内側うちがわ)” の例文
三間巾の海水堀、高い厚い巌畳がんじょうな土塀、土塀の内側うちがわの茂った喬木、昼間見てさえなかの様子は、見る事が出来ないといわれていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
からすがったのち、まもなくすずめが二、三やはりおなえだにきてまって、まど内側うちがわをのぞくようにしてないていました。
残された日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つまりあのかた見失みうしわないようにしてみんながくばってる証拠しょうこなの。さあさ、そんなにあしゆび内側うちがわげないで。
「コシュパイユ、お前には左の腕のひじ内側うちがわに、火薬で焼いた青い文字の日付がある。それは皇帝のカーヌ上陸の日で、一八一五年三月一日というのだ。そでをまくってみろ。」
格子をれて古代の色硝子いろガラスかすかなる日影がさし込んできらきらと反射する。やがて煙のごとき幕がいて空想の舞台がありありと見える。窓の内側うちがわは厚き戸帳とばりが垂れて昼もほの暗い。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まど内側うちがわから見悪みにく鉄格子てつごうしめられ、ゆかしろちゃけて、そそくれっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
近所きんじょでもよくつていることですが、老人ろうじんはかなりへんくつな人物じんぶつです。ひどく用心ようじんぶかくて、昼日中ひるひなかでも、もん内側うちがわしまりがしてあり、門柱もんちゅう呼鈴よびりんさないと、もんをあけてくれません。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
この男を、この部屋へやから外に出してはならない。博士はドアをうしに開いて廊下ろうかにとびだし、バタンとめた。カギがない。透明人間が内側うちがわから開けようとして、博士がにぎる把手とってをひねった。
そのはずで、いくら、木々きぎのつぼみはふくらんできましても、この垣根かきね内側うちがわには、あたたかな太陽たいよう終日しゅうじつらすことがなかったからであります。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
垂れ布の内側うちがわで眼をとじて、早瀬は草原くさはらに坐ったまま、物思いにふけっている。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
けれどそのときは、内部ないぶはしんとして人影ひとかげがなかった。ちょうどそこへ、五、六にん子供こどもらがやってきて、ガラス内側うちがわをのぞいていました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、店頭てんとうのガラス内側うちがわには、あかあおしろむらさきのいろいろのはなが、いい香気こうきはなっていました。そのみせまえにいくと、あね内側うちがわをのぞきました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのみせには、ガラス内側うちがわに、宝石ほうせきはいった指輪ゆびわや、金時計きんどけいや、ぎん細工さいくをしたえりかざりや、寒暖計かんだんけいや、いろいろなものがならべてありましたが、なかにも
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くもは、わがままかってに、わたし内側うちがわにも、また外側そとがわにもあみりました。もとよりわたしに、一ごんことわりもいたしません。それほど、みんなはわたしをばかにしたのです。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある草花屋くさばなやみせさきに、河骨こうほねが、ちいさなはちなかにはいって、ガラス内側うちがわにかざられていました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある晩方ばんがたのこと、そこに、くろい、みじか洋服ようふくて、あかいえりをした、二人ふたりむすめって、ガラスまど内側うちがわをのぞいていました。乗合自動車のりあいじどうしゃ女車掌おんなしゃしょうでありました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
垣根かきね内側うちがわに、ちいさな一ぽんくさしました。くさは、このまれたけれど、まだ時節じせつはやかったものか、さむくて、さむくて、毎日まいにちふるえていなければなりませんでした。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、午前ごぜんのうちにかけ、おおくのひとたちとともに、れつをつくってならんだが、そのながれつは、えんえんとして、さながら長蛇ちょうだのごとく、運動場うんどうじょう内側うちがわ幾巡いくめぐりもしたのであります。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
垣根かきね内側うちがわに、ちいさな一ぽんくさしました。ちょうど、そのときは、はるはじめのころでありました。いろいろのはなが、にまし、つぼみがふくらんできて、きかけていた時分じぶんであります。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
屋敷やしきは、石垣いしがきいていて、その内側うちがわには、こんもりとしたがしげっていました。けるにつれて、あたりはひっそりとしました。つきがって、青白あおじろく、野原のはらみちいろどったのであります。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、しろおとこ平気へいきで、やはり線路せんろ内側うちがわあるいていました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)