前兆ぜんてう)” の例文
をしまずなげきしが偖ては前夜の夢は此前兆ぜんてうにて有りけるか然し憑司殿か案内こそ心得ぬ豫て役人をこしらへての惡巧わるだくみか如何せんとひとり氣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
乃至ないし眞夜中まよなかうまたてがみ紛糾こぐらからせ、また懶惰女ぶしゃうをんな頭髮かみのけ滅茶滅茶めちゃめちゃもつれさせて、けたら不幸ふかう前兆ぜんてうぢゃ、なぞとまするもマブが惡戲いたづら
ことあつてのちにして、前兆ぜんてうかたるのは、六日むいか菖蒲あやめだけれども、そこに、あきらめがあり、一種いつしゆのなつかしみがあり、深切しんせつがある。あはれさ、はかなさのじやうふくむ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とよ長吉ちやうきちが久しい以前からしば/\学校を休むめに自分の認印みとめいんぬすんで届書とゞけしよ偽造ぎざうしてゐた事をば、暗黒な運命の前兆ぜんてうであるごとく、声までひそめて長々しく物語る………
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
このふね主長しゆちやうともいふべき船長せんちやう船橋せんけうより墮落ついらくして、こゝろ不快ふくわいいだき、かほ憤怒ふんぬさうあらはしたなど、ある意味いみからいふと、なにこの弦月丸げんげつまるわざはひおこその前兆ぜんてうではあるまいかと
前兆ぜんてうだつたぜ——おらたしか前兆ぜんてうだつたとおもふんだがね。あのまへばんから曉方あけがたまでの椋鳥むくどりさわぎやうとつたら、なあ、ばあさん。……ぎやあ/\ぎやあ/\夜一夜よつぴてだ。——おまへさん。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また實際じつさい無※ばかことには相違さうゐないのだが、それが偶然ぐうぜんにも符合ふがふして、いまになつてかんがへると、あだか※去くわこ樣々さま/″\なる厄難やくなん前兆ぜんてうであつたかのごとく、かつ朝日島あさひじま生活中せいくわつちう櫻木大佐さくらぎたいさ此事このことかたつたとき
願ひける偖又傳吉方にてはかゝることの有りとはゆめにも知らざれども所謂いはゆる物の前兆ぜんてうならんとお專が見たるゆめしければをつと傳吉に此事をかたり其吉凶きつきよう猿島川さるしまがはの向ひなる卜ひ者へ出向はれ身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくごと風雲ふううんは、加能丸かのうまる既往きわう航海史上かうかいしじやうめづらしからぬ現象げんしやうなれども、(一人坊主ひとりばうず)の前兆ぜんてうりて臆測おくそくせる乘客じやうかくは、かゝ現象げんしやうもつすゐすべき、風雨ふうう程度ていどよりも、むし幾十倍いくじふばいおそれいだきて
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふゆことでの、前兆ぜんてうべい、八尺余はつしやくよつもつたゆき一晩ひとばんけて、びしや/\とえた。あれまつあをいわ、とうちに、てん赤黒あかぐろつて、きものといきものは、どろうへおよいだての。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
本目ほんめひつけたときかれ不安ふあんねんきんないのであつた。……不思議ふしぎ伴侶みちづれである。姿すがたいろらした、朦朧もうろうとしたをんな抱合だきあつたかげは、汽車きしや事變じへんのあるべき前兆ぜんてうではないのであらうか。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
不※ふと獨言ひとりごとのやうに、なにかの前兆ぜんてうあらかじつたやうにをんなふ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)