
族
(
うから
)
なりや」
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
冗談を言うのをよせと言うのか、醜い争いをするのをよせと言うのか、自分に言い聞かせるような弱々しい
声音
(
こわね
)
であった。白々しい沈黙が来た。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
夫人も微笑したが、
声音
(
こわね
)
は
生真面目
(
きまじめ
)
だった。「わたくしも、警句でなく、ほんとにそう思いますわ。立派な芸術ですわ。」
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そのまざまざとした
声音
(
こわね
)
があって、ああいう口調が出るのです、面白いでしょう? ひろくひろくよむ人の心の奥までその響がつたえられてゆく。
獄中への手紙:08 一九四一年(昭和十六年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
鼻にかかった声であって、予期していた鋭いかわいた
声音
(
こわね
)
とはまったく異なっていた。彼はまったく推定に迷わされた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼の声はそんなに大きくはなかったが、お座なりの会話を見抜いて、鋭利なナイフでそれを断ち切るような独特の
声音
(
こわね
)
であった。一座は耳を傾けた。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
愛の言葉を
囁
(
ささや
)
いてくれます、あの人の
声音
(
こわね
)
すら、何とやらうつろで、機械仕掛の声の様にも思われるのでございます。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一度
(
ひとたび
)
は
愕然
(
ぎょっ
)
として驚いたが耳を澄まして聞いていると、上の方からだんだんと近づいて来るその話声は、
復
(
ふたた
)
び思いがけ無くもたしかに叔父の
声音
(
こわね
)
だった。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
小さな、しかし
可憐
(
かれん
)
に張りつめたものを感じさせる
声音
(
こわね
)
に、奇妙に哀切な感動をかんじていたのかもしれない。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その男はもう初老以上の年輩の紳士で、その
声音
(
こわね
)
や眼つきがいかにも温和な感じをあたえたので、私は彼に対して自分の秘密を隠してはいられなくなった。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
そして彼女の
声音
(
こわね
)
、彼女の顔の明るさ、彼女の手の接触は、ほとんどいつでも、彼には強い有益な効力を持っていた。絶対にいつでも、という訳ではない。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
足りないところは顔色なり身ぶりなり、あるひは
声音
(
こわね
)
なり涙なりが、補なひをつけてくれるでせうから。……信州の山かひは、さぞもう雪が深いことでせう。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
文壇で「紅露」が併称された如く、
梨園
(
りえん
)
では「団菊」といわれていたが、この方は舞台の人であるから、幸いにして私はこの二巨人の顔や
声音
(
こわね
)
を覚えている。
文壇昔ばなし
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
やっぱりいつ迄もいつ迄もジーッと立ちはだかったまま睨み付けている義兄の手前何とも
型
(
かたち
)
がつかなくなると、てれかくしにまた取って付けたような
声音
(
こわね
)
で
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
弟はしばらく対岸の
茫々
(
ぼうぼう
)
たる崖の上をながめていたが、ふと、自分でも思いがけないような
声音
(
こわね
)
で言った。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
お婆さんの
声音
(
こわね
)
には、亡くなった人を懐しんでいる響があった。お婆さんの連合は、もう大分まえに、壮年のころに亡くなったようである。飾職だったという。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
又その村々における古風な労働や、饗宴の印象をとゞめてゐるものは、今日我々が見ても聞いても、祖先自らの身振り・
声音
(
こわね
)
を目のあたりにするやうな気がする。
日本の郷土芸能の為に
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
口小言
(
くちこごと
)
をいいながら、
自
(
みずか
)
ら
格子戸
(
こうしど
)
のところまで
立
(
た
)
って
行
(
い
)
った
松江
(
しょうこう
)
は、わざと
声音
(
こわね
)
を
変
(
か
)
えて、
低
(
ひく
)
く
訊
(
たず
)
ねた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「おや可笑な子だねえ。この
老爺
(
おぢ
)
さんは
何
(
ど
)
うもしはしないよ。リツプ
坊
(
ぼう
)
は善い子だ。静にお仕よ。」小児の名、その母の顔と
声音
(
こわね
)
と、これ等は
僉
(
み
)
なリツプ、フアン
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
旧主の
遺児
(
わすれご
)
に会った親しさをもって答えたが、実之助は、市九郎の
声音
(
こわね
)
に欺かれてはならぬと思った。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
身の
態度
(
こなし
)
から
声音
(
こわね
)
まで妻の生前そのままです。妻の霊は私の手を握って喜んでくれました。その手が大変に冷たく、妙にひやりとした感じが、後になっても忘れられませんでした。
消えた霊媒女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
さうかと思ふと又心から人を見くびりせせら笑ひ影の影から
操
(
あや
)
かし
瞞
(
たぶ
)
らかすやうな、一度聴いたら逃れる事も忘れる事も出来ない、何かの深い執念と怪しい魔力を
秘
(
ひそ
)
めた
声音
(
こわね
)
である。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
虚々
(
うかうか
)
とおのれも里の
方
(
かた
)
へ
呻吟
(
さまよ
)
ひ出でて、或る人家の
傍
(
かたわら
)
を
過
(
よぎ
)
りしに。ふと聞けば、垣の
中
(
うち
)
にて
怪
(
あやし
)
き
呻
(
うめ
)
き声す。耳傾けて立聞けば、
何処
(
どこ
)
やらん黄金丸の
声音
(
こわね
)
に似たるに。今は少しも
逡巡
(
ためら
)
はず。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
明晰
(
めいせき
)
な
声音
(
こわね
)
やものいいにも御気質があらわれていたのでしょうと思います。思うこともなげな、才のある若い美しい方の
頬
(
ほお
)
の色、
生々
(
いきいき
)
として、はっきりと先生におはなしをなさってでした。
大塚楠緒子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
苦しきを絞りて辛くも呼びたる男の
声音
(
こわね
)
を、仙太は何とか聞きけん、お照は聞くとひとしく抱合いたる手を
振
(
ふり
)
放ちて、思わず
後
(
うしろ
)
を見返りたる時、取附きたる男のあせりて這上らんとする
重量
(
おもみ
)
に
片男波
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
「あなたは本当にその着物を頂いて嬉しいと思いますか」ほの暗い部屋の中に相対して坐ると、志保は穏やかな
声音
(
こわね
)
でそう訊いた、「……正直にお返辞をなさい、本当に嬉しいとお思いですか」
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
暴風のような乱調子な三味の音響につれて、男の濁った胸の引きさけるような吠えるような野卑な
声音
(
こわね
)
が、無茶苦茶な流行唄を怒鳴った。そうした嵐の間を一人一人芸妓がそうっと下りて来た。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
あの娘は
年齢
(
とし
)
から眼鼻立ち、
背丈
(
せい
)
恰好、物腰、
声音
(
こわね
)
まで、死んだお熊さんに瓜二つ……と申す仔細は、ほかでも御座んせん。あれは蔵元屋の前の御寮さんが、辰の年に生んだ
双生児
(
ふたご
)
の片割れ……
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
笹村はそこに突っ立っていながら、押し出すような
声音
(
こわね
)
で言った。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
歌の
声音
(
こわね
)
にさそわれて、いろんな
面
(
めん
)
も出て来るが
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
と左膳は、どこやら急に父親めいた
声音
(
こわね
)
で
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
水の流れるように、爽やかな
声音
(
こわね
)
であった。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
と
声音
(
こわね
)
は平常に
異
(
ことな
)
るところがなかった。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
さうして強ひて
沈
(
お
)
ち着けた
声音
(
こわね
)
で
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
青年らしい
声音
(
こわね
)
である。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
ただ
声音
(
こわね
)
うるはしく
ひとつの道
(新字旧仮名)
/
草野天平
(著)
内の者は、べつだん何ともしていない
声音
(
こわね
)
である。が、主膳はなお「……は」といったきりなのだ。戸惑いがしずまらなかった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その云い方は、全然、正気の人間の云い方であり、その
声音
(
こわね
)
は、これも正気の人間の、五音の調った、
清々
(
すがすが
)
しい声音であった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
声
常用漢字
小2
部首:⼠
7画
音
常用漢字
小1
部首:⾳
9画
“声”で始まる語句
声
声色
声高
声援
声々
声聞
声明
声柄
声色屋
声繕